石破首相続投表明と世論の風向き

参院選の大敗を受けて自民党の両院議員総会では、総裁選の前倒しを求める意見が相次ぎ、臨時の総裁選挙を行うかどうか総裁選管理委員会で検討を進めることになった。党内では総裁選の前倒しを通じて、石破首相へ退陣圧力を強めようとする動きが目立つ。

こうした中で、NHKの8月世論調査によると、石破首相が続投の意向を表明していることについて「賛成」が「反対」を上回った。また、自民支持層では「賛成」が7割近くを占めた。

このように自民党所属の国会議員と世論の評価が分かれたことに加えて、自民党の国会議員と自民支持層との間でも評価が異なるようにみえる。こうした理由、背景には何があるのか。また、石破首相の進退問題は今後、どのような展開になりそうなのか考えてみたい。

 続投賛成69%、反対23%自民支持層

さっそくNHKの8月の世論調査(8月9~11日実施、有効回答42%)からみていきたい。まず、石破内閣の支持率は38%で、7月調査より7ポイント上がった。不支持率は45%で、8ポイント下がった。

石破首相が参院選の敗北後、「政治空白をつくってはならない」として続投の意向を示していることについて、賛否を尋ねたところ「賛成」が49%で、「反対」の40%を上回った。

支持政党別にみると、自民党の支持層では「賛成」が69%に上り、「反対」の23%を大きく上回った。

野党支持層では「反対」が55%で、「賛成」の39%より多かった。無党派層では「賛成」と「反対」がどちらも43%で拮抗した。

年代別では、40代以下では「反対」が6割前後で「賛成」を上回ったが、50代では賛成47%、反対48%で拮抗。60代以上は「賛成」が5割から6割に達し、「反対」を上回った。

このように世論全体では、石破首相の続投について「賛成」が「反対」を上回った。また、自民支持層に限ってみると7割近くが「賛成」しているのは、どのような理由、背景があるのだろうか。

自民党関係者に聞いてみると「参院選の敗北については、石破首相の責任だけでなく、自民党自体に問題があると受け止めているのではないか。また、石破首相の退陣を求める議員には、裏金問題を起こした旧安倍派の議員や旧派閥の幹部が関与していることが影響しているのではないか」との見方をしている。

このほか、「日米関税交渉の仕上げ段階で、首相を交代させるのは望ましくない」との受け止め方や、「自民党内の主流と、非主流の権力抗争という冷めた見方が影響しているのではないか」といった見方も聞かれる。

一方、自民党の長老は「石破内閣の支持が上昇したといっても6月の水準に戻っただけだ。支持率より不支持率が上回る状況が改善されたわけではない。去年の衆院選に続いて、参院選でも大敗した政治責任が解消されるわけではない」との見方を示す。

臨時総裁選と首相進退、来月ヤマ場か

それでは、今後の展開はどのようになるのだろうか。自民党は参院選敗北の要因などの分析を続けており、最終報告がまとまるのは8月最終週になる見通しだ。

もう一つの臨時の総裁選を行うかどうかについては、この問題を扱う総裁選管理委員会の委員の欠員を補充する作業があるほか、総裁選の前倒しは初めてのケースで検討に時間がかかるため、結論が出るのは9月に入るのではないかとみられている。

一方、森山幹事長は参院選総括の報告書がまとまった段階で、自らの責任を明らかにするとしている。このため、参院選の総括と臨時総裁選の扱い、それに党執行部の責任問題に最終的な結論が出るのは、9月上旬になる見通しだ。

その場合、石破首相としても自らの政治責任や、党の執行部体制や運営方針を明らかにする必要があるため、9月上旬が当面のヤマ場になるのではないか。

その後の動きは、石破首相の進退と臨時の総裁選が行われるのかどうかによって変わってくる。仮に臨時の総裁選を行う場合でも、今回の世論調査では石破首相の続投に賛成する意見が多いことから、単なる首相の交代だけに終わっては新総裁が世論の支持を得るのは難しい。

したがって、参院選の総括では選挙戦術や体制だけでなく、主要政策の提起や、政権与党としての役割を果たせたのか、さらには積年の党の体質まで踏み込んだ分析とこれからの党再生の方向性を打ち出せるのかが問われるのではないか。

自民党はこの秋に結党70年を迎えるが、衆参両院で過半数を失ったのは結党以来、今回が初めだ。政権与党として党の態勢立て直しはできるのか、危機的状況を迎えているようにみえる。(了)

★追記(20日23時)自民党は19日、総裁選管理委員会を開き、臨時の総裁選挙について、その是非を判断する手続きの議論を始めた。臨時の総裁選挙の実施を求める議員には、書面で申し出てもらう方向で検討を進めることになった。選挙管理委員会は、24日の週にも会合を開き、書面を提出する方法や、提出した議員を公表するかどうかなどの具体的な検討を行う。そして、執行部が今月末をめどにまとめることにしている参院選の総括が終わり次第、手続きに入りたい考えだ。

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石破首相の進退、3つのポイント

参院選挙の大敗を受けて自民党は8日、両院議員総会を開き、石破首相は「アメリカとの関税交渉は合意に達したが、実行にあたりさままざまな問題を抱えている」などとして、続投の意向を重ねて示した。

これに対し、総会では総裁選の前倒しの実施を求める意見が相次ぎ、総裁選挙管理委員会で今後の対応の検討を進めることになった。石破首相の進退問題は、今後、どのような展開をたどることになるのか、探ってみたい。

 総裁選前倒しの動きは強まるか

先月28日に開かれた両院議員懇談会は4時間半に及んだが、今回の両院議員総会はおよそ2時間で終わった。石破首相と森山幹事長の挨拶の後、総会は非公開で行われ、石破首相の下で党の結束を呼びかける意見が出された一方で、総裁選挙の前倒しの実施を求める意見が相次いだ。

そして、両院議員総会には、総裁選の前倒しを決める権限がないことから、総裁選を前倒しするかどうかの判断を総裁選挙管理委員会に一任することを決めた。

総裁選の前倒しは党則第6条に規定されている。党所属議員と都道府県連の代表各1人を合わせた総数の過半数の要求があれば、総裁選を行うと定めている。事実上の総理・総裁のリコールの規定ともいわれ、石破首相の退陣を求める意味を持っている。

このため、石破首相の進退問題は、総裁選の前倒しを求める動きが強まるかどうかが第1のポイントになる。これまで総裁選前倒しは行われたことがないため、どのような方法で、議員や都道府県連代表の意思を確認するのかなどについて、逢沢一郎総裁選管理委員長の下で検討が進められることになる。

 参院選の総括と政治責任の取り方

2つ目のポイントとしては、参院選を総括する報告書がまとまった段階で、石破首相と自民党執行部が政治責任について、どのように判断するかが焦点になる。

選挙総括の報告書がまとまるのは、8月の最終週になる見通しだ。森山幹事長は報告書をとりまとめた段階で、自らの責任を明らかにするとしていることから、幹事長を辞任するものとみられる。

その場合、石破首相は党総裁としての政治責任をどのように判断するのか問われることになる。一方、仮に石破首相は続投することになった場合も、森山氏の後任に有力な幹事長を起用できるかどうかが問題になる。

さらに9月の自民党役員人事と合わせて内閣改造を行う場合、党内の協力が得られるかどうかも大きな問題になりそうだ。

石破首相が自らの政治責任と今後の政権運営についてどのような判断をするか、8月下旬以降、石破首相の進退問題が再び大きなヤマ場を迎えることになりそうだ。

少数与党、国会・政権運営の戦略

さらに石破政権と自民党は衆参ともに与党過半数割れという厳しい状況の中で、国会や政権をどのように運営していくか政権運営の展望と戦略が問われている。これが3つ目のポイントだ。

参院選の公約などを実現するため、10月には秋の臨時国会を召集することになる。衆参両院ともに与党は過半数割れしているため、補正予算案や法案を成立させるためには野党の協力なしには1件の法案、予算案も成立しない厳しい状況にある。

自公連立を維持したうえで、野党の一部に連立への参加を求めることが考えられるが、野党各党はいずれも石破政権に距離を置いており、連立の枠組みを拡大するのは難しい情勢だ。

