岸田政権”9月危機のゆくえ”

岸田内閣の支持率下落に歯止めがかからない。報道機関の世論調査でみると9月の内閣支持率は下落が続き、内閣発足以来、最低の水準に陥っている。

岸田政権は夏の参院選挙で勝利したのを受けて、7月の内閣支持率は政権発足以降、最高を記録したが、わずか2か月で真っ逆さまに急落した。

理由は、はっきりしている。安倍元首相の国葬と、旧統一教会問題への政権の対応に、国民の厳しい評価と批判が集中しているためだ。

あと半月で、政権発足以来1年の節目を迎えるが、今の状態が続くと岸田政権は低空飛行へと転じる可能性がある。世論調査のデータを基に岸田政権の現状と今後を探ってみる。

 参院選後、政治資産3分の1失う

最初に、岸田内閣の支持率を見ておきたい。NHKの9月の世論調査によると岸田内閣の支持率は40%で、先月から6ポイント下がり、内閣発足以来最低となった。

不支持率も40%で、先月から12ポイントも増加し、内閣発足以来、最も高い水準になった。岸田内閣の不支持率は、2割台と低いのが特徴だったが、先月から一気に倍増した。

内閣支持率は毎月の数字の変動だけでなく、全体の流れと意味を読み取ることが重要だ。岸田政権は7月の参院選挙で勝利したのを受けて、直後の内閣支持率は59%と発足以来、最高を記録した。

ところが、8月は46%、9月は40%と下落を続け、最低の水準まで落ち込み、ついに支持と不支持が並んだ。

7月の参院選挙を起点にみると岸田内閣の支持率は59%から40%へ、2か月で19ポイントも急降下し、減少幅は32%にもなる。

別の表現をすれば、選挙の勝利などで得た”政治資産”の3分の1を2か月で失ったことになる。

ほぼ同時期に実施した朝日新聞の世論調査では、支持率は発足以来最低の41%、不支持は47%に増え、初めて不支持が支持を上回った。岸田政権をとりまく政治状況は、9月に一変した。

 国葬、旧統一教会問題が政権直撃

岸田政権の支持率急落の理由・原因は何か。世論調査の中身をみると安倍元首相の国葬と、旧統一教会の問題が大きく影響したことが読み取れる。

NHK世論調査のデータでは◆国葬を「評価する」は32%に対し、「評価しない」は57%で多数を占めた。7月時点では「評価する」が49%、「評価しない」が38%だったのが、逆転した。

◆政府の国葬の説明については「十分だ」が15%に対し、「不十分だ」が72%にも達する。

◆旧統一教会の問題については、自民党は党所属の国会議員との関係を点検し公表したが、この対応について「十分だ」が22%に対し、「不十分だ」が65%に上った。

 内閣改造、首相説明も効果なし

岸田政権の対応はどこに問題があったのか、今後の政権のゆくえを考えるうえでポイントになる。

途中経過は省略して結論を率直に言わせてもらうと、初動から状況の認識や判断に問題がある。同時に、問題があれば直ちに軌道修正すべきだが、機動的な対応ができていない。

国葬問題についていえば、岸田首相は、安倍元首相が凶弾に倒れた6日後の7月14日には、いち早く「国葬」とする方針を表明した。表明する前に、与野党の党首会談を呼び掛けたり、国会の議院運営委員会で状況報告をしたりすることは考えなかったのか。

あるいは、表明後も8月3日に召集された臨時国会の会期を短期間延長して、質疑を行うことはできなかったのか。その後、国葬をめぐる閉会中審査を行うことで与野党は合意したが、実際に行われたのは9月8日、首相の表明から2か月後だ。

旧統一教会をめぐる問題でも政府は8月15日、閣僚ら政務三役との関係について「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」とする答弁書を閣議決定した。

ところが、閣僚ら三役をはじめ、党所属議員の旧統一教会との接点が次々と明るみになり、党所属国会議員の点検結果を取りまとめ、公表することに追い込まれた。

このように対応が後手に回り、対応策を小出しにする手法に問題があるのは事実だが、根本は、問題が発生した時にどの程度広がりを見せるのか、状況の判断ができていない。

また、機動的に対応策を打ち出していく姿勢に欠けている。その結果、国民への説明は、常に後回しになる。

9月の世論調査では、もう1つ大きな問題が浮き彫りになった。岸田政権は内閣支持率の低下を打開するため、お盆休み前の8月10日に内閣改造・自民党役員人事を前倒しして断行した。

続いて、9月に入って、岸田首相が自ら国葬に関する閉会中審査に出席するとともに、自民党が党所属の国会議員の自己点検結果の公表に踏み切った。

ところが、内閣改造後は一時的でも支持率が上昇するが、今回は下落するという異例の事態が起きた。旧統一教会をめぐる自民党の点検結果の公表後でもに「対応が不十分」とする受け止めが65%にも上った。

いずれのカードとも、事態の鎮静化はできず、政権の浮揚も不発に終わったことがはっきりした。

 世論の支持離れか、事態打開へ動くか

それでは、岸田政権は今後、どのように対応するのだろうか。このまま、手をこまねいていると、世論の岸田政権離れはさらに進むことが予想される。

もう1つは、遅きに失した感はあるが、国葬問題、旧統一教会問題について、世論の理解を得る取り組みを行うかどうかだ。

そのためには、国民の疑念を晴らす取り組みが必要だ。具体的には、旧統一教会とのつながりが深いとされる安倍元首相はどんな関係にあったのか。

また、細田衆院議長は最大派閥の会長時代に接点があったとされるのになぜ、点検対象にならないのか。議長職でも所属会派からの離脱であれば、離脱前の行動を確認するのに問題はないと考えられる。

さらに、岸田政権の中枢の存在である木原官房副長官は、旧統一教会との関係で報告漏れがあり、追加の報告をした。

このほか、旧統一教会との接点があるのに氏名が公表されていない国会議員の存在も指摘されている。要は、岸田首相が派閥の論理に縛られず、事実関係をきちんと調べ、説明責任を果たす覚悟はあるのか、国民は見極めようとしている。

国葬の問題についても岸田首相は丁寧な説明を強調するが、同じ内容の繰り返しに止まり、与野党の意見の対立を打開する内容を示せないのが大きな問題点だ。

今後、野党側から要求のあった国葬の判断基準を検討したり、首相経験者の葬儀の扱いをどのようにするかなど接点を探る動きが出てくるのか、注目される。

以上、見てきたように岸田政権を取り巻く情勢は厳しさを増しているが、自民党内から”岸田おろし”を求める動きは出ていない。

但し、現状のまま推移すれば、岸田政権は世論の支持離れが進み、低空飛行政権へと変わる公算が大きいのではないか。臨時国会の召集前に岸田政権は、新たな行動を起こすことはあるのかどうか、正念場を迎えている。

