衆院解散 “2大勢力軸に激突選挙”へ

通常国会が23日に召集され、午後1時過ぎから開かれた衆院本会議で、額賀議長が解散詔書を読み上げ、衆議院が解散された。各党は、27日公示・2月8日投票の日程で、事実上の選挙戦に入った。

今回の総選挙はどんな特徴があるのか、どのような選挙の構図になるのか、そして何が問われる選挙になるのか、考えてみたい。

 異例ずくめの解散・総選挙

さっそく、今回の総選挙の特徴からみていきたい。一言でいえば、”異例ずくめの解散・総選挙”ということになる。まず、通常国会が今の1月召集になった1992年以降、通常国会冒頭解散は初めてだ。12月以前に召集されていた時代を含めれば、66年佐藤栄作内閣以来だから、実に60年ぶりだ。

また、衆院解散から投票日までの期間は16日間しかない。これまでは岸田内閣当時の2021年の選挙が17日間で最短だったが、今回はさらに期間が短く戦後最短になる。候補者や選挙準備にあたる自治体職員もたいへんだが、国民もじっくり候補者の主張に耳を傾けたりするのは難しくなるかもしれない。

衆議院議員の在職日数も23日の解散時で454日、現行憲法下で3番目に短い。任期4年の3分の1も仕事をしていない計算になる。

さらに真冬の1月解散は、戦後では55年の鳩山一郎内閣と、90年の海部俊樹内閣の2回しかない。90年当時、私はNHKの官邸クラブ・キャップで、海部首相の欧州訪問に同行取材し、帰国後、直ぐに解散・総選挙に突入したのを思い出す。

当時、自民党は前年・89年の参院選で、消費税導入やリクルート事件などの直撃を受け大敗した。通常国会では、野党側が消費税廃止を迫ってくるのが確実だったため、衆院選に踏みきり勝利して、主導権を確保する必要性に迫られていた。

ところが、今回の高市内閣では、新年度予算案に野党の国民民主党が賛成する意向を示していたので、予算審議を止めてまで解散に踏み切るのは妥当だったのか、疑問が残る。いずれにしても、今回は異例ずくめの解散・総選挙と言って間違いない。

自民対「 中道」2大勢力軸に攻防

次に、今回の衆院選の構図に話を進めたい。前回2024年衆院選との違いの1つは政権の枠組みが自民・公明連立から、自民・維新連立政権へと変わったことだ。

2つ目は、野党第1党である立憲民主党が、連立を離脱した公明党と衆議院で新党「中道改革連合」を結成することになったことだ。新党結成に至る経緯は省略するが、高市首相が政界の予想に反して”奇襲解散”を仕掛けたのに対し、立民・公明両党が生き残りをかけて反撃に出たといったところだ。

今の勢力をみると政権与党は自民党が196人、維新が34人。これに対して、22日に開いた「中道改革連合」の結党大会には立民から144人、公明から21人、それに無所属からの参加もあり、総勢173人での発足になった。

この結果、衆院選は、自民と維新の連立与党と「中道改革連合」との戦いが軸になる。ただ、自民・維新間では本格的な選挙協力は行われないとされるので、実態は自民党と「中道改革連合」の対決が軸になる。自民党196人、「中道」173人で、双方で衆院総定数465人の8割近くを占めるからだ。

この他の各党では、国民民主党は「中道」、自民のいずれとも距離を置く独自路線をとる。保守の側には参政党や保守党、左派・リベラルなどの勢力として、共産、れいわ、社民、みらいが位置する形だ。

選挙戦はどうなるか。高市首相は、自民・維新の連立与党で過半数の確保を目標にしている。自民党の選対幹部は「自民単独過半数(233)、与党で安定多数(244)」を目標にしている。

これに対して「中道」は、自民党を過半数割れに押さえ込んで、比較第1党の座を確保し、他の野党の協力を得て政権交代をめざす方針だ。自民、「中道」のどちらが多数を獲得できるか、熾烈な攻防が続く見通しだ。

消費税減税、防衛など多くの論点

それでは今回の総選挙は、何が問われる選挙なのだろうか。世論調査を基に考えると世論の関心が高いのが、物価高対策をはじめとする経済政策だ。

物価高対策として野党各党は消費税の食料品ゼロ%へ引き下げや、消費税一律5%への引き下げ、さらには廃止などの方針をそれぞれ打ち出している。このうち「中道」は、今年秋から食料品の消費税を恒久的にゼロにするとしたうえで、財源は政府系ファンドの創設や政府の基金の活用などで確保するとの具体策を打ち出した。

これに対して、自民党は飲食料品について「2年間に限り消費税の対象にしないことについて検討を加速する」との方針を公約に盛り込んだ。消費減税のタイミングや財源については、政府が設置する「国民会議」で検討するとしている。

