高市首相のギフト配付問題と政治姿勢

高市首相が先の衆議院選挙の後、当選した全ての自民党の衆議院議員にカタログギフトを配っていたことが明らかになった。この問題はさっそく、25日の参議院の代表質問でも取り上げられ、高市首相は事実関係を認めたうえで「法令上、問題はない」との認識を示した。

衆院選挙で当選した自民党所属議員は300人を上回る。その全員にカタログギフトを配るとなると多額の政治資金が必要で、現職の総理・総裁がそうした行動をとったことに驚きを禁じ得ない。

この問題は政治リーダーの「政治倫理」の基本認識と関係するほか、衆院選で圧勝した高市首相のこれからの政治姿勢を占うでも注目してみていく必要がある。

 1人約3万円、議員315人に配付

この問題は週刊文春の電子版が24日、「高市首相の事務所が当選祝いとしてカタログギフトを配り、自民党の衆院議員が受領を認めた」と報じたのをきっかけに表面化した。

24日夜には、高市首相が自らのXに投稿し「衆院選後、自民党衆議院議員の全員宛てに、今回のたいへん厳しい選挙を経て当選したことへのねぎらいの気持ち込め、品物を寄付させていただいた」と事実関係を認めた。

これを受けて25日の参議院の代表質問で、立憲民主党の田名部幹事長が配付の目的や原資について質した。

高市首相は「品物は本体価格と送料などで1人およそ3万円、合計315人になる。私が支部長を務める奈良県第2選挙区支部の政治資金からの支出だ。政党支部から議員個人への寄付として、法令上も問題ないと認識している」と釈明した。

首相官邸の関係者は「社会通念上、認められる行為だ。法令上も問題はない」と高市首相を擁護する。

政治資金規正法では、個人が公職の候補者の政治活動に関して寄付を行うことを禁止している。一方、支部を含む政党から公職の候補者への物品による寄付は認められている。

このように法令上は違反ではない。但し、自民党議員全員に配った経費の総額は945万円に上る。「政党交付金からの支出ではない」とされるが、1千万円近い多額の政治資金の支出であり、こうした行動をどのようにみるかという問題は残る。

政治とカネ、問われる首相の政治倫理

総理・総裁が当選祝いとして金品を配ったケースとしては去年3月、当時の石破首相が自民党衆院議員の当選1回生15人に、1人10万円の商品券を配り、批判を浴びた。石破首相は陳謝し、商品券は返却された。

今回は配った品物はカタログギフトで金額も異なるが、配った人数が300人を上回るのだから驚く。私も長い間、政治取材を続けているが、総理・総裁が党所属議員全員に当選祝いの品物を配ったというのは記憶にない。前代未聞と言えるのではないか。

日本の政界は1970年代のロッキード事件、80年代のリクルート事件などを教訓に「カネのかからない選挙と政治」をめざしてきた。こうした「カネのかからない政治」の考え方からすれば、自民党は未だに古い政治を続けているのかとあきれる国民も多いのではないか。

今回の高市首相のギフト配付は、前任の石破首相の失敗を繰り返し、国民の政治不信を強めているように見える。また、カネのかからない政治の実現、「政治倫理」の観点からも首相の対応は大きな問題を抱えていると考える。

 衆院選圧勝の緩み・慢心はないか

今回の問題をめぐって気になるのは、自民党は衆院選で316議席という結党以来最多の議席を獲得したが、こうした圧勝に伴う気の緩みはないかという点だ。

野党の幹部の1人は「高市首相には選挙に大勝したことによる慢心があるのではないか」と懸念を示す。

今回の問題が深刻なのは、国会前半戦の最大の難所となる衆議院予算委員会が始まってもいない段階で、世論の不信を買う恐れがある行動が起きたという点だ。

歴代政権の多くは予算成立までは、閣僚の失言や議員の不祥事などが起きないよう細心の注意を払いながら政権運営を続けるのが常だった。そうした取り組みと比べると、今回の高市首相の対応は余りにも緊張感に欠けており、選挙大勝の緩みが現れたと厳しく指摘されても否定できないのではないか。

野党側は衆院選挙で大敗したこともあって、政権を追及するような動きにはなっていないようにみえる。問題は、世論がどのように受け止めるかだ。高市内閣の支持率は選挙後も高い水準を維持してきたが、政治とカネの問題には厳しい。今回の問題で支持率に陰りが出るか、影響は出ないのか注目点の1つだ。