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「国葬」国会議論深まらず

安倍元首相の「国葬」をめぐり、国会では8日、岸田首相が出席して衆参両院で閉会中審査が初めて行われた。

野党側は、なぜ、国葬の方針を決めたのかなどを追及したが、岸田首相は従来の説明を繰り返し、議論は深まらなかった。

また、安倍元首相と旧統一教会の関係について、岸田首相は「実態を十分に把握することは限界がある」とのべるに止まった。

岸田首相は国会への出席で、説明責任を果たしたことをアピールしたい考えだが、こうした答弁では国民の納得を得るのは難しいのではないか。

安倍元首相の国葬問題について、主な論点と今後の対応のあり方などを点検してみたい。

 なぜ国葬か?新たな説明見られず

国葬問題をめぐって、国民が知りたいのは、なぜ、国葬にする方針を決めたのかという点だ。国葬は52年前、吉田茂元首相の1件だけで、それ以外の大平、中曽根、小渕の歴代首相は、内閣と自民党の合同葬で行ってきたからだ。

岸田首相は、安倍氏の首相在任期間が8年8か月で、憲政史上最長だったことや、民主主義の根幹である選挙の最中に非業の死を遂げたことなど従来から説明してきた4点を挙げて、国葬とする方針は適切だったと強調した。

これに対し、野党側は、内閣と自民党合同葬はダメで、国葬でなければならない理由の説明になっていないと質したが、岸田首相の説明はなかった。

また、野党側が、国葬にした法的根拠を質したのに対し、岸田首相は、内閣府設置法で、国の儀式は閣議決定でできるとして、問題はないとの考えを示した。

さらに、野党側は、国葬の方針を決める前に、国民の代表で構成される国会で議論したり、与野党の党首会談に諮ったりすべきではないか。今後、首相経験者が死去した場合の扱いの基準や法整備を検討すべきではないかなどと質した。

こうした点について、岸田首相は「国葬は、行政権に属する」などとかわした。このように岸田首相の答弁は、従来の説明の繰り返しに止まり、国民の理解を得るための新たな視点や取り組みについて、踏み込んだ説明はみられなかった。

 国葬の費用 16.6億円改めて説明

第2の論点は、国葬にかかる費用の問題だ。コロナ感染の長期化や物価高騰などで国民生活が厳しくなっている中で、国葬の費用は妥当なのかという問題だ。

この点について、松野官房長官が会場の設営費に加えて、警備や海外要人の接遇費用などを合わせて、16億6000万円程度を見込んでいることを改めて説明した。

そのうえで、岸田首相は「過去のさまざまな行事などとの比較においても妥当な水準だと考えている」と理解を求めた。

野党側は「政府は当初、会場設営費など2兆5000万円しか公表していなかった。費用を小さく見せようとしているのではないか」と批判している。また、今後、費用が膨らむ可能性もあるとして、監視を強めていくことにしている。

 安倍氏と旧統一教会「把握、限界」

第3の論点は、安倍元首相と旧統一教会との関係だ。立憲民主党の泉代表は「自民党内を取り仕切ったキー・パーソンが、安倍元首相だ。党の調査対象から、なぜ、外しているのか」と追及した。

これに対し、岸田首相は「ご本人が亡くなられており、今の時点で実態把握には限界がある。自民党としては点検結果をとりまとめ、社会的に問題のある団体と関係を持たないことを徹底し、国民の信頼回復に努めたい」と理解を求めた。

統一教会との関係をめぐって、自民党は夕方、所属する国会議員全体の半数近くにあたる179人が何らかの接点があったことを明らかにした。また、選挙で支援を受けるなど一定以上の関係を認めた121人の氏名も公表した。

この調査は、国会議員個人の自主点検の結果をとりまとめたものだ。選挙や日常の政治活動でどこまで密接な関係があったのかなどの実態は明らかにされていないが、旧統一教会側が幅広く浸透していたことが浮き彫りになった。

安倍元首相の国葬をめぐって、報道各社の世論調査では、賛否が分かれているが、ほとんどの調査で賛成より、反対の方が上回っている点で共通している。

政府の対応をみていると岸田首相が、国葬とする方針を記者会見で表明したのが、銃撃事件発生から6日目の7月14日で異例の早さだった。

ところが、その後は国会の閉会中審査は先送りし、世論調査で支持率急落を受けて、8月31日の記者会見で急遽、国会出席を表明するなど後手の対応が続いた。

今回、国会の閉会中審査がはじめて行われたが、岸田政権はこれで一件落着と再び、先送りするような対応はやめた方がいい。

国会の議論で明らかになった論点を整理し、与野党をはじめ、国民の多くの賛成を得て葬儀を円滑に実施できるよう環境整備に最後まで努力すべきだ。今一度、これまでの対応を再点検し、国会で議論を深める懐の深い対応が必要ではないかと考える。(了)

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岸田政権と9月政局のゆくえ

岸田政権は来月4日に政権発足から1年を迎えるが、ここにきて内閣支持率が急落し、政権発足以来最低の水準が続いている。

凶弾に倒れた安倍元首相の葬儀を国葬とする政府方針の是非をはじめ、旧統一教会と新たに任命した閣僚など政務三役や自民党議員の関係が次々に明るみなり、世論の厳しい批判を浴びているためだ。

岸田首相は近く自ら国会の閉会中審査に出席し、国葬を決断した理由などについて説明する方針だが、野党側は国葬にかかる費用の全体を明らかにするよう求めるなど対決姿勢を強めている。

こうした岸田首相の説明で、事態を沈静化できないと秋の臨時国会だけでなく、今後の政権運営にも大きな影響が予想される。岸田政権のゆくえを左右する9月の政治の動きを探ってみる。

 9月の政治・外交日程 閉会中審査も

まず、9月の主要な政治・外交日程を見ておきたい。国会の動きでは、◆焦点の安倍元首相の国葬をめぐる閉会中審査を8日以降に行う方向で、与野党の調整が進められている。

◆旧統一教会の問題では、自民党が党所属国会議員に求めていた旧統一教会との関係について、10日までの週内に公表される見通しだ。

◆安倍元首相の国葬は9月27日に行われる予定で、この前後に海外から来日した各国首脳と岸田首相との弔問外交が行われる。

◆一方、秋の国連総会が開幕し9月下旬に岸田首相が演説する。◆29日は、日中国交正常化から50年の節目を迎える。

◆このほか、11日は沖縄県知事選の投開票日で、現職と新人3つ巴の選挙戦に決着がつく。◆25日には、公明党大会で新代表が決まる。◆今月末には、秋の臨時国会が召集される見通しだ。

このように秋の政治が本格的に動き始めるが、今年は、安倍元首相の銃撃事件がさまざまな分野に影響を及ぼしている。

特に安倍元首相の国葬と、銃撃事件をきっかけに急浮上した旧統一教会の問題が岸田政権を直撃しており、この問題が秋の政局を大きく左右する見通しだ。

 旧統一教会問題、自民の点検結果は

国葬と旧統一教会の問題で、岸田首相は厳しい状況が続いている。先月末の記者会見で岸田首相は、閣僚などを含む自民党議員と旧統一教会との関係が明らかになっていることを陳謝し、「旧統一教会との関係を断つよう徹底する」と表明した。