自民党内には消費税減税に慎重な意見があるが、高市首相が「私自身の悲願」として公約に盛り込んだ。消費減税をめぐっては、与野党の主要な論点の一つになる見通しだ。

経済政策をめぐって高市首相は「責任ある積極財政」と「危機管理投資で強い経済」を訴える方針だ。一方で、円安や長期金利の上昇が進んでおり、与野党の間で、日本経済の運営や財政規律、経済成長に向けた具体策をめぐって活発な議論が交わされることになりそうだ。

また、超少子・高齢化が進む中で、子育て政策や、若い世代の社会保険料の負担軽減、高齢者の社会保障のあり方のほか、外国人政策も論点になる見通しだ。

さらに、高市政権は安全保障関連三文書の改定と防衛力の抜本強化を打ち出していることから、外交・防衛政策のあり方も争点になる。野党側は、防衛力強化のための財源どのように確保するのか追及する方針だ。。

このほか、「政治とカネ」の問題をめぐっては、自民党派閥の裏金事件に関与した不記載議員の公認問題や、企業・団体献金の扱いについても結論の先送りが続いていることから、今後の取り組み方が問われることになる。

一方、自民党は、衆議院議員の定数削減や憲法改正、旧姓の通称使用法制化など”高市カラー”の政策も打ち出しており、野党側との間で激しい議論が交わされそうだ。

このように今回の総選挙では、多くの論点を抱えており、超短期の選挙戦の中で国民が納得のいく、かみ合った議論ができるかも問われることになる。

激変期、政治のあり方を含め論戦を

国際社会に目を転じると、ロシアによるウクライナ侵攻は来月で5年目に入るほか、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の専横的な言動が国際社会に大きな混乱をもたらしている。

特にトランプ大統領の言動は、民主主義国でも選挙でリーダーを選びを間違えると内外情勢が一変してしまう恐ろしさと、選挙がいかに重い意味を持っているかを痛感させられる。

世界も、アジアも、日本も激変期を迎えている。高市首相は衆院解散を表明した記者会見で「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか国民に決めてもらう」と訴えたが、総選挙を首相選びのように位置づけるのは、議院内閣制の下では適切ではないと考える。こうした点も選挙戦で各党間で議論を深めてもらいたい。

また、これに関連して「強いリーダーと圧倒的多数の与党が統率していく政治」がいいのか、それとも「多党制の中で、1つの党、または複数の党が連立を組んで与野党が競い合う政治」がいいのか、政治のあり方も選挙の論点にしてもらいたい。

こうした激変期の中で行われる今回の総選挙は、ここまでみてきたように数多くの論点を抱えている。選挙期間は短いが、各党がこうした論点を冷静に掘り下げて議論し、国民に判断材料を提供していくことを強く注文しておきたい。

★追記(1月23日13時半:◆ブログの冒頭部分は、衆議院が解散されましたので、過去形にするなど一部表現を手直ししました。◆衆議院の各党勢力は解散時で次の通りです。◇自民党196、◇中道改革連合173、◇日本維新の会34、◇国民民主党26、◇共産党8、◇れいわ新選組8、◇参政党3、◇日本保守党1、◇無所属16)/(了)###

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高市首相 衆院解散表明“納得いかない首相説明”

高市首相は19日夜、首相官邸で記者会見し、23日に召集される通常国会冒頭で衆議院を解散し、総選挙を行うと表明した。選挙日程は27日公示、来月8日の投開票の日程で行うことを正式に表明した。

衆議院選挙の議席獲得目標について、高市首相は与党で過半数をめざすとしたうえで、総理大臣としての進退をかけるとのべた。

私たち国民は、異例の通常国会の冒頭解散をどのように受け止めたらいいのだろうか。衆院選のゆくえに大きな影響を及ぼすので、高市首相の記者会見の中身を中心に分析してみたい。

 衆院解散の大義はあるのか

まず、国民が聞きたいのは、国民生活に直結する来年度予算案の審議を取り止めてまで、なぜ今、通常国会の冒頭で解散する必要があるのか。首相の解散理由に大義はあるのかという点だろう。

高市首相は「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、主権者たる国民に決めてもらうしかないと考えた。自民・公明の連立の枠組みが、維新との連立に変化した。また、政策のギアを上げる。『責任ある積極財政』や安全保障の抜本強化といった国論を二分するような大胆な政策に果敢に挑戦するためだ」と説明した。

この発言をどう見るか。連立の枠組み変化と高市政権の主要政策も去年10月の内閣発足当初からわかっていた。そうであれば、年内に国民に信を問うか、あるいは来年度予算案を3月末までに成立させた後、衆議院解散に踏み切るべきではないか。