 首相 強気の政権運営に踏み出すか

18日に召集された特別国会は、高市首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が26日に終わり、27日からは衆院予算委員会に舞台を移して新年度予算案の審議が始まる。衆院解散・総選挙の影響で、例年に比べて1か月遅れの審議入りになる。

新年度予算案の審議について、代表質問に立った中道改革連合の小川代表は「必要な審議日程は削るべきでない」として、暫定予算案の編成を求めるともに提出されれば、野党としても協力する考えを表明した。

これに対して高市首相は、暫定予算案には一切触れずに「国民生活に支障が生じないよう年度内成立をめざしたい」と野党側に年度内成立への協力を呼びかけた。

これより先、高市首相は自民党の衆参幹部を首相官邸に呼び、予算案の年度内成立を指示した。衆院選圧勝で高市首相の力が強まったとされ、自民党執行部としても審議日程の大幅な短縮を検討しているとされる。

高市首相は「責任ある積極財政」を掲げ、食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにすることや超党派の国民会議の設置、さらにはインテリジェンス機能強化のため、「国家情報局」を創設する法案の成立などにも強い意欲を示している。

高市首相は「さまざまな声に謙虚に、真摯に耳を傾ける」としながらも、「熟議の後に決めるべき時は決めなければならない。それが民主主義のルールだ」と強気の姿勢をのぞかせている。

巨大与党が復活した中で、新年度予算案の審議はどのような形で進められるのか、少数に転じた野党の力量も問われる。また、カタログギフトの配付など政治とカネの問題をめぐっても、高市政権と与党の政治姿勢が問題になることも予想される。

特別国会は当面、27日から始まる衆院予算委員会で、高市首相と野党側の論戦がどのような展開になるか注目したい。(了)

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“高市1強体制”と特別国会が問われる点

衆議院選挙を受けた特別国会が18日に召集され、首相指名選挙で高市自民党総裁が第105代の首相に選出された。これを受けて高市首相は、政権発足から間もないことから全ての閣僚を再任し、18日夜に第2次高市内閣を発足させた。

特別国会初日の衆院本会議場は、議長席に向って左側から真ん中を経て右側の4分の3まで、自民党と連立を組む日本維新の会の与党席が大幅に張り出した。高市首相の選出が決まると与党席から大きな拍手があがり、衆議院選挙の自民圧勝と巨大与党の誕生を印象づけた。

特別国会の会期は7月17日までの150日間で、長丁場の国会が続く。衆院では自民党が単独で316議席という戦後最多の議席を確保し、この勝利は高市首相人気が大きかったことから、与野党の力関係だけでなく、自民党内でも首相の存在感が強まり、”高市1強体制の始まり”との見方が広がっている。

一方、国民からすると高市首相の強い指導力に期待する声がある一方で、政権が暴走したりする場合を危惧する見方もある。そこで、この”高市1強体制”と特別国会はどのような対応が問われているのかを探ってみたい。

高市政権、政策の全体像の提示が必要

さっそく特別国会の日程からみておくと、20日に高市首相の施政方針演説と政府4演説が行われた後、24日から3日間衆参両院で代表質問が行われ、27日から衆院予算委員会に舞台を移して、新年度予算案が審議入りする。

国民からすると最も知りたいのは巨大与党が誕生して、高市政権はどのような政治をめざそうとしているのかということだろう。

選挙戦で高市首相は「日本列島を強く豊かにする」「責任ある積極財政」「政策の大転換を図る」ことなどを訴えた。だが、選挙スローガンの域を出ず、与野党の政策論争もほとんどなかったことから、国民としては高市政権の主要政策と言われても判断材料が極めて乏しいのが実状だ。

特に経済政策については「責任ある積極財政」や「危機管理投資と戦略投資17分野」などが繰り返されるが、こうした政策によって日本経済がどの程度成長し、どのような経済社会をめざすのかといった説明はほとんどなされていない。

高市首相が政治の師と仰ぐ安倍元首相は、賛否は別にしてアベノミクスを掲げ、大胆な財政出動などの3つの矢と、物価安定目標を2%、2%以上の経済成長を2年程度で実現すると政権の目標などを明確に提示した。

高市政権も、こうした政権の目標や実現するための政策の組み合わせ、時期・道筋などを明確に打ち出すことが必要だと考える。

消費税減税、財源・時期の明示は?