このため、石破政権の続投で秋の臨時国会に臨むのか、それとも石破首相の退陣、新しい総理・総裁の下で難局の乗り切りをめざすのか、自民党内の動きが活発になる見通しだ。

一方、仮に石破首相が退陣し後継の新総裁を選出しても衆参ともに与党は過半数割れしているため、新総裁が必ず首相になれるとは限らない。また、国会の運営でも主導権を確保できる保証はない

報道各社の世論調査をみると参院選の自民党大敗の原因は、石破首相個人の責任というよりも自民党に問題があると考えている人が多数を占めている。このため、自民党の政党支持率も長期低迷状態が続いている。

こうした背景には、裏金問題をはじめとする「政治とカネの問題」をいつまでも引きずる”古い政党”というイメージを持たれていることがある。また、経済政策や子育て、教育、社会保障などの面でも斬新な政策は期待できないという厳しい評価が影響している。こうした点を自民党は重く受け止める必要がある。

以上3つのポイントを見てきたが、石破首相にとっては続投の道は極めて狭く、険しいことがわかる。一方、自民党内も非主流・反主流の立場の議員が自らの復権をねらって党内抗争を仕掛けるような場面が出てくると国民から完全に見放されることになるだろう。

今年秋には結党70年を迎える自民党が石破政権が党の立て直しに向けて、どのような対応、方針で臨むのか、8月末に向けた動きをじっくり見極めたい。(了)

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”首相続投”対”早期退陣”対立深まる自民党

参院選挙で大敗した自民党は28日午後、自民党本部で両院議員懇談会を開いた。冒頭、石破首相は参院選挙の結果について陳謝したあと、「アメリカの関税措置をめぐる日米合意を着実に実行し、責任を果たしていきたい」と訴え、続投に理解を求めた。

これに対して、出席者からは続投を支持する意見が出された一方、「去年の衆院選に続いて、参院選でも大敗した責任を明らかにすべきだ」などとして、早期退陣を迫る意見が相次いだ。午後3時半に始まった懇談会は、予定時間を大幅に上回り、4時間半に及んだ。

両院議員懇談会終了後、石破首相は記者団に「果たすべき責任を果たしていきたい」とのべ、重ねて続投に意欲を示した。退陣を求める議員側も、党の正式な機関である両院議員総会の開催を求め、石破首相の退陣を迫る構えで、双方の対立は一段と深まった。

一方、報道各社の世論調査で、石破首相は参院選挙の責任をとって「辞めるべきだ」という意見と「辞める必要はない」とする意見が拮抗していることも明らかになった。こうした世論の反応をどのようにみたらいいのか、自民党内の対立はどのような展開になるのか、考えてみたい。

議員懇談会64人が発言、退陣論噴出

両院議員懇談会からみていくと石破首相と森山幹事長の挨拶のあと、懇談会は非公開で行われた。自民党所属議員の236人が出席し、このうち64人が発言した。

出席した議員の話によると「発言した64人のうち、続投を求めた議員は7人か、8人程度で、退陣を求めた議員は20数人に上った」と話しており、石破首相の責任の明確化や退陣を求める意見が噴出したというのが実態に近いようだ。

具体的な意見としては「選挙の結果責任は、誰かが取らなければいけない。組織のトップや執行部がケジメをつけるべきだ」「去年の衆議院選挙、6月の東京都議会議員選挙、参議院選挙でも大敗となった。組織の長、執行部にはケジメをつけてもらいたい」、「いつケジメをつけるのか、早く示してもらいたい」などの意見が相次いだとされる。

「辞任」「必要ない」分かれる世論

世論は、石破首相の進退をどのように考えているのだろうか。報道各社が26、27両日に行った世論調査によると◆朝日新聞では「辞めるべきだ」が41%に対し、「その必要はない」が47%で上回った。自民支持層だけに限ると「辞めるべきだ」が22%で、「その必要がない」が70%と多数を占めるという。

◆毎日新聞では「辞任すべきだ」42%、「必要ない」33%、◆産経新聞では「辞めるべきだ」47.7%、「必要ない」44.2%となった。社によって数字に違いはあるが、「辞めるべきだ」と「必要ない」が拮抗している点で共通している。

各社の世論調査では石破内閣の支持率は30%前後に対し、不支持率は60%と圧倒的に多数を占めている。だが、首相の進退については「辞任の必要はない」とする意見がかなり多いのはどうしてなのだろうか。

こうした結果になった理由について、調査では質問した項目はないが、幾つかの要因が考えられる。まず、今回の参院選挙結果の敗因は、石破首相個人の問題だけでなく、自民党全体に問題があると捉えていることが考えられる。

あるいは、日米関税交渉が合意にこぎ着けたばかりで、詰めの話し合いも予想される中で、退陣を急いで行う必要はあるのかとの見方も予想される。

もう1つは、退陣を求めている側に旧茂木派や旧安倍派、麻生派の議員が目立つことから、世論の側は裏金問題や権力闘争絡みの動きではないかとみて、不信感や疑念を抱いていることが影響していることが考えられる。

さらに、政権が交代する場合、次のリーダーや勢力に信頼を置くことができるのかどうか見定めたいという考えがあるのではないか。

いずれにしても世論の側には「政党や政権は、顔を代えるだけでは不十分で、リーダーを含めた政治勢力としての能力、資質、主要な政策などをじっくり判断したい」という姿勢が世論調査から読み取れる。

石破首相進退、8月下旬がヤマ場か

それでは、今後の展開はどのようになるのだろうか。森山幹事長は懇談会の冒頭に「選挙結果を踏まえ『参議院選挙総括委員会』を設置し、8月中をメドに報告書をとりまとめたい。まとまった段階で、幹事長としての自らの責任を明らかにしたい」との考えを示した。

森山幹事長は懇談会終了後、記者団に対し「両院議員総会については、29日の役員会で、開催する方向で協議したい」との考えを示した。

また、選挙の総括の報告書をとりまとめた後の責任には進退が含まれるのかとの質問に対し「そういうことを含むと考えている。党内には幹事長が責任をとれという意見があり、真摯に耳を傾けないといけない」とのべた。

この森山幹事長の発言は、選挙総括の報告書がまとまった段階で、自ら辞任する考えを示したものとみられる。

そこで、石破首相の進退問題はどうなるか。石破首相は続投に意欲を示しているものの、去年の衆院選に続いて、参院選でも与党が過半数割れしたことから、今の自民党の状況からすると、石破首相が政治責任を取る形になるのは避けられないのではないか。

8月は、1日からの臨時国会の召集や、広島、長崎原爆の日、終戦記念日の行事など重要な政治日程が続く。それに加えて、参院選の総括の報告書がまとまるとみられる8月下旬には、森山幹事長だけなく、石破首相の決断も迫られる可能性が大きいとみられる。

一方、総理・総裁が責任をとって辞任する場合も、自民党はこれまでと同じように首相の顔を取り替えれば、いずれ世論の支持が回復するような時代ではなくなっていることを認識する必要がある。既に衆参ともに多数派からは転落しているからだ。世論の視線も一段と厳しさを増している。

自民党は、世論の評価が厳しい「政治とカネの問題」など懸案の対応、日米関税合意への取り組み、物価高騰対策と日本経済の新たな成長戦略などを提示できない場合は、政権与党の座から滑り落ちるおそれがあるという危機感が今も乏しいのではないか。

先の参院選を受けて自民党が党の再生に向けて本格的に動き出すのか、それとも党内抗争を繰り返すことになるのかどうか、8月末にかけての動きを注視していきたい。

★追記(7月29日22時)自民党は29日の役員会で、参院選挙の敗北を受けて党内から開催を求める意見が出ていた「両院議員総会」を開くことを決めた。党執行部は8月第2週の後半にも開催する方向で調整を進めている。「両院議員総会」は、28日の両院議員懇談会とは異なり、党の正式な意思決定機関。党の運営や国会活動における特に重要な事項を審議、決定するとされている。石破首相の早期退陣を訴える議員らは、この場で石破首相の政治責任を取り上げて、退陣につなげたい考えだ。石破首相は記者団に「丁寧に真摯に、逃げずに説明するということに尽きる」とのべた。

