新型肺炎 問われる政権の危機管理

新型コロナウイルスの感染問題は、クルーズ船の乗客で、感染が確認され医療機関に入院・治療を受けていた80代の男女2人が死亡したほか、全国各地で国内感染の拡大が続いている。

一方、中国などからの観光客が激減、自動車業界ではサプライチェーン・部品供給網の混乱など経済面への影響が深刻になっている。

さらには、大勢の人が参加するイベントや会合の中止など社会の活動面の影響も広がっている。

このように新型ウイルスの感染問題は、当面の政治の最重要課題に浮上しており、特に安倍政権の危機管理が問われている。今回の感染拡大の危機を乗り切ることができるのか、具体的にどんな対応が問われているのか探ってみる。

 新型感染症 政府が取るべき対応

今回のような新型ウイルスの感染に対して、政府・政権はどんな対応をとるべきなのか。感染症・医療の専門家は、次のような対応が重要だと指摘している。

1つは「初期の対応」、水際対策は迅速、強めに行うこと。多少の過剰な対応はやむを得ない。

2つ目は、今回のような潜伏期間が長く、軽症な例も多い疾患では、完全な封じ込めは難しく「国内の感染対策」へシフトする必要がある。

3つ目は、感染拡大の程度、つまり「発生の早期」と「拡大期」に応じて対応策を打ち出していくことの重要性を挙げている。

政府のこれまでの対応に対しては、さまざまな意見や批判が出ている。
一方、当初、新型ウイルスの感染力などはわからず、国内の感染検査も1日300件程度に止まる中で、緊急の対応を迫られたのも事実だ。

以上3点の指摘は、政府対応を評価する際の基準になる。また、一定の区切りがついた段階で、一連の対応について、検証する必要がある。

 危機管理、具体的な対応策

さて、それでは危機管理、具体的にどんな対応が必要なのか。再び、先の感染症・医療の専門家の意見を聞くと次のような対応策を提言している。

1つは、今の状況は「感染の発生早期」の段階。海外からの感染症の完全な封じ込めは難しく、既に国内で感染が進行している。感染早期の段階では、重症者を早期に発見、死亡者を最小限に止めることが重要になる。

2つ目は、次の「感染拡大期」に備えて、一般病院も診療できる体制を準備する。そして、重症者の早期発見、治療を行う。軽症者は、開業医を含めた医療機関で対応する。軽度の人は自宅待機などもありうる。

3つ目は、検査や診療などの全体の体制づくりと運用。政府が中心になって、地方自治体、大学や医療機関、企業、国民がそれぞれ総力を挙げて感染防止を徹底する取り組みができるように総合的な調整を行うこと。

また、政府が方針を決定するのにあたっては、医療関係の専門家、官僚などが技術的・専門的な議論を行い、その結果を踏まえて、政治が判断する仕組みづくりが重要だと指摘している。

こうした取り組みを進め、国内での感染を抑え、事態の収束に導くことができるかどうか。安倍政権はこれまで政治主導を標榜し、政権が看板政策を打ち上げて政策を実行してきた。今回は、医療・保健などプロの意見を聞きながら、国民の命と健康を守っていく、手探りの対応を迫られることになる。

 外交、東京オリパラ、政治日程

今回の新型ウイルス感染の問題は、4月上旬にも予定されている中国の習近平国家主席の来日が予定通り実現するのかどうか。

また、7月24日から半世紀ぶりに開催が予定されている国家的な事業、東京オリンピック・パラリンピックが予定通り実施できるのかどうかにも影響を及ぼすことになる。

さらに、今年の秋以降にも予想される衆議院の解散・総選挙、ポスト安倍の後継総裁選びなどの政治日程も左右することになる見通しだ。

政権の危機管理は、これまでも阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が起きた村山政権。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の激震に見舞われた民主党の菅政権の時のように、政権の求心力にも大きな影響を与えることになりそうだ。

安倍政権にとっては、最長政権の総仕上げの段階、正念場が続くことになる。

 

 

 

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