高市内閣が発足して3週間余り、臨時国会で与野党の本格的な論戦も始まり、高市内閣がめざす政治の輪郭が次第に明らかになりつつある。
こうした状況の中で、NHKの世論調査がまとまり、高市内閣の支持率は66%と歴代内閣の中で高い水準にある一方、自民党の政党支持率は低迷していることが浮き彫りになった。
また、高市首相が掲げる独自色の濃い政策については賛否が分かれ、国民は高市カラーに危うさを感じている点も読み取れる。高市内閣の高い支持率の背景と、政権が問われる点を探ってみたい。
高い内閣支持率、現役世代に支持広がる
さっそく、NHK世論調査(11月7日~9日実施)の内容からみていきたい。高市内閣の支持率は66%で、政権発足時の内閣支持率としては小泉内閣の81%、鳩山内閣の72%に次いで、3番目に高い水準になった。なお、調査方法が異なるため、単純に比較できないが、傾向として理解してほしい。以下の項目も同様だ。
高市内閣の支持率を支持政党別にみてみると自民支持層の86%が支持している。これは、2012年12月に自民党が政権復帰して以降では最も高い。また、無党派層の支持率は59%で、同じように最も高い水準だ。
年代別では、高市内閣の支持率は◇18歳からと20代、◇それに30代と40代はいずれも77%、◇50代は76%となっている。50代以下の現役世代については、第2次安倍内閣以降、最も高い水準となっている。
支持率の男女別では男性が67%に対し、女性は63%で、女性の比率がやや低い傾向にある。
以上のように高市内閣は、自民支持層の支持を取り戻しているだけでなく、無党派層の支持も広げている。それに現役世代でも幅広い支持を得ているのが特徴だ。
それでは、高市内閣の支持率が高い理由、背景はどういった事情があるのだろうか。まず、「支持する」と答えた人に理由を聞くと「実行力があるから」が33%と最も多く、次いで「政策に期待が持てる」が26%と、積極的な支持が多数を占めた。
これまでの内閣では「他の内閣より良さそう」といった消極的支持が目立ったのと大きく異なる点だ。
また、高市政権では連立相手がこれまでの公明党から、日本維新の会に代わったが、新たな政権に「期待する」が58%で、「期待しない」の37%を上回った。
さらに、個別の質問項目をみると外交の評価が高いことがわかる。高市首相が初の日米首脳会談や日中首脳会談を行ったことについて、いずれも「評価する」がおよそ7割に達し、「評価しない」の25%程度を大きく上回った。
このように高市内閣の支持が高い理由・背景としては、初の女性首相の誕生で、若い年代や無党派を中心に、これまでの政治を大きく変えてくれるのではないかという期待感が強く現れたと言えそうだ。
また、今回は政権発足直後に高市首相とトランプ大統領との日米首脳会談が行われるなど一連の外交日程を通じて新しい首相の誕生を強くアピールしたことも支持率を上げる上で、大きな効果があったのではないかとみられる。
自民党支持率は低迷、回復の兆し見えず
一方、政党支持率をみると自民党の支持率は、30.7%だった。2012年12月に自民党が政権に復帰して以降、内閣発足時の支持率としては、安倍、菅、岸田、石破の各内閣と比べて、最も低い水準となっている。
自民党は高市内閣の発足で、保守層を取り戻しての党勢回復を目指しているが、内閣支持率の上昇は、党勢の回復にはつながっていない。党内には、内閣支持率上昇の勢いに乗って早期の衆院解散論が一部に出ているが、今のような支持率低迷が続くようでは、早期解散は困難な情勢にある。
自民党と連立を組んだ日本維新の会の支持率は3.3%で、10月の1.7%から1.6ポイント増やした。但し、以前は4%から6%台の水準もあったのに比べると党勢回復にはほど遠い状況にある。
野党各党では、◇立憲民主党は7.2%で、10月より1.6ポイント伸ばした。参院選で躍進した◇国民民主党は3.5%で、1.3ポイント減。◇参政党は3.4%で、1.1%減で明暗が分かれた。
このほか、◇公明党は2.6%で、1.1ポイント減。◇共産党は2.6%で、先月と同じ。◇れいわは0.9%で、0.3ポイント減だった。◇無党派は38.7%で、2.3ポイント減だった。
高市首相の人柄・独自カラーに懸念も
再び高市内閣に話を戻すと、高市内閣はこれまでみたように滑り出しは極めて好調だが、不安定な要素を幾つか抱えている。
まず、高市内閣の看板政策の一つである、外国人政策の見直しについての評価だ。世論調査では「高市内閣は一部の外国人による違法行為などで、国民が不安や不公平感を感じているとして、制度の適正化を検討し、来年1月をメドに考え方をまとめるとしているが、どう思うか」と尋ねている。