★追記(7月31日22時)自民党は31日、参院選挙の敗北を分析する総括委員会の初会合を開き、選挙公約やSNSの活用を含む広報のあり方などについて検証したうえで、8月中に報告書をまとめる方針を確認した。一方、8月8日午後2時半から党本部で、「両院議員総会」を開くことを党所属議員に通知した。議題については「参議院選挙の総括と今後の党運営」としている。(了)

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参院選自公大敗、石破首相続投表明も政局流動化へ

20日投票が行われた第27回参議院選挙で自民・公明両党は、議席数を大幅に減らして大敗した。与党は衆議院に続いて、参議院でも過半数を維持できないことになった。自民党を中心とする政権が衆参両院で過半数割れするのは、1955年の結党以来初めての事態になる。

野党側は第1党の立憲民主党と、日本維新の会はそれぞれ改選議席を維持、または上回る議席を得たが、伸び悩んだ。これに対し、国民民主党と参政党は大幅に議席を増やして躍進した。

こうした中で石破首相は21日午後、自民党総裁として記者会見し「今、最も大切なことは国政に停滞を招かないことだ」として、首相を続投する意向を正式に表明した。

これに対して、自民党内には「党の総裁として政治責任を取るべきだ」として退陣を求める声が出始めている。参院選の結果をどのように見るか、参院選挙後の政治はどのように展開することになるのか探ってみたい。

 与党過半数割れ、政権不信が直撃

さっそく、今回の参議院選挙の結果をどのように評価するか、与党からみていきたい。自民党は選挙区で27、比例代表で12の合わせて39議席となった。この議席数は1989年宇野政権の36議席、第1次安倍政権の37議席に次ぐ3番目の少なさだ。

参院選の勝敗は、1人区の攻防がカギを握っている。自民党はこの1人区で圧倒的な強さを発揮してきたが、今回自民党は14勝18敗に終わった。3年前の参院選は28勝4敗だったので、勝ちが半分に落ち込んだ。

政党の勢いが反映する比例代表選挙をみると今回の12議席は、野党に転じた2010年と同じ過去最低の議席数だ。得票数は1280万票で、前回選挙から546万票も減らした。

敗因については、最大の焦点になった物価高騰対策で、コメの高騰が去年の夏以降続いたのに対応が終始、後手に回った。1人当たり2万円の現金給付も打ち出したが、国民に選挙目当てと見透かされて評価は極めて低かった。

また、先の通常国会では、懸案の企業団体献金が先送りになったほか、トランプ関税に対する日米交渉でも思うような成果が出せず、説明も行われなかった。石破政権に対応能力はあるのか、自民党は耐久年数が過ぎてしまったのではないかと国民の不満、不信が政権与党を直撃したことが敗因になったのではないか。

自民党の長老は「去年の衆議院選挙の総括、反省がなされてこなかったのではないか。これでは、国民の信頼を信頼を得るのは難しく選挙には勝てない」と厳しい評価をしている。

公明党は選挙区、比例代表ともに4議席ずつの8議席に止まった。改選は14議席だったので、6議席も減らしたことになり、過去最低の議席数となった。

自公連立政権が発足してから四半世紀になる。両党とも政権運営がマンネリ化しており、主要な課題を解決していく意思と能力があるのか、厳しく評価されたのが今回の選挙だったように思う。

 野党は多党化、躍進・退潮の明暗も

これに対して、野党の選挙結果はどうか。野党第1党の立憲民主党は、選挙区が15、比例代表が7の合わせて22議席を獲得した。1人区を中心に反自民票の一定の受け皿にはなったが、獲得議席は改選議席と同数に止まった。

日本維新の会は、選挙区が3、比例代表4の合わせて7議席で、改選議席を2つ上回った。だが、前回の比例代表では8議席を獲得したことを考えると半減し伸び悩んだ。

これに対して、国民民主党は選挙区10、比例代表7の合わせて17議席で、改選議席を4倍以上も増やした。比例代表の得票数でも762万票、前回から2.4倍も増やした。参院候補者の選考などをめぐって一時の勢いを失ったが、「手取りを増やす」という主張が若い年代を中心に支持を広げた。

参政党も選挙区、比例代表ともに7議席ずつの合わせて14議席を獲得した。改選議席1から、一気に大幅に議席を増やした。比例代表でも745万票を獲得し、立民を上回った。

参政党は「日本人ファースト」を掲げ、20代、30代の若い世代の他、40代から60代の中高年まで支持を広げたことが世論調査で読み取れる。自民党支持層にも食い込んで支持を広げており、こうした傾向が持続するのかどうか注目される。

れいわは3議席を獲得、改選議席2から増やした。共産党は3議席で、改選議席7から大きく減らした。日本保守党は2議席、社民党は1議席、「チームみらい」も1議席を獲得した。

このように野党については、立憲民主党は改選議席を確保したものの、多党化が進んでいる。また、躍進した政党がある一方、議席減や伸び悩みの政党もあり、野党の足並みがそろうのは容易ではないのも事実だ。

石破政権の不安定化、自民党内政局も

参院選挙の結果を受けて、石破首相は21日の記者会見で「極めて厳しい審判をいただいた。有意な同志が議席を失い痛恨の極みだ」とのべる一方、「比較第1党としての責任、国家・国民の皆さまに対する責任を果たしていかなければならない」とのべ、首相を続投する意向を正式に表明した。

また、石破首相は執行部の責任について「みんなで全身全霊、対応してきた」として、執行部を続投させる考えを示した。

さらに、今後の政権運営について「連立の枠組みを拡大する考えを持っているわけではない」とのべるとともに衆参両院で少数与党になる中で、政策ごとに合意形成を図っていく考えを強調した。

これに対して、自民党内からは「去年の衆院選挙で敗北、6月の都議選で過去最低の議席、さらに参院選敗北の3連敗では、首相の政治責任を問わざるを得ない」として、石破首相の退陣を求める声が出始めている。

一方で、アメリカ政府が対日関税25%を課す期限を8月1日に設定していることや、終戦記念日関連の行事も抱えており、首相交代を求めるのは難しいとの声も聞く。

石破首相は「両院議員懇談会などの機会を設け、国会議員だけでなく、地方組織の声も丁寧に対応していく」との考えを示し、党内を説得する構えだ。

こうした石破首相の対応について、自民党の長老に聞いてみると「選挙で敗北した以上、総理・総裁は出処進退を明らかにするのが筋だ。首相自ら非改選を含め与党で過半数確保を表明した以上、けじめをつけた方がいい」と指摘する。

また、「首相がこのまま続投した場合、次の衆院選でも敗北を続けることになりかねない。いったん区切りをつけて、党のあり方や政権構想などを練り直した方がよい」との考えを示している。

自民党執行部は今月31日に両院議員懇談会を開き、党所属議員から意見を聞くことにしているが、党内では今後、国会議員や地方組織などから、石破首相の政治責任を問う動きが強まることが予想される。”自民党内政局”がこれから始まり、政局は流動化してくる見通しだ。

一方、野党側の幹部からは、石破首相から連立の枠組みへの参加を求められても応じる考えはないとする考えが示されている。立憲民主党の野田代表は「民意は石破首相にノーという審判を示した。続投の意思表明にしては説得力がなさ過ぎる」と批判し、石破政権と対峙していく考えを表明した。

野党各党にとっても石破政権とこれまでと同じように個別の政策協議に応じていくのか、野党内の連携を深めて政権と対峙していくのか問われることになる。また、野党側は衆参両院で多数を占めることになったので、主要政策や国会運営などについても責任ある対応を求められる。

参院選を受けて議長などを決める臨時国会が8月1日にも召集される見通しだ。衆参両院で多数を占める野党側の要求で、物価高対策などをめぐって石破首相と与野党の論戦が交わされることも予想される。

内外情勢が激動する中で、石破政権と与野党は日本が抱える主要課題について、どのような方針で臨むのか、国民の不安を払拭できるような突っ込んだ議論と対応を強く注文しておきたい。