次ぎに国民が知りたいのは、高市首相が選挙直前に打ち出した「2年間に限り飲食料品に対する消費税率をゼロ」にする方針はどうなるのかという点だ。

衆院選を終えた9日の記者会見で、高市首相は公約通りに超党派でつくる「国民会議」で検討を加速し、「夏前には中間とりまとめを行いたい」と表明した。そのうえで、次の国会以降に税制改正法案の提出を急ぐ方針だとみられている。

問題は、年5兆円規模の財源をどのように確保するのかという点と、実施時期、それに2年後には必ず税率を引き上げることはできるのかといった点だ。

高市首相は、財源については「赤字国債に頼らない」と強調しているが、市場は「高市政権の財政拡大策では、財政が悪化するのではないか」と警戒しているほか、社会保障制度への影響を懸念する見方もある。

一方、この飲食料品の消費税率ゼロを先送りした場合、世論の強い反発が予想される。それだけに高市政権としては、規定方針通り進めるものとみられるが、いずれにしても具体的に安定財源を示し、市場や国民の理解を得られるかどうかにかかっている。

国論二分の政策、 政権と世論にズレも

3つ目の問題として、高市首相が「国論を二分するような政策についても信任を得たい」とのべていたことから、この「国論を二分するような政策」とは何か、また、その優先順位などが議論になる見通しだ。

高市首相は「責任ある積極財政」の一環として、恒常的な補正予算編成からの決別、防衛力の抜本強化、インテリジェンス機能の強化として「国家情報局」の創設、外国から日本への投資の審査体制を強化する「対日外国投資委員会の設置法案」を今の国会に提出したいとの考えを示している。

また、政府・与党内では、スパイ防止法案をはじめ、国旗損壊罪の制定、皇室典範の改正、旧姓の通称使用の法制化、憲法改正に向けた議論の加速など保守色の強い政策が検討されている。

一方、こうした課題については、国民の理解がどこまで進んでいるかという問題がある。NHKが先の衆院選で投票した人を対象にした「出口調査」で、投票する際に最も重視した政策を尋ねている。

最も多かったのは◇「物価高対策・経済政策」で49%、次いで◇「年金・社会保障政策」16%、◇「子ども政策・少子化対策」10%、◇「外交・安全保障政策」8%などとなっている。

一方、「外国人に関する政策」は6%、◇「憲法改正」は3%、◇「原発などエネルギー政策」は1%などとなっている。

このように例えば「憲法改正」については、高市首相は強い意欲を示しているが、国民の優先順位は極めて低い。

高市首相は「選挙公約については国民の信任をいただいた」との認識を示していることから、保守的な政策を強力に推し進めるものとみられる。だが、進め方によっては、政権と国民の考え方に乖離,大きなズレが浮上してくることも予想される。

少数野党、 チェック機能を果たせるか

先の衆院選で大幅に勢力を減らした野党各党は、巨大与党にどのように向き合うかが問われている。

衆議院で野党第1党の中道改革連合は、選挙前の172議席から3分の1以下の49議席まで激減した。野党の最大の武器になってきた内閣不信任決議案の提出には51人が必要なので、単独では提出できない。衆院の野党第1党は、戦後最も小さな野党になった。

このほかの野党の勢力は、国民民主党28人、参政党15人、チームみらい11人、共産党4人、れいわ新選組1人、減税・ゆうこく1人にまで落ち込んでいる。衆院では、小規模な7つの党派に分散する厳しい状況に立たされている。

このように少数野党だが、論戦でどこまで政権に迫ることができるか試されている。政権に対するチェック機能を果たし、世論の支持と理解を広げていけるかどうかが問われているともいえる。

一方、参議院では与党は過半数を割り込んでいることから、野党としては衆参が連携し、国民の声を代弁しながら国会論戦を展開できるかどうかがカギを握る。

高市首相 消費税減税で法案提出めざす

第2次高市内閣の発足を受けて、高市首相は18日夜、記者会見した。この中で高市首相は、野党に協力を求めて新年度予算案の早期成立に取り組むとともに、食料品の消費税率を2年間ゼロにする自民党の公約実現に向けて「国民会議」で夏前に中間とりまとめを行い、税制関連法案の提出をめざす考えを表明した。

また、安全保障関連3文書の改定と、国家情報局を設置するための法案を今の国会に提出する方針を示した。そして、憲法改正や皇室典範の改正、議員定数の削減に挑戦し、「決断と前進、挑戦の内閣」として取り組んでいくと強調した。

巨大与党の勢力を背景に高市首相が、強い経済と防衛力の抜本強化、さらに保守色の強い政策の推進まで踏み込んでいけるかどうかは、この特別国会での与野党の論戦と、国民の幅広い支持が得られるかどうかにかかっている。

それだけにこれから始まる論戦に、多くの国民が関心を持ち、政権の姿勢やねらいをどのように評価するか、大きな注目点だ。(了)

