”都議選、自民大敗“ 敗因をどう読むか

22日投開票が行われた東京都議会議員選挙では、自民党が過去最低の21議席となり、第1党を維持できなかった。一方、小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会は31議席を獲得し、第1党に返り咲いた。

野党側では、立憲民主党が議席を伸ばしたほか、国民民主党と参政党が初めて議席を獲得した。共産党は議席を減らし、大阪維新の会は議席を失った。一方、公明党は、9回連続の全員当選を逃した。

このように各党派の明暗は分かれたが、特に自民党は、コメ問題で小泉農水相の登場によって選挙情勢は好転しているとみていただけに、選挙結果を深刻に受け止めている。今回の自民大敗の原因はどういうことだったのだろうか、来月に迫った参院選への影響はどうなるか分析してみたい。

 自民党過去最低の議席、敗因は

東京都議選が告示される前、自民党関係者に見通しを聞くと「自民党の現有議席は30。これを多少下回ることはあるかもしれないが、過去最低の23議席を割り込むことはないだろう」と比較的楽観的な見方を示していた。

その理由としては、コメ問題に関心が集まり、政治とカネの問題への関心が低下していること、そして小泉農水相の登場でメデイア各社の世論調査でも石破内閣の支持率も上昇していたことから、選挙情勢は好転するとみていたからだ。

ところが、ふたを開けてみると2017年、都民ファーストの会ブームで自民党が沈んだ23議席、これをさらに下回る21議席にまで落ち込んだ。このうち、3人は追加公認なので、本来の公認候補の当選は18人で、惨敗と言ってもいい。

選挙結果をみると◆定数1の1人区、千代田区、武蔵野市など7つの選挙区で、自民党が勝利したのは1議席だけで、1勝6敗に終わった。◆2人区以上の複数区では最後の議席を競り負けた選挙区が目立った。

こうした原因はどこにあるのだろうか。筆者は都内に住んでおり、小さな個人的体験で恐縮だが、今回は自民党候補のビラの配布が少なかった。一方、選挙戦終盤には小泉農水相のオートコールが固定電話にかかってきたのに驚いた。地道な選挙活動ではなく昔流の電話作戦、ネット時代には”竹槍戦法”を思い起こさせた。

選挙全体を評価するデータとしては、朝日新聞や読売新聞の出口調査が参考になる。◆自民支持層のうち、自民党候補に投票した割合は5割程度に止まっている(朝日53%、読売54%)。自民支持層の7割程度確保するのが普通なので、今回は大幅に低下した。また、都民ファーストに2割近くも支持が流れていた。

◆最も多い無党派層の投票先では、都民ファーストへの24%が最も多く、次いで自民11%、立民10%、共産9%となっている(読売データ)。無党派層の獲得率で自民党は、無党派層に大差をつけられた。

◆一方、投票の際、自民党の裏金問題を考慮したかとの問いに「考慮した」が62%、「考慮しない」36%を上回った(朝日データ)。

◆選挙の争点として重視したテーマとしては、「物価高や賃上げ対策」を挙げた人が最も多かった。石破首相は告示日の13日、参院選の公約に国民1人あたり「2万円給付」を盛り込むと発表したが、選挙結果から判断すると”都議選での追い風”にはならなかった。

このように今回の選挙の敗因としては、自民党の派閥に続いて都議会自民党でも裏金問題が起きていたことに対する強い不信感、それにコメをはじめとする物価高対策についても政権与党が明確な方針を示すことができないことへの不満、批判が大きく影響したのではないかとみている。

一方、政界関係者の中には今回、公明党が自民党の候補を推薦しなかったことから「自公の選挙協力が機能しなかったことが影響したのではないか」との見方も聞いた。重要な指摘だが、関係者の取材ができていないので、今後、取材のうえ明らかになった点があれば、報告したい。

 立民は議席増、国民民主は躍進

野党側についてみておくと、立憲民主党は前回15議席から17議席へと伸ばした。これは、野党第1党として自民党批判の受け皿になったことを示している。また、1人区から3人区で共産党などとの候補者調整が実現した効果があったものとみられる。