★追記(23日22時)◆石破首相は23日午前、首相官邸で記者団に対し、アメリカの関税措置について、トランプ大統領との間で合意に至ったことを明らかにした。相互関税を25%から15%に引き下げるとともに、自動車関税についても既存の税率を含めて15%とすることで合意したと説明した。そのうえで「対米貿易黒字を抱える国の中で、最も低い数字となる」と成果を強調した。                 ◆石破首相は23日午後、自民党本部で、麻生最高顧問、菅副総裁、岸田前首相の首相経験者と会談した。この後、石破首相は記者団に「一部の辞任報道は事実でない」と否定したうえで、続投する考えを重ねて示した。自民党は、参院選挙の敗北を受けて、党所属議員から意見を聞く「両院議員懇談会」を今月28日に前倒しして開くことになった。自民党の中堅議員や地方県連からは、石破首相の退陣や執行部の刷新を求める意見が相次いで出されている。(了)

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”自民苦境、与党過半数困難な情勢”2025参院選

参議院選挙は20日の投開票日に向けて、各党とも最後の追い込みに入っている。ここまでの選挙情勢をみると自民党は選挙区だけでなく、比例代表でも勢いがみられず、苦しい戦いに追い込まれている。公明党も複数区で競り合いが続いており、改選議席の確保は厳しい情勢だ。

これに対して、野党側は立憲民主党が手堅い戦いを続けているほか、国民民主党と参政党の動きが活発で、特に参政党は支持率で第3位に急浮上するなど台風の目になっている。

こうした結果、自民、公明の与党が非改選を含め過半数を確保するのは難しい情勢になっている。最終盤に入った参院選情勢を報告したい。

 自民支持率大幅減、参政党が侵食

参議院選挙について、NHKが1週間おきに行っているトレンド調査の第3回調査結果(11~13日実施)がまとまったので、そのデータからみていきたい。

自民党の支持率は24.0%で、1週間前の第2回調査から4.1%下がった。1週間ごとに行うトレンド調査で、4ポイント余りも支持率が下落するのは異例で、自民党を取り巻く情勢の厳しさが鮮明になった。

自民党の支持率は6月月例調査(6月6~8日実施)で31.6%で、続くトレンド調査の第1回(6月27日~29日実施)で27.0%、第2回(7月4~6日実施)で28.1%だった。今回24.0%だったので、この1か月余りで7.6Pも下落したことになる。

一方、公明党の支持率は3.5%で、第1回調査の3.8%からほぼ横ばい状態が続いている。但し、前回・3年前の参院選での同時期は4.8%だったので、当時と比較すると低下している。

これに対して、野党各党のうち立憲民主党は7.8%で、前回調査とほぼ同じ水準を保っている。日本維新の会は3.1%で、前回調査から0.8P上がっている。

一方、国民民主党は4.9%で、トレンド調査第1回の5.8%から低下しているが、3年前の参院選当時は1.4%だったので、大幅に支持率を伸ばしている。

参政党は今回5.9%で、維新や公明、国民民主党を上回り第3位に急浮上した。6月月例調査で1.9%、トレンド調査第1回で3.1%、第2回で4.2%、そして今回第3回が5.9%なので、短期間のうちに支持率が急拡大したことがわかる。

参政党の支持層を年代別にみるとトレンド調査の第1回と第2回目までは、18歳以上を含む20代と、30代の若い年代の支持が目立った。第3回調査になると30代では国民民主党と並んで10.3%を占めて1位、40代では8.0%の3位、50代では10.2%で自民党に次いで2位、60代では5.8%で3位を占めている。

このように参政党の支持層は選挙の序盤では若い年代が主流だったのが、中盤からは40代以上の中高年に支持が広がっている。一方、自民党の支持層をみると同じ中高年世代では支持率が低下している。つまり参政党は、中高年世代を中心に自民党の支持層を侵食していることが読み取れる。

このほか、共産党は3.0%で前回調査からほぼ横ばいの状態にある。れいわ新選組も2.8%でほぼ横ばいだ。日本保守党は1.4%、社民党は0.7%となっている。

自公苦境、与党過半数は困難な情勢

それでは、以上のような各党の党勢を踏まえたうえで、選挙での獲得議席はどうなるだろうか。与野党の関係者の情報を総合すると次のような情勢が浮かび上がってくる。

自民党は、前回・3年前の比例代表選挙では18議席を獲得したが、今回は大幅に議席を減らす見通しだ。過去最も少なかった12議席前後まで落ち込む見通しだ。選挙区選挙のうち、2人以上の6人区までの複数区では13前後確保する見通しだが、これまで強みを発揮してきた1人区では厳しい情勢に追い込まれている。

全国で32ある1人区について、自民党は序盤戦では10程度の選挙区で優位に戦いを進めていたが、中盤になると接戦に持ち込まれる選挙区も出ている。最終的には、二けたの議席を確保できるかどうかという苦境に立たされている。

公明党はこれまで選挙区、比例代表ともに全員当選を続けることが多かったが、今回は比例代表の改選議席7を維持することは難しく、選挙区でも東京以外では厳しい戦いを強いられている。改選議席14の確保は難しい情勢だ。

自民、公明両党は、非改選を含め与党で過半数を確保するためには50議席が必要だが、今の選挙情勢が続けば、自民党は30台半ば、公明党は10議席前後に止まる見通しだ。このため、与党で50以上の議席を確保するのは難しい情勢にある。

 立民は堅調、国民・参政は躍進か

野党側の情勢は、どうだろうか。野党第1党の立憲民主党は、1人区や複数区では反自民票の受け皿となっている。一方、比例代表については支持の広がりがみられず、伸び悩んでいる。このため、改選議席の22から一定程度上積みし、20台後半の議席を獲得する見通しだ。

国民民主党と参政党は、大幅に議席を増やす見通しだ。このうち、国民民主党は3年前の参院選当時の支持率は1.4%程度だったが、今回は5%前後まで支持を広げている。比例代表で7議席前後、選挙区でも2ケタに近い議席獲得が見込めることから、目標の16議席前後まで議席を増やし躍進する可能性がある。

参政党は先の党勢でみたように投票日1週間前のトレンド調査では、自民、立民に次ぐ第3位まで支持率を伸ばしている。選挙区では、東京で議席獲得が有力になっているほか、大阪、埼玉など大都市圏で議席を獲得する可能性がある。

また、比例代表では8議席前後、獲得する可能性がある。そうすると参政党は比例代表と選挙区とを合わせると2ケタ、10前後の議席を獲得することも予想される。参政党も今の情勢を投票日まで維持できれば、躍進する可能性がある。

日本維新の会は、大阪・関西以外では支持が広がっておらず、改選の5議席をわずかに上回る程度に止まる見通しだ。共産党は改選の7議席を割り込む可能性がある。

れいわは改選議席が2だが、支持率は2.8%を確保しており、改選議席を上回る議席を獲得する見通しだ。保守党、社民党も議席を獲得する公算が大きい。

このように野党側は、立憲民主党が堅調なほか、国民民主党と参政党が大幅に議席を増やして躍進するのをはじめ、れいわが議席を増やすなど多党化が進むことになる見通しだ。

 高い投票意欲、投票率は上がるか

最後に投票率がどのようになるか、選挙結果にも影響を及ぼすので、見ておきたい。

NHKトレンド調査第3回によると今回の参院選に「必ず行く」と答えた人は48%、「期日前投票をした」16%を合わせると64%で、3年前の参院選の同時期に比べて5ポイント上回っている。

3年前と比べると年代別では、18歳以上と20代で15ポイント、30代で21ポイントもそれぞれ上がっており、若い世代で投票意欲が高いのが大きな特徴だ。

前回3年前の1週間前調査では「必ず行く」と「期日前投票した」が59%で、実際の投票率は52.05%だった。投票率は天候など様々な要因が絡むので、予測は難しいのだが、素直に読むと投票率は前回より上がるのではないかとみている。

投票率が上がる場合は、どの年代が多く投票したのか、それによって選挙結果にどのような変化が現れるのか、投票率を注目している。

去年の衆院選では与党が過半数を下回る結果になったが、今回の参院選はどのような審判が示されることになるのかが大きな焦点だ。有権者が投票に当たって、政策面の争点だけでなく、選挙情勢、選挙の勝敗面の予測も判断材料にしたいとの声を聞くので、毎回、議席予測を提供している。

