“高市1強体制”と特別国会が問われる点

衆議院選挙を受けた特別国会が18日に召集され、首相指名選挙で高市首相が第105代の首相に選出された。これを受けて高市首相は、政権発足から間もないことから全ての閣僚を再任し、18日夜に第2次高市内閣を発足させた。

特別国会初日の衆院本会議場は、議長席に向って左側から真ん中を経て右側の4分の3まで、自民党と連立を組む日本維新の会の与党席が大幅に張り出した。高市首相の選出が決まると与党席から大きな拍手があがり、衆議院選挙の自民圧勝と巨大与党の誕生を印象づけた。

特別国会の会期は7月17日までの150日間で、長丁場の国会が続く。衆院では自民党が単独で316議席という戦後最多の議席を確保し、この勝利は高市首相人気が大きかったことから、与野党の力関係だけでなく、自民党内でも首相の存在感が強まり、”高市1強体制の始まり”との見方が広がっている。

一方、国民からすると高市首相の強い指導力に期待する声がある一方で、政権が暴走したりした場合を危惧する見方もある。そこで、この”高市1強体制”と特別国会はどのような対応が問われているのかを探ってみたい。

高市政権、政策の全体像の提示が必要

さっそく特別国会の日程からみておくと、20日に高市首相の施政方針演説と政府4演説が行われた後、24日から3日間衆参両院で代表質問が行われ、27日から衆院予算委員会に舞台を移して、新年度予算案が審議入りする。

国民からすると最も知りたいのは巨大与党が誕生して、高市政権はどのような政治をめざそうとしているのかということだろう。

選挙戦で高市首相は「日本列島を強く豊かにする」「責任ある積極財政」「政策の大転換を図る」ことなどを訴えた。だが、選挙スローガンの域を出ず、与野党の政策論争もほとんどなかったことから、国民としては高市政権の主要政策と言われても判断材料が極めて乏しいのが実状だ。

特に経済政策については「責任ある積極財政」や「危機管理投資と戦略投資17分野」などが繰り返されるが、こうした政策によって日本経済がどの程度成長し、どのような経済社会をめざすのかといった説明はほとんどなされていない。

高市首相が政治の師と仰ぐ安倍元首相は、賛否は別にしてアベノミクスを掲げ、大胆な財政出動などの3つの矢と、物価安定目標を2%、2%以上の経済成長を2年程度で実現すると政権の目標などを明確に提示した。

高市政権も、こうした政権の目標や実現するための政策の組み合わせ、時期・道筋などを明確に打ち出すことが必要だと考える。

消費税減税、財源・時期の明示は?

次ぎに国民が知りたいのは、高市首相が選挙直前に打ち出した「2年間に限り飲食料品に対する消費税率をゼロ」にする方針はどうなるのかという点だ。

衆院選を終えた9日の記者会見で、高市首相は公約通りに超党派でつくる「国民会議」で検討を加速し、「夏前には中間とりまとめを行いたい」と表明した。そのうえで、次の国会以降に税制改正法案の提出を急ぐ方針だとみられている。

問題は、年5兆円規模の財源をどのように確保するのかという点と、実施時期、それに2年後には必ず税率を引き上げることはできるのかといった点だ。

高市首相は、財源については「赤字国債に頼らない」と強調しているが、市場は「高市政権の財政拡大策では、財政が悪化するのではないか」と警戒しているほか、社会保障制度への影響を懸念する見方もある。

一方、この飲食料品の消費税率ゼロを先送りした場合、世論の強い反発が予想される。それだけに高市政権としては、規定方針通り進めるものとみられるが、いずれにしても具体的に安定財源を示し、市場や国民の理解を得られるかどうかにかかっている。

国論二分の政策、 政権と世論にズレも

3つ目の問題として、高市首相が「国論を二分するような政策についても信任を得たい」とのべていたことから、この「国論を二分するような政策」とは何か、また、その優先順位などが議論になる見通しだ。

高市首相は「責任ある積極財政」の一環として、恒常的な補正予算編成からの決別、防衛力の抜本強化、インテリジェンス機能の強化として「国家情報局」の創設、外国から日本への投資の審査体制を強化する「対日外国投資委員会の設置法案」を今の国会に提出したいとの考えを示している。

また、政府・与党内では、スパイ防止法案をはじめ、国旗損壊罪の制定、皇室典範の改正、旧姓の通称使用の法制化、憲法改正に向けた議論の加速など保守色の強い政策が検討されている。

一方、こうした課題については、国民の理解がどこまで進んでいるかどうかという問題がある。NHKが先の衆院選で投票した人を対象にした「出口調査」で、投票する際に最も重視した政策を尋ねている。

最も多かったのは◇「物価高対策・経済政策」で49%、次いで◇「年金・社会保障政策」16%、◇「子ども政策・少子化対策」10%、◇「外交・安全保障政策」8%などとなっている。

一方、「外国人に関する政策」は6%、◇「憲法改正」は3%、◇「原発などエネルギー政策」は1%などとなっている。

このように例えば「憲法改正」については、高市首相は強い意欲を示しているが、国民の優先順位は極めて低い。

高市首相は「選挙公約については国民の信任をいただいた」との認識を示していることから、保守的な政策を強力に推し進めるものとみられる。だが、進め方によっては、政権と国民の考え方に乖離,大きなズレが浮上してくることも予想される。

少数野党、 チェック機能を果たせるか

先の衆院選で大幅に勢力を減らした野党各党は、巨大与党にどのように向き合うかが問われている。

衆議院で野党第1党の中道改革連合は、選挙前の172議席から3分の1以下の49議席まで激減した。野党の最大の武器になってきた内閣不信任決議案の提出には51人が必要なので、単独では提出できない。衆院の野党第1党は、戦後最も小さな野党になった。

このほかの野党の勢力は、国民民主党28人、参政党15人、チームみらい11人、共産党4人、それに無所属が5人にまで落ち込んでいる。衆院では、いずれも小規模な5つの野党が分散する厳しい状況に立たされている。

このように少数野党だが、論戦でどこまで政権に迫ることができるか試されている。政権に対するチェック機能を果たし、世論の支持と理解を広げていけるかどうかが問われているともいえる。

一方、参議院では与党は過半数を割り込んでいることから、野党としては衆参が連携し、国民の声を代弁しながら国会論戦を展開できるかどうかがカギを握る。

高市首相 消費税減税で法案提出めざす

第2次高市内閣の発足を受けて、高市首相は18日夜、記者会見した。この中で高市首相は、野党に協力を求めて新年度予算案の早期成立に取り組むとともに、食料品の消費税率を2年間ゼロにする自民党の公約実現に向けて「国民会議」で夏前に中間とりまとめを行い、税制関連法案の提出をめざす考えを表明した。

また、安全保障関連3文書の改定と、国家情報局を設置するための法案を今の国会に提出する方針を示した。そして、憲法改正や皇室典範の改正、議員定数の削減に挑戦し、「決断と前進、挑戦の内閣」として取り組んでいくと強調した。

巨大与党の勢力を背景に高市首相が、強い経済と防衛力の抜本強化、さらに保守色の強い政策の推進まで踏み込んでいけるかどうかは、この特別国会での与野党の論戦と、国民の幅広い支持が得られるかどうかにかかっている。

それだけにこれから始まる論戦に、多くの国民が関心を持ち、政権の姿勢やねらいをどのように評価するか、大きな注目点だ。(了)

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