また、高市首相は政権発足直後の記者会見から、年末、さらには新年5日の年頭の記者会見まで「今すぐに解散どうのこうのと、言っている暇はない」「目の前でやらなければならないことが、山ほどある」などと解散は眼中にないとの発言を繰り返してきた。自民党幹部から「首相は政策の人だ」などの声が聞かれたほどだ。

それだけに国民からは「物価高対策優先、実績重視の立場ではなかったのか。約束破りで、政局優先へと豹変してしまった」などの不信や不満の声も聞かれる。

さらに、昨夜は赤い重厚なカーテンがひかれた会見場で高市首相は「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか国民に決めてもらう」と宣言した。衆院選の大勝負にかける自らの決意をアピールしたかったのだろう。

高市内閣の支持率が8割近くを占める40代以下の若い世代には、こうした主張と演出は、政治生命をかけて難題打開へ打って出るリーダーとして、強く印象づける効果はあるのかもしれない。

ただ、日本の衆院選は首相公選ではなく、議員内閣制で、政党に所属する議員を選ぶ政党本位・政策本位の選挙が基本だ。内閣の高支持率を与党の議席につなげようとするねらいがあるのではないかと疑念を招くおそれもあるのではないか。

このようにみてくると今回の通常冒頭解散について私個人は、残念ながら説得力には欠け、解散の大義は乏しいと言わざるを得ない。国民の中にも「納得いかない解散」と受け止めた人がかなりいるのではないか。世論調査でどのような結果が出るかみてみたい。

私ごとで恐縮だが、政治取材を続けて50年近くになる。昭和の時代は、変な選挙もあったが、「有権者の絶妙なバランス感覚が発揮された選挙」(ある派閥領袖)も多かった。最近は「奇襲解散」、「けたぐり解散」が増えたように感じる。政治の王道、正々堂々と国民に信を問う選挙を粛々と追求する以外に道はない。

 超短期決戦、政策論争徹底の責任

ここまで冒頭解散の評価を中心にみてきたが、衆院選挙は本来、国民にとって政治に自らの意思を反映させることができるので、歓迎すべきことだ。

その衆院選挙は、今週23日の通常国会冒頭に解散され、来月8日に投開票になる。解散から投開票日までわずか16日間、戦後最も選挙期間が短い選挙になる。

衆院選挙の構図は、自民党と新党「中道改革連合」の対決が軸になる見通しだ。自民党の衆議院議員は196人に対し、立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合は、立民の衆院議員の全員が参加すれば172人の規模になる。

自民党は連立を組む維新とは選挙区調整を行わないほか、長年続いた公明党からの選挙協力を受けずに自力の選挙戦となる。維新は衆院選は独自に戦うのを基本にしているほか、都構想の実現に向けて大阪府知事と大阪市長がいったん辞任し、再び立候補してダブル選に臨む。

他の野党では、国民民主党は、中道改革連合には参加しない独自路線をとるほか、参政党、れいわ、共産、保守、社民、みらいの各党もそれぞれ党勢の拡大をめざす。新たな構図で、激しい選挙戦となる見通しだ。

超短期の政治決戦になるので、各党・候補者は選挙の争点を明確にして、政策論争を徹底して深めていく責任がある。内外ともに難題が山積しており、私たち国民の側も論争に耳を傾け、熟慮の1票を投じたい。(了)

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新党「中道改革連合」の見方・読み方

衆議院の解散・総選挙に向けて、野党第1党の立憲民主党と公明党は、中道勢力の結集をめざして新党を結成することで合意し、名称を「中道改革連合」とすることを決めた。立憲民主党の野田代表と公明党の斉藤代表が16日、記者会見で発表した。

この新党の結成は、私たち有権者にとってどんな意味を持つのか、衆議院選挙の勝敗などにどのような影響を及ぼすことになるのか探ってみた。

 新党結成の意味とねらい

さっそく、新党結成の意味からみていきたい。新党「中道改革連合」は、次の衆議院選挙に向けて立憲民主党と公明党が結成を決めたものだ。衆議院で立憲民主党は148人、公明党は28人の議員が所属しているので、全員が参加すれば172人の規模になる。

自民党に所属する衆院議員は191人なので、これに迫る大きな塊の野党が誕生する。この結果、次の衆議院選挙は老舗の自民党と、結成されたばかりの中道改革連合の2大勢力が真正面からぶつかり、これに保守、リベラルなどの中小政党が加わって戦う構図になる見通しだ。

この中道改革連合に対して、他の党からは「目の前の選挙でお互を助け合う『選挙互助会』のような組織だ」、「政策を脇において、違う政党が一緒になる無責任な動きだ」といった厳しい批判が相次いでいる。一方、「接戦の選挙区では、新党効果を発揮するかもしれない」と警戒する声も聞かれる。