また、国葬については、国会の閉会中審査に自ら出席し、説明する考えを明らかにした。こうした方針は当然と思えるが、決定まで1か月半もかかった。

この問題、野党側は「自民党の対応は、議員個人の点検に委ねており、党の調査としては不十分だ」として、厳しく追及する構えだ。

国葬についても法的な根拠が明確でないことに加え、全体の費用がどの程度になるのかも明らかになっていないとして、批判を強めている。

今後の展開はどのようになるか。自民党の点検結果は、当初6日に公表する予定だったが、遅れている。10日までの週内には公表される見通しだ。

野党側は、最も深く関係していたとされる安倍元首相をはじめ、自民党の萩生田政調会長、山際経済再生担当相をターゲットに追及を強めることにしている。

このように一連の問題をめぐっては、自民党の点検結果で、どこまで事実関係が明らかにされるかが焦点だ。与野党の主張や論点などには隔たりが大きいことから、事態が沈静化する公算は極めて小さいとみられる。

 政権浮揚か、低空飛行政権かの岐路

それでは、岸田政権や政局にどんな影響が出てくるか。岸田内閣の支持率は、NHK世論調査で、参院選の大勝を受けて7月は59%と政権発足以来最高となった。ところが、8月上旬の調査では46%と13ポイントも下落、発足以来最低の水準になった。

続いて、8月10日の内閣改造直後に行われた読売新聞の調査では、前回調査から6ポイント下がって51%で過去最低。8月末の朝日新聞の調査でも前回から10ポイント下落の47%、不支持率は14ポイント増の39%で、発足以来最高となった。

報道各社の世論調査で共通しているのは、8月に入って内閣支持率の急落が続いていること。その理由としては、旧統一教会の問題について、政府や自民党の説明が不十分だと受け止められていることが挙げられる。

安倍元首相の国葬方針についても「賛成」より「反対」が多い点で共通している。岸田首相が政権の浮揚をねらって断行した内閣改造・自民党役員人事は、不発に終わったといえる。

自民党長老に岸田政権の評価を聞いてみると「去年秋の衆院選に続いて、夏の参院選でも大勝し、政権は安定するはずなのに足元が揺らいでいる。旧統一教会の問題もあるが、コロナ感染爆発が起きているのにメッセージすら出せていない。やるべきことができていない」と指摘する。岸田首相の発信力や指導力に問題があるとの厳しい評価だ。

旧統一教会の問題が沈静化できない場合は、秋の臨時国会の本番では、野党側がこの問題を集中的に取り上げ「旧統一教会国会」になるのではないかという見方も聞かれる。

臨時国会では、物価高騰やエネルギー対策、経済・暮らしの立て直しと補正予算案の編成、衆議院の1票の格差是正の「10増10減案」などの懸案が控えている。こうした懸案処理に影響が出てくることも予想される。

このようにみてくると当面の焦点は、岸田首相が旧統一教会や国葬の問題で、国民の疑念を晴らし、信頼回復へこぎつけられるかどうかが、カギになる。

そのためには、国会論戦には逃げの姿勢ではなく、積極的な姿勢で臨み、焦点の旧統一教会の問題には、安倍元首相の関係を含め事実関係を明らかにしていくこと。国葬の問題も全額を国費でまかなう以上、費用全体のメドは明らかにすることは必要ではないか。

そのうえで、コロナ対策や防衛力の整備、経済再生などに向けて、岸田首相自らがやり遂げたい政治課題を明確に打ち出すことが必要ではないかと考える。

旧統一教会など問題は、政治や政権のあり方などに大きな影響を及ぼす。難題を数多く抱える中で、岸田政権は安定した政権運営を取り戻せるのか、それとも国民の失望を買い、内閣支持率が落ち込み、低空飛行を続けることになるのか、岐路に差し掛かっている。岸田首相の判断を注視したい。(了)

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立民、維新 ”戦略的連携”はできるか

先の参議院選挙で敗北した立憲民主党は26日、岡田幹事長らベテランを重視した新たな執行部を発足させた。一方、選挙で躍進した日本維新の会は27日、初の代表選挙を行い、新たな代表に馬場・共同代表を選出した。

これで参院選挙後の野党陣営の体制がそろったことになるが、国民の強い関心や期待を得られるかどうか、個人的にはかなり難しいとみる。

というのは、国民の側からみると岸田政権も頼りないが、野党側はそもそも何をめざしているのかわからないといった厳しい受け止め方が強いからだ。

結論を先に言えば、立憲民主党と維新は”水と油”のような関係にあるが、国会対策を中心に”戦略的連携”で足並みをそろえ、巨大与党に対決できる状況をつくることができるかが、大きなカギを握っているのではないか。

この連携ができないと、仮に政権与党が失速したとしても、野党側に展望は開けないのではないか。連携は可能なのかどうか、世論の動向なども踏まえて考えてみたい。

 立民と維新、執行部刷新効果の現実

立憲民主党の新しい体制は、泉代表はそのままで、幹事長に岡田克也・元副総理、国会対策委員長に安住淳・元財務相、政調会長に長妻昭・元厚労相を起用した。民主党政権当時、要職を占めたベテランが多数起用されたのが特徴だ。

日本維新の会は、創設時から10年、中心的な存在だった松井一郎代表が退任することになり、初めて行われた代表選挙で、共同代表を務めてきた馬場伸幸氏が有効投票の8割近くを獲得して新代表に選出された。ただ、松井氏に比べると存在感や発信力が弱いのも事実だ。

それぞれの党の支持者は、新執行部が野党第1党としての役割を強めたり、新たな第3極として勢力を結集したりすることに期待を寄せていると思う。

国民はどのように見ているか、28日に朝日新聞の世論調査の結果が報道されているので、そのデータを材料に考えてみたい。

この世論調査は27,28の両日行われ、野党の新執行部の評価の質問はないが、政党支持率が参考になる。自民は34%、公明は4%に対し、立民は6%で、先月調査と同じ水準。維新は5%で、2ポイント減少。そのほかの野党各党も先月と同じか、1ポイント減で、大きな変動は見られない。

野党の新執行部は発足した直後で、十分浸透していないとの反論も予想されるが、このデータを見る限り、新執行部の刷新効果は現れていない。

一方、自民党の支持率34%は、先月との比較で2ポイント減少。無党派層は39%で、先月の28%から11ポイントも急増しているのが大きな特徴だ。旧統一教会と政治の関係が次々に明るみになっていることが影響しているものとみられる。

つまり、自民党からの支持離れを含めて無党派層が大幅に増えているが、野党支持の拡大にはつながっていない。今の野党のままでは、期待や魅力が乏しいという受け止め方の反映ではないか。この現実を踏まえて、どう対応するかが問われている。

 戦略的連携、政治の流れ変えられるか

それでは野党側は、具体的にどんな対応が必要なのか。各党ともそれぞれの党の理念、重視する政策に磨きをかけるのは当然だが、国民の関心や期待を得るための取り組み方もカギになる。

先の政党支持率に端的に現れているように自民党と野党第1党の支持率を比較すると34%対6%、5分の1以下の大差がついている。「自民1強、多弱野党」の構造を多少でも変えないと、国民の関心を高めるのも難しい。

今の野党の構造は、立憲民主党は共産党などとの協力はできても、国民民主との距離は離れたままで、野党全体をまとめきれていない。

日本維新の会は、松井前代表と安倍元首相や菅前首相との関係が強かったが、立憲民主党とは対立が目立ち、野党の分断状態が続いてきた。但し、維新にとっても岸田政権発足後は政権側と太いパイプはなく、状況が変わってきた。

