トランプ政権の関税措置をめぐり、赤澤経済再生担当相が月末に訪米し、2回目の日米閣僚交渉が行われる見通しだ。この協議で、日米交渉を軌道に乗せる糸口を見いだせるかどうか、重要な局面を迎えている。
一方、国内では通常国会の会期末まで残り2か月を切ったが、石破政権や与野党ともにトランプ関税の大波に飲み込まれ、トランプ関税以外の懸案に手がつかない状況に陥っている。
今月末からの大型連休が明けると、各党が国政選挙並みの態勢で臨む東京都議会議員選挙が6月に、参議院選挙が7月に相次いで行われる。石破政権と与野党は、トランプ政権の関税措置交渉や終盤国会にどのような対応が求められているのか考えてみたい。
トランプ関税、交渉分野は固まるか
まず、トランプ大統領が打ち出した関税措置をめぐる日米交渉からみていきたい。日本時間の今月17日に行われた初めての日米交渉は、冒頭にトランプ大統領が赤澤経済再生相と会談するという異例の形で始まった。そして続いて行われた閣僚協議を含め、日米双方は可能な限り早期に合意をめざすことで一致した。
これを受けて日本政府は、赤澤経済再生相が今月30日から3日間の日程でワシントンを訪れ、ベッセント財務長官らと2回目の閣僚交渉を行いたい考えで調整を進めている。米側と調整がつけば閣僚交渉は、日本時間の5月1日に行われる見通しだ。
日本としては、対米輸出額で最も多い自動車や鉄鋼などの追加関税と、幅広い製品に課税される「相互関税」の見直しについて、引き続き強く求めていく方針だ。
これに対して、アメリカ側は初回の会合で「日本だけ特別扱いをすることはできない」として、否定的な認識を示しているという。
赤澤経済再生相は24日、記者団に「英語で言うと『スコーピング』、私は『交渉の土俵』と呼んでいるが、何を重点に話合うのか、優先順位を含めて話し合い、2回目の交渉でおおよそ決めたい」とのべた。
日本政府関係者によると、トランプ大統領の最大の関心事項は、貿易赤字の問題とされる。また、アメリカ製自動車や、コメなど農産物の輸入拡大、在日米軍の駐留経費の問題にも関心を持っていると受け止めている。
石破首相は国会答弁などで「安全保障は、貿易とは違う分野の話だ。為替は加藤財務大臣とベッセント財務長官の間で話合いが行われる」として、安全保障や為替の問題は、関税交渉とは切り分けて議論したいという考えを示している。
他方で、アメリカ車の輸入拡大に向けては「非関税障壁」や、コメを含む農産物の輸入拡大に向けては柔軟に対応することを検討しているとされる。
赤澤経済再生相としては、以上のような立場に立ってアメリカ側と突っ込んだ意見を交わし交渉範囲を固めたい考えだ。
もう1つ、次回の交渉で注目される点は、協議のスピードと交渉妥結の目安になる時期だ。
米側は早期の合意をめざしているとされ、トランプ大統領は17日、記者団に日本を含む主要国との合意の見通しについて「今後、3~4週間だろう」と語った。仮に4週間とすると5月中旬頃が目安になる。
これに対して、日本側は「日本が対米交渉の先頭にいる立場を活かすべきだ」と早期の妥結をめざすべきだという意見と、「アメリカ側の立場は揺れている」として焦らずに時間をかけた方がいいとの意見があり、対応は定まっていないとされる。
トランプ大統領は自信満々に相互関税を発動したが、米国債が急落すると一転して相互関税の上乗せ部分の停止に踏み切った。
また、アメリカの有力紙・ウオール・ストリートジャーナルが「トランプ政権が中国との貿易摩擦を緩和するため、関税率の大幅な引き下げを検討している」と報じるなど大統領の足元がぐらついているようにみえる。
こうした情勢を踏まえて、石破政権はどのような姿勢で交渉に臨むのか、次回の協議の結果が注目される。
米側は「相互関税」の停止期間を90日間として、各国との交渉期間に位置づけているが、90日後は7月9日。日本では今の政治日程では参議院決戦の真っ最中に当たるだけに、国内政治に大きな影響を及ぼす。
年金制度、夫婦別姓など懸案対応は
国内に目を転じると長丁場の通常国会も6月22日の会期末まで、2か月を切った。政府・与党は関税措置への対応に追われ、重要法案への対応が後手に回っている。
通常国会の重要法案の1つである年金制度改革関連法案をめぐっては、政府・自民党内で内容など調整が進まず、国会への提出が大幅に遅れている。
これに対し、立憲民主党は「遅くとも来月13日には提出し、審議入りしなければ今の国会での成立が難しくなる」として、提出のメドが明らかにならない場合は、福岡厚生労働大臣に対する不信任決議案の提出を検討するとけん制している。
