新型コロナ対策について、政府は23日、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に緊急事態宣言を出すことなどを決めた。期間は25日から5月11日までの17日間。去年4月、今年1月に続いて3度目の宣言になる。
今回の対策は、酒類を提供する飲食店や大型商業施設などに休業を要請するのをはじめ、強力な対策を短期に集中して実施し、コロナ感染を抑え込むとしているが、果たして成功するだろうか。
”3度目の緊急事態宣言”、何が問われているのか、緊急宣言決定後に行われた菅首相の記者会見を中心に探ってみたい。
納得感と説得力乏しい記者会見
菅首相のおよそ1時間に及ぶ記者会見を聞いて、政府の今回の対策について、納得感や説得力は感じられなかった。なぜかと考えてみると、「これまでの対応の総括」がないことと、今回の対策は「どのような目的・目標」を設定して取り組もうとしているかが、はっきりしないからではないかと思う。
記者会見の中で、菅首相は「再び、多くの皆様方にご迷惑をおかけすることになる。心からお詫びを申し上げる」とのべたが、これまでの政府の取り組みのどこに問題があり、どのように改めていくかの言及はなかった。
「懸念されるのは変異株の動きで、このまま手をこまねいていれば、大都市での感染拡大が国全体に広がることが懸念される」とのべたうえで、「ゴールデンウイークという多くの人が休みに入る機会をとらえ、対策を短期間に集中して実施することで、ウイルスの勢いを抑え込む必要があると判断した」として、短期集中型の対策に理解を求めた。
振り返ってみると菅首相は1月の緊急宣言以来、飲食店の営業時間短縮に重点を置く対策を取り続けてきたが、感染を抑え込むことができず、再び宣言発出に追い込まれた。去年の第1波、第2波の感染が落ち着いた後もどこに問題があったのか、点検・総括を先送りにしてきた。
また、今年1月に緊急事態宣言を出す際、飲食店の時短に偏りすぎて対策として弱かったことが、感染を抑えられなかった要因と指摘する見方もある。
今回の対策でも菅首相は、飲食店対策と人の移動・人流を減らす対策の両方を重視する考えを示しているが、「人流抑制」に舵を切ることが重要だとする意見が政府内にある。どちらに重点を置くのか、目標、基本姿勢を明確にしないと政策の効果が上がらないのではないか。総括と目標の明確化が必要だ。
対策の中身 変異株、感染抑制効果は
次に問われるのが、「対策の具体的な中身」だ。強い対策と強調するが、本当に効果を上げることができるか、実効性が問題になる。酒類を提供する飲食店やカラオケ店などに対する休業要請に始まって、百貨店などの大型商業施設の休業要請、さらにプロ野球やJリーグの無観客試合など幅広い対策が盛り込まれている。
確かにこうした対策が取られた場合、感染抑制につながる人出・人流の減少という点で一定の効果は期待できる。
一方、厚生労働大臣経験者に話を聞くと、変異株の急増に対応するためには、人流の抑制が必要で、そのためには大都市圏への通勤者を減らす対策を徹底して行う必要があると強調している。
去年第1波の時のようにテレワークや有給休暇の取得などで7割、8割削減を徹底して行うこと。企業、経済団体などへの働きかけも弱いと指摘する。
このほか、休業要請を行う場合は、休業に対する補償、協力金が十分かどうか。そして、本当に協力が得られるのかどうか、今回も大きな問題になっている
さらに変異株の検査・監視をはじめ、陽性者の宿泊、入院・治療体制整備はどこまで進んでいるのか。政府や自治体は、国民への自粛要請を繰り返すが、行政の側はどんな取り組みを行い、改善しているか説明は極めて乏しい。
第4波 感染収束のシナリオが必要
国民が知りたいのは、変異株を中心とした感染拡大第4波を収束させるために、政府はどのような対策を組み合わせ、危機を脱出するのかという点だ。
最初の緊急宣言が出されてから、すでに1年以上が経過した。政府は、夏には東京五輪・パラリンピックを感染対策を徹底して行う方針だ。そうであるならば、ワクチン接種を含め、今後の感染対策をどのように実施していくのかのシナリオを示す必要がある。
この点に関連して、菅首相は記者会見で、4月から始まった高齢者の優先接種は「7月末を念頭に各自治体が2回、接種を終えることができるよう、政府を挙げて取り組んでいく」とのべ、高齢者接種のメドを明らかにした。
また、先の訪米で、ファイザー社のCEO、今年9月までにすべての対象者に確実に供給できるめどが立ったと説明している。こうした点について、本当に確約が得られているのか疑問だとする見方もあるので、根拠を具体的に明らかにしてほしい。
ワクチン接種については、地方自治体側からは「5月の連休明けのワクチンの配分量が未だにわからない状態を、何とかして欲しい」という要望が強い。ワクチン確保が確実になったというのであれば、各市町村への具体的な配分のメドを示すことを注文したい。
菅首相は記者会見で「危機乗り切りに、自治体との協力、病床の確保、ワクチン接種など内閣総理大臣として、できることはすべて全力を尽くしてやり抜く」と決意を語った。
そうであるならば、その場しのぎの対症療法に陥らないように、まずは既に打ち出している政府の総合対策の進捗状況をきちんと説明したうえで、第4波を抑え込む道筋を明らかにする必要がある。
今回の対策の期限である来月11日の節目には、菅政権のコロナ対策全体の取り組み方を明らかにすることを強く求めておきたい。