そこで、立民、維新ともに、従来の関係をそのまま続けていくのか、それとも新たな関係構築の道を模索するのか、2つの選択肢がある。

もちろん、立民、維新両党は、それぞれの党の理念や、憲法、外交・安全保障、原発などの主要政策では大きな開きがある。そうした違いを認めた上で、野党の存在感と力を強めることを目標に「戦略的な連携」に踏み出す道がある。

具体的には、国会対策を中心に臨時国会の早期召集をはじめ、会期幅の設定、予算委員会などの審議日程の確保、さらには個別の政治課題や法案の扱いなどについて、野党全体の要求をまとめ、実現していくことが考えられる。

こうした取り組みで、国会審議に緊張感をもたらしたり、重要法案の修正を実現したりして、政治の変化につなげていくことも考えられる。

無党派層が28%から39%へ11ポイント増えたということは、日本の有権者数は1億人なので、ざっと1100万人が政治の立ち位置を変えたことを意味する。

野党陣営は、戦略的連携で政治の流れに変化を求める有権者を生み出し、そのうえで、自らの支持につなげていく2段階の新たな取り組みが問われているのではないかと考える。

 難題乗り切り 臨時国会の対応注視

報道各社の世論調査で、岸田内閣の支持率急落が続いている。最新の朝日新聞の世論調査では、岸田内閣の支持率は47%で、先月の前回調査から10ポイントも下落。不支持は39%で、14ポイント増加している。

旧統一教会と現職の閣僚など政務3役、それに自民党議員の関係が明らかになっていることが影響しているものとみられている。

来月27日には、安倍元首相の国葬が予定されており、近くこの問題の閉会中審査が予定されている。秋の臨時国会では、旧統一教会の問題やコロナ対策、経済の立て直しと補正予算案の扱い、防衛力整備の進め方など難題が目白押しだ。

国民の側が最も困るのは、与野党が対立して難題の解決が一歩も進まないことだ。秋の臨時国会では、与野党が真正面から議論を尽くし、場合によっては法案の修正などで歩み寄り、難題処理の具体的な成果を見せてもらいたい。(了)

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岸田首相コロナ感染と強まる逆風

岸田首相が夏休みを終えて公務に復帰する前日の20日夕方、新型コロナに感染したことが確認された。一夜明けた22日から、首相公邸に止まりオンラインで公務を始めたが、現職首相のコロナ感染は初めてで、波紋が広がっている。

一方、岸田内閣の支持率が、報道機関の世論調査で急落していることが明らかになった。内閣改造を行った直後に内閣支持率が下がるケースは少なく、岸田政権に逆風が強まっている。

岸田首相のコロナ感染と内閣支持率の急落で、岸田政権は何が問われているのか、探ってみる。

 首相のコロナ感染 政権対応力に懸念

岸田首相のコロナ感染の経緯については、既に詳しく報道されているので繰り返さないが、感染判明から一夜明けた22日、松野官房長官は記者会見で次のように説明した。

岸田首相の症状は「22日朝の時点で平熱に下がり、テレワークなども活用し、ほぼ予定通りに執務にあたっている」と説明した。そのうえで「岸田首相は夏休み期間中も他人と接触する場合は、常にマスクを着用するなど適切な感染対策に務めてきた」と釈明した。

岸田首相の感染経路はわからないが、感染爆発が収束せず、医療のひっ迫が続く中で、コロナ対策の最高責任者が罹患し、公邸で事実上、隔離状態に追い込まれた責任は重い。

首相官邸では、この夏、松野官房長官に続いて、島田隆政務秘書官ら3人の首相秘書官が相次いでにコロナに感染した。個別の問題といってしまえばそれまでだが、安倍、菅両政権では見られなかった事態が起きている。

首相の健康管理は、危機管理の基本中の基本だ。首相官邸では、基本的な感染対策はどうなっているのか、疑問に感じる人は少なくないのではないか。

岸田政権は、安倍元首相の銃撃事件をめぐる警備の不手際をはじめ、追悼演説の先送りや国葬の扱い、さらにコロナ感染者の全数把握の問題などを抱えたまま、結論を出せない状態が続いている。

首相のコロナ感染は、感染対策に限らず、政権を取り巻くさまざまな懸案を連想させる。この政権に懸案を乗り越える対応力はあるのか、懸念を生じさせる点が意外に大きいのではないかと感じる。

 支持率低下”為すべきことを為さず”

岸田内閣の支持率については、読売新聞と日経新聞が先の内閣改造後の今月10、11の両日に行った世論調査で、いずれも支持率が下落し、政権発足以降最低の水準になった。

続いて、今月20、21の両日に行われた毎日新聞の世論調査で、岸田内閣の支持率は36%、前回調査から16ポイントも下落した。不支持は54%で、17ポイント増加し、支持と不支持が逆転した。

こうした各社の調査で、支持率下落の要因としては「世界平和統一家庭連合」(以下、旧統一教会)と、閣僚など政務三役、それに自民党議員の関係が次々に表面化していることが影響している点で、共通している。

また、毎日新聞の調査では、旧統一教会との関係について「極めて問題がある」64%、「ある程度問題がある」が23%で、合わせて9割近い人が、問題ありと受け止めている。

政府・自民党は、反社会的な行動を続けている旧統一教会との関係が指摘されながら、実態の調査や説明もしようとしない姿勢に、世論の側は極めて強い不信感を抱いていることが読み取れる。

一方、コロナ対策についても、感染爆発が続き、医療現場がひっ迫、死者も第6波のピークに迫る高い水準が続いているのに、政府から新たな対策やメッセージが出されない点を厳しく批判する声が聞かれる。

さらに来月27日には、安倍元首相の国葬が予定されているが、政府・与党は、国会の閉会中審査にも応じていない。世論調査では、政府の国葬方針について、反対が賛成を上回る調査結果がほとんどだ。

このように政府・自民党の一連の対応は「為すべきことを為さず、説明すら行わない姿勢」に見える。この点に世論は憤りを感じており、支持率急落の原因は、はっきりしている。

そこで、岸田首相がどこまで世論を納得させる具体策を打ち出すのかが、焦点だ。野党側は、臨時国会を早期に召集するよう申し入れている。

政府・与党の執行部はこれまで臨時国会を早期に開けば、野党に追及の場を与えるだけだとして、引き延ばし戦術をとることが多かった、しかし、今の世論の動向から判断すると、そうした対応で切り抜けるのは難しい情勢だ。

焦点の統一教会の問題は、実態調査とそれに基づいて、どのような方針で臨むのか具体策をはっきりさせることが必要だ。

そのうえで、当面するさまざまな問題について、逃げずに正々堂々、国会論戦を通じて国民に説明し、事態を打開する道を探る必要があるのではないか。

岸田首相は、30日まで公邸からオンラインで公務を続け、31日から通常の職務に戻る予定だ。岸田首相が事態打開に向けて、主導権の発揮に踏み出すのかどうか、注視したい。(了)

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”夏の宿題3点”岸田首相の解答力は?

