衆議院の解散・総選挙に向けて、野党第1党の立憲民主党と公明党は、中道勢力の結集をめざして新党を結成することで合意し、名称を「中道改革連合」とすることを決めた。立憲民主党の野田代表と公明党の斉藤代表が19日、記者会見で発表した。
この新党の結成は、私たち有権者にとってどんな意味を持つのか、衆議院選挙の勝敗などにどのような影響を及ぼすことになるのか探ってみた。
新党結成の意味とねらい
さっそく、新党結成の意味からみていきたい。新党「中道改革連合」は、次の衆議院選挙に向けて立憲民主党と公明党が結成を決めたものだ。衆議院で立憲民主党は148人、公明党は28人の議員が所属しているので、全員が参加すれば172人の規模になる。
自民党に所属する衆院議員は191人なので、これに迫る大きな塊の野党が誕生する。この結果、次の衆議院選挙は老舗の自民党と、結成されたばかりの中道改革連合の2大勢力が真正面からぶつかり、これに保守、リベラルなどの中小政党が加わって戦う構図になる見通しだ。
この中道改革連合に対して、他の党からは「目の前の選挙でお互を助け合う『選挙互助会』のような組織だ」、「政策を脇において、違う政党が一緒になる無責任な動きだ」といった厳しい批判が相次いでいる。一方、「接戦の選挙区では、新党効果を発揮するかもしれない」と警戒する声も聞かれる。
新党の中道改革連合は、有権者・国民の支持を広げられるのかどうか。そのためには、新党がめざす目標・旗印と具体的な政策を打ち出して、国民の共感と支持を得られるかどうかが大きなポイントになる。
さらに公明党は、1小選挙区あたり1万票から2万票程度の組織票を持っているので、特に小選挙区で組織票がどこまで効果を発揮するかも注目点だ。
新党結成までの経緯と背景
次に、新党結成に至るまでの経緯についてもみておきたい。去年10月に高市政権が発足する際に公明党が連立政権を離脱したときから、立憲民主党は公明党と連携を強めることに照準を定めて働きかけを続けてきた。
その立憲民主党は夏の参院選を「事実上の敗北」と総括し、その後も支持率の低迷が続いた。一方、公明党も26年間続けた連立政権からの離脱後、党の存在感を発揮できない状態が続いた。
公明党は「中道結集の軸」になるとの新たなビジョンを打ち出したが、自民党との関係修復と他の野党との連携を図る”両にらみ”を続けたこともあって、中道勢力の結集は進まなかった。ところが、高市首相が突然の通常国会冒頭解散を打ち出したことで、公明党は一気に立憲民主党との新党結成にカジを切った。
このように今回の新党結成は、立民・公明ともに厳しい状況からの脱却と迫る衆院決戦での生き残りをかけた一手という側面があるのは事実だ。
一方、高市首相や自民党にとっても公明党の新党結成は想定外の事態で、大きな誤算と言える。衆院選での個別選挙区では、公明票を回してもらうことが可能とみていたのが、ほぼ不可能になった。
私たち有権者にとっては、”高市自民党”が保守的な政策を推進する中で、中道路線をめざす新党が登場したことになる。保守、リベラルなどに加えて、中道という選択肢が増えると評価できるのではないか。
新党の政策の柱と具体策は
問題は中道改革連合が果たして、どのような理念・政策を打ち出すのか、具体的な内容がまだはっきりしないことである。
立憲民主党の野田代表は16日の記者会見で「生活者の視点に立ち、生活者ファーストの現実的な政策を打ち出していく」とのべるとともに基本政策に消費税減税を盛り込む考えを示した。19日に新党の理念や政策などを発表する予定だ。
高市政権の政策をめぐっては、高市首相が冒頭解散を打ち上げた後も株式市場で5万4千円台の最高値を更新する動きが続いているほか、防衛装備品の海外移転や国家情報局の創設、さらにはスパイ防止法の制定などの保守色の濃い政策に期待する声がある。
一方、円安が一時160円に迫る水準に達しているほか、国債の利回りが上昇するなど市場が高市政権の財政拡張政策に警告を発しているとの見方もある。このような高市政権の政策に対して、新党がどこまで政権に対する対立軸を打ち出すことができるか、打ち出せなければ国民の失望を招くことになる。
また、新党の政策をめぐっては、立憲民主党が安全保障法制の一部に憲法違反の疑いがあるとの見解や原発の新増設に慎重な姿勢をとってきたことから、新党がこうした点について、どこまで明快な方針を打ち出せるかも焦点になっている。
選挙情勢と勝敗のゆくえ
さらに、衆議院が解散された場合、新党結成が選挙情勢に与える影響はどうだろうか。
高市首相が国会冒頭解散を検討しているとの報道に合わせて、永田町では自民党が単独で過半数を大幅に上回る議席を獲得する選挙予測データが流された。選挙分析の専門家にこの予測の評価を聞いたところ「信憑性に欠け、願望が入り混じったと思われるデータ」との評価だった。
NHK世論調査(1月10~12日実施)によると高市内閣の支持率は62%と高い水準を維持する一方、自民党の政党支持率は32.2%と低迷している。過去の衆院選挙時に比べると、自民党が過半数を割り込んだ前回・2024年公示前の水準35.1%を下回っている。
前々回・2021年安定多数を確保した時は、選挙期間中40%前後で推移したが、この水準には遠く及ばない。各党の獲得議席をめぐって今、さまざまな予想が出回っているが、選挙情勢調査に基づかないので、正確な議席予測とは思えない。
ここまで政権与党の自民党と、新党の中道改革連合を中心にみてきたが、連立与党の維新、去年の参院選で躍進した国民民主党と参政党、さらにれいわ、共産、保守などの各党の消長も選挙情勢を左右する。もうしばらくすると出される報道各社の情勢調査の結果を待つ必要がある。
高市首相は来週19日に記者会見を行い、23日に召集される通常国会冒頭で解散に踏み切る理由などについて、説明する予定だ。中道改革連合も同じ19日に新党の綱領や基本政策を発表する予定だ。どちらの説明と主張が説得力を持っているか、衆院決戦のゆくえにも影響を及ぼすことになりそうだ。(了)
メッセージが送信されました