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中道 新代表に小川氏 ”政権チェック機能がカギ”

衆院選挙で大敗した中道改革連合は13日代表選挙を行い、立憲民主党出身の小川淳也氏が同じ立憲民主党出身の階猛氏を抑えて、新たな代表に選出された。

新代表就任の記者会見で小川氏は「大事なことは、国民生活の安定と将来への見通しを提供することだ。野党第1党としてこうした取り組みを通じて、国民の信頼と期待を高めていきたい」とのべ、党の再建と野党第1党としての役割に全力を上げる考えを表明した。

また、小川代表は党役員人事について「週明けぐらいから本格的に始動できるよう週末によく考えたい、女性や若手の登用、党内融和も含めトータルで有効に機能する体制でなければならない」とのべ、週明けに新体制を発足させる考えだ。

立憲民主党と公明党の衆議院議員が結成した中道改革連合は、選挙前の勢力172人から3分の1以下の49人まで激減した。新代表に選出されたものの、取り組むべき課題・難題は多く、茨の道が待ち受けている。

小川氏は自治省(現総務省)出身の54歳。当選8回で、代表選に立候補した経験があるほか、野田代表の下で幹事長を務めるなど民主党第3世代のリーダーの1人だ。党の重鎮・主要幹部が軒並み落選した中で、高市首相率いる巨大与党にどのように立ち向かおうとしているのか、探ってみた。

党内融和や参院・地方組織の合流は

衆院選挙で大敗した中道改革連合が直面している問題の1つが、党内融和の問題だ。党の勢力が49人に激減しただけでなく、その内訳が激変していることだ。公明党出身者は比例代表に回り、候補者名簿の上位に掲載されたことから28人全員が当選した。

これに対し立憲民主党出身で、小選挙区で議席を失った前議員は比例復活の道が狭まり、当選者は21人に止まった。立民関係者の間では「公明党に譲りすぎだ」などと不満が強く、不協和音が目立つ。

また、中道の前執行部は党のあり方について衆院議員に続いて参院議員と地方組織も合流する方針で一致していたが、参院側や地方組織には慎重な意見が根強くある。

参院側は既に来週18日に召集される特別国会では、立憲民主党と公明党はそれぞれ別の会派のままで臨むことで合意した。地方組織も長年、自民党と連立を組んでいた公明と、立民並びに前身の民主党とは対立関係にあったことから、合流には戸惑いや慎重論が強いとされる。

小川代表は記者会見で、比例代表の候補者順位については「全ての人が対等、平等の扱いになるよう党運営で考えていく」と表明した。

また、参院議員や地方組織の合流については「新党結成は私自身も驚天動地の思いだった。地方議員、参議院議員、それに有権者も戸惑ったと思う。一方、新党を決断した方々の意図や将来展望もあったと思うので、経緯なども確認して判断したい」とのべ、丁寧で慎重に結論を出したいとの考えを示した。

党の合流や再建をめぐっては、党の新体制を発足させた後、国会などでの活動も見ながら慎重に判断するものとみられ、党再建への道筋は描き切れていないようにみえる。おそらく特別国会を終えて、党内外の動きをみたうえで最終的に判断するものとみられる。

政権へのチェック機能は果たせるか

衆院選挙後の国会の新しい勢力は自民党が316人、維新36人の総勢352人という巨大与党が誕生したのに対し、野党は中道が49人、国民民主党28人、参政党15人、共産党4人などと続く。「巨大与党と多弱野党」の再来だ。

中道は野党第1党の地位を辛うじて保っているが、内閣不信任案を単独で提出できる51人を割り込んでいる。今の選挙制度になった1996年以降をみると、最も小さな野党第1党ということになる。

国民の側には、強力な政権に問題解決を期待する人たちがいる一方、政権が暴走した場合、ブレーキをかけることができるのか不安視する人たちも多いようにみえる。野党第1党には、政権のチェック機能を中心になって果たしてほしいと期待している国民が多いのではないか。

小川代表は中道の役割として、政権の監視機能が重要な役割であることを強調するとともに、将来のあるべき社会像を提起して、政権交代ができる政治をめざしていく考えを明らかにした。

こうした考えは国民の多くと一致するものだと考える。問題は、本当にチェック機能を果たせるのかどうかだ。

このため、週明けに決まる中道の新執行部がどのような顔ぶれになるのか、党内の立民系と公明系の融和が図れるのかどうかがポイントになる。

また、最も問われるのは18日から始まる特別国会で、論戦を通じて高市政権とどこまで対峙できるかだろう。世論調査では高市内閣を支持する人が高い割合を維持しているが、政権が新たに打ち出す政策を全面的に支持しているわけではない。

