自民臨時総裁選”実施要求に勢い”8日決着へ

自民党は参院選挙の大敗を受けて、臨時の総裁選挙を行うかどうかの党内手続きを進めているが、どのような結果になるだろうか?

「臨時の総裁選を実施すべきだ」という実施派と、参院選の敗因は石破首相個人の責任ではなく、党全体の問題だとして「実施する必要はない」とする首相支持派とが激しくぶつかっている。

これまでのところ、実施派の方に勢いがみられる。現状の分析と、どのような形で決着がつくことになるのか、探ってみた。

臨時総裁選の是非、8日意思確認・公表

自民党は2日に開いた両院議員総会で、参院選大敗を総括した報告書を了承した。これを受けて、臨時の総裁選挙を行うかどうか、その是非を問う党内手続きに入った。

党所属の国会議員295人と47都道府県連の総数の半数、172人が賛成すれば、臨時の総裁選挙を実施することなる。その国会議員の意思確認として、実施を求める議員は、8日午前10時から午後3時までに党本部に書面を持参するのを原則としている。

また、47都道府県連についても賛否を報告し、結果がこの日に公表されることになっている。臨時の総裁選の実施は初めてとなるため、実施を求める議員と、反対する議員との間で激しい駆け引きが続いている。

NHKの取材によると1日までに295人の議員のうち、およそ100人が「総裁選を実施すべきだ」としているのに対し、50人余りが「実施の必要はない」としている。「態度を決めていない」とする議員や「考えを明らかにしない」議員が140人となった。

つまり、「態度を明らかにしない議員」が全体の47%を占めていることもあって、最終的にどのような結果になるのか、情勢は混沌としているのが現状だ。

賛否めぐり攻防激化、実施派に勢いか

そこで、自民党の長老に今の情勢を尋ねてみると「賛否の主張や動きから判断すると、実施を求めている議員の側の方が熱量や運動量の面で上回っている。今後もそうした傾向が続くのではないか」として、最終的には実施派が過半数に達するとの見方を示している。

自民党内の動きを整理してみると、実施を求める議員として政府の副大臣や政務官が相次いで、実施を求めていくことを表明している。副大臣、政務官47人のうち、3日までに22人に上っているので、かなりの割合だ。

党の関係者にきくと「旧派閥の関係で働きかけているのはあまりみられない」という。「目につくのは、当選5回以下の中堅や若手議員で、当選同期の集まりや、党の部会のつながりで意見を交わすケースが多い」とされる。

中堅・若手議員の中には、態度を明らかにしていない議員が多いのも事実だ。これは仮に臨時総裁選が行われない場合、人事や選挙の公認などで冷遇されるおそれがあることが影響しているのではないかとみられる。

また、報道各社の世論調査で、石破内閣の支持率が上昇していることや、「石破首相の辞任の必要はない」とする人が、「辞任を求める」人を上回っていることも影響しているのではないかという。

一方、石破首相の続投を支持する議員としては、ベテラン議員が目立つ。石破首相を支持する理由としては「選挙の敗因は、派閥の裏金問題など党の問題の方が大きい」「世論の多くは、首相の辞任を求めていない」などを挙げる。

また、石破首相を支持する議員からは、総裁選を行うよりも衆院解散・総選挙を行うべきだとして、総裁選実施をけん制する意見も出されている。但し、衆参ともに大敗した総理・総裁が今、解散を断行するだけ力量や大義名分はあるか、否定的な見方が多いのではないか。

このように情勢は混沌としているのだが、自民党関係者に聞くと「今回の参院選総括の報告書では、石破首相(総裁)や執行部の責任問題が正面から捉えられていないことに反発する声が非常に強い」とされる。

