”米関税は協議継続”国会は最終攻防へ

G7サミットに合わせてカナダで行われた石破首相とトランプ大統領との日米首脳会談は、アメリカの関税措置の見直しをめぐって合意に至らず、担当閣僚による協議を継続することになった。

一方、会期末が迫った国会は、焦点の石破内閣に対する不信任決議案の扱いなどをめぐって攻防が続いているが、立憲民主党は不信任案の提出は見送る公算が大きいとみられる。日米首脳会談の影響と国会会期末の最終攻防のゆくえをみてみたい。

関税合意に至らず、政権浮揚カード不発

石破首相とトランプ大統領の日米首脳会談は、日本時間の17日午前4時過ぎから30分間にわたって行われた。会談には、赤澤経済再生相とベッセント財務長官も同席した。

この中で、両首脳はアメリカの関税措置について率直な議論を行い、赤澤経済再生相とベッセント財務長官ら関係閣僚に対し、さらに協議を進めるよう指示することで一致した。

会談終了後、石破首相は記者団に対し「ギリギリまで交渉し、合意の可能性を探ってきた。今なお、双方の認識が一致していない点が残っているので、パッケージ全体としての合意には至っていない」とのべた。

これまでの交渉で日本側は、基幹産業である自動車の追加関税の撤廃を強く求めてきたが、アメリカ側は自動車が貿易赤字の大きな原因になっているとして譲らず、この自動車関税の扱いが首脳レベルの会談でも大きなハードルになったものとみられる。

石破首相は今回の首脳会談で一定の合意を取りつけた上で、7月の参議院選挙前に関税措置をめぐる問題の決着をめざしてきた。しかし、今回の首脳会談でも合意のメドもつけられなかったことから、参院選前の決着は不透明な情勢になっている。

トランプ政権は、貿易赤字が大きい国を対象に発動した相互関税を90日間停止しているが、ベッセント財務長官は来月9日となっている期限を延長する可能性にも言及している。日本も24%の相互関税が課されるが、現在は一時停止されている。

日本政府内でもサミットでの日米首脳会談で合意できない場合、決着は秋以降にずれ込むのではないかとの見方も聞かれる。だが、今後の見通しについては、依然として、はっきりしておらず、経済界から不満が示されることも予想される。

石破首相にとっては一定の合意に達していれば、参議院選挙に向けて政権浮揚のカードとして期待できたが、今回はそのカードは切れない可能性が大きい。石破内閣の支持率は小泉農水相の起用で、上向きの傾向は表れているが、依然として不支持率が支持率を上回る厳しい状態が続いている。

 不信任案提出見送り判断大詰め

さて、日米首脳会談の結果は22日に会期末が迫っている与野党の攻防、中でも最大の焦点である石破内閣に対する不信任決議案の扱いにも影響を及ぼす。

立憲民主党の野田代表は、与党の過半数割れで内閣不信任案の重みが一段と増しているとして、慎重に対応していく考えを繰り返し表明してきた。最終的には、党内の意見と他の野党の動向、それにトランプ政権の関税措置をめぐる日米首脳会談の結果を見極めて判断したいとの考えを示してきた。

特にトランプ関税について野田代表は、石破首相と同じく「国難」との認識を示すとともに、内閣不信任の提出が衆院解散・総選挙という政治空白をもたらすのは好ましくないという考えを示してきた。こうした考えからすると、日米首脳会談でも合意に至らず協議継続となったことは、不信任案提出にブレーキが働くとみることができる。

一方、立憲民主党や他の野党の多くも衆院解散・総選挙をめぐっては、選挙資金や候補者擁立の準備態勢が整っておらず、回避したいのが本音との見方も聞かれる。野田代表としてはこうした点も含めて総合的に判断することになるが、内閣不信任案の提出を見送るのではないかとの見方が立憲民主党内では強い。

自民党の森山幹事長も17日、イスラエルとイランによる攻撃の応酬が続いている国際情勢を考えると野党側が内閣不信任案を提出しない場合、会期末に衆議院が解散される可能性は低いとの見方を示した。

こうした中で、石破首相が帰国後の19日、与野党の党首会談が開かれ、日米首脳会談の報告を行うとともに意見を交わすことにしている。こうした動きも含めて判断すると国会は会期末の攻防が続くものの、内閣不信任案の提出は見送られ、22日に会期延長なしで閉会する可能性が大きいとみられる。

この結果、夏の参議院選挙は7月3日に公示され、3連休中日の20日投開票という日程で行われる見通しだ。私たち有権者も最終盤国会での重要法案などの行方を見届けるとともに、内外情勢が激動する中で参議院選挙ではどのようなテーマを重視して1票を投じるか準備を始める時期を迎えている。(了)

★追伸(6月19日23時)立憲民主党の野田代表は19日の記者会見で、終盤国会の焦点になっている石破内閣に対する不信任決議案の提出を見送る考えを表明した。その理由として野田代表は、日米の関税交渉が継続中であることや中東情勢が緊迫していることを挙げ「政治空白を作ることは回避すべきだ」とのべた。 一方、石破首相は今の国会で衆院解散を行わない意向を固めている。このため、参議院選挙が7月3日公示、20日投開票の日程で単独で行われる見通しだ。

★追伸(6月21日午前8時)会期末を22日に控えた国会は、土曜日の21日も参議院で審議が行われる異例の展開に。野党7党が提出したガソリン税の暫定税率を廃止する法案が20日、委員会と衆院本会議で可決され、参院へ送られたためだ。参議院では与党が多数のため、成立は困難。ガソリン税の暫定税率廃止については、去年12月、自民・公明両党と国民民主党との間で合意済み。実施時期や財源などの調整が進んでいなかった。

★追伸(21日23時)野党側が提出したガソリン税の暫定税率の廃止法案は21日の土曜日、参議院財政金融委員会で質疑が行われたが、採決をめぐって与野党の意見が対立し、採決が行われず散会した。法案は廃案となる見通しで、国会は22日の会期末を前に事実上、閉会した。

 

 

“”米関税は協議継続”国会は最終攻防へ” への1件の返信

  1. G7サミットに合わせて、カナダで行われた日米首脳会談の結果を
    受けて、アメリカからの異次元の関税上乗せ政策に対し、どこまで
    交渉が進捗したのかまたその結果が石破政権にどのような影響を及
    ぼすのかについて分かり易く説明されており、大変良く理解できま
    した。
    石破首相は当初の目論見として、参議院選までに関税問題に決着を
    つけて政権浮揚に結び付けようとしたものの、そのメドさえつけら
    れず、支持率改善には結びつけられませんでした。
    アメリカ側の対応もコロコロ変わり、現状ではいつどのように決着
    に漕ぎつけられるのか着通せないとみるべきと思われます。
    参議院選を控え、与野党の「天下の宝刀」=内閣不信任案提出・解散・総選挙の決断は、双方とも抜くことは得策でないとの判断に至っているとの見方にも十分頷けます。
    ただこの判断も、自党にとって有利か不利かという観点からの選挙
    対策であって、政治家の皆さんには、国難多かりし現在、日本の政
    治を将来を見据えて的確に前に進めることが求められていることを
    肝に銘じてもらいたい!
    その為にも有権者の我々も来る参議院選には、的確な判断のもと、
    貴重な1票を投じることが必要であることの訴えも当然です!

    文章について
    「関税合意に至らず、政権浮揚カード不発」の項
     6行目
     進めるよう指示することで3一致した。
     →進める要支持することで一致した。
     (どういうわけか 3 が記載されています)
     6月18日  妹尾 博史

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