先の参議院選挙で敗北した立憲民主党は26日、岡田幹事長らベテランを重視した新たな執行部を発足させた。一方、選挙で躍進した日本維新の会は27日、初の代表選挙を行い、新たな代表に馬場・共同代表を選出した。
これで参院選挙後の野党陣営の体制がそろったことになるが、国民の強い関心や期待を得られるかどうか、個人的にはかなり難しいとみる。
というのは、国民の側からみると岸田政権も頼りないが、野党側はそもそも何をめざしているのかわからないといった厳しい受け止め方が強いからだ。
結論を先に言えば、立憲民主党と維新は”水と油”のような関係にあるが、国会対策を中心に”戦略的連携”で足並みをそろえ、巨大与党に対決できる状況をつくることができるかが、大きなカギを握っているのではないか。
この連携ができないと、仮に政権与党が失速したとしても、野党側に展望は開けないのではないか。連携は可能なのかどうか、世論の動向なども踏まえて考えてみたい。
立民と維新、執行部刷新効果の現実
立憲民主党の新しい体制は、泉代表はそのままで、幹事長に岡田克也・元副総理、国会対策委員長に安住淳・元財務相、政調会長に長妻昭・元厚労相を起用した。民主党政権当時、要職を占めたベテランが多数起用されたのが特徴だ。
日本維新の会は、創設時から10年、中心的な存在だった松井一郎代表が退任することになり、初めて行われた代表選挙で、共同代表を務めてきた馬場伸幸氏が有効投票の8割近くを獲得して新代表に選出された。ただ、松井氏に比べると存在感や発信力が弱いのも事実だ。
それぞれの党の支持者は、新執行部が野党第1党としての役割を強めたり、新たな第3極として勢力を結集したりすることに期待を寄せていると思う。
国民はどのように見ているか、28日に朝日新聞の世論調査の結果が報道されているので、そのデータを材料に考えてみたい。
この世論調査は27,28の両日行われ、野党の新執行部の評価の質問はないが、政党支持率が参考になる。自民は34%、公明は4%に対し、立民は6%で、先月調査と同じ水準。維新は5%で、2ポイント減少。そのほかの野党各党も先月と同じか、1ポイント減で、大きな変動は見られない。
野党の新執行部は発足した直後で、十分浸透していないとの反論も予想されるが、このデータを見る限り、新執行部の刷新効果は現れていない。
一方、自民党の支持率34%は、先月との比較で2ポイント減少。無党派層は39%で、先月の28%から11ポイントも急増しているのが大きな特徴だ。旧統一教会と政治の関係が次々に明るみになっていることが影響しているものとみられる。
つまり、自民党からの支持離れを含めて無党派層が大幅に増えているが、野党支持の拡大にはつながっていない。今の野党のままでは、期待や魅力が乏しいという受け止め方の反映ではないか。この現実を踏まえて、どう対応するかが問われている。
戦略的連携、政治の流れ変えられるか
それでは野党側は、具体的にどんな対応が必要なのか。各党ともそれぞれの党の理念、重視する政策に磨きをかけるのは当然だが、国民の関心や期待を得るための取り組み方もカギになる。
先の政党支持率に端的に現れているように自民党と野党第1党の支持率を比較すると34%対6%、5分の1以下の大差がついている。「自民1強、多弱野党」の構造を多少でも変えないと、国民の関心を高めるのも難しい。
今の野党の構造は、立憲民主党は共産党などとの協力はできても、国民民主との距離は離れたままで、野党全体をまとめきれていない。
日本維新の会は、松井前代表と安倍元首相や菅前首相との関係が強かったが、立憲民主党とは対立が目立ち、野党の分断状態が続いてきた。但し、維新にとっても岸田政権発足後は政権側と太いパイプはなく、状況が変わってきた。
そこで、立民、維新ともに、従来の関係をそのまま続けていくのか、それとも新たな関係構築の道を模索するのか、2つの選択肢がある。
もちろん、立民、維新両党は、それぞれの党の理念や、憲法、外交・安全保障、原発などの主要政策では大きな開きがある。そうした違いを認めた上で、野党の存在感と力を強めることを目標に「戦略的な連携」に踏み出す道がある。
具体的には、国会対策を中心に臨時国会の早期召集をはじめ、会期幅の設定、予算委員会などの審議日程の確保、さらには個別の政治課題や法案の扱いなどについて、野党全体の要求をまとめ、実現していくことが考えられる。
こうした取り組みで、国会審議に緊張感をもたらしたり、重要法案の修正を実現したりして、政治の変化につなげていくことも考えられる。
無党派層が28%から39%へ11ポイント増えたということは、日本の有権者数は1億人なので、ざっと1100万人が政治の立ち位置を変えたことを意味する。
野党陣営は、戦略的連携で政治の流れに変化を求める有権者を生み出し、そのうえで、自らの支持につなげていく2段階の新たな取り組みが問われているのではないかと考える。
難題乗り切り 臨時国会の対応注視
報道各社の世論調査で、岸田内閣の支持率急落が続いている。最新の朝日新聞の世論調査では、岸田内閣の支持率は47%で、先月の前回調査から10ポイントも下落。不支持は39%で、14ポイント増加している。
旧統一教会と現職の閣僚など政務3役、それに自民党議員の関係が明らかになっていることが影響しているものとみられている。
来月27日には、安倍元首相の国葬が予定されており、近くこの問題の閉会中審査が予定されている。秋の臨時国会では、旧統一教会の問題やコロナ対策、経済の立て直しと補正予算案の扱い、防衛力整備の進め方など難題が目白押しだ。
国民の側が最も困るのは、与野党が対立して難題の解決が一歩も進まないことだ。秋の臨時国会では、与野党が真正面から議論を尽くし、場合によっては法案の修正などで歩み寄り、難題処理の具体的な成果を見せてもらいたい。(了)