今回の予測が当たるかどうかは別にして内外激動、日本の進路が問われる中で、できるだけ多くの皆さんが投票に参加し、賢明な選択が行われることを願っています。選挙後には有権者は何を選択したか、選挙後の政治の動きも取り上げる予定です。(了)

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”自民苦戦、与党過半数厳しい情勢”2025参院選

今月3日に公示された参議院選挙は中盤戦に入り、各党の選挙戦は一段と熱を帯びてきた。ここまでの選挙情勢をみると自民党が苦戦しており、与党で過半数を確保するのは厳しい情勢になっているようにみえる。

一方、野党側では、立憲民主党が堅調な戦いを進めているほか、参政党、国民民主党、れいわの勢いが目立つなど新たな展開もみられる。参院選序盤の情勢を分析するとともに最終盤に向けて勝敗のカギはどこにあるのか探ってみたい。

石破内閣、自民支持率ともに低位水準

今回の参議院選挙について、NHKのトレンド調査の2回目のデータ(7月4~6日実施)が7日に報道されたので、このデータを基に選挙情勢全体をみておきたい。トレンド調査は、国政選挙投開票日の数週間前から1週間ごとに連続して、有権者の政治意識の動向を把握するために行っている調査だ。

それによると石破内閣の支持率は31%で、1週前の第1回調査(6月27~29日)から3ポイント下がった。不支持率は50%で、前回より4ポイント上がった。6月上旬の月例世論調査の支持率は42%だったので、この1か月間に11ポイント下落したことになり、去年10月の政権発足以来、最も低い水準だ。

一方、自民党の支持率は、トレンド調査の1回目は27.8%、2回目は28.1%だった。前回3年前の参院選の同じ時期は、35.6%だった。安倍政権当時の自民党支持率は30%台後半、岸田政権でも30%台半ばだったので、石破政権では30%ラインを割り込んでおり、内閣支持率とともに低位の水準にあることがわかる。

与党・公明党の支持率(2回目)は3.0%で、1回目の調査より0.8ポイント下がった。

これに対して野党各党はどうか。伸びが目立つのは、参政党で4.2%まで上昇した。6月の月例調査で1.9%だったのが、1回目調査で3.1%、2回目調査でさらに伸ばした。公明党の支持率を上回ったので、その勢いには驚く。

国民民主党の支持率も5.1%と高い水準にある。3月の月例調査では8.4%で、第1党の立憲民主党を上回っていたが、参院選挙の候補者選びなどをめぐって低下した。それでも支持率としては、野党の2番目の地位を維持している。

れいわ新選組の支持率は3.2%で、前回調査の2.0%から支持を伸ばした。3年前は1.7%の支持率だったので、れいわも支持を伸ばしている。

立憲民主党の支持率は8.5%。6月の月例調査では5.8%だったので、支持率を堅実に上げてはいるが、野党第1党しては自民党との大きな差を縮められていない。一方、日本維新の会の支持率は2.3%、共産党は3.1%などとなっている。

このように石破内閣と自民党はともに支持率が低迷、公明も支持に陰りがみられる。これに対し、参政党、国民民主党、れいわの各党には勢いがみられる。立憲民主党は一定の支持を得ているが、維新、共産は低迷しており、野党でも明暗が分かれている。

 与党過半数厳しい情勢、1人区で苦戦

それでは、参院選の選挙情勢、勝敗はどうなるか。まず与党のうち、自民党からみていくと比例代表選挙について、前回は18議席を確保したが、今回は党の支持率が低下していることから、大幅に減らすことになりそうだ。

自民党の比例代表の過去最低は12議席だった。自民党関係者に聞くと「12±α」程度にまで落ち込むのではないかとの見方を示している。

次に選挙区選挙では、2人区から6人区まで複数区は13ある。このうち、複数区で2人擁立し当選した選挙区もあるが、激戦区も多く、13議席程度に止まる可能性が大きい。

問題は、全国に32ある定数1の1人区の攻防だ。自民党はこれまで地方の厚い保守地盤を活かして野党に大差をつけてきたが、今回は接戦となっている選挙区が多い。今の時点で自民党がリードしているのは群馬、石川、山口など10程度だ。

逆に野党各党と無所属を含めた野党系がリードしているのは岩手、長野、大分など9程度。残り13選挙区は与野党が激しく競り合い、勝敗の見通しは現時点ではつけにくい。

公明党は党員の高齢化などの影響もあり、議席獲得が確実に見込めるのは選挙区で5、比例代表で5の合わせて10程度とみられる。

与党が過半数を確保するためには、参院全体の過半数125から、非改選の自民、公明両党75を差し引いた50議席が必要になる。そうすると公明党を10と仮定するならば、自民党が40議席を確保できるかが勝敗の分かれ目になる。

その自民党は、比例12、複数区13と仮定すると合計25、残り15議席を1人区で獲得できるかということになる。ところが、1人区は接戦区が多く、15議席を確保できるメドはついていない。したがって、与党で過半数確保は厳しい情勢というのが実状だ。

立民堅調、参政、国民、れいわに勢い

野党側の情勢はどうだろうか。野党第1党の立憲民主党は支持率も3年前の水準以上に確保していることや、1人区で反自民の受け皿になっていることから、20台後半の議席を確保する見通しだ。堅調な戦いと言える。

特に勢いが目立つのが参政党だ。神谷代表は公示前の2日の時点で、獲得目標として選挙区1と比例代表5の合わせて6議席としていたが、その後、10議席以上に目標を引き上げた。

自民党関係者は「地方でも参政党が保守地盤に食い込んでおり、自民党に影響が出るのではないか」と警戒する。今の勢いを投票日まで維持すれば、選挙区と比例代表を合わせて9議席前後獲得するのではないかとの見方もある。

国民民主党も一時の勢いに陰りはみられるが、選挙区と比例代表合わせて10台半ばまで議席を大幅に増やす勢いがある。れいわも比例代表で4議席程度を確保するものとみられる。

一方、公示前の勢力として維新は5議席、共産党は7議席を確保していたが、伸び悩みか、議席を減らす可能性がある。

社民党と日本保守党はそれぞれ1議席を獲得する可能性がある。このように野党側については、参政党と国民民主党、れいわに勢いがある。立民は堅調だが、維新と共産は伸び悩みか、議席を減らす可能性がある。

1人区の最終攻防、投票率も勝敗を左右

参院選挙の最終盤に向けて勝敗面では、どこが大きなカギになるか。選挙区では1人区が全体の定員の4割を占めることから、この1人区の競合選挙区の攻防が最大の焦点になる。加えて、複数区の最後の議席をどの党が競り勝つかがポイントだ。

もう1つ、投票率も選挙戦を大きく左右する。NHKのトレンド調査をみて気づくのは、今回の参議院選挙について「投票意欲」が高いことだ。投票に「必ず行く」と答えた人は56%、「期日前投票をした」人は6%で、合わせて63%にのぼっている。

前回3年前と6年前の参議院選挙は55%に止まっていた。このときよりも7ポイントも上回っていることになる。今回の投票日20日は、3連休の中日に当たり、投票率が下がるのではないかと懸念されているが、有権者の投票意欲は相当高いようだ。

こうした背景には、物価高騰対策などに意思表示をしたいという考えがあるのだろうか。投票率が1%上がれば、有権者数で100万人増えることになり、選挙結果にも影響を及ぼす。3年前の投票率は52%だったが、今回はどうなるか、注目したい。

選挙戦真っ最中の8日、アメリカのトランプ大統領は、日本からの輸入品に25%の関税を課税する方針を日本政府に伝えた。8月1日から適用するとしている。これに対し、石破首相は、相互関税の一時停止の期限が事実上、延期されたという認識を示し、交渉を続ける考えを示した。

こうした石破政権の対応について、有権者がどのように評価をするのか。参議院選挙は選挙運動期間が17日間と長いのが特徴で、これまでも党首の発言などが選挙結果に大きな影響を及ぼしたこともあった。