また、懸案の企業・団体献金の扱いをめぐっては、3月末までに与野党で結論を出すことにしていたが、先送りになったままだ。政治資金を監視する第三者機関を設置する動きも進展していない。自民党旧安倍派の裏金問題の実態解明や、石破首相の商品券配付問題についての政倫審での説明も先送りになっている。
終盤国会では、懸案の選択的夫婦別姓の法案が立憲民主党から提出される見通しだ。自民党は党内の意見が分かれていることもあって、この問題への取り組みの動きは鈍い。
こうした懸案や重要法案は、夏の参議院選挙の論戦でも争点になる。それだけに国会で与野党が議論を深めておかないと有権者に判断材料を提供できないことになる。トランプ関税に関心を持ち力を入れるのは当然だが、国会と政党はそれぞれ本来の役割を果たしてもらう必要がある。
石破首相で参院選か、会期末の波乱は
冒頭でも触れたように今年は、東京都議選の投開票が6月22日、今の国会の会期延長がなければ、参議院選挙が7月3日公示・20日投開票の日程で行われる。4年に一度の都議選と、3年に一度の参議院選挙が同じ年に行われる”選挙イヤー”だ。
去年の衆議院選挙では自民・公明両党の与党が過半数を割り込んだが、今度は参議院でも与党過半数割れが起きるのか、その結果、連立の組み合わせの変更などが起きるかも焦点の1つになる。
そこで、政権・政局をめぐる動きを整理しておくと石破政権については、自民党内で予算成立後、一部に「石破首相では参院選を戦えない」として「石破降ろし」の動きがあったが、こうした動きが起きる公算は小さいとみられる。
というのは、トランプ関税措置をめぐる日米交渉が正念場を迎えようとしている時に、政争とみられる動きは支持が広がらないとみられるからだ。このため、自民党は、石破首相の下で参院選挙を戦う可能性が大きいとみられる。
一方、会期末に野党第1党の立憲民主党が、石破内閣の不信任決議案を提出し、野党各党がそろって賛成した場合は、可決される可能性がある。その場合、石破内閣が総辞職をするか、衆議院の解散・総選挙に踏み切る選択肢もあり、会期末に大きな波乱が起きる可能性は残っている。
但し、立憲民主党の野田代表は、不信任決議案の提出に慎重な姿勢を見せている。仮に提出した場合も、日本維新の会や国民民主党が同調しない可能性も大きく、政界では不信任案が可決される可能性は低いとの見方が強い。
このため、参院選挙は単独で行われる公算が大きいが、その場合、トランプ政権の関税措置への対応が大きな争点になるとみられる。石破政権は世界の先頭を切ってトランプ政権との関税交渉に入ったが、日本の利益だけでなく、世界の自由貿易を維持していく交渉ができたのかどうかが問われる。
また、石破首相がリーダーシップを発揮して関税交渉に当たり、成果を導き出すことができたのかどうか、与野党の論戦の焦点になるとみられる。私たち国民も、石破政権や与野党の対応をしっかり見極め、夏の参議院選挙での選択に備えたい。(了)
日本の今の石破政権が置かれている政情を、まことに理路整然と
論理展開されており、私をはじめ本ブログ読者は問題点の把握お
よび政権に対してどのような観点から臨むべきかについてを明確
に示唆されています。
トランプ関税への対応の難しさ、この件に振り回されて置き去り
にされている国内懸案事項の数々の現状等について、しかるべき
視点から問題提起されており、的確な指針となっています。
また、これら案件の進捗如何により、目前に迫った東京都議選、
参議院選にどのような影響を及ぼすのかについても考察されてい
てまことに時期を得た説明が展開されています。
トランプ関税に対する対応は、一番バッターとしての対応のみな
らず、世界の自由貿易を死守すべき大きな役割を課せられている
と認識して、行うべきと考えます。
その為、妥結内容および妥結時期の見極め、そして一番難しいか
も知れないトランプ政権へのアメリカ国民の支持離れがいつ・ど
のように現れるのか、あるいは現れないのか見定めることが求め
られることです!
文章について
①「トランプ関税、交渉分野は固まるか」の項
最初から20行目
関心を持っているとの受け止めている
→関心を持っていると受け止めている
(の は不要)
②「年金制度、夫婦別姓など懸案対応は」の項
2行目
政府与党は関税措置への対応追われ
→政府与党は関税措置への対応に追われ
(に が抜けています)
③同じ項
8行目
今の国会での成立が難しなる
→今の国会での成立が難しくなる
(く が抜けています)
④同じ項
9行目
福岡厚生労働大臣に対するな不信任決議案の
→福岡厚生労働大臣に対する不信任決議案の
(な が不要です)
4月25日 妹尾 博史