新党の中道改革連合は、有権者・国民の支持と共感を広げられるかどうか。そのためには、新党がめざす目標・旗印と具体的な政策を打ち出せるかがカギを握っている。

さらに公明党は、1小選挙区あたり1万票から2万票程度の組織票を持っているので、特に小選挙区で組織票がどこまで効果を発揮するかも注目点だ。

 新党結成までの経緯と背景

次に、新党結成に至るまでの経緯についてもみておきたい。去年10月に高市政権が発足する際に公明党が連立政権を離脱したときから、立憲民主党は公明党と連携を強めることに照準を定めて働きかけを続けてきた。

その立憲民主党は夏の参院選を「事実上の敗北」と総括し、その後も支持率の低迷が続いた。一方、公明党も26年間続けた連立政権からの離脱後、党の存在感を発揮できない状態が続いた。

公明党は「中道結集の軸」になるとの新たなビジョンを打ち出したが、自民党との関係修復と他の野党との連携を図る”両にらみ”を続けたこともあって、中道勢力の結集は進まなかった。ところが、高市首相が突然の通常国会冒頭解散を打ち出したことで、公明党は一気に立憲民主党との新党結成にカジを切った。

このように今回の新党結成は、立民・公明ともに厳しい状況からの脱却と迫る衆院決戦での生き残りをかけた一手という側面があるのは事実だ。

一方、高市首相や自民党にとっても公明党の新党結成は想定外の事態で、大きな誤算と言える。衆院選での個別選挙区では、公明票を回してもらうことが可能とみていたのが、ほぼ不可能になった。

私たち有権者にとっては、”高市自民党”が保守的な政策を推進する中で、中道路線をめざす新党が登場したことになる。保守、リベラルなどに加えて、中道という選択肢が増えると評価できるのではないか。

 新党の政策の柱と具体策は

問題は中道改革連合が果たして、どのような理念・政策を打ち出すのか、具体的な内容がまだはっきりしないことである。

立憲民主党の野田代表は16日の記者会見で「生活者の視点に立ち、生活者ファーストの現実的な政策を打ち出していく」とのべるとともに基本政策に消費税減税を盛り込む考えを示した。19日に新党の理念や政策などを発表する予定だ。

高市政権の政策をめぐっては、高市首相が冒頭解散を打ち上げた後も株式市場で5万4千円台の最高値を更新する動きが続いているほか、防衛装備品の海外移転や国家情報局の創設、さらにはスパイ防止法の制定などの保守色の濃い政策に期待する声がある。

一方、円安が一時160円に迫る水準に達しているほか、国債の利回りが上昇するなど市場が高市政権の財政拡張政策に警告を発しているとの見方もある。このような高市政権の政策に対して、新党がどこまで政権に対する対立軸を打ち出すことができるか、打ち出せなければ国民の失望を招くことになる。

また、新党の政策をめぐっては、立憲民主党が安全保障法制の一部に憲法違反の疑いがあるとの見解や原発の新増設に慎重な姿勢をとってきたことから、新党がこうした点について、どこまで明快な方針を打ち出せるかも焦点になっている。

 選挙情勢と勝敗のゆくえ

さらに、衆議院が解散された場合、新党結成が選挙情勢に与える影響はどうだろうか。

高市首相が国会冒頭解散を検討しているとの報道に合わせて、永田町では自民党が単独で過半数を大幅に上回る議席を獲得する選挙予測データが流された。選挙分析の専門家にこの予測の評価を聞いたところ「信憑性に欠け、願望が入り混じったと思われるデータ」との評価だった。

NHK世論調査(1月10~12日実施)によると高市内閣の支持率は62%と高い水準を維持する一方、自民党の政党支持率は32.2%と低迷している。過去の衆院選挙時に比べると、自民党が過半数を割り込んだ前回・2024年公示前の水準35.1%を下回っている。

前々回・2021年安定多数を確保した時は、選挙期間中40%前後で推移しており、この水準には遠く及ばない。各党の獲得議席をめぐって今、さまざまな予想が出回っているが、選挙情勢調査に基づかないので、正確な議席予測とは思えない。

ここまで政権与党の自民党と、新党の中道改革連合を中心にみてきたが、連立与党の維新、去年の参院選で躍進した国民民主党と参政党、さらにれいわ、共産、保守などの各党の消長も選挙情勢を左右する。もうしばらくすると出される報道各社の情勢調査の結果を待つ必要がある。

高市首相は来週19日に記者会見を行い、23日に召集される通常国会冒頭で解散に踏み切る理由などについて、説明する予定だ。中道改革連合も同じ19日に新党の綱領や基本政策を発表する予定だ。どちらの説明と主張が説得力を持っているか、衆院決戦のゆくえにも影響を及ぼすことになりそうだ。(了)