内外情勢が大きく動く中で、各党の論戦や戦い方がどのような展開をみせるのか、選挙情勢は大きく変わる可能性がある。私たち有権者もどの候補者、政党に政権や政策の推進を委ねることにするのか、選挙情勢も念頭に入れて1票を投じたい。(了)

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2025参議院選挙の見方・読み方

第27回参議院選挙が3日公示され、20日の投開票日に向けて激しい選挙戦に入る。衆議院選挙が「政権選択選挙」と位置づけられるに対して、参院選は「中間選挙」とも言われ地味な印象を受けるが、政治が大きく変化する先駆けになったことも多かった。

私は昭和46年・1971年から50年余り選挙取材を続けているが、記憶に残る参院選として最初に頭に浮かぶのは、平成元年・1989年の参院選だ。「マドンナ旋風」、当時社会党の土井たか子委員長が多くの女性候補を擁立し、49議席を獲得した。対する自民党はリクルート問題、消費税導入、宇野首相の女性問題が重なって大惨敗。参院で初めて与野党の勢力が逆転し、その後の自民1党優位体制の終焉へとつながった。

平成19年・2007年の参院選で第1次安倍政権は、37議席と歴史的大敗を喫して衆参ねじれ状態となり、その後の民主党政権誕生へつながった。その後、安倍首相は衆院選で政権に復帰したあと、2013年の参院選挙で大勝し長期政権の足がかりを得た。

そこで、今度の2025年の参院選挙はどのような位置づけとなり、何が問わる選挙なのか有権者の立場に立って考えてみたい。どの政党、候補者に投票するかを判断するうえで、基礎的な判断材料になる。参院選挙の勝敗の見通しと選挙情勢については、次回以降に取り上げたい。

自公政権継続か、政変・政局激動か

今回の参議院選挙は、去年の衆院選挙で30年ぶりの少数与党となった石破政権が政権の命運をかけて臨む国政選挙になる。選挙の勝敗ラインを尋ねられた石破首相は「非改選を含め参院の過半数」を獲得目標に掲げている。

こうした石破首相の目標に対して、自民党内には「非改選を含めると甘い目標になってしまう」として、より高い「改選議席の過半数」をめざすべきだとする意見もあり、勝敗ラインの基準をめぐる綱引きが続くことになる。

いずれにしても石破首相が、非改選を含めた参院全体、あるいは改選議席の過半数を上回る議席を獲得すれば、参院選後も石破首相(自民党総裁)が続投することになる。

一方、報道各社の世論調査によると石破内閣の支持率は、不支持率の方が高い逆転状態が続いている。また、自民党の支持率も都議選後30%ラインを割り込むデータも出ており、党内で危機感が広がっている。

このため、勝敗ラインに達しない場合は、党内から政治責任を問う”石破降ろし”が起きたり、首相退陣に追い込まれたりする可能性がある。参院選挙は政権選択選挙ではないと言われるが、今回は首相の命運がかかっているので、事実上の政権選択選挙の性格を持った選挙だと言えそうだ。

このように選挙後の政治は、石破首相と今の自公政権が続くことになるのか、それとも首相退陣の政変や政権の枠組みが変わる大きな政局に発展することになるのかが焦点になる。今回の参院選はそれだけ、重い意味を持つ選挙ということになる。

8党首討論は”物価高対策論争”

次に私たち有権者にとって大きな関心のある政策面では、どのような内容が主要テーマになるだろうか。2日に日本記者クラブ主催で、自民、公明の与党と立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組、参政党の8党党首討論が行われたので、主な論点を取り上げてみたい。

石破首相と各党党首がそろって取り上げたのが物価高対策だった。このうち、石破首相と与党公明党の斎藤代表は、子どもと非課税の人に4万円、それ以外の人には2万円の給付を行うと説明するとともに「困った人に重点を置き、早期に実施することが重要だ」と訴えた。

これに対して、立憲民主党の野田代表など野党各党の党首は「与党の現金給付はバラマキだ」と批判するとともに「物価高から国民生活を守り抜くためには、消費税減税に踏み出す必要がある」と強調した。

その際、党によって食料に限って減税する案や、消費税全体の税率を一律に引き下げる案、さらには廃止を求める考えなどに分かれた。財源の規模や、赤字国債を発行することの是非についても意見は分かれた。

一方、外交・安全保障分野では、野田代表が「日米関税交渉は前進がみられず、トランプ大統領は、相互関税の税制措置をさらに引き上げる考えを示唆している」として、石破首相がトランプ大統領と首脳会談を行い打開すべきだと質した。

これに対し、石破首相は「日本は、アメリカの最大の投資国であり、最大の雇用も生み出している国だ。関税より投資の意義を訴えていく。何としても国益を守る」とのべたが、日米首脳会談については言及しなかった。

このほか、社会保障制度改革や、コメ問題と農業政策、賃金引き上げと経済政策、企業団体献金の扱いなどについても議論された。

このように物価高対策は、有権者の関心も高く、各政党が重視していることは理解できる。一方、多くの有権者は「政党間のサービス合戦に終わらせずに、日本社会全体が発展していくために何を重点に取り組むべきか示して欲しい」と考えているのではないか。

また、各党とも高い経済成長や給与の引き上げを打ち上げているが、どのような政策の組み合わせで実現するのかは明確になっていない。これからの日本経済や社会を活性化していくための具体策の提示が必要ではないか。

  投票に求められる判断は

選挙戦が始まり、今後さまざまなメデイアでも党首討論が行われる。有権者の多くは、各党や候補者が当面の目先の対応策だけでなく、将来社会の目標やビジョン、実現への道筋などについて、より踏み込んだ議論を期待しているのではないか。

今度の参議院選挙では、選挙結果によって石破首相の進退や政権の枠組みに大きな影響を及ぼすことが予想される。一方、内外情勢が大きく動いている中で、私たち有権者は、日本社会はどのような進路を選択すべきかという観点も忘れずに選挙の論戦をみていきたい。(了)

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”都議選、自民大敗“ 敗因をどう読むか

22日投開票が行われた東京都議会議員選挙では、自民党が過去最低の21議席となり、第1党を維持できなかった。一方、小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会は31議席を獲得し、第1党に返り咲いた。

野党側では、立憲民主党が議席を伸ばしたほか、国民民主党と参政党が初めて議席を獲得した。共産党は議席を減らし、大阪維新の会は議席を失った。一方、公明党は、9回連続の全員当選を逃した。

このように各党派の明暗は分かれたが、特に自民党は、コメ問題で小泉農水相の登場によって選挙情勢は好転しているとみていただけに、選挙結果を深刻に受け止めている。今回の自民大敗の原因はどういうことだったのだろうか、来月に迫った参院選への影響はどうなるか分析してみたい。

 自民党過去最低の議席、敗因は

東京都議選が告示される前、自民党関係者に見通しを聞くと「自民党の現有議席は30。これを多少下回ることはあるかもしれないが、過去最低の23議席を割り込むことはないだろう」と比較的楽観的な見方を示していた。

その理由としては、コメ問題に関心が集まり、政治とカネの問題への関心が低下していること、そして小泉農水相の登場でメデイア各社の世論調査でも石破内閣の支持率も上昇していたことから、選挙情勢は好転するとみていたからだ。

ところが、ふたを開けてみると2017年、都民ファーストの会ブームで自民党が沈んだ23議席、これをさらに下回る21議席にまで落ち込んだ。このうち、3人は追加公認なので、本来の公認候補の当選は18人で、惨敗と言ってもいい。

選挙結果をみると◆定数1の1人区、千代田区、武蔵野市など7つの選挙区で、自民党が勝利したのは1議席だけで、1勝6敗に終わった。◆2人区以上の複数区では最後の議席を競り負けた選挙区が目立った。

こうした原因はどこにあるのだろうか。筆者は都内に住んでおり、小さな個人的体験で恐縮だが、今回は自民党候補のビラの配布が少なかった。一方、選挙戦終盤には小泉農水相のオートコールが固定電話にかかってきたのに驚いた。地道な選挙活動ではなく昔流の電話作戦、ネット時代には”竹槍戦法”を思い起こさせた。