食料品の消費税率ゼロの公約は実行するのかどうか、円安や財政規律にどのように取り組むのか、防衛力の抜本的強化とその財源をどのように確保するのか、高市首相は選挙戦ではほとんど説明をしなかった。

また、選挙後の記者会見で高市首相は、インテリジェンス機能の強化として国家情報局の創設や憲法改正に意欲を示したが、具体的な内容については明らかにしていない。

このため、特別国会では高市政権がこうした内外の主要課題について、具体的な中身と時期を明らかにして議論を深める必要がある。野党側も対案を示して、真正面から論争に挑んでもらいたい。

こうした与野党の本格的な論争ができるかどうか、野党第1党の役割は大きい。一方、私たち国民も選挙が終わった後、自らの選択がどのような結果になったのか、与野党の対応に関心を持つと同時に監視していく必要があるのではないか。(了)

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“高市自民党 歴史的圧勝”の事情と今後

真冬の超短期決戦となった衆議院選挙は8日投開票が行われ、自民党が単独で、衆議院全体の3分の2を上回る316議席を獲得して圧勝した。これに対し、野党側は中道改革連合が、選挙前の172議席から3分の1以下の49議席へ激減、惨敗した。

自民党政権下では昭和61年・1986年、当時の中曽根首相が衆参ダブル選挙に持ち込んで衆院で300議席を獲得したのが、過去最多の議席数だった。今回はこれを上回ると同時に、1つの政党が単独で衆院の3分の2以上の議席を獲得するのは戦後初めてだ。

一方、野党第1党の立憲民主党と公明党が選挙直前に結党した中道改革連合もここまで激減するとは個人的には想定していなかった。自民党の歴史的な圧勝と、中道の惨敗はどのような事情・背景で起きたのか探ってみたい。

高市首相の戦略と争点設定が奏功

今回の衆院解散・総選挙は、前回衆院選から1年半も経っていないことや、異例の通常国会冒頭解散、新党結成が重なり、各党の選挙情勢は読みにくかった。前号のブログで取り上げたように自民単独で「絶対安定多数の261+α」の可能性との見方をしていたが、単独で300議席を上回るケースまでは想定していなかった。

なぜ、自民党は歴史的圧勝を収める事ができたのか、自民党の長老に聞いてみた。「賛否は別にして、高市首相が電撃的な解散を仕掛けたことと、誰が首相にふさわしいのかという争点づくりに成功したことが大きい。それに中道が、首相の土俵に乗って勝負したことも有利に働いた」と指摘する。

高市首相が、野党の不意を突いて解散に打って出るとともに「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、国民に決めてもらう」として、単純明快な争点設定を打ち出した。

これに対して中道側は、世論の多数が疑念を抱いていた解散の大義や時期などについて、政権の姿勢を徹底的に追及すれば主導権を握る可能性もあったとみていたが、そのまま選挙戦に突入し高市首相ペースの展開になった。

選挙戦に入ると、高市内閣の支持率は高い水準を保っていることから、高市首相は自らを選挙戦の前面に押し出して、自民候補の得票上積みにつなげ、短期決戦を逃げ切った。

その選挙戦で自民党は、ユーチューブやXなどのSNSを使って大量発信しており、SNS時代のメデイア戦略も自民圧勝効果を発揮したものとみられる。このように今回の解散・総選挙は高市首相が牽引する形の展開になったのが大きな特徴だ。

論戦面では、高市首相は「『責任ある積極財政』、危機管理投資で強い経済をつくる」と強調するともに「国論を二分するような大胆な政策を進めるためにも国民の信任が必要だ」と訴えた。但し、消費減税には選挙期間中は全く触れず、保守的な政策についても具体的な言及を避けた。

また、選挙期間中に予定されていたNHKの党首討論番組も持病の関節リウマチの悪化を理由に欠席したことから、党首レベルでほとんど議論らしい議論はなく、政策論争なき選挙戦になってしまった。選挙圧勝後の高市政権の政策をめぐり、果たして国民の理解と支持をどこまで得たと言えるのか疑問符がつく。

中道 新党効果みえず、野党乱立の影響も

今回の総選挙では、中道改革連合がどこまで新党効果を上げることができるかどうかも大きな焦点だった。だが、衆院解散直前の新党結成になったこともあって、新党がめざす政治理念や主要政策などを浸透させることができなかった。