参議院選挙で大勝し、内閣改造と自民党役員人事を終えた岸田首相は16日から夏休みに入っており、22日から公務に復帰する予定だ。

岸田首相はこの夏、3つの課題への対応が求められている。1つは、安倍元首相の銃撃事件をきっかけに浮上した旧統一教会の問題だ。新任閣僚や副大臣、自民党議員との関係が次々に明るみになり、国民を驚かせている。

2つめは、来月27日に予定されている安倍元首相の国葬の扱いだ。3つめが、感染爆発の収束の見通しが未だに立っていないコロナ対策だ。

こうした3点は、”夏の宿題”ともいえる緊急の課題で、岸田首相が”説得力のある”解答”を早急に示すことができるかどうか。できなければ、秋の臨時国会や岸田政権の今後の政権運営にも影響を及ぼすことになるだろう。

国民の関心が高い夏の宿題3点をどのように考えたらいいのか、探ってみたい。

 旧統一教会問題、疑念払拭は必須

さっそく、第1の課題である「世界平和統一家庭連合」(以下、旧統一教会)の問題からみていきたい。

旧統一教会と政治の関係は、政治団体である国際勝共連合とともに古くて新しい問題だが、今回の内閣改造人事をみて、その浸透ぶりには、改めて驚かされた。

岸田首相は内閣改造に当たって、旧統一教会との接点が明らかになった閣僚7人を外した。ところが、新たに任命された閣僚からも関連団体の会合に出席したり、会費を払ったりしていたことが次々に明らかになり、8人にも上った。

続いて行われた副大臣、政務官54人の人事でも24人に接点があったことが明らかになった。閣僚、副大臣、政務官の政務三役73人中、32人、実に4割にも達している。

一方、共同通信が全ての国会議員712人を対象に行ったアンケート調査で、旧統一教会の関連団体のイベントに出席したり、選挙協力を受けたりした議員は106人に上った。このうち、自民党議員は82人で、全体の8割を占めている。

今回の閣僚などの起用について、岸田首相は「旧統一教会との関係を自ら点検し、その結果を踏まえて、厳正に見直すことを了解した人だけを任命した」とのべ、個人の責任で対応してもらう考えを示した。

こうした首相の判断をどうみるか。旧統一教会をめぐっては、入信させて多額の壺や印鑑などを購入させる霊感商法や、献金の強要など深刻な被害が相次いでいたことが知られている。

閣僚など政務三役は、公正な立場で行政の執行に責任を持つ立場にある。こうした社会的に問題のある団体との関係が認められた場合、政府としても調査し、程度に応じて必要な対応策をとることは必要ではないか。

一方、先の参議院選挙についても初当選した自民党の生稲晃子議員が、萩生田政務調査会長が経産相だった今年6月、旧統一教会の関連施設を訪れていたことも明らかになった。

自民党についても、公正さが求められる選挙への支援も含めて、旧統一教会との関係について、政党として実態の調査を行い、その結果を公表することは最低限、必要ではないか。

要は、政府・自民党ともに国民の疑念を晴らす取り組みが必要だ。ケジメをつけられるかどうか、しっかり見ていく必要がある。

 国葬 国民の理解と共感を得られるか

第2の安倍元首相の葬儀を国葬とする政府の方針については、国民の間でも賛否が分かれている。

その理由については既に報道されているので、ここでは触れないが、報道機関の世論調査では、国葬について、賛成よりも反対の意見が上回っている。また、国葬を決めた岸田首相の説明について「納得できない」との評価が過半数を占める。

こうした背景としては、国葬は吉田茂元首相の1例しかなく、首相の葬儀は、政府と自民党の合同葬や、国民有志を加えた国民葬で行われてきた。今回、国葬の扱いにした理由や法的根拠が、国民に理解されていないことを示している。

また、全額国がまかなう国葬の費用はどの程度になるのか。国民にどのような弔意の示し方を求めるのかといった具体的な内容の説明も行われていない。

国葬は、国民の理解と共感が必要だと思うが、現状はその条件を満たしていないようにみえる。岸田首相は、国会で与野党との質疑を通じて、国民に説明することが必要ではないか。そうした心構えと取り組み方を表明する必要がある。

 コロナ 検査・医療体制の具体策を

第3のコロナ感染については最近、1週間平均で減少傾向もみられたが、お盆休みが明けた8月中旬以降、再び感染者数が過去最多となる地域が増えている。

全国の感染者数は18日、過去最多の25万人を超えたのをはじめ、病床使用率も41の都府県で50%を上回り、感染収束の見通しはついていない。

この間、政府は「経済社会活動の制限はしない」と繰り返し強調してきた。一方、各地の発熱外来は、感染者が押し寄せてパンク状態で、PCR検査にたどりつけず、抗原検査キットも手に入らないといった声を数多く耳にした。

端的に言えば、政府や自治体の対応は後手に回り、発生から3年目に入ったというのに、対策面で改善が進んだという実感は乏しい。

厚生労働省は最近、感染者の「全数検査」の見直しや、抗原検査キットのインターネットでの販売を解禁する方針を決めたが、対症療法的対応にみえる。

全数検査の見直しで、保健所や医療機関の負担軽減を図りたいとの狙いは、理解できる。一方で、感染の実態はどのように把握するのか。自宅療養者の病状悪化や入院などの調整はどのような仕組みで対応するのか、肝心の点がわからない。

国民が首を長くして待っているのは「検査体制の整備」と「医療提供体制の確保」の具体策を、早急に明らかにして欲しいという点に尽きる。

 国会論戦徹底、新たな政治へ模索を

このように3つの宿題について、岸田首相は公務に復帰した後、国民が納得できるような”解答”を早急に明らかにしてもらいたい。

加えて、これから年末に向けての政治は、岸田首相が言うように何十年に1度という難題が幾つも待ち構えている。

ウクライナ情勢をきっかけにした物価高騰、エネルギー確保、感染症対策の法整備、日本経済の立て直し、防衛力整備の進め方など目白押しだ。

このため、秋の臨時国会はできるだけ早く召集して、難題の解決に向けた議論の時間を大幅に確保した方がいい。与党はこれまでは、国会を開けば野党に追及の場を与えるだけだとして消極的だったが、改めた方がいい。

国会で野党側との議論を通じて、国民の理解は格段に進む。野党も、臨時国会の早期召集を求めており、重箱の隅をつつくような議論はしないと思われる。

与野党が徹底した議論を通じて、与野党の合意や修正の道を探り、難題を1つずつ前進させる新しい政治をめざす段階にきている。

戦後最大級の難問・難題を抱えている今こそ、与野党が徹底した論戦でぶつかり、懸案の処理が一歩ずつでも進む政治を与野党双方に強く注文しておきたい。(了)

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”前途多難” 岸田改造政権

お盆入り直前に急遽行われた岸田政権の内閣改造と自民党役員人事。岸田首相は10日夕方の記者会見で、「有事に対応する『政策断行内閣』として、経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用することとした」と声を高めた。

確かにベテランを起用し、手堅い人事と認めるが、「世界平和統一家庭連合」旧統一教会との関係、国葬問題などで世論とのズレを抱えている。また、これから内外の政治課題の大きさを考えると岸田改造政権は”前途多難の再出発”になるだろう。

