石破首相 辞任表明”党内窮状打開できず”

参院選での大敗を受けて自民党は、臨時の総裁選挙を行うかどうかの意思確認を8日に行うことにしていたが、石破首相は7日夕方、緊急の記者会見を開き「アメリカの関税措置を巡る対応に区切りがついた」として、首相を辞任する考えを表明した。

これによって、8日に予定していた臨時総裁選挙をめぐる国会議員や都道府県連の意思確認は行われないことになり、代わって石破首相の後任を選ぶ総裁選挙を行うことになった。

続投に強い意欲を示していた石破首相がなぜ、辞任を決断することになったのか。また、今回の事態をどのように評価するか考えてみたい。

”石破降ろし”打開できず、退陣決断へ

石破首相は7日午後6時から開いた記者会見で「自民党総裁の職を辞することとした。新総裁を選ぶ手続きを行うよう森山幹事長に伝えた」と切り出し、総理大臣を辞任する考えを明らかにした。

その理由として石破首相は「アメリカの関税措置に関する交渉に一つの区切りがついたこと」とまた、「このまま臨時の総裁選挙要求の意思確認に進んでは、党内に決定的な分断を生みかねないと考え、苦渋の決断をした」と説明した。

石破首相が辞任を決断した背景としては、こうした理由があるのも事実だろう。一方、自民党内では臨時総裁選の意思確認の状況次第で、石破首相が自ら辞任を選択するのではないかとの見方が一部にあったのも事実だ。

その国会議員や都道府県連の意思確認だが、7日の時点で自民党の国会議員のうち、臨時総裁選挙を実施すべきだとする議員は130人と全体の5割近くに達した。

全国47都道府県連では、6日までに18の都道府県連が実施を求める方針を決め、2つの県連が実施を求める方向で意見集約を進めていた。

国会議員と都道府県連代表を合わせると150人に達し、臨時総裁選実施に必要な172人に達することが確実な情勢になりつつあった。

こうした中で、党副総裁の菅元首相と小泉農水相が6日夜、首相公邸を訪れて会談した。会談の詳細は明らかではないが、菅元首相らは「党の結束が何よりも重要だ」として、意思確認の書面提出が行われる前に、石破首相が辞任するよう促したとされる。

このように石破首相が続投の方針を転換し、辞任を決断した背景には臨時総裁選が実施される可能性が大きくなったことが影響している。臨時総裁選が実施された場合、仮に石破首相が立候補しても勝算は乏しいことから、自ら身を引く決断をしたというのが実態に近いとみている。

いつまで続ける党内抗争、国民の苛立ち

それでは、これからの政治はどのように展開することになるのだろうか。冒頭に触れたように8日に予定していた国会議員と都道府県連の意思確認の手続きは中止される。

これに代わって、石破首相の後任を選ぶ総裁選挙が行われる。自民党の総裁選びには2つの方式があり、1つは「簡易型」で、国会議員と47都道府県連の各代表3人ずつが投票する方式だ。

もう1つが「フルスペック型」と呼ばれる方式で、全国105万人余りの党員・党友と、国会議員が投票する。党員が参加するため、選挙期間は12日間以上かかる。

森山幹事長は7日夜の記者会見で、石破首相の後任を選ぶ総裁選について「できるだけ党員が直接参加する形を模索することが大事だ」とのべた。自民党は早急に総裁選の方式と日程を決めたいとしているが、「フルスペック型」の場合、新しい総裁が決まるのは10月上旬頃までかかることが予想される。

こうした石破政権と自民党の対応をどのようにみるか。7月に参院選挙の結果が出てから8日で、50日・1か月半もかかっている。国民の多くは「続投か、退陣か、いつまで党内抗争を続けているのか」と苛立ちを感じているのではないか。

石破首相と自民党は、政治空白が長期化していることについて猛省する必要がある。そして、新総裁が選ばれたとしても自民党は少数与党に転じたため、新総裁が新しい首相に選出されるかどうかはわからない。

さらに、仮に自民党の新総裁が首相に選ばれたとしても補正予算案や法案は、野党の協力が得られなければ1本も成立しない。政権の枠組みの拡大や、国会運営でも野党側の協力が不可欠で、これからの政治は混迷状態が長期化することも予想される。

報道各社の世論調査をみると国民のかなりの部分は、自民党は今後も政権担当能力を維持できるのかと疑問を感じ始めているようにみえる。旧派閥の裏金問題など「政治とカネの問題」に真正面から取り組まない。物価高や日本経済再生の青写真なども一向に示されないことに失望感を抱き始めているようにみえる。

石破首相の後継総裁選びに当たって自民党は、骨太の将来像や実現に向けての具体策を打ち出せるのだろうか。また、これからの難局を乗り切っていけるようなリーダー候補は残っているのかどうか、国民は厳しい視線を自民党に注いでいる。自民党は岐路にさしかかっているのではないか。(了)

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“石破首相 辞任表明”党内窮状打開できず”” への1件の返信

  1. 石破首相の退陣表明を受けて、退陣を決意した背景そして今後の対
    応の見通し等について、時を置くことなく分かり易く解説されてお
    り、大変良く理解できました。
    参議院選挙惨敗からその総括をするにあたって1か月半をも要し、
    その内容たるや中身のないもので、国民目線では「自民党内勢力抗
    争」としか思えない「茶番劇」の第一章がやっと終わったといった
    評価でしかありません!
    これから「総裁選」という茶番劇の第2章が始まるわけですが、その中身はどのように総裁という権力を手にするかという「やから」の醜い戦いであって今後の政治をどの方向に運営するのか明確な指針と決意を持った人材が果たしているのかどうかはなはだ疑問のあるところです。
    国民はすでに自民党の政権を望んでいないし、かといってそれにかわる強靭な政策を提示・実行できる野党の存在もあると思えません。
    今後も単なる政権抗争に明け暮れする我が国の政治に国民は泣かされ続くのでしょうか?

    文章について
    「”石破降ろし”打開できず、退陣決断へ」の項
     5行目
     区切りがついた」こと。また、
     →区切りがついたこと」とまた、
     (「」の位置がこちらの方がよいのでは)

      9月8日  妹尾 博史

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