他の野党からは、選挙目当ての新党といった批判を浴びたほか、立憲民主党の支持層からは、安全保障法制や原発政策などをめぐって党の独自性を失ってしまったなどとする意見も聞かれ、勢いに欠ける面もみられた。

NHKの出口調査で比例代表の投票先をみてみると今回、自民党は38%で最も多かったのに対し、中道は16%に止まった。前回・2024年衆院選では自民党は28%だったのに対し、立憲民主党は24%、公明党は8%だった。両党が連携して前回並みの支持を得ていれば自民党を上回るはずだったが、合流効果は見られなかった。

勝敗のカギを握る無党派層の投票先(比例代表)をみても前回衆院選では、自民党は17%、立憲民主党は27%で最も多く、公明党は5%だった。今回は、自民党は28%へ11ポイントも増やしたのに対し、中道は16%で、前回の立民・公明合計の半分に止まった。無党派層の獲得率でも新党効果を上げられなかった。

このほか、全国の選挙区をみると中道をはじめ、国民民主、参政、共産、れいわなど野党各党の候補が乱立したケースもかなりみられた。今の選挙制度の下で、与党の独走を許さないためには、野党の役割と連携のあり方も考えないと万年野党状態が続くことになる。

中道改革連合の野田・斉藤の両共同代表は9日、衆院選大敗の責任を取りたいとして、辞任することになった。後任の代表は18日までに選び、新たな体制で特別国会に臨む方針だが、立民系の幹部や重鎮が軒並み落選したことから再建の道は険しい。

政権基盤強化なるも難題多い高市首相

衆院選の歴史的圧勝を受けて高市首相は9日、記者会見し「国民から『政策転換を何としてもやり抜いていけ』と力強く背中を押していただいた」として、政権公約の実現に向けて、党が一丸となって取り組んでいく考えを表明した。

そして、政権公約に掲げた食料品を2年間に限って消費税の対象としないことについて「国民会議」でスケジュールや財源などの課題の検討を進め、少なくとも夏前には中間とりまとめを行いたいとの考えを示した。

また、記者団から「首相が『国論を二分するような政策』に果敢に取り組むとしている政策とは何か」と問われたのに対し、高市首相は「『責任ある積極財政』の経済・財政政策の大転換、安全保障政策の抜本的強化、インテリジェンス機能の強化に向けた国家情報局の設置に挑戦していく」とのべ、こうした3点を重点に取り組む考えを示した。

さらに「国の理想の姿を物語るのは憲法だ。憲法改正に向けた挑戦も進めていく」とのべ、憲法改正に改めて意欲を示した。このように第2次政権では、高市カラーの濃い政策が前面に出てくることが予想される。

このうち、食料品の軽減税率をめぐって、高市首相は選挙期間中は実施の時期や財源について言及しなかったほか、自民党内には財政悪化を招くとして慎重論も根強くある。

高市首相は2026年度中に実現したいと踏み込んだ発言もしたが、国民会議や党内を説得できるのかどうか。困難となれば公約違反だとして、世論の反発を招くおそれもある。

自民党内には、選挙の圧勝で高市首相の政権基盤と求心力は強まるとの見方がある一方、衆院だけでも300人に膨れあがった自民党のとりまとめは、派閥解散もあって容易ではないという見方もある。

来週18日には特別国会が開かれ、第2次高市内閣がスタートする。新年度予算案の審議をはじめ、来月に予定されているトランプ大統領との日米首脳会談、さらには自らの台湾有事発言をきっかけに悪化している日中関係など数多くの難題が待ち受けている。高市首相が党内を掌握し指導力を発揮できるのかどうか、選挙圧勝後の注目点の一つだ。(了)

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“自民優位な情勢、 与野党最終決戦へ” 2026衆院選

真冬の超短期決戦となった衆院選挙は投票日が8日に迫り、各党とも党首を先頭に重点区を絞り込んで、最後の働きかけに懸命だ。

各党の勝敗はどのようになるだろうか?報道各社の情勢調査の結果が相次いでおり、「自民、単独過半数うかがう」「自民・維新300議席超うかがう」などと自民党の優位な情勢が伝えられている。

こうした選挙情勢の報道は私たち有権者にとっても、投票に当たって重要な判断材料になる。最終盤に入った選挙情勢と、最後にカギを握るのはどういった点があるのか探ってみたい。

内閣支持率は高く、自民党支持率横ばい

選挙情勢を判断するうえで、内閣の支持率や各党の政党支持率がどのようになっているのか、前提条件として重要なポイントだ。NHKの世論調査(1月30日から2月1日実施)の結果が2日にまとまったので、このデータからみておきたい。