調査結果は「積極的に対応すべきだ」が42%だったのに対し、「慎重に対応すべきだ」が47%で、上回った。「対応する必要はない」が3%だった。外国人政策をめぐって国民の評価は分かれている。
もう一つ、高市内閣を支持する理由については「実行力があるから」などの積極的な支持が多かったことは既に触れたが、支持しない理由としては「(首相の)人柄が信頼できないから」が26%で最も多く、次いで「政策に期待が持てないから」が24%、「他の内閣の方が良さそうだから」が18%と続いた。
内閣を支持しない理由として「人柄が信頼できないから」がトップになるケースは、極めて珍しい。第2次安倍内閣以降(内閣発足時のデータ)を調べると、安倍内閣では3番目で14%、菅内閣では4番目で16%、岸田内閣では5番目で10%、石破内閣では3番目で16%といずれも低かった。
「人柄が信頼できない」が多数に上った背景としては、高市首相は安倍元首相を政治の師と仰ぐなど保守派の政治家として知られていることから、外交・安全保障や財政政策などをめぐって安定した政権運営ができるのか、危惧する声があることが影響しているのではないか。
政権が発足して最初の世論調査だが、こうした見方が今後、どのように推移するのか注目してみていきたい。
国会論戦、補正予算案の攻防が焦点
高市首相が重視している政策をめぐっては世論調査とは別に、今の国会論戦でも与野党の主要な論点として浮上してきている。
一つは台湾有事への対応で、高市首相は「武力の行使を伴うものであれば、存立危機事態になりうる」と踏み込んだ答弁をした。その後、野党側の追及に対して、発言の撤回をするつもりはないとしながらも「今後、特定のケースを明言することは慎もうと思う」とのべるなど防戦を余儀なくされている。
また、高市首相が掲げる「責任ある積極財政」に関連して、財政健全化の指標であるプライマリーバランスについて「単年度ごとの目標を見直す」考えを表明した。これに対して、野党側は「財政健全化目標の見直しの前に、日本経済の成長目標や金利水準など経済政策全体の姿を明らかにすべきだ」として、議論が続いている。
このように高市首相は独自色を次々に打ち出しているが、政府のこれまでの政策との整合性や、新たな取り組み方をする場合、その内容を整理して説明できないと政権運営の不安定さを印象づけることになりかねない。
このほか、臨時国会の最大の案件である補正予算案をめぐっては、自民と維新の連立与党だけでは過半数に達しないので、どの野党の協力を得ることができるかどうかが焦点になる。
また、維新が「連立参加の絶対条件だ」として、今の国会での実現を強く求めている衆議院議員の定数削減について、他の野党が反発する中で、結論を出せるのかどうかという問題も抱えている。
高市政権はこうした一連の問題・懸案を着実に処理できるのかどうか、それによって世論の政権に対する評価や、政権の安定度を左右することになる。これから年末に向けての国会論戦と補正予算案を扱いめぐる与野党の攻防を注視していきたい。(了)

臨時国会での与野党の論戦の始まりとNHKの世論調査の結果を
受けて、高市内閣が国民からどのような評価を得ているのか、また
問題とするところおよび懸念されるところについて、分かり易く理
路整然と説明されており納得しかりです。
また世論調査の各政党の支持率の変化も、国民の意識の変遷が明確
にその数字に表れているように感じました。
それにしても、高市首相の支持率の高さには驚くばかりです!
保守強硬路線の本質を押さえて何とか前に進もうとしているものの
台湾有事に係わる発言や各回答の節々に強硬路線を感じさせる危険
なものを感じるのは自分だけではないと思いますが?
高市首相の高支持率にもかかわらず、自民党の支持率に回復が見られないのは、国民が「自民党のダーテイな政治資金つくりからの
改善がないこと」を見通していることだと強く強く思います。
高市政権を総括していると思うのは、貴殿の次の文章と思います。
「高市首相は独自色を次々に打ち出しているが、政府のこれまでの
政策との整合性や、新たな取り組み方をする場合、その内容を整理
して説明できないと政権運営の不安定さを印象づけることになりかねない。」
今後高市政権が、日本維新の会との連立の維持や、少数与党における政策実現にどのように立ち向かっていくのか見守っていく必要が
あります!
文章について
①「自民党支持率は低迷、回復の兆し見えず」の項
最初から12行目
野党各党では◇憲民主党は7.2%で
→野党各党では◇立憲民主党は7.2%で
( 立 が脱字しています)
②「国会論戦、補正予算案の攻防が焦点」の項
最初から11行目
日本経済の成長目標や金利水準など経済政策全体の姿が
明らかにすべきだ」
→経済政策全体の姿を明らかにすべきだ」
( 姿が → 姿を )
11月12日 妹尾 博史