菅内閣支持率 急落の見方・読み方

報道各社の世論調査で、菅内閣の支持率が急落している。NHKの12月の世論調査では「支持する」が42%で、前月から14ポイントも急落した。「支持しない」は36%で、17ポイント増えた。

内閣支持率の低下は、政権や政治のゆくえに大きな影響を及ぼすので、このブログの前号で取りあげた。関心も高いので、再びこの問題を取りあげる。

今回は、支持率急落の理由や背景をはじめ、どのような人たちの支持が低下しているのか、今後の見通しはどうかといった点を中心に、さらに詳しく分析してみたい。なお、データは、NHK NEWS WEBから引用。世論調査は12月11日~13日実施、有効回答率は57%。

 「下落幅」発足3か月で、3割低下

さっそく、第1点は、菅内閣支持率の「下落幅」をどのように評価するか。冒頭触れたように12月の支持率は、前月より14ポイント下がって42%、不支持は17ポイント増えて36%となっている。

この下落幅の評価だが、前月との比較だけでなく、もう少し長い期間でみた方がよりわかりやすい。菅政権は9月に発足したので、この3か月間の変化になる。

9月の支持率は63%。政権発足時の水準としては、高い水準だった。9月を基準にすると3か月間で、◆支持は21ポイント減少、比率にすると33%、「支持が3割はがれ落ちた」ことになる。◆不支持は9月の13%から、36%へ3倍近くも増えた。政権発足時の勢いが失速、政権へのダメージが大きいことがわかる。

 「支持離れ」無党派、中高年、女性

第2点は、どんな人たちの支持が減少したのか「支持離れの層」。政党の支持層別にみると12月は、◆最も大きな集団である「無党派」の支持は27%、前月4割から大幅に減少した。不支持は47%、5割近くにも達している。

◆次いで大きな集団である「自民支持層」でも支持は67%に止まる。普段は8割台後半だから、身内の支持離れも大きい。安倍首相が辞任を表明した今年8月、安倍内閣当時が65%だったので、ほぼ同じ水準だ。

◆さらに年代別にみると、全ての年代で支持が減少している。特に40代以降の「中高年」では、不支持が2割前後だったのが、4割前後に急増している。

◆男女では、男性が支持45%ー不支持38%。女性が支持39%ー不支持34%。女性の支持が低い。

このように無党派、自民支持層、中高年、女性の支持の落ち込みが目立ち、選挙への影響は大きい。

 政府のコロナ対応 厳しい評価

第3点は、「支持率が急落した原因・背景」は何かという点だ。世論調査の設問から推測すると「政府のコロナ対応」、「GoToトラベルの是非」、安倍前総理の「桜を見る会」前夜の懇親会をめぐる問題などが考えられる。

様々な問題が原因として想定されるが、結論は「政府のコロナ対応」への評価が、主要な要因とみている。

「政府のコロナ対応」の評価を毎月、聞いているが、菅政権発足以降は次のようになっている。「評価する」は、9月52%→10月54%→11月60%→12月41%。

つまり、菅内閣の支持率が安定してきたのは、コロナ対応の評価が高かったから。実態は、感染が比較的落ち着いていたという”幸運”に支えられていたように思うが、9月以降、11月上旬まで評価は高かった。

ところが、12月は「評価する」が20ポイント近くも下落、内閣支持率も急落した。11月中旬以降、感染が急拡大したためとみられる。また、コロナ対応の評価と、内閣支持率との動きに相関関係がみられる。

「GoToトラベル」も影響したと考えられるが、政府が全国一斉に停止を決めたのは、12月の世論調査後なので、コロナ対応全体の評価が影響したとみるのが、合理的だと思われる。

 菅内閣支持率 早期回復は困難か?

第4点は、「菅内閣の支持率の今後の見通し」はどうか。先ほどみたように「政府のコロナ対策」が主な要因だとすると、政府のコロナ対策が効果を上げているかどうかが影響する。

その政府の感染対策の取り組み「勝負の3週間」が終わった翌日の18日、感染者数は東京で800人超、全国で3200人を上回る過去最多、皮肉な結果となった。重症者数、死者数はその後も最多水準が続き、より深刻化している。

また、菅政権の対応は、GoToトラベルの見直しは”小出し”の連続、感染抑止のために何を実施するのか、具体策が示されない。説明やメッセージも乏しい状況が続いている。これでは、政府のコロナ対応の評価は上がらないだろうし、菅内閣の支持率も早期に回復するのは難しいという見方をしている。

また、12月の世論調査の実施時点以降も、感染状況はより悪化している。このため、内閣支持率の水準は「支持42%ー不支持36%」から、悪化している可能性もある。支持と不支持の差は6ポイント、今後は逆転もありうるのではないか。

さらに12月は、安倍前首相の「桜を見る会」前夜の懇親会をめぐる問題で、安倍氏の秘書が政治資金規正法違反で起訴される見通しだ。この問題で、安倍氏本人が検察当局から、任意の事情聴取を要請されている。

さらには、農相経験者へ鶏卵生産会社から現金が提供されていたとの疑惑も取り沙汰されている。

菅首相は、安倍政権の官房長官として支えてきただけに、こうした政治とカネの問題が菅政権に逆風として跳ね返ってくることも予想される。菅政権の支持率は今後、より厳しくなる可能性が大きいのではないか。

 世論調査 有効回答にも注意を!

最後に第5点として、世論調査の見方・読み方で、注意しておきたい点を触れておきたい。具体的には「有効回答」が重要なポイントになる。

国民の一定数を抽出して科学的に調査・分析するのが世論調査なので、国民全体の縮図となる一定のサンプル数が必要だ。ところが、最近の新聞、通信社、放送会社の調査の中には、サンプル数が5割を切るような調査があったり、有効回答数自体も明記されていなかったりする調査もある。

筆者は政治記者出身で世論調査の専門家ではないが、世論調査では有効回答が6割程度が必要だと教わってきた。

これから内閣支持率や、衆院選挙などのさまざまな世論調査に接する機会が増えるでのではないか。中には驚くようなデータがあるかもしれない。その際には、「有効回答」の説明があるか、その比率はどの程度かをみると、どこまで信頼できるか調査なのか、一定の判断材料になると思います。

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