特別国会序盤の焦点になっている新年度予算案について、高市政権は年度内成立をめざして審議日程を圧縮するなど異例の国会運営を続けている。
こうした中で政府・与党は、土曜日の7日に予定していた衆院予算委員会の一般審議の提案を取り下げるとともに、野党側から要求のあった高市首相出席の集中審議を9日に行うことを受け入れた。
但し、衆院選で圧勝した高市政権は「数の力」を背景に、13日には予算案採決の方針は変えていないとの見方が政府・与党内では強い。
一方、衆議院で野党の反対を抑え込んで予算案の衆院通過を図っても参議院では与党が過半数割れしているため、年度内成立は困難になるとして、丁寧な国会運営をめざすべきだとの意見も聞かれる。来週以降の国会と高市政権の運営は、どのような展開になるのか探ってみたい。
異例の予算審議、与党の強硬決定続く
新年度予算案をめぐっては、衆院解散・総選挙の影響で例年に比べてほぼ1か月遅れの2月27日から実質審議が始まったが、異例の展開が続いている。
当初、与野党双方とも「新年度予算案は、3月末までの短期間で成立させるのは難しく、暫定予算案は避けられない」との見方が支配的だった。
ところが、衆院選に圧勝した高市首相は年度内の成立をめざす考えを示し、自民党執行部に指示するとともに予算委員会では野党側に繰り返し協力を要請した。
これを受けて自民党は衆院予算委員会冒頭の総括質疑が始まってから、わずか3日後に早くも採決の前提となる「中央公聴会」の開催を議題にすることを坂本予算委員長が職権で決定し、その日の予算委員会で与党多数で日程を議決した。
また、坂本委員長は一般質疑の日程を職権で決めたことなどから、野党側が強く反発し、衆院の森議長に「議会政治をないがしろにする横暴」などと非難し、充実した予算審議を行うよう申し入れた。
与野党の協議の結果、与党側が土曜日の7日に行うよう求めていた一般質疑を取り下げるとともに、9日の午前に一般質疑、午後に高市首相が出席して集中審議を行うことで合意した。
このように予算審議をめぐっては、与党側が審議日程などを強硬に決める場面が続いている。これでは「与党は予算案の中身の審議よりも、予算案の採決を優先させる対応に終始している」との批判は免れない。
国民生活に直結する新年度予算案の成立が遅れるのは、通常国会冒頭に衆院解散に踏み切ったことが根本原因だ。このため、高市首相は自らの行動を顧みると同時に、法律で規定されている通りに暫定予算案を組み、予算案の審議を十分に行うことが政権のあるべき対応だと考える。
同じように選挙で大勝した安倍元首相も暫定予算を編成して、予算審議を丁寧に行ったことを学ぶ必要がある。
予算案採決めぐり与野党の攻防激化へ
それでは、今後の動きはどのような展開になるだろうか。既に触れたように自民党と維新の与党側は年度内成立を確実にするため、13日には衆院予算委員会で採決をめざす方針を変えていないとみられる。
これに対して、野党側は「予算案の審議は尽くされていない」として、集中審議などをさらに求めていく方針で、与野党の攻防が激しくなる見通しだ。
9日に予定されている集中審議は今国会では初めてで、野党側は引き続き第2弾の集中審議を求めていく方針だが、実現できるかどうか野党側の力量も試されている。野党第1党の中道も単独で内閣不信任決議案を提出できる勢力51人にも達していないことから、攻め手を欠く状況に立たされている。
これに対して与党側は、衆議院全体の4分の3を占め圧倒的優位に立っていることから、新年度予算案を13日に衆院通過させることも可能だ。
しかし、参議院では与党だけでは過半数に達していないことから、衆議院で採決を強行した場合、参議院側で野党の反発を招いて審議入りが遅れ、年度内成立ができないジレンマを抱えている。最終的に高市首相がどのような判断をするのかが焦点になる。
また予算案の扱いは、高市首相が今国会での成立に強い意欲を示しているインテリジェンス機能を強化するための「国家情報局」の創設法案をはじめ、皇室典範の改正、さらに維新が強く働きかけている衆議院の議員定数削減法案などの重要法案の審議の進め方にも影響する。
さらに高市首相にとっては、世論の高い支持率を維持していくうえで、野党の反対を押し切ってでも強い姿勢で法案の成立をめざした方が支持されるのか、それとも野党側の要求の一部を取り入れたりしながら柔軟な姿勢で臨んだ方が得策なのか、政権運営への影響も考慮に入れて判断するものとみられる。
高市首相にとっては、新年度予算案の扱いと、食料品の消費減税などを検討する「国民会議」に国民民主や中道など野党が参加する問題、それに19日に迫ったトランプ大統領との日米首脳会談への対応が問われることになる。
私たち国民もこうした一連の結果を注視しながら、先の衆院選挙で高市政権と与党を大勝させたことが妥当だったのかどうか。また、これからの高市政権の政権運営や国会のあり方についてどのようなことを望むのか、再考することが大事ではないかと考える。(了)
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