石破首相とトランプ大統領との初めての日米首脳会談が日本時間の8日未明、ワシントンで行われた。
会談では、日米同盟の強化を再確認したのをはじめ、経済分野では石破首相が、アメリカへの投資額を1兆ドル(151兆円)規模まで引き上げたいとの考えを伝えた。
また、日本製鉄によるUSスチールの買収計画については、単なる買収ではなく、投資としての意味合いがあるとの認識を共有したことを明らかにした。
こうした今回の首脳会談をどのようにみたらいいのだろうか。結論を先に言えば、最初の会談としては、日米関係の方向性などで一致することができたので、成功と言えるのではないか。但し、具体的な対応はすべてこれからだ。難問はこれからと覚悟しておいた方がよさそうだ。
なぜ、こうした結論になるのか、具体的に会談の中身をみていきたい。
経済政策、アメリカへの貢献を強調
トランプ大統領の再登板以降、カナダやメキシコ、中国に対する関税の引き上げが大きな問題になっているので、経済分野から見ていきたい。
日米首脳会談で石破首相は、日本は5年連続でアメリカへの投資額が世界一であることを説明したうえで、今後も二国間の投資と雇用を大幅に増やすことや、アメリカのLNG=液化天然ガスの日本への輸入を増やすことなどを表明した。
そして、アメリカへの投資額を1兆ドル(151兆円)の規模まで引き上げたいという考えを示したほか、日本製鉄によるUSスチールの買収計画は「単なる買収ではなく、投資としての意味合いがある」との認識で一致したことを明らかにした。
USスチールの買収計画について、石破首相は帰国後に出演したNHKの番組で「単なる買収ではなく、投資を行い、アメリカの企業であり続ける」とのべ、投資を重視する仕組みに修正して計画が進められるという見通しを示した。
このように石破首相は、日本はアメリカへの投資や雇用の拡大に貢献していることをアピールするとともに、対米投資額をバイデン政権時代の8000億ドルから、1兆ドルまでひき上げる考えを伝え、トランプ大統領から歓迎された。
こうした対米貢献策が評価されたためか、日本側が警戒していた関税の引き上げなどの要求は議論されなかったとされる。
安全保障分野、従来の方針継続を確認
外交・安全保障分野については、日米同盟を強化するとともに、アメリカが防衛義務を果たす日米安保条約第5条を尖閣諸島に適用することを確認した。
また、厳しく複雑な安全保障環境の中で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、協力していくことを確認し、日米豪印のクアッドや日米韓、日米豪、日米比など多層的な協力を推進するとしている。
トランプ大統領は最初に当選した際、当時の安倍首相と最初の首脳会談を2017年2月10日に行い、その結果を日米共同声明として発表した。当時の共同声明が手元にあるが、日本語でA4用紙2枚の分量だった。今回は3枚に増え、安全保障分野では、主な方針はそのまま盛り込まれている。
石破首相は「今回の首脳会談で日本の防衛費について、トランプ大統領から言及はなかった」と説明している。
一方、今回の日米共同声明によると、2023年度から2027年度までの防衛力の抜本強化に続いて「米国は、2027年度よりあとも抜本的に防衛力を強化いくことに対する日本のコミットメントを歓迎した」とある。日本の防衛力のさらなる強化を期待していることが盛り込まれている。
石破首相「相性は合うと思う」
今回の首脳会談が行われるまで、国内では「石破首相は、トランプ大統領と相性がよくないのではないか」「アメリカ側から、さまざまな要求を突きつけられて対応できるのか」など首脳会談の先行きを不安視する声が聞かれた。
首脳会談で石破首相は「日米の緊密な関係は、大統領と安倍首相によって礎が築かれた」などトランプ大統領を盛んに持ち上げ、トランプ大統領も「シンゾーもあなたのことを尊敬していた」「あなたは偉大な首相になるだろう」などと上機嫌で応じた。
石破首相は帰国後、出演したテレビ番組で「『こいつとだったら、また話したい』という関係を作らないといけない。大勢の人に努力をしてもらい、いい結果になった」「テレビで見ると怖そうなおじさんだが、実際に話をしてみると人の話をよく聴く人だ。相性は合うと思う」と自信をのぞかせた。
石破首相は、トランプ氏側から誘いのあった大統領就任式前の会談を延ばしたうえで、就任後に会談することになった。日程が決まった後は、会談の準備を練りに練ったという。外務省をはじめとする関係各省、通訳など総力で準備に当たったとされる。そうした支えがあって、最初の会談を何とか乗り切れたのだろう。
防衛・安保の議論のあり方も再考を
今回の首脳会談をめぐっては直前まで「吉と出るか、凶と出るか」心配されたが、「吉」と出たと言っていいのではないか。但し、最初の会談は順調に行われたが、今後はどうなるかわからない。
トランプ大統領は今回、石破首相に厳しい要求をぶつけなかった。この背景には、日本との貿易赤字がトランプ政権第1期時代は世界で3番目だったが、今は7番目までに減っているためとの見方もある。
また、トランプ政権にとって、最も手強い中国との対決に備えて、同盟国である日本を自らに引きつけておくねらいもあると思う。
トランプ大統領は今後、関税の引き上げや、LNG液化天然ガスなどの開発、日本の防衛力などをめぐって、日本に要求を突きつけてくることも予想される。日本としてもその備えというよりも、主体的にどのように考え対応していくのか、政府が方針を固め、国民を巻き込んで議論していくことが必要になる。
前回、岸田政権当時の防衛力の抜本強化をめぐっては、国民レベルの議論があまりにも少なすぎた。その結果、政権は防衛増税を打ち出したが、所得税増税は未だに実施時期が決まっていない。
国会は、与党の過半数割れへと大きく変わった。防衛力・安全保障をめぐる議論のあり方、進め方についても考え直す必要があると考える。(了)
今回の日米首脳会談の評価および今後の対応の難しさに関し、
分かり易く解説されており納得しかりに感じました。
この石破首相とトランプ大統領との最初の対面による首脳
会談は、そのなり行きが極めて悪い方向への結果が出ること
が懸念されていたものの、意外や意外、事なきを得た結果に
なったことに安堵しています!
この要因として、考えられるのは日本の政・官関係者の入念な
前準備がされたことが大きいとはいえ、ひとえにトランプ大統
領が、どのような目論見を隠しているのか見えないものの、
予想外に日本側に突き付ける要求が「控え目な内容」で抑え
られたことが一番の要因であったと思います。
トランプ色をかなり抑えたものであったと言えます。
評価の結論は、貴殿の主張の下記文章につきると思います。
「最初の会談としては、日米関係の方向性などで一致すること
ができたので、成功と言えるのではないか。但し、具体的な
対応はすべてこれからだ。難問はこれからと覚悟しておいた
方がよさそうだ。」
文章について
①「防衛・安保の議論の在り方も再考を」の項
5行目
日本の貿易赤字がトランプ政権第1期時代は
→日本との貿易赤字が
(日本の→日本との 方が良くありませんか)
②同じ項
8行目
である日本を自らの引きつけておく
→である日本を自らに引きつけておく
(自らの→自らに ではないですか)
2月10日 妹尾 博史