選挙全体を評価するデータとしては、朝日新聞や読売新聞の出口調査が参考になる。◆自民支持層のうち、自民党候補に投票した割合は5割程度に止まっている(朝日53%、読売54%)。自民支持層の7割程度確保するのが普通なので、今回は大幅に低下した。また、都民ファーストに2割近くも支持が流れていた。

◆最も多い無党派層の投票先では、都民ファーストへの24%が最も多く、次いで自民11%、立民10%、共産9%となっている(読売データ)。無党派層の獲得率で自民党は、無党派層に大差をつけられた。

◆一方、投票の際、自民党の裏金問題を考慮したかとの問いに「考慮した」が62%、「考慮しない」36%を上回った(朝日データ)。

◆選挙の争点として重視したテーマとしては、「物価高や賃上げ対策」を挙げた人が最も多かった。石破首相は告示日の13日、参院選の公約に国民1人あたり「2万円給付」を盛り込むと発表したが、選挙結果から判断すると”都議選での追い風”にはならなかった。

このように今回の選挙の敗因としては、自民党の派閥に続いて都議会自民党でも裏金問題が起きていたことに対する強い不信感、それにコメをはじめとする物価高対策についても政権与党が明確な方針を示すことができないことへの不満、批判が大きく影響したのではないかとみている。

一方、政界関係者の中には今回、公明党が自民党の候補を推薦しなかったことから「自公の選挙協力が機能しなかったことが影響したのではないか」との見方も聞いた。重要な指摘だが、関係者の取材ができていないので、今後、取材のうえ明らかになった点があれば、報告したい。

 立民は議席増、国民民主は躍進

野党側についてみておくと、立憲民主党は前回15議席から17議席へと伸ばした。これは、野党第1党として自民党批判の受け皿になったことを示している。また、1人区から3人区で共産党などとの候補者調整が実現した効果があったものとみられる。

国民民主党は、9議席を獲得した。党の幹部は、単独で条例を提出できる11議席以上をめざしていた。他の党幹部からも「台風の目になるのではないか」とみられていたが、参議院選挙の比例代表の候補者擁立をめぐって混乱が起きた。

NHK世論調査では3月の政党支持率は8.4%だったが、6月は5.4%まで下落した。但し、国民民主党は都議選では議席を持っていなかったが、一気に9議席獲得したのは躍進したといっていいのではないか。次の参院選が正念場だ。

共産党は都議会自民党の裏金問題を追及したが、選挙結果は4議席減らした。日本維新の会は議席を失った。一方、公明党は過去8回連続で全員当選を果たしてきたが、36年ぶりに議席を減らした。

参政党は都議選で初めて3議席を獲得した。NHKの世論調査でもこの党への支持率が1月は0.3%だったのが、6月は1.9%に上昇した。保守層の支持を得ており、既成政党批判の受け皿になっている。れいわ新選組と、石丸伸二氏が立ち上げた「再生の道」は議席を獲得できなかった。新興勢力の間でも明暗が分かれた。

 参院選、与党過半数が最大の焦点

都議選と参議院選挙が重なる2025年は、夏の参議院選挙で大きなヤマ場を迎える。7月3日公示、20日投開票日の日程が近く閣議決定される運びだ。去年の衆院選で与党が過半数割れしたが、今度の参議院選挙では与党が過半数を維持できるのか、それとも野党が過半数割れに追い込むのかが、最大の焦点だ。

東京都議選の結果は、これまで直後の国政選挙に大きな影響を及ぼし、次の選挙の「先行指標」になることが多かった。今回の都議選の結果は自民・公明の与党に厳しい結果になっただけに次の参議院選挙はどうなるか、石破政権の命運を左右する見通しだ。

その石破首相は通常国会が閉会したのを受けて23日夜、記者会見した。この中で石破首相は、参院選挙の勝敗ラインについて質問されたのに対し「非改選を合わせて参議院全体の過半数の確保に全力を尽くす」との考えを強調した。

与野党の勝敗面では、全国で32ある定数1の1人区がどうなるかが、カギを握っている。野党側は立憲民主党が、維新や国民民主、共産の各党と候補者調整を進めているが、競合する選挙区も多い。公示までに候補者調整が進むのかどうかが大きなポイントになる。

物価高などの政治課題に加えて、中東情勢の緊迫化も加わる中で、参議院選挙の争点設定はどうなるか。そして、有権者がどのような判断を示すか参院決戦はまもなく本番を迎える。(了)

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”米関税は協議継続”国会は最終攻防へ

G7サミットに合わせてカナダで行われた石破首相とトランプ大統領との日米首脳会談は、アメリカの関税措置の見直しをめぐって合意に至らず、担当閣僚による協議を継続することになった。

一方、会期末が迫った国会は、焦点の石破内閣に対する不信任決議案の扱いなどをめぐって攻防が続いているが、立憲民主党は不信任案の提出は見送る公算が大きいとみられる。日米首脳会談の影響と国会会期末の最終攻防のゆくえをみてみたい。

関税合意に至らず、政権浮揚カード不発

石破首相とトランプ大統領の日米首脳会談は、日本時間の17日午前4時過ぎから30分間にわたって行われた。会談には、赤澤経済再生相とベッセント財務長官も同席した。

この中で、両首脳はアメリカの関税措置について率直な議論を行い、赤澤経済再生相とベッセント財務長官ら関係閣僚に対し、さらに協議を進めるよう指示することで一致した。

会談終了後、石破首相は記者団に対し「ギリギリまで交渉し、合意の可能性を探ってきた。今なお、双方の認識が一致していない点が残っているので、パッケージ全体としての合意には至っていない」とのべた。

これまでの交渉で日本側は、基幹産業である自動車の追加関税の撤廃を強く求めてきたが、アメリカ側は自動車が貿易赤字の大きな原因になっているとして譲らず、この自動車関税の扱いが首脳レベルの会談でも大きなハードルになったものとみられる。

石破首相は今回の首脳会談で一定の合意を取りつけた上で、7月の参議院選挙前に関税措置をめぐる問題の決着をめざしてきた。しかし、今回の首脳会談でも合意のメドもつけられなかったことから、参院選前の決着は不透明な情勢になっている。

トランプ政権は、貿易赤字が大きい国を対象に発動した相互関税を90日間停止しているが、ベッセント財務長官は来月9日となっている期限を延長する可能性にも言及している。日本も24%の相互関税が課されるが、現在は一時停止されている。

日本政府内でもサミットでの日米首脳会談で合意できない場合、決着は秋以降にずれ込むのではないかとの見方も聞かれる。だが、今後の見通しについては、依然として、はっきりしておらず、経済界から不満が示されることも予想される。

石破首相にとっては一定の合意に達していれば、参議院選挙に向けて政権浮揚のカードとして期待できたが、今回はそのカードは切れない可能性が大きい。石破内閣の支持率は小泉農水相の起用で、上向きの傾向は表れているが、依然として不支持率が支持率を上回る厳しい状態が続いている。

 不信任案提出見送り判断大詰め

さて、日米首脳会談の結果は22日に会期末が迫っている与野党の攻防、中でも最大の焦点である石破内閣に対する不信任決議案の扱いにも影響を及ぼす。

立憲民主党の野田代表は、与党の過半数割れで内閣不信任案の重みが一段と増しているとして、慎重に対応していく考えを繰り返し表明してきた。最終的には、党内の意見と他の野党の動向、それにトランプ政権の関税措置をめぐる日米首脳会談の結果を見極めて判断したいとの考えを示してきた。

特にトランプ関税について野田代表は、石破首相と同じく「国難」との認識を示すとともに、内閣不信任の提出が衆院解散・総選挙という政治空白をもたらすのは好ましくないという考えを示してきた。こうした考えからすると、日米首脳会談でも合意に至らず協議継続となったことは、不信任案提出にブレーキが働くとみることができる。

一方、立憲民主党や他の野党の多くも衆院解散・総選挙をめぐっては、選挙資金や候補者擁立の準備態勢が整っておらず、回避したいのが本音との見方も聞かれる。野田代表としてはこうした点も含めて総合的に判断することになるが、内閣不信任案の提出を見送るのではないかとの見方が立憲民主党内では強い。