今回の内閣改造と自民党役員人事の見方と、岸田改造政権のゆくえを展望する。

 経験重視の布陣、安倍派にも配慮

今回の人事の特徴を見ておくと、自民党の体制は、麻生副総裁、茂木幹事長を続投させ、岸田、麻生、茂木の3派体制を軸に政権運営に当たる。

その上で、安倍元首相なき最大派閥・安倍派から、萩生田経産相を政調会長に抜擢するとともに、政権と距離を置いてきた森山裕・前国対委員長を選挙対策委員長に起用し、これまでの政権基盤を広げた。

内閣の方は、松野官房長官をはじめ、林外相、鈴木財務相、山際経済再生相、斉藤国交相の5閣僚が留任したほか、加藤勝信・元官房長官を3回目の厚労相に起用、浜田靖一氏を2回目の防衛相に充てた。

また、デジタル担当相に河野太郎・党広報本部長、経済安全保障担当相に高市早苗・政調会長をそれぞれ起用した。

このように内閣については、これまで担当してきた経験や、専門性を重視して主要ポストに充てるなど手堅い人事を行った点は評価できる。

次に、安倍派の処遇も焦点の1つになったが、官房長官の松野博一氏は続投、萩生田氏を政調会長に抜擢する一方、派閥の事務総長を務める西村康稔氏を経産相に起用し、バランスをとった。

安倍派幹部の世耕弘成氏も参院自民党幹事長に再任され、松野、萩生田、西村、世耕の4氏を内閣と党の要職に配置するなど安倍派への配慮を示している。

自民党長老に人事の評価を聞くと「華はないが、ベテランを起用し、それなりに評価できる。安倍派では、萩生田氏が党三役の一角を占め、後継争いでは一歩リードした」との見方を示す。その理由として、今回の党役員は派閥の長が就任して重量級に変わっており、岸田首相との関係が良好な点も有利だとしている。

去年の総裁選を争った河野氏、高市氏、それに西村氏を入閣させたことは茂木幹事長、萩生田政調会長らと合わせて、ポスト岸田を争わせる戦略との見方が一部にある。

この点について、長老は「岸田首相には、そのような発想はないのではないか。河野氏は専門性、高市氏は保守層へ一定の配慮。総裁選は2年後の話で、衆参両院の選挙を率いて勝利したのは自分だという意識が強いのではないか」と解説する。

 世論とズレ、遠い信頼回復対応

岸田改造政権は、人事でベテランや非主流派にも配慮を示したことで、党内融和、結束力が増す効果が期待できる一方、世論とのズレが大きな問題として残されたままだ。

今回の改造人事は、安倍元首相の銃撃事件をきっかけに浮上した旧統一教会と政界との関係、特に安倍派を中心に自民党との関係が次々に明るみになる中で行われた。

この問題は、安倍元首相の国葬問題にも波及、岸田内閣の支持率急落という負の連鎖に歯止めをかけ、局面の転換を図る狙いがあったものとみられる。

今回の改造で、元統一教会と接点があった閣僚7人は退任した。ところが、新たに任命された閣僚7人も接点があったことが、改造後に次々に明らかになっている。

岸田首相は記者会見で「国民の疑惑を払拭するため、閣僚に対して、当該団体との関係を点検し、厳しく見直すことを厳命した」と強調するが、前の閣僚と、新任閣僚とで対応が違うとなりかねない。

やはり、国会議員任せにせず、党で実態調査を行うとか、宗教団体との関係について、一定の対応基準を打ち出す必要があるとの意見も聞く。

国葬の問題についても報道機関の世論調査で、賛成より反対が上回る状態だ。国葬にした理由、法的根拠などについては、相変わらず、従来の説明を繰り返している。国会で野党との議論を通じて、国民の理解を深めることが必要ではないか。

旧統一教会、国葬の問題について、政府や党の説明が不足している。内閣改造で目先を変えたいという狙いがあるのかもしれないが、真正面から徹底して説明したり、議論したりしないと国民の信頼を取り戻すのは難しいとみる。

 内外に難題、岸田首相の決断力は

最後に、岸田政権の今後の運営はどうなるか。与野党関係者に話を聞くと、政府のコロナ対策について、厳しい批判を数多く聞く。

内閣改造が行われた10日、全国の新規感染者数は25万人で過去最多、感染爆発は止まらない。亡くなる人は251人で、第6波のピークに近いレベルまで急増しており、さらに増加することが懸念されている。

感染者が急増した7月中旬以降、政府が発するのは「経済社会活動との両立、行動制限はしない」とのメッセージばかりで、具体的な感染対策の呼びかけなどは乏しく、与野党関係者は「無為無策だ」と怒る。

7月下旬からの内閣支持率急落は、コロナ対策の失敗が底流にあるのではないかとの見方がある。内閣改造を行っても政権浮揚効果は限定的ではないか。

秋の政治日程は、9月27日の安倍元首相の国葬に続いて、臨時国会が召集され、感染症対策として医療提供体制の整備法案が提出される見通しだ。食品を中心に大幅な物価高騰が進むほか、大型の補正予算案の編成も検討される見通しだ。

さらに年末にかけて、防衛力整備と政府予算の大幅増額という難題が控えている。このほか、冬場の電力のひっ迫などエネルギー問題などの難問にも向き合わなければならない。

安倍元首相の存在がなくなった中で、岸田首相が党内のとりまとめを決断し、国民を説得できるのかどうか。岸田首相の決断力と統率力が試されることになりそうだ。(了)

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岸田首相の求心力は?改造・人事

先の参議院選挙を受けて召集された臨時国会最終日の5日夕方、「岸田首相が内閣改造・自民党役員人事を10日にも実施する」との情報が駆け回り、与野党双方を驚かせた。永田町では、人事はお盆明けの8月下旬から9月前半説が強かったからだ。

今回の人事前倒しの事情・背景は何か。安倍元首相なき政局で、岸田首相の求心力は高まるのか、内閣改造・自民党役員人事で問われる点を探ってみたい。

 人事前倒しの事情・背景は何か

岸田首相は6日、広島の平和記念式典に出席したあと記者会見し「新型コロナ、物価高への対応、ウクライナや台湾情勢、防衛力整備などさまざまな課題を考えると、新しい体制を早くスタートさせたいと常々思っていた」とのべ、内閣改造・自民党役員人事に踏み切る考えを正式に表明した。

岸田首相は早期の内閣改造を考えていたことを強調したが、それならば、7月25日に参議院議員の任期が切れ、引退するため議員資格を失う金子農水相と二之湯国家公安委員長の後任と併せて、内閣改造を行うのが普通ではなかったか。

そのタイミングを見送り、8月下旬以降と見られていた内閣改造・自民党役員人事を前倒しすることに踏み切ったのは、別の事情・背景があったのではないか。

1つは、安倍元首相が銃撃され、亡くなった事件に関連して、容疑者が恨みを抱いていたとされる「世界平和統一家庭連合」旧統一教会と、現職閣僚や自民党議員との関係が次々に明るみになり、世論の批判が一段と強まってきた。

また、岸田首相が事件から日を置かずに決断した安倍元首相の国葬については、政府の説明が不足しているとの指摘が多く、報道機関の調査では国葬の評価は「賛成」よりも「反対」が上回るようになった。