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“大義なき解散” 通常国会冒頭解散へ

衆議院の解散・総選挙をめぐって高市首相は14日夕方に与党幹部と会談し、23日に召集される通常国会の早期に衆議院を解散する意向を伝えた。これによって、通常国会冒頭で衆議院が解散され、来月に総選挙が行われることが確実な情勢になった。

この通常国会冒頭解散をどのようにみたらいいのだろうか。私は50年近く政治取材を続けているが、一言で言えば”大義なき解散”といわざるを得ない。今回ほど政権の自己都合優先の解散は記憶にない。

というのは高市首相は新年5日の年頭の記者会見で、衆院解散の可能性を問われ「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感していただくことが大切だ」とのべ、衆院解散より政策実現を優先させる方針を力説していた。こうした方針を覆して、国民に信を問う理由や大義が見あたらないからだ。

また、通常国会冒頭で衆議院が解散されると、国民生活に直結する新年度予算案の審議はできなくなくなり、予算案の年度内成立は不可能になる。新年度予算案の審議を取り止めてでも、衆議院の解散・総選挙を急ぐ理由があるとはとても思えない。

さらに、全国の地方自治体は今、自らの新年度予算案の編成に取り組んでいるのをはじめ、国の物価高対策に対応するための事業への対応にも当たっている。加えて衆院選挙の準備が追加されることになり、自治体への負担は重い。

高市首相は自民・維新幹部との会談の中で、解散に踏み切る理由として「連立政権のパートナーが公明党から維新に変わったこと。『責任ある積極財政』や防衛三文書の見直しなど新しい政策打ち出したことから、国民の審判を受ける必要がある」と説明したという。

だが、こうした点であれば、去年の政権発足直後でも可能だったし、新年度予算案が成立する3月末以降でもできるのではないか。”解散の理屈は、後から貨車でついてくる”と言われてきた格言そのもので、説得力は乏しい。

高市首相としては「衆議院は無所属議員の参加でようやく過半数に達したが、参議院では与党過半数割れという苦しい状況にある。衆院選挙で議席を増やし、政権の求心力を高め、政策を推進したい。内閣支持率の高いうちに解散に打って出て勝利したい」との思いはそれなりにわかる。

しかし、前回衆院選挙からまだ1年2か月余り、任期の半分も経っていない。去年夏には、参院選も行われたばかりだ。政治にはそれなりのタイミングというものがある。

さらに、解散・総選挙を行うか否かという重大な方針決定の進め方にも問題がある。今回の冒頭解散方針は、高市首相と首相官邸の限られた側近だけの協議で決まり、自民党の幹事長などの役員にも知らされていなかったとされる。政党政治のあり方からも逸脱するのではないか。

このように今回の通常国会冒頭解散は「政権の都合優先」「大義なき解散」と指摘されても仕方がないのではないか。高市首相は19日に記者会見を行う予定だが、解散の理由や大義名分などについて明確な説明を願いたい。

政治のあり方を含め国民の選択がカギ

衆議院選挙は国民が国の政治に意思表示できるので、本来、歓迎すべきことだ。したがって衆院解散・総選挙が確実な情勢になった以上、選挙に関心を持ち、1票を投じていきたい。

懸案・政治課題は山積み状態だ。物価高対策をはじめとする経済・財政政策は待ったなしの状態だ。賃金引き上げや日本経済立て直しへの具体的な方法や道筋が提示されるかどうか。人口減少社会と社会保障制度、日本の防衛や外交をどのような方針で臨むのかが焦点になる。

また、先送りが続いてきた「政治とカネの問題」に今度こそ、結論を出すことが必要だ。そして、新しい政治の姿・形をどのように構想していくか、これからの大きなテーマだ。

さらに、立憲民主党と公明党とが新党結成を視野に選挙協力の調整を始めるなど新たな動きもでている。中道勢力の結集をめざしているものとみられ、調整が進めば、衆院選挙の構図を変える可能性もある。

衆議院が解散されればどの候補者、政党を選ぶのか。しばらくの間、私たち国民が主役で決定権を持つ。内外激動が続く中で、どのような社会をめざすのか、新しい政治のあり方にどう取り組むのか、若い世代の皆さんとともに熟慮の1票を投じたい。(了)

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”通常国会 冒頭解散”の見方・読み方

衆議院の解散・総選挙をめぐって高市政権内で、通常国会冒頭に衆議院を解散し総選挙を行う案を検討していることが明らかになった。高市首相は沈黙を続けているが、2月8日か、2月15日投開票を想定している。

急浮上の解散案に与野党ともに大きな驚きとして受け止められているが、冒頭解散の流れは広がりをみせている。高市首相のねらいや、冒頭解散の動きの背景などを探ってみたい。