国民民主党は、9議席を獲得した。党の幹部は、単独で条例を提出できる11議席以上をめざしていた。他の党幹部からも「台風の目になるのではないか」とみられていたが、参議院選挙の比例代表の候補者擁立をめぐって混乱が起きた。

NHK世論調査では3月の政党支持率は8.4%だったが、6月は5.4%まで下落した。但し、国民民主党は都議選では議席を持っていなかったが、一気に9議席獲得したのは躍進したといっていいのではないか。次の参院選が正念場だ。

共産党は都議会自民党の裏金問題を追及したが、選挙結果は4議席減らした。日本維新の会は議席を失った。一方、公明党は過去8回連続で全員当選を果たしてきたが、36年ぶりに議席を減らした。

参政党は都議選で初めて3議席を獲得した。NHKの世論調査でもこの党への支持率が1月は0.3%だったのが、6月は1.9%に上昇した。保守層の支持を得ており、既成政党批判の受け皿になっている。れいわ新選組と、石丸伸二氏が立ち上げた「再生の道」は議席を獲得できなかった。新興勢力の間でも明暗が分かれた。

 参院選、与党過半数が最大の焦点

都議選と参議院選挙が重なる2025年は、夏の参議院選挙で大きなヤマ場を迎える。7月3日公示、20日投開票日の日程が近く閣議決定される運びだ。去年の衆院選で与党が過半数割れしたが、今度の参議院選挙では与党が過半数を維持できるのか、それとも野党が過半数割れに追い込むのかが、最大の焦点だ。

東京都議選の結果は、これまで直後の国政選挙に大きな影響を及ぼし、次の選挙の「先行指標」になることが多かった。今回の都議選の結果は自民・公明の与党に厳しい結果になっただけに次の参議院選挙はどうなるか、石破政権の命運を左右する見通しだ。

その石破首相は通常国会が閉会したのを受けて23日夜、記者会見した。この中で石破首相は、参院選挙の勝敗ラインについて質問されたのに対し「非改選を合わせて参議院全体の過半数の確保に全力を尽くす」との考えを強調した。

与野党の勝敗面では、全国で32ある定数1の1人区がどうなるかが、カギを握っている。野党側は立憲民主党が、維新や国民民主、共産の各党と候補者調整を進めているが、競合する選挙区も多い。公示までに候補者調整が進むのかどうかが大きなポイントになる。

物価高などの政治課題に加えて、中東情勢の緊迫化も加わる中で、参議院選挙の争点設定はどうなるか。そして、有権者がどのような判断を示すか参院決戦はまもなく本番を迎える。(了)

 

“”都議選、自民大敗“ 敗因をどう読むか” への1件の返信

  1. 今月22日に実施された都議会選挙の結果を受けて、それをどのように評価すれば良いか、世論調査結果や投票結果を分析の上、分か
    り易く解説されており、大変良く理解できました。
    なかんずく今回の「自民党の惨敗」について詳しく説明がされてお
    り納得しかりです。
    国政だけでなく、自民党そのものの体質ともいえるにダーテイな金
    にまみれた党に「ノー」をつきつけられたことは都民の選択をよし
    とするところです。
    また、国政選挙の参議院選挙を目前に控え、その他の党についても
    詳しく説明・分析がされており、投票行動の大いなる参考になります。
    国民民主の大量議席獲得に、納得のいかない感じをいだいていますが、自分だけでしょうか?

    文章について
    ①「立民は議席増、国民民主は躍進」の項
     11行目
     一気に8議席増やしたのは
     →一気に9議席獲得したのは
      (原文では、選挙前に1議席もっていたようにとれます)
    ②同じ項
     下から7行目
     一方、公明党は8回連続で全員当選
     →一方、公明党はこれまで8回連続で全員当選 もしくは
     →一方、公明党は過去8回連続で全員当選
    (8回連続の前に これまで もしくは 過去 を入れたほうが)
    ③同じ項下から5~4行目
     NHKの世論調査でも1月は0.3%だったのが、6月は
     1.9%
     →NHKの世論調査でのこの党への支持率が、
     (数字が 支持率 であることを明記した方が良いと思います)
    ④最後から7行目
     全国で32ある定数1の1人区がどうなるか、
     →全国で32ある定数1の1人区がどうなるかが、
      ( が 必要では)
     6月24日  妹尾 博史

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