来年秋に今の健康保険証を廃止する方針について、岸田首相は4日夕方、記者会見し、国民の不安を払拭するための対応策を明らかにした。
この中で、岸田首相は当面、廃止の方針を維持したうえで、マイナンバーカードと一体化した保険証を持っていない人には「資格確認書」を発行することなどで、国民の不安払拭に努める考えを表明した。
こうした対応策については「小手先の弥縫策」などといった批判も予想され、国民の理解が広がるか不透明だ。
資格確認書、法案の再修正回避ねらいか
まず、岸田首相が「資格確認書」の有効期限の延長という運用の見直しを打ち出した背景には、どんな事情があったのか。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化をめぐっては、誤った登録が続発して、対応の見直しを迫られた。その際、政府・与党内では、2つの考え方が出され綱引きが続いてきた。
1つは、今の健康保険証の廃止期限を来年秋から延長する案。もう一つは、廃止方針は維持したうえで、運用面の見直しを行う考え方だ。
前者は、自民党の萩生田政調会長や世耕参院幹事長などが主張し、首相官邸の一部も支持していた。これに対して、加藤厚労相や河野デジタル担当相らは、後者の考え方で、麻生副総裁や茂木幹事長が支持したとされる。
岸田首相は当面の対応策として、後者の保険証廃止を維持する方針を選択したといえそうだ。この理由だが、保険証の廃止は6月の通常国会で成立させた改正マイナンバー法に盛り込まれており、廃止時期を延期する場合は法案の再修正が必要になる。
このため、秋の臨時国会で野党側の追及は必至で、廃止方針を見直すとかえって混乱を生むことになるとして、廃止時期の延期案は避けたものとみられる。
但し、岸田首相は、現在進めている総点検の状況次第では、廃止の延期も含めて必要な対応をとる考えも示した。岸田首相の対応は、保険証廃止の維持を基本にしながらも、見直しにも含みを残し、腰が定まっていないようにみえる。
確認書、今の保険証と同じとの批判も
次に、資格確認書を発行する場合の問題点はどうか。政府の説明では、マイナ保険証を持たない人にすべて交付するとともに、今の制度では1年としている有効期限を5年まで延ばし、その範囲内で自治体や健康保険組合などの保険者が設定できるとしている。
また、今の制度では、本人の申請に基づいて交付しているルールを改め、申請を待たずに行政が対象者のすべてに交付する「プッシュ型」とする方針だ。
政府は、こうした措置でマイナ保険証を持たない人も確実に医療を受けることができ、国民の不安も払拭できると強調している。
しかし、こうした案は、今の健康保険証に限りなく近づけるための措置だ。このため「資格確認書といっても今の保険証と同じではないか。わざわざ資格確認書を発行するより、廃止時期を延長すればいいのではないか」といった批判を受けそうだ。
また、マイナ保険証を持たない人全員に資格確認書を発行する場合、相当な規模の人数が予想されるが、その経費などは明らかにされていない。
報道各社の世論調査によると政府の保険証の廃止方針については、◆廃止方針の支持は2割程度と少なく、◆廃止を延期すべきが3割余り、◆撤回すべきも3割余りで、廃止の延期や撤回を合わせると7割程度を占める点で共通している。
このため、保険証の廃止を維持したうえで、資格確認書の見直しで、国民の理解と支持を得られるかどうかは不透明だ。
普及急ぎ過ぎと国民への説明不足
今の保険証の廃止やマイナ保険証の扱いは、国民にとって命や健康に関わる切実な問題だけに、安心して利用できる制度にしてもらわないと困る。
同時に、今回の問題は、政府のマイナンバーやデジタル化への取り組みに大きな問題があったことを提起しているのではないか。
4日の記者会見でも記者から「政府のこれまでの対応に反省点はないのか」と質問されたのに対し、岸田首相は「瑕疵があったとは考えていない」と答えた。
岸田政権の対応を振り返ってみると、マイナンバーカードの普及に2兆円もの予算を計上して、1人最大2万円相当のポイントを付与する事業を大々的に進めたが、マイナンバー制度の意義や、デジタル化でめざす社会の姿を国民に示していく取り組みは弱かった。
また、去年の10月には、河野デジタル担当相が健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化する方針を唐突に打ち出した。それまでの政府は、紙の保険証との選択制をとってきたが、方針を変更する必要はあったのか疑問が残る。
さらに、マイナ保険証に別の人の情報が誤ってひもづけされていたことが一昨年10月には明らかになっていながら、個人情報保護への対応が遅れた。その後も個人情報が、誤って他人にひもづけされるケースが相次ぎ、政府のデジタル化の司令塔であるデジタル庁が個人情報保護委員会の立ち入り調査を受ける異例の事態を招いている。
岸田政権が問われているのは、マイナンバーカードの普及促進を急ぎすぎた失敗を率直に認めたうえで、デジタル社会の実現に向けて国民への説明と対話を優先していく姿勢が必要だ。
マイナンバーカードをめぐるトラブルの総点検の結果と再発防止策も、まだ明らかになっていない。今月8日にようやく中間報告が公表される予定だ。国民の信頼回復のためには、岸田首相の決断力とリーダーシップも問われている。(了)
またまた出ましたね!岸田首相の「得意」とする問題事項の
先送り対応に、国民はあきれるばかりです。
昨日の会見で、保険証廃止の延長措置に含みをもたせる発言
など、腰の定まらないやり方は全く具の骨頂ですね。
とりあえず法案の修正をさけておこうという魂胆は、事態を
より混乱させるだけで、何ら問題解決や事態の収拾に
つながらないことは誰の目にも明らかです。
首相自らが言っているように、現行の保険証とほとんど
その機能に差のない新たな「資格確認書」の発行に
何の意味があるのでしょうか?
従来通りの「保険証」で良いことは小学生でも判断できます。
また、対策面ですが、いつも疑問に感じていることですが、
誰が何をするのか一向に明らかにされません。
さらにいつものことですが、マイナカードの「ひもつけ」に
おいて何に問題があって、次から次へとトラブルが生じて
いるのか、なにも説明されないし解決策も提示されていません。
政策に誤りがあれば、きちんと反省し方針転換すべきです。
サルでも反省しますよ!と言いたい!
今回は文章で気づいた点はありません。
8月5日 妹尾 博史