冒頭解散、首相官邸主導で検討進む

今回の衆院解散の動きを最初に報じたのは、読売新聞だ。正月3が日が明けて政治が本格的に動き始めた週末9日の夜、読売新聞が電子版で「高市首相が通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報じた。

政界では通常国会冒頭解散は見送りとの見方が定着していたこともあってか、全国紙のほとんどは翌日朝刊の報道は見送った。おそらく事実関係の確認などに手間取ったためとみられ、解散の動きが掲載されたのは11日朝刊になった。

筆者も報道直後に自民党関係者に電話取材をしたが、事実関係は確認できなかった。後で確認してみると与党の主要幹部でも知らない人がほとんどだった。「解散は首相の専権事項とはいえ、進め方が余りにもひどい」と憤る幹部もいたとされる。

政界関係者の情報を総合すると冒頭解散案は、高市首相と首相官邸の極めて限定された幹部が極秘裏に検討を進めたとされる。高市首相は早期解散より肝いりの政策を実現したうえで、解散を断行することが持論とされてきたが、最終的には一部側近の進言を受け入れ、早期解散にカジを切ったものとみられる。

安倍元首相は抜き打ち解散を重ねたが、いずれの場合も自民党中枢と連立を組む公明党代表には、事前に解散の意向を伝えるなど周到な根回しを行った。それに比べると高市首相の対応は官邸主導で、自民党執行部などへの根回しは後回しとなり、深刻なしこりを残すことになるだろう。

野党反発も、与党で解散の流れ広がる

高市首相の国会冒頭解散への動きに対して、野党側はそろって強く反発している。立憲民主党の野田代表は11日記者団に「経済や物価高対策が重要だと言いながら、政治空白をつくる。理屈や大義がなく、自己保身的な理由があるのではないか」と厳しく批判した。

国民民主党の玉木代表は12日「新年度予算案の年度内成立ができないタイミングでの解散になれば、『経済後回し解散』と言わざるを得ない」と批判し、新年度予算案成立に向けた協力を見直す考えがあることを明らかにした。

公明党の斉藤代表はNHK日曜討論で「新年度予算案の年度内成立が最も大事な状況の中で、なぜ今、解散するのか」とのべ、予算案の年度内成立を断念して解散につき進む姿勢を批判した。このように野党側は冒頭解散に強く反発する一方で、総選挙への態勢づくりを急いでいる。

一方、連立を組んでいる日本維新の会の吉村代表は11日の日曜討論で「おととい(9日)高市首相と話をした際に『一段ステージが変わったな』というやりとりがあった」として、通常国会冒頭解散には驚かないとの認識を示した。

自民党内では冒頭解散に驚きが広がったものの、「高市内閣の支持率が高い中で、早期解散に踏み切ることは理解できる」として、冒頭解散を容認する流れが広がっている。

ただ、党内には「高市首相がこれまで発言してきたように物価高対策や経済政策の効果を国民に実感してもらうことが重要だ」として、来年度予算案の年度内成立を優先させるよう求める声も根強くある。

こうした自民党内の反応などを踏まえたうえで、高市首相は近く、通常国会冒頭解散について自らの考え方を正式に表明するものとみられる。

高支持率で 自民大幅議席回復ねらいか

それでは、高市首相が通常国会冒頭解散を検討するようになったねらいについて話を進めたい。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は60%台から70%台という高い水準が続いている。このため、自民党内からは「高い支持率の間に早期解散に打って出るべきだ」という声が強かった。

高市首相の側近からは「今、選挙に打って出れば自民党は、単独で衆院の過半数を獲得できる」との進言が出されたとされる。高い内閣支持率の下で、衆院の大幅な議席回復が一番のねらいとみられる。

一方、台湾有事をめぐる高市首相の国会答弁で日中関係が悪化しており、中国は対日経済圧力をさらに強めようとしている。このため、対中関係をにらんで政権基盤を強化しておきたいとのねらいを指摘する見方もある。

さらに、野党関係者からは、高市首相の政治とカネをめぐる問題や、旧統一教会と自民党の関係などの不祥事が予算委員会で取り上げられ、支持率低下を懸念したのではないかとの見方も出されている。

乏しい大義名分、国民の理解がカギ

衆院解散・総選挙をめぐっては「解散の大義名分」がいつの選挙でも議論になる。高市首相は11日のNHK日曜討論(首相は8日事前収録)で「衆議院の解散・総選挙については、国民に物価高対策と経済政策の効果を早く実感してもらいたい、今は目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」と強調した。

国民の関心が大きい物価高対策をめぐっては、自民党総裁選の混乱で補正予算の成立が年末にずれ込み、執行は新年に持ち越された。新年度予算案も冒頭解散になれば、年度内成立は無理で4月以降へと大幅に遅れるのは確実だ。