さらに、岸田内閣の支持率が7月下旬に行われた共同通信で12ポイントも減少し、内閣発足以来最低の水準に急落した。日経新聞の調査でも2番目に低い水準まで落ち込んだ。

岸田政権は、こうした旧統一教会問題を沈静化させるとともに、内閣支持率急落の事態を転換するために人事の前倒しを決断したのではないかとみている。

 難題解決への布陣、政権の求心力は

さて、その人事は、注目点が多い。まず、安倍元首相が亡くなったあと、97人が所属する最大派閥の安倍派からの起用はどうなるのか。旧統一教会の問題は安倍派の議員に集中しているが、その影響はどうか。

また、岸田首相と距離を置いてきた二階元幹事長や、菅元首相ら非主流派の扱いも焦点になる。菅元首相の入閣はあるのかどうか、安倍元首相なき後の党内力学がどのように変化するのかも注目点だ。

国民の側からみると一番の関心事項は「難題」に取り組む布陣はどうなるかという点だろう。政府のコロナ感染対応は相変わらず、後手が目立つが、感染危機乗り切りを誰に託すのか。

防衛力整備をはじめ、経済の立て直し、この冬の電力不足やエネルギー対策などのポストに誰が就任するのか。

岸田首相は麻生副総裁らと人事の詰めの作業を進めているが、麻生副総裁、茂木幹事長、松野官房長官ら政権の骨格は維持されるとの見方が有力だ。林外相、鈴木財務相らも続投とみられる。

主要閣僚・党の中枢もこれまで通りとなると、今度は何のための人事なのかという疑問がわく。冒頭に触れたような旧統一教会の問題や内閣支持率急落をかわす小手先の対応かということになりかねない。

そうすると、今回の人事のねらいと「難題」解決に向けた首相自身の構想を併せて、打ち出して国民に説明する必要がある。

一方、岸田首相が率いる派閥は第4勢力で、内閣の要の官房長官と、党の要の幹事長も他の派閥から起用している。政権の意思決定はこれまで通りで問題はないのかという指摘もある。岸田首相を軸にした政権の体制づくりも焦点だ。

お盆前の10日に内閣改造・自民党役員人事が行われ、新たな顔ぶれが決まる見通しだ。この人事で、岸田首相の求心力は高まるのかどうか、政権の浮揚効果が現れるのかどうかも焦点になる。

旧統一教会の問題について、岸田首相は内閣の人事に当たって、点検するよう指示したことを明らかにした。一方、党の方は調査を行うのかどうかはっきりしていないが、党としてもけじめをつける必要がある。

さらに、安倍元首相の銃撃事件については、警察当局の警護の落ち度が指摘されている。警察を所管する国家公安委員長の責任問題は、内閣改造で交代する前に必要な措置をとる必要があるのではないか。

岸田首相は、コロナ感染拡大にウクライナ危機など戦後最大級の政局と位置づけている。そうであれば、人事の最終的な決定とともに難題解決に向けた自らの考え方を明確に打ち出し、国民に説明してもらいたい。(了)

★追記(8月8日21時)NHK世論調査によると◆岸田内閣の支持率は46%で、前回調査より13ポイント下がった。支持率46%は、去年10月の岸田内閣発足後、最も低い。不支持は28%で、7ポイント上がった。◆政府が安倍元首相の「国葬」を行うことについて、「評価する」が36%だったのに対し、「評価しない」は50%だった。◆旧統一協会と政治の関係について、政党や国会議員が十分説明しているかどうかを尋ねたところ、「十分説明している」が4%、「説明が足りない」が82%だった。この調査は、8月5日から7日まで行われた。前回調査は、3週間前の7月15日から18日まで実施。

 

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臨時国会”召集すれど審議なし”

先の参議院選挙を受けて、国会の構成などを決める臨時国会が3日、召集されるが、審議はまったく行われずに3日間で幕を閉じる見通しだ。

安倍元首相が銃で撃たれ死亡するという衝撃的な事件が起き、その余震は今も続いている。一方、コロナ感染は爆発的な拡大が続いており、物価高騰も長期化する公算が大きい。

こうした先行き不透明な情勢の中で召集される国会で、銃撃事件の中間的な報告も、経済・社会に関する審議・質疑も全く行われない国会をどう考えればいいのだろうか。

一言でいえば鈍感。危機感も緊張感も感じられず、驚きを通り越してあきれてしまうというのが正直な受け止め方だ。

今の会期内で短時間でも審議を行ったり、会期を延長したりする考えは本当にないのだろうか。国会を召集する権限を持つ政府に最も大きな責任があるが、与野党の国会議員は自らの役割と責務を果たすため、再考の声を上げてはどうか。

 慣例にとらわれず柔軟な国会運営を

衆議院選挙や参議院選挙が行われ、新しい国会議員が選ばれた後の国会は、新しい議長、副議長、常任委員会や特別委員会の委員長を選出する「院の構成」を行って短期間で終えることが多いことは知っている。

今回も召集日当日は、新人の参議院議員が国会正面から登院し、メデイアのインタビューに応じる光景が繰り広げられるのだろう。それはいいとして、この国会は、院の構成だけで済ませられるほど甘い状況にないことは、与野党の議員の多くが感じていると思う。

ところが、自民党の高木国会対策委員長と、野党第1党・立憲民主党の馬淵国会対策委員長は1日の会談で、この国会の会期は3日から5日までの3日間とすることで、早々と合意した。

また、安倍元首相の国葬は秋の臨時国会に先送りする一方、国葬などについて議論をするため、閉会中審査を行うことで日程調整を進めることになった。

短期にしたのは、自民党としては、岸田首相がニューヨークで開幕したNPT=核不拡散条約再検討会議に出席して演説する外交日程が入ったこと。

8月は広島、長崎の原爆の記念式典に出席する関係で、国会の審議日程を確保するのは難しいと判断したためとみられる。

そうした事情はあるにしても、参院選挙が行われた後の臨時国会で、審議を行った先例はある。

2004年小泉政権時代、あるいは2010年の民主党の菅直人政権の時は、いずれも会期を7月30日から8日間に設定し、衆参両院で本会議を開いたり、予算委員会を開催したりして質疑を行っている。

仮に先例がなくても与野党が合意すれば質疑はできる。先人たちは、その時々の情勢に応じて、慣例にとらわれずに柔軟に対応してきたことを学ぶべきだ。

 国葬、感染爆発対策、首相自ら説明を

それでは、国会の対応のあり方などをどう考えたらいいのか。選挙応援演説中の首相経験者が、兇弾に倒れる前代未聞の事件が起きた。警察当局の警護の不手際も指摘されているが、国会で経緯の報告もなされていない。

また、容疑者の動機や背景に「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会の存在が指摘されているほか、この旧統一教会と政治との関わり、現職閣僚や自民党議員の数多くの関係も明るみになりつつある。