高市内閣の支持率は58%で、1週間前の調査から1ポイント下がった。不支持率は26%で、前の調査と変わらなかった。前回・2024年衆院選では、当時の石破内閣の支持率は44%から41%へと下がったが、高市内閣の支持率の水準は高く、選挙戦に入っても高い水準をほぼ横ばいのまま保っている。

一方、自民党の政党支持率は35.7%で、前回調査の35.9%とほぼ同じだった。自民党の支持率はこの10年余り、概ね30%台後半から40%前後の水準を維持してきたが、依然として低迷状態から脱しきれていない。

但し、前回の衆院選では裏金問題が響いて、自民党の支持率は35.1%から31.3%へと4ポイント近くも急落した。前回は自民党にとって最も厳しい状況にあったが、それに比べると今回は状況が改善していると言えそうだ。

野党各党の政党支持率は◇中道は10.3%で、前回調査の7.9%から増加した。2か月前の12月調査では立憲民主党6%、公明党は3.4%だったので、両党を合わせた水準にようやく達したが、無党派層から支持を集めるなどの勢いはみられない。

◇維新は3.7%となっているほか、◇国民民主は4.1%、◇参政は3.5%と参院選の時のような勢いはみられない。◇共産2.1%、◇れいわ1.1%、◇みらい1.1%、◇保守1.0、◇社民0.6%、◇減税・ゆう0.3%と続く。◇無党派は27.2%だった。

このように高市内閣は高支持率を保っているが、自民党の支持率は横ばい状態だ。対する中道をはじめとする野党各党とも、政権を脅かすような勢いはみられない。

中盤情勢 自民は優位、中道は不振

それでは、与野党の選挙情勢はどのようになっているのだろうか。報道各社の情勢調査をみると選挙が公示された直後の序盤の情勢については、読売新聞が1月29日朝刊で「自民、単独過半数うかがう」「中道伸び悩み」などと報じた。日経、共同、毎日も同じような内容だった。

朝日新聞は2月2日朝刊で「自民・維新300議席超うかがう」「中道ふるわず半減も」「国民民主横ばい、参政・みらい勢い」などと伝えた。

こうした情勢調査をどう読むかだが、新聞各社の情勢調査の方法で共通しているのは、携帯電話・固定電話とインターネット調査とを組み合わせた世論調査を実施するようになったことだ。但し、調査対象者の選び方や、電話とインターネット調査を比例代表や小選挙区の調査にどのように使うかなどには違いがある。

インターネット調査は、朝日新聞が先行する形で2021年の衆院選挙から本格的に導入し過去2回の衆院選では選挙結果が予測の範囲内に収まった。精度は高いとみられるので、ここでは朝日新聞の情勢調査を中心に情勢をみていきたい。なお、朝日新聞は小選挙区はネット調査、比例代表は固定電話と携帯電話電話で得たデータを使用しているとしている。

情勢調査の結果で、最も大きなポイントは、自民党の獲得議席数をどう読むかだ。朝日新聞は、①自民党は単独で過半数(233)を大きく上回る勢いで、日本維新の会と合わせて与党として300議席超をうかがうとしている。そして自民党の獲得議席の予測として、下限が278、中心値が292、上限が306としている。

②中道改革連合はふるわず、公示前勢力(167)から半減する可能性もある。③国民民主党はほぼ横ばい。④参政党、チームみらいは躍進との見方だ。

そこで自民党の獲得議席の予測だが、中心値として278議席を挙げている。公示前議席が186議席だから、92議席増やすことになる。民主党政権当時の野田首相が衆院を解散、自民党が政権復帰したときの獲得議席が294議席。首相に復帰した後、安倍首相が2014年に奇襲解散したときの獲得議席が290議席だった。それに近い水準だ。

他の読売、日経などの予測でも描かれたグラフを見ると270議席から290議席程度も想定しているとみられる。つまり、270から290程度の獲得がありうるかどうかということになる。

こうした予測をめぐって、根拠となるインターネット調査について、調査対象者の選び方をはじめ、得られたデータの蓄積量や分析、データの修正の仕方などについて議論があると思うが、筆者は調査方法などの専門知識もないので、こうした点については触れない。

選挙取材の一員として、こうした予測をどのようにみているかという観点から、実現可能性などを探ってみたい。

知人の自民党の選挙関係者に聞いてみると「獲得議席がどこまで増えるかという点よりも『今の自民党の勢い』を現したものとみた方がよい。今の自民党の勢いは2024年の前回衆院選・石破政権の時を上回っている。2021年の前々回衆院選・岸田政権の時の水準にあるのではないか。この時の獲得議席をベースに『261+α』、260議席以上の勢いがある」との見方を示す。

