新型コロナ対策の「まん延防止等重点措置」が、東京など18都道府県では、7日からさらに2週間延長されることになった。
この「重点措置」は新規感染者の抑制に一定の効果はあると思うが、漫然と延長を繰り返すだけでは意味がない。延長する場合、「何を重点に取り組むのか」を明確に打ち出す必要があるのではないか。
政治の焦点は、今はロシアのウクライナ軍事侵攻に移っているが、日本の経済・社会の立て直しにためにもコロナ感染を抑制する「新たな対策」を早急に取りまとめることを強く求めたい。
”後手と受け身”続く岸田政権
岸田首相は4日夜の記者会見で、31都道府県に適用されていた「まん延防止等重点措置」について、東京など18都道府県で今月21日まで延長し、福岡など13の県を解除する方針を明らかにした。
そして、水際対策として、外国人の1日あたり入国者の上限を5000人から7000人に引き上げる方針を示した。一方、国内の対策については、これまでの対策の説明を繰り返した。
「重点措置」は、東京など13都県には1月24日に出され、2月に1度延長している。岸田政権としては3月6日の期限で全面的に解除したかったが、医療提供体制のひっ迫が続く地域も多く、全面解除は見送らざるを得なかった。
新規感染者数は減少しているが、高止まりの状態で、特に高齢者を中心に重症者数と亡くなる人の数は第5波に比べて非常に多い状態が続いている。専門家は「感染再拡大の可能性も十分にある」と警告している。
こうした状況の中で、政府は決め手となる3回目のワクチン接種について、1日100万回の接種目標を掲げ、希望する高齢者接種の2月中の完了を目指してきた。ところが、3月4日時点で、接種率は国民全体の23%、高齢者は対象の58%に止まっている。
目詰まりが指摘されてきた抗原検査キットの確保をはじめ、経口治療薬の配布、これからワクチン接種を加速する取り組み方もはっきりしない。このように政府のコロナ対策は、後手と受け身の対応が続いているように見える。
参考になる米のコロナ新対策
海外の取り組みを取り上げ、日本の対応と比較して論評するのは避けてきたが、これまで個人的に主張してきたことと一致点が多いので、あえて海外の事例を紹介する。
日本政府の重点措置決定とちょうど同じころ、アメリカ政府が3月2日に新たなコロナ対策を発表した。
主なポイントは、◇子どもを含むすべての年代のワクチン接種の向上と、ワクチン製造の拡大を支援する。◇ウイルスの検査では、陽性の場合、その場で無料で治療薬が手に入る仕組みを導入する。
そのうえで、◇新たな変異ウイルスの出現を早期に検知するため、ウイルスの遺伝子を調べたり、下水からの感染状況を調査するなど検査態勢の拡充を図る。
◇感染が拡大しても経済活動や学校の運営に支障が出ないように換気設備の更新の支援、病気になったときの有給休暇制度の導入をめざす。
要は、経済や社会の活動を止めずに、これまでの日常を取り戻していく方針を明確にするとともに、対策を具体的に示している点が大いに参考になる。
岸田政権 新たなコロナ新対策を
さて、岸田政権のコロナ対策についての注文だ。何度も同じことの繰り返しになって恐縮だが、次のような内容だ。
まず、基本的な考え方としては、政府の「まん延防止等重点措置」は全く役に立っていないとは思わないが、重点措置を適用するか、解除するかよりも「何を重点に取り組むのか」を明確にしてもらいたい。
そのためには、岸田政権は去年11月にまとめた対策の「全体像」を取り上げるが、全体像は内容が一般的すぎるので見直し、「新たな対策」として取りまとめてもらいたい。
その「新たな対策」では、デルタ株ではなく、オミクロン株の特性に即した内容になる。そのうえで、ワクチン接種の目標、検査態勢の強化、経口治療薬の配布、入院・治療体制の整備と自宅療養支援のあり方などについて、アメリカ政府の対策のように具体策を明示してもらいたい。
コロナ対策は、「まん延防止等重点措置」を期限の3月21日に全面解除できるかどうかが、大きな焦点になる。また、コロナ対策の出口戦略、経済・社会活動を本格化させる道筋を提示できるかどうかも問われる。
ロシアによるウクライナ侵略への対応という大きな政治課題も抱えているが、まずは、コロナ対策を先行させ区切りをつける必要があると考える。(了)