政府は、安倍元首相の葬儀を国葬で行うことを閣議決定したが、国葬で行う法的根拠や手続きなどをめぐって、世論の賛否の意見が分かれている。

また、国民の受け止め方は、事件の背景を含め全容を明らかにするよう求める意見が強まっている。

こうした状況を考えると、まずは、岸田首相が国会で安倍元首相の死去を報告するとともに、政府が国葬にすることにした考え方などを説明することから始める必要がある。

また、この事件に関連して、旧統一教会と与野党の国会議員との関係はどうだったのか、実態調査の進め方などについても議論する必要があるのではないか。

岸田首相は先に旧統一教会と自民党議員との関係について「丁寧な説明を行っていくことは大事だと思っている」とのべた。

この発言は、議員個人の問題と聞こえるが、自民党の場合、関わりのあったと指摘された議員の多さを考えると、党として事実関係の調査を行う必要があるのではないか。

このほか、コロナ感染の爆発的な拡大と医療のひっ迫への対応、今後の物価高騰対策の中身はどうなるのか、国民の関心は極めて大きい。こうした点を含め、岸田首相は、国会審議を通じて政府の方針を明らかにすべきだと考える。

7月末に行われた共同通信の世論調査で、岸田内閣の支持率は51%で、参院選挙で大勝した前回調査から12ポイントも急落し、内閣発足以来最低となった。安倍氏の国葬についても「賛成」は42%で、「反対」が53%と上回っている。

こうした世論の反応は「国葬についての説明はなく、感染危機対応のメッセージも発しない岸田首相に対する厳しい評価の表れ」と思われる。

加えて、臨時国会で報告や質疑もないとなると、首相の信頼感を失うことになるのではないか。岸田首相は戦後最大級の難局と受け止めているのであれば、逃げずに真正面から、自らの考えを国民に訴える局面ではないかと考える。(了)

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感染爆発”やはりブレーキが必要”岸田政権

新型コロナの”感染爆発”に歯止めがかからない。新規感染者数は28日、東京では初めて4万人を超え、全国でも23万人と過去最多を更新した。

岸田政権は、感染抑制と社会経済活動の両立をめざしてきたが、このところ、感染拡大期に、濃厚接触者の待機期間を短縮するなどチグハグな対応が目立つ。

ここは、やはり感染抑制へブレーキを踏み込む時期ではないか。岸田政権のコロナ対応を緊急点検する。

 ”フェーズが変わった”日本世界最多

感染状況を振り返っておくと新規感染者数は7月1日時点で、東京で3500人余り、全国では2万3100人台に止まっていた。死者は21人、重症者数は52人と低い水準だった。

ところが、全国の新規感染者数は15日に10万人を突破、20日に15万人、23日には20万人と加速度的に増え、27日には20万9600人で過去最多となった。第6波のピーク時の2倍の水準だ。

東京では28日、1日当たりの感染者数がついに4万406人に達した。今月に入り1か月近くで11倍も増えた。全国では、23万3000人余り、過去最多を更新した。

日本の感染者数は、欧米諸国に比べて格段に少なかったが、WHO=世界貿易機関が27日にまとめた報告書では、24日までの1週間当たりの新規感染者数では、日本は97万人で、世界で最も多くなっている。

アメリカは86万人、ドイツは56万人だ。フェーズが大きく変わり、日本は欧米に比べて感染者数が少ないとは言い切れなくなった。

 感染拡大期に緩和”チグハグ対応”

岸田政権のコロナ対応だが、先の参院選挙で自民党が大勝したのを受けて、岸田首相は14日に記者会見し、今後の対応策を明らかにした。

この中で岸田首相は、感染状況について「感染が全国的に拡大しているものの、重症者数や死亡者数は低い水準にある」と説明し、新たな行動制限を行うことは考えていないと表明した。

一方、社会経済活動と感染拡大防止の両立を維持するため、世代ごとにメリハリの効いた感染対策をさらに徹底すると強調した。

具体的には、4回目のワクチン接種について、すべての医療従事者と高齢者施設のスタッフなどおよそ800万人にも対象範囲を拡大し、接種を始めると明らかにした。

そのうえで、岸田首相は22日、後藤厚労相などと協議し、社会経済活動を維持していくため、濃厚接触者に求める待機期間をこれまでの原則7日から5日間に短縮し、さらに2日目と3日目の抗原検査が陰性であれば、3日から待機を解除できることを決めた。

こうした対応をどう評価するか。まず、行動制限を求めないという方針はやむを得ない措置だと思う。仮に緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置を出しても、感染抑制にどこまで効果があるか疑問だからだ。

問題は、政府や自治体の説明では、重症者や死亡者などは低水準との認識だが、状況は厳しくなっている。27日時点で全国の死者は129人、重症者は311人、7月1日と比べると6倍前後も増えて折り、状況認識に甘さを感じる。

また、医療への影響も大きくなっている。28日には「重症確保病床の使用率」が東京都で53%となったほか、「確保病床使用率」も沖縄、神奈川、静岡、大阪、福岡、熊本など20都府県で50%以上の警戒ラインを上回っている。

こうした医療のひっ迫状況を考えると今は感染抑制に向けて、ブレーキをかける局面だ。岸田政権の対応は、感染が急拡大している時に、待機期間短縮の緩和策を打ち出すなどチグハグな対応が目立つ。これでは危機感は伝わらない。

さらに東京では、発熱外来はパンク状態、PCR検査はなかなかできない、抗原検査キットも薬局で手に入らないとの声を身近なところでも数多く聞いた。

検査、診察、自宅療養へのサポートも期待できず、健康管理の仕組みが目詰まり状態だ。政府は最悪の事態を想定して備えを進めていると強調してきたが、実態はこれまでと同じく「後手の対応」を繰り返している。

新たな問題としては、感染や濃厚接触者が増えて、医療、保育だけでなく、JR九州では乗務員の確保ができず列車の運転が休止になったり、郵便局の窓口業務ができなくなったりするなど社会活動に影響が広がり始めた。

岸田首相は、参院選の期間中は、特に経済活動重視の姿勢が感じられたが、この感染爆発の局面では、感染抑制へカジを切った方がいいのではないか。

 感染抑制の具体策と首相の実行力

これからのコロナ対策を考えると、今回の感染では、比較的軽症の人が多いのも事実だ。軽症な人は自宅で療養してもらう一方、症状の重い人は入院・治療にアクセスしてもらうなどの取り組みを進める必要がある。

また、抗原検査キットの配布はじめ、自宅療養者への支援体制などはどうするのか、政府と自治体が連携して、具体的な改善策を早急に示してもらいたい。

さらに、高齢者や医療従事者などへのワクチン接種の4回目と、若い世代への3回目のワクチン接種の促進も重要だ。

緊急事態宣言など行動制限を求めないのであれば、症状に応じた具体的な感染抑制対策や、メッセージなどの発信に一段と力を入れて取り組むべきだ。今の岸田政権には、こうした力強さが感じられない。

今回の感染急拡大は、感染危機対応が、岸田政権にとって引き続き最重要課題の1つであることを示している。具体策を早急に打ち出し、感染拡大を押さえ込めるのか、岸田政権の評価を大きく左右することになる。

参院選後の政治は、安倍元首相なき後、岸田首相が独力で主導権を発揮できるのかどうかが焦点だ。コロナ感染急拡大は、岸田首相の実行力と、政権の求心力がどの程度のものかを占う試金石の意味を持っている。(了)

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