これでは,政府・政権が責務を果たしたとは言えまい。国民から「言行不一致解散」、「政権の自己都合解散」など厳しい批判を浴びることも予想される。

また、物価高や円安は続き、トランプ政権のベネズエラへの武力行使やイラン情勢への介入なども懸念されている。内外情勢が流動的な時期に、あえて解散・総選挙を行う必要があるのだろうか。

さらに真冬の選挙になり、候補者はもちろん、有権者にとっても負担が大きい。こうした点を考慮すると解散の大義名分があるようにはとても思えない。

国民にとって国政に1票を投じる機会は本来、歓迎すべきことだ。ただ、衆院選は1年3か月前に行ったばかりで、去年夏は参院選、今回衆院選となれば、1年余りに3回の国政選挙を行うことになる。

最近の衆院選は、解散から投票日までがわずか2週間あまりのあわただしい選挙が続いている。与野党が腰を落ち着け議論を尽くしたうえで、国民に判断を求める正攻法の選挙へ改めることが必要だ。

一方、選挙情勢も流動的だ。高市内閣の支持率は60%台から70%台と高いが、自民党の政党支持率はその半分以下の30%程度と低迷している。自民党の議席増加の可能性もあるが、逆のケースも起こり得る。

公明党・創価学会との選挙協力が見込めないことや、無党派層の投票行動など流動的で、大きなリスクを抱えた選挙になる可能性もある。

高市首相は、通常国会冒頭解散に踏み切るのかどうか。内外情勢をはじめ、国民生活や日本経済への影響、さらには外交・安全保障との関係をどのように考えているのか、高市首相の説明を待ちたい。(了)

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”衆院解散 総選挙の見方・読み方” 2026年政局

新しい年が明けて、高市首相は5日に伊勢神宮を参拝した後、年頭の記者会見に臨んだのをはじめ、各党の代表や委員長もそれぞれの党で仕事始めや記者会見を行うなど新年の政治が本格的に動き出した。

こうした中で、高い支持率が続く高市首相が今年、衆議院の解散・総選挙に踏み切るかどうかが焦点の1つになっている。衆議院の解散・総選挙の可能性をどのようにみるか、探ってみたい。(★備考=読売新聞が10日「高市首相は通常国会冒頭解散を検討」と報道したことについて、ブログ文末に追記として、短いコメントをつけてあります)。

新年の解散・総選挙 4つのケース

高市首相は5日の記者会見で、今年の政権運営について「昨年中に政権として、一定の方向性を出すことはできたと考えているが、今後、さらに加速させていきたい。高市内閣は始動したばかりだが、自民党総裁選で掲げた政策や日本維新の会との連立合意に掲げた政策をどんどん具体化させ、実現していきたい」と表明した。

そのうえで、通常国会の会期中に衆院解散・総選挙があるかと問われたのに対し高市首相は「今年度の補正予算の早期執行を各大臣に指示している。国民に高市内閣の物価高対策や経済対策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべた。

こうした発言からすると高市首相は、物価高対策などの効果を実感してもらうことを解散・総選挙の前提条件にしていることから、通常国会冒頭の解散は想定していない。最も早い場合でも新年度予算が成立した以降になる公算が大きいとみられる。

具体的なケースとしては、◆①新年度予算成立の4月頃、◆②通常国会が閉会する6月下旬、◆③高市内閣発足1年の秋の臨時国会、◆④年内は見送りの4つが想定される。

 国会会期末の6月、秋の可能性も

それでは衆院解散・総選挙の時期としては、具体的にいつ頃の公算が大きいのだろうか。まず、①新年度予算成立の4月頃については、国民生活に直結する新年度予算が成立することは、政治が取り組むべき前提条件の1つを達成したことにはなる。

ただ、4月といえば新年度。国民にとっては新しい年度が始まる重要な時期で、今の選挙制度になって以降、4月や5月に総選挙が行われたことはない。政治的にみてもこの時期の解散・総選挙は避けるとみた方がよさそうだ。

次に②通常国会が閉会する6月下旬についてはどうか。通常国会前半で新年度予算が成立すれば、後半国会では連立与党の日本維新の会が、先の臨時国会から先送りになった衆議院の議員定数削減法案と副首都構想を実現する法案の成立を強く求めている。

これに対し、野党第1党の立憲民主党などは、懸案の企業・団体献金の見直し法案の成立を迫ることから、こうした法案の扱いをめぐって与野党の攻防が予想される。

そして、会期末に立憲民主党などが高市内閣に対する不信任決議案を提出した場合、これに対抗することを大義名分に高市首相が衆院解散に打って出る可能性はある。

一方、通常国会での解散を見送りにした場合は、③高市内閣発足1年、秋の臨時国会での解散・総選挙を探ることになる。具体的には内閣改造を行った後、秋の臨時国会で国民に信を問うケースが想定される。