自民党の森山幹事長も17日、イスラエルとイランによる攻撃の応酬が続いている国際情勢を考えると野党側が内閣不信任案を提出しない場合、会期末に衆議院が解散される可能性は低いとの見方を示した。

こうした中で、石破首相が帰国後の19日、与野党の党首会談が開かれ、日米首脳会談の報告を行うとともに意見を交わすことにしている。こうした動きも含めて判断すると国会は会期末の攻防が続くものの、内閣不信任案の提出は見送られ、22日に会期延長なしで閉会する可能性が大きいとみられる。

この結果、夏の参議院選挙は7月3日に公示され、3連休中日の20日投開票という日程で行われる見通しだ。私たち有権者も最終盤国会での重要法案などの行方を見届けるとともに、内外情勢が激動する中で参議院選挙ではどのようなテーマを重視して1票を投じるか準備を始める時期を迎えている。(了)

★追伸(6月19日23時)立憲民主党の野田代表は19日の記者会見で、終盤国会の焦点になっている石破内閣に対する不信任決議案の提出を見送る考えを表明した。その理由として野田代表は、日米の関税交渉が継続中であることや中東情勢が緊迫していることを挙げ「政治空白を作ることは回避すべきだ」とのべた。 一方、石破首相は今の国会で衆院解散を行わない意向を固めている。このため、参議院選挙が7月3日公示、20日投開票の日程で単独で行われる見通しだ。

★追伸(6月21日午前8時)会期末を22日に控えた国会は、土曜日の21日も参議院で審議が行われる異例の展開に。野党7党が提出したガソリン税の暫定税率を廃止する法案が20日、委員会と衆院本会議で可決され、参院へ送られたためだ。参議院では与党が多数のため、成立は困難。ガソリン税の暫定税率廃止については、去年12月、自民・公明両党と国民民主党との間で合意済み。実施時期や財源などの調整が進んでいなかった。

★追伸(21日23時)野党側が提出したガソリン税の暫定税率の廃止法案は21日の土曜日、参議院財政金融委員会で質疑が行われたが、採決をめぐって与野党の意見が対立し、採決が行われず散会した。法案は廃案となる見通しで、国会は22日の会期末を前に事実上、閉会した。

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”会期末、世論の風向きは”内閣支持率は上昇

通常国会の会期末が22日に迫った国会は、重要法案や内閣不信任決議案などの取り扱いをめぐって、与野党の詰めの攻防が続いている。今月13日には東京都議選が告示され、来月には参議院選挙が行われる。

こうした中で、NHKの6月世論調査がまとまり、石破内閣の支持率が前月に比べて6ポイント上昇し、自民党の支持率も上がっている。小泉農水相が打ち出した備蓄米の売り渡しが評価されているためとみられるが、”世論の風向き”はどうなっているのか、分析してみたい。

石破内閣、自民党支持率ともに上昇

さっそくNHK世論調査(6月6~8日実施)からみておくと、石破内閣の支持率は39%で、先月から6ポイント上がった。不支持率は42%で6ポイント減少した。自民党の政党支持率も31.6%で、先月より5.2ポイント上昇した。

こうした原因は、江藤農水相の更迭に伴って就任した小泉農水相が、先月下旬以降、猛スピードで進めている「備蓄米の売り渡し」が国民の支持を得ているためとみられる。今回の世論調査では「評価する」が74%に達し、「評価しない」の21%を大きく上回った。

石破内閣は今年2月は、トランプ大統領との初の首脳会談を無事に終えたことから、支持率が5ポイント増えて44%に上昇した。ところが、3月以降は自らの「商品券配付問題」などが響いて、支持率は3か月連続で30%台の最低水準を更新してきた。

今回、ようやく支持率の下落に歯止めがかかり、上向きに転じた形になった。だが、コメ全体の価格が下がると思うかとの質問には「下がる」が43%、「下がらない」が45%と見方が分かれており、今後のコメの価格によって内閣支持率が変化することが予想される。

若い年代、無党派層の支持は広がらず

次に石破内閣の支持層を年代別に見てみると各年代とも5ポイント前後、上がっている。支持する人は50代で35%、60代44%、70代と80歳以上でそれぞれ49%を占めている。これに対し、40代は25%、18歳から30代までは22%に止まっている。年齢が高くなるほど支持が増え、若い年代ほど支持が減るのが特徴だ。

与野党の支持層別では、与党支持層は70%で、先月に比べて8ポイント伸ばしている。野党支持層では24%で、4ポイント増加、無党派層は23%で、プラス・マイナスゼロ、先月と同じ割合に止まった。

このように今回、石破内閣の支持率が好転したのは、与党支持層の支持が増えたことが大きい。逆に若い年代、それに無党派層では支持に広がりがみられないことが読み取れる。

自民党は支持率上昇、野党は低下傾向

各党の政党支持率をみると自民党は31.6%で、先月から5.2ポイント上がった。公明党は3.2%で、先月から0.5ポイント下がった。

自民党は今年3月以降、30%ラインを割り込む状態が3か月続いたが、6月にようやく30%台を回復したことになる。但し、前回3年前の参議院選挙が行われた同じ6月は40.1%だったので、8.5ポイントも下回っている。

野党各党の今月の支持率と、先月との比較は次のようになっている。立民5.8%(-1.8P)、維新2.5%(-0.1P)、国民5.4%(-1.8P)、共産1.9%(-0.7P)、れいわ1.7%(-0.8P)、参政1.9%(+0.4P)、保守0.9%(+0.1P)、社民0.4%(+0.1P)、みんな0.1%(+0.1P)。無党派は37.8%(-0.4P)となっている。

野党の多くは先月に比べて支持率を下げている。通常国会は野党主導で政権与党を追及する場面が多く、与党が支持率を落とすケースが多かった。それだけに今回はコメの価格対策という特別な要素があるにしても、与党が支持率を伸ばしているのは、野党にとっては不本意な展開だろう。

少数与党の中で、野党が足並みをそろえて政権に対峙すれば、政策要求などを実現できたのに、野党が個別に与党との協議を進めた結果、思うような成果を上げられなかったことも影響しているとみられる。

このほか、野党の中で国民民主党は、3年前は1.3%程度だったが、今は支持率を飛躍的に伸ばした。そして今年3月・4月は立憲民主党を上回っていたが、5月以降支持率に陰りがみられ、参院選に向けての推移が注目される。

 懸案の最終攻防、与野党の評価を左右

冒頭にみたように石破内閣は今月は支持率を大幅に伸ばしたが、支持率39%に対し不支持率は42%で、支持と不支持の逆転状況が4か月続いている。3年前の前回参院選では、当時の岸田内閣は59%という勢いがあったのと大きな違いがある。

この国会の最終盤がどのような展開になるのか、その結果によって石破政権と与野党の支持率などを大きく左右することになる。

まずは、国民の関心が強いコメの価格高騰が値下がりへと転じるのかどうか、コメの流通、生産政策などが大きな論点になりそうだ。11日には党首討論が行われ、コメ問題を含め内外の重要課題について、突っ込んだ意見が戦わされる見通しだ。

また、トランプ関税をめぐって日米閣僚交渉が5回にわたって行われたが、合意の見通しはついていない。この問題をめぐって12日にも党首会談が行われ、石破首相と野党党首が意見を交わす予定だ。

さらに、国会で議論を続けてきた懸案について、一定の結論や方向を出す必要がある。具体的には「政治とカネの問題」をめぐっては、裏金問題の実態解明は進まず、企業・団体献金の扱いも3月に結論を先送りにしたままだ。

28年ぶりに法案の審議が始まった選択的夫婦別姓制度についても与野党の意見が分かれ、先送りになる見通しだが、各党の今後の対応が問われることになる。

会期末には野党第1党の立憲民主党が、石破内閣に対する内閣不信任決議案を提出するのかどうか。提出された場合、石破首相は採決を待たずに衆院を解散する意向を固めたなどの観測も出されており、緊迫した局面も予想される。

こうした懸案がどのような形で決着がつけられるのか。そして、私たち国民は政権や与野党の対応を評価し、来月の参院選挙などで意思表示をすることになる。(了)

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