この自民党関係者の見方は、どこまで議席を伸ばせるか上限は見通せないが、「絶対安定多数である261議席」は確保する勢いがあるとの見方だ。17の常任委員長を確保した上で、各委員会でも多数を占めることができ、国会運営の主導権を確保することができる水準だ。

筆者は自民単独過半数の公算は大きいこと、次ぎの段階として260議席以上に達するかどうかが焦点になるとの見方をしている。単独で280議席以上を獲得するような熱気は感じられないことから、困難ではないかとみている。

一方、自民党と維新と合わせて310議席以上を確保すると衆議院の3分の2を占める。衆議院から送られた法案が参議院で否決されても、衆議院で再可決すれば成立させることができる。憲法改正を発議できる勢力を確保することになり、大きな意味を持つ。

過去の衆院選挙で自民党が大勝したケースとしては、昭和61年・1986年中曽根首相が「死んだふり解散」で衆参同日選挙を断行、300議席を獲得した。2005年の小泉首相は郵政解散・刺客選挙を展開し、296議席を得て大勝した。あらゆる事態に備えておく必要があるので、こうした圧勝の再現があるのかどうかも考えておく必要がある。

公明票・無党派・ 投票率がカギ

自民党が優位に選挙戦を展開しているのは高市首相が奇襲解散を仕掛け、野党側が不意を突かれて対応できていないことと、高市首相の高い人気を自民党議員増につなげる戦略に成功しているためだ。

これに対して、野党側は、選挙直前に立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合が国民に浸透していないことと、国民民主党や参政党などが候補者擁立を倍以上に増やし野党乱立状態が自民党に有利に働いていることもある。

こうした野党側の事情があるにしても、このまま自民優位で圧勝することになるのだろうか。「選挙は投票箱が閉まるまで何が起きるかわからない」との格言があるように選挙の先行きはわからない。情勢調査通りの展開になることもあるし、大きく変わることもありうる。

今後の変動要素として1つは、公明・創価学会票が最終盤でどのように動くかがある。公明党は小選挙区からは撤退し比例代表で戦うことになり、中道では比例代表の上位を占めることになった。その代わりに小選挙区では、立民出身候補の支援に回ることになった。その支援がどこまで徹底して行われ、威力を発揮するかどうかだ。

また、無党派層の投票行動がどのようになるか。報道各社の世論調査では、無党派層の比例代表の投票先としては自民党が最も多い。高市人気が奏功している。

一方、高市首相の言動によっては無党派層の支持離れも起こり得る。例えば、高市首相が遊説で手を痛めたことを理由に与野党党首が出演する予定になっていたNHKの討論番組を急遽キャンセルしたことへの批判は根強くある。

また、街頭演説で円安容認発言とも受け取れる発言をしたことに、見識を疑う声も強い。こうした問題行動や配慮に欠ける発言が続けば、信頼を一挙に失うこともありうるのではないか。

さらに、真冬の選挙なので、投票率が大幅に低下する可能性が懸念されている。全国平均の投票率も問題だが、特に大雪が続いている北海道や東北、北陸など日本海側の雪国では投票率が大幅に低下することが懸念されている。

衆院選の投票率が戦後最も低かったのは、2014年の52.66%だ。安倍元首相が奇襲解散を仕掛け、自民党は290議席を獲得、連立を組んでいた公明党と合わせ与党で325議席を獲得して大勝した。だが、戦後最低の投票率という不名誉な記録を後世に残した。

こうした3つの不確定要素が最終盤にどのような形で現れるのか注視していく必要がある。

高市政権の評価が最大の焦点

衆院解散から投開票日まで16日間という戦後最短の総選挙も8日、投票日を迎える。最大の焦点は、高市政権が国民の信任を得て自民・維新の連立政権の継続するのか、それとも中道など野党側が支持を広げて新しい政治をめざすことなるかどうかだ。

高市首相は強い経済や防衛力の強化、それに維新との連立政権の合意文書に盛り込んだ保守色の濃い政策を推進するものとみられる。国民がこれをどのように評価するか。

また、内外情勢が激しく揺れ動く中で、強い政権・政党を形成して権限を委ねていくのか、それとも政権与党と野党が競い合う形の政治を求めていくのか、政治のあり方も考えていく必要がある。

こうした政権の評価、重要政策、政党・政治のあり方などをじっくり考えて、国民がどのような審判を下すか、選挙結果を注視したい。(了)

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