また、「中堅・若手議員の多くは、次の衆院選挙は、連戦連敗の石破首相ではなく、新たなリーダーの下で戦いたいと考える議員が多いのではないか」と考えられる。

このように考えると長老が指摘するように、臨時総裁選の実施を求める議員や都道府県連代表が今後も増えて、過半数を上回る可能性が大きいとの見方をしている。

総裁選のケース、石破首相の辞意表明も

それでは、臨時総裁選と石破首相の進退問題は、どのような展開になるのだろうか。

▲まず、8日に行われる意思確認の結果、総裁選の実施を求める意見が総数の過半数に達しないケースがある。この場合は、当然、臨時総裁選は行われない。石破首相が続投することになる。これが、第1のケースだ。

▲第2のケースは、実施を求める議員が総数の過半数に達した場合で、総裁選が行われる。この場合、簡易型の総裁選、つまり両院議員総会で、都道府県連代表を加えて行う方式。もう一つは、フルスペック型の総裁選。党員・党友の投票と、国会議員の投票を行う方式があり、党で検討することになる。おそらく、今回は後者になるのではないか。

▲第3のケースは、8日の意思確認手続きを行わずに、その前に石破首相が辞意を表明することも想定される。石破首相は2日の両院議員総会で「しかるべき時に決断する」と語ったが、具体的な内容には触れなかった。

仮定の話だが、臨時総裁選実施の可能性が極めて高くなった場合、事実上、現総裁に対する不信任に値する。その場合、党の意思決定を行う前に、石破首相自らが退陣を表明することもありうるのではないか。

以上のように3つのケースが想定されるが、いずれにしても8日に決着がつく見通しだ。但し、長期にわたって政権を維持してきた自民党は、結党以来初めて衆参両院で過半数割れした。国民の信頼を取り戻せるのか、そのためのリーダーは存在するのかどうか、極めて厳しい前途が予想される。

★追伸(5日23時)▲石破首相は5日、トランプ米大統領が日米関税合意に基づいて大統領令に署名したことを受けて、改めて退陣を否定した。記者団が、日米交渉の終結で自身の進退に関する考えに変化はあるかと質問したのに対し、「関税対策は、(自らの)進退に関係なく、政府としてどうしてもやり遂げなければならないことだった」と答えた。また、石破首相は、今年秋に経済対策を策定する考えを示し、続投に強い意欲を示した。▲一方、鈴木法務相は5日午前、臨時の総裁選挙の実施を求める考えを表明した。石破内閣の閣僚が実施を求めるのは、鈴木法相が初めてで、石破首相にとって痛手となる。

★追伸(6日21時)▲全国の都道府県連のうち、6日までに臨時総裁選の実施を求める方針を決めたのは、北海道、青森、埼玉、東京、静岡、滋賀、奈良、愛媛、宮崎など17都道県連。実施を求める方向で意見集約を進めているのは、山形、新潟の2県連。これに対し、実施を求めない方針を決めたのは、福島、福井、岐阜、鳥取、岡山、大分、鹿児島、沖縄の8県連。(了)

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“自民臨時総裁選”実施要求に勢い”8日決着へ” への1件の返信

  1. 自民党の臨時総裁選が実施されるのか否かの情勢分析および考えられるケースについて各方面からのアプローチにより、詳しく且つ分
    かり易く解説されており、大変良く理解できました。
    2日の両議院総会で発表された報告書で、大仰に自民党の解体的出
    直しなどというもののその中身に「具体的な改善施策」はなく、結
    果、臨時総裁選の実施の可否についてただただ党内抗争に突っ走る
    ことになっただけで、政局の混迷度が増しただけのようにしか思え
    ません!
    既に国民の支持が自民党から離れてしまっている事態に、このような党内抗争を続けることはどっちにころんでも、支持の回復にはならないことが理解されないのでしょうか?
    臨時総裁選の実施される可能性の方が強いとの見通しですが、後任の総裁に誰がなっても政局の安定ましてや政策を前に進めることはできないのではないかと強く強く懸念いたします。
    自民党内はもちろん、我が国の責任ある政治家で「混乱しか招かないこの茶番劇」を止める人材がいないことが我が国の一番の不幸であるとしか思えません!
    今回は文章について気づいた点はありません。
     9月5日 妹尾 博史

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