”会期末、世論の風向きは”内閣支持率は上昇

通常国会の会期末が22日に迫った国会は、重要法案や内閣不信任決議案などの取り扱いをめぐって、与野党の詰めの攻防が続いている。今月13日には東京都議選が告示され、来月には参議院選挙が行われる。

こうした中で、NHKの6月世論調査がまとまり、石破内閣の支持率が前月に比べて6ポイント上昇し、自民党の支持率も上がっている。小泉農水相が打ち出した備蓄米の売り渡しが評価されているためとみられるが、”世論の風向き”はどうなっているのか、分析してみたい。

石破内閣、自民党支持率ともに上昇

さっそくNHK世論調査(6月6~8日実施)からみておくと、石破内閣の支持率は39%で、先月から6ポイント上がった。不支持率は42%で6ポイント減少した。自民党の政党支持率も31.6%で、先月より5.2ポイント上昇した。

こうした原因は、江藤農水相の更迭に伴って就任した小泉農水相が、先月下旬以降、猛スピードで進めている「備蓄米の売り渡し」が国民の支持を得ているためとみられる。今回の世論調査では「評価する」が74%に達し、「評価しない」の21%を大きく上回った。

石破内閣は今年2月は、トランプ大統領との初の首脳会談を無事に終えたことから、支持率が5ポイント増えて44%に上昇した。ところが、3月以降は自らの「商品券配付問題」などが響いて、支持率は3か月連続で30%台の最低水準を更新してきた。

今回、ようやく支持率の下落に歯止めがかかり、上向きに転じた形になった。だが、コメ全体の価格が下がると思うかとの質問には「下がる」が43%、「下がらない」が45%と見方が分かれており、今後のコメの価格によって内閣支持率が変化することが予想される。

若い年代、無党派層の支持は広がらず

次に石破内閣の支持層を年代別に見てみると各年代とも5ポイント前後、上がっている。支持する人は50代で35%、60代44%、70代と80歳以上でそれぞれ49%を占めている。これに対し、40代は25%、18歳から30代までは22%に止まっている。年齢が高くなるほど支持が増え、若い年代ほど支持が減るのが特徴だ。

与野党の支持層別では、与党支持層は70%で、先月に比べて8ポイント伸ばしている。野党支持層では24%で、4ポイント増加、無党派層は23%で、プラス・マイナスゼロ、先月と同じ割合に止まった。

このように今回、石破内閣の支持率が好転したのは、与党支持層の支持が増えたことが大きい。逆に若い年代、それに無党派層では支持に広がりがみられないことが読み取れる。

自民党は支持率上昇、野党は低下傾向

各党の政党支持率をみると自民党は31.6%で、先月から5.2ポイント上がった。公明党は3.2%で、先月から0.5ポイント下がった。

自民党は今年3月以降、30%ラインを割り込む状態が3か月続いたが、6月にようやく30%台を回復したことになる。但し、前回3年前の参議院選挙が行われた同じ6月は40.1%だったので、8.5ポイントも下回っている。

野党各党の今月の支持率と、先月との比較は次のようになっている。立民5.8%(-1.8P)、維新2.5%(-0.1P)、国民5.4%(-1.8P)、共産1.9%(-0.7P)、れいわ1.7%(-0.8P)、参政1.9%(+0.4P)、保守0.9%(+0.1P)、社民0.4%(+0.1P)、みんな0.1%(+0.1P)。無党派は37.8%(-0.4P)となっている。

野党の多くは先月に比べて支持率を下げている。通常国会は野党主導で政権与党を追及する場面が多く、与党が支持率を落とすケースが多かった。それだけに今回はコメの価格対策という特別な要素があるにしても、与党が支持率を伸ばしているのは、野党にとっては不本意な展開だろう。

少数与党の中で、野党が足並みをそろえて政権に対峙すれば、政策要求などを実現できたのに、野党が個別に与党との協議を進めた結果、思うような成果を上げられなかったことも影響しているとみられる。

このほか、野党の中で国民民主党は、3年前は1.3%程度だったが、今は支持率を飛躍的に伸ばした。そして今年3月・4月は立憲民主党を上回っていたが、5月以降支持率に陰りがみられ、参院選に向けての推移が注目される。

 懸案の最終攻防、与野党の評価を左右

冒頭にみたように石破内閣は今月は支持率を大幅に伸ばしたが、支持率39%に対し不支持率は42%で、支持と不支持の逆転状況が4か月続いている。3年前の前回参院選では、当時の岸田内閣は59%という勢いがあったのと大きな違いがある。

この国会の最終盤がどのような展開になるのか、その結果によって石破政権と与野党の支持率などを大きく左右することになる。

まずは、国民の関心が強いコメの価格高騰が値下がりへと転じるのかどうか、コメの流通、生産政策などが大きな論点になりそうだ。11日には党首討論が行われ、コメ問題を含め内外の重要課題について、突っ込んだ意見が戦わされる見通しだ。

また、トランプ関税をめぐって日米閣僚交渉が5回にわたって行われたが、合意の見通しはついていない。この問題をめぐって12日にも党首会談が行われ、石破首相と野党党首が意見を交わす予定だ。

さらに、国会で議論を続けてきた懸案について、一定の結論や方向を出す必要がある。具体的には「政治とカネの問題」をめぐっては、裏金問題の実態解明は進まず、企業・団体献金の扱いも3月に結論を先送りにしたままだ。

28年ぶりに法案の審議が始まった選択的夫婦別姓制度についても与野党の意見が分かれ、先送りになる見通しだが、各党の今後の対応が問われることになる。

会期末には野党第1党の立憲民主党が、石破内閣に対する内閣不信任決議案を提出するのかどうか。提出された場合、石破首相は採決を待たずに衆院を解散する意向を固めたなどの観測も出されており、緊迫した局面も予想される。

こうした懸案がどのような形で決着がつけられるのか。そして、私たち国民は政権や与野党の対応を評価し、来月の参院選挙などで意思表示をすることになる。(了)

 

“”会期末、世論の風向きは”内閣支持率は上昇” への1件の返信

  1. 6月に実施されたNHKの世論調査の結果を受け、会期末における
    政情の分析が分かり易く説明されており、良く理解できました。
    極めて残念に思うのは、国内外の重要課題について何ひとつ結論が
    得られないまま、会期末を迎えることになってしまったことです。
    トランプ関税に対する取り組みも、何がどのように結論が得られる
    のか、またいつ結論が得られるのかまるで見えないことです。
    小泉農相の備蓄米の随意契約実施による低価格のコメ販売だけが
    「小泉劇場」よろしく華々しく報道されていることに大いに疑問を
    感じます。
    これも大問題ですが、市場にまだ回らない米もあり、重ねて実施し
    た備蓄米の大量の放出によりあふれ出るコメの量が今後どのように
    制御されるのか、またコメの価格はどのようになるのか、さらには根本的問題として国内米の生産政策は適切に行われるのか等、
    具体的対応策は何ら提示されていません!
    政情判断として肝に銘じることは貴殿の
    「少数少数与党の中で、野党が足並みをそろえて政権に対峙すれ
    ば、政策要求などを実現できたのに、野党が個別に与党との協議を
    進めた結果、思うような成果を上げられなかったことも影響してい
    るとみられる。」
    の文章に要約されていると思います。

    今回は文章について気づいた点はありません。
      6月12日  妹尾 博史

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