このように自民党内で早期解散論が強いのは、高市内閣の支持率が高い間に選挙をやれば、政権与党に有利に働くという思惑に基づくものだが、肝心の自民党の政党支持率は30%ギリギリの水準で低迷している。このため、自民党の支持率が上昇に転じない状況では、早期解散は行うべきでないという意見も根強い。

年内解散見送り・来年説も有力

衆院解散・総選挙は、最終的には首相が決断することになるので、高市首相がどのような政権戦略を描いているかにかかっているとも言える。

自民党の長老に聞くと「高市首相は、とにかく政策をやりたいというのは本音だと思うので、早期解散を首相自身はめざしていないのではないか。また、総裁選の任期は来年秋なので、総裁選とその前後に衆院解散・総選挙を断行し、両方をセットで乗り切ることをめざしているのではないか」との見方をしている。

こうした見方に立つと④年内見送り、来年・2027年秋以降の解散・総選挙ということになる。だが、高市内閣の支持率が今の高い水準が維持しているどうかはわからず、不確定要素があるのも事実だ。

このように4つのケースともそれぞれの可能性と同時に、困難な点も抱えている。そのうえで、個人的な見方を率直に言えば、4つ目の年内見送り説が有力、確率が高いのではないかとの見方をしている。

その理由の1つは新年の野党の動向を見ると、政権に協力しようとする野党の動きが出るなど衆院解散・総選挙に追い込んでいく迫力が感じられないことがある。

一方、高市政権にとっても物価高対策や経済政策の効果を実感してもらうには、それなりの時間がかかること。さらに、仮に衆院解散・総選挙で自民党が勝利したとしても参院の過半数割れは3年から6年は続く。衆院での大勝が見込めない限り、解散には慎重姿勢を続けるとみるからだ。

ただ、「政界、一寸先は闇」といわれる。政治は生き物、与野党双方とも思わぬ事態が起こり得るので、4つのケースのどの流れになるか見極めていく必要がある。

選挙の質、論点・争点設定がカギ

最後に衆院解散・総選挙については選挙の時期だけでなく、「選挙の質」、具体的には「選挙の論点・争点の設定」が重要だ。特にインターネットが解禁され、SNSが活用され、私たち国民もさまざまな情報を入手できるようになった。

その一方で、「選挙の論点・争点」がはっきりしないと感じることも多い。政党や候補者が論点を整理し、選挙の争点を明確にして有権者に判断を求める取り組みがSNS時代だからこそ、必要だ。

具体的には、国会で普段から与野党が議論を進め、選挙期間中はさらに具体策などを示すことによって、有権者が投票を通じて決着をつけられるようにする取り組みが重要だ。

報道各社の世論調査を基に考えると主要な論点としては、◆物価高を含む経済政策の柱と具体的な政策・方法、◆超少子・高齢化時代の社会保障の姿・あり方、◆外交と防衛力整備の進め方、◆子育て・教育、科学技術立国のあり方。国民の多くが明確に示して欲しいと考えている論点としては、こうした点ではないか。

内外ともに激動が続く時こそ、日本社会が必要とする政策、取り組み方について、政党や候補者が競い合い、議論を尽くしたうえで、有権者が選挙で判断する政治に近づけていく取り組みが求められていると考える。

★追記(1月10日午前9時)読売新聞は10日朝刊で「高市首相は、23日召集が予定される通常国会冒頭で衆院を解散する検討に入った」と報道。「政府関係者が明らかにした」としているが、高市首相自身の意向を確認したのか、自民党内の主要幹部への根回しは終えているのかなど事実関係ではっきりしない点もある。また、高市首相は記者会見で、最優先で取り組んでいる物価高対策の効果を国民に実感してもらうのが先だとして、早期解散に慎重な姿勢を繰り返し表明してきた。それだけに今回の国会冒頭解散に、国民の理解は得られるのかどうか、大義名分はあるのか、高市首相の動向を注視したい。(了)

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2026年政局の焦点”高市首相の求心力と連立基盤の変動”

新しい年・2026年の政治は、どのような動きになるだろうか。去年10月に発足した高市政権は年末に補正予算を与党に加えて、国民民主党と公明党の賛成も得て成立させたのに続いて、総額122兆円の新年度予算案の編成も終えて、新年を迎えた。

内閣支持率は60%を上回る高い水準を保ったまま年を越え、これまでのところ政権運営は全体として順調に推移している。

今年は大きな選挙が予定されていないことなどから、2026年の政治は高市政権を中心に動く見通しだ。そこで、高市政権が進めようとしている政権運営を下敷きに新年の政治のゆくえを探ってみたい。

先に結論を明らかにしておいた方が、話がわかりやすいと思う。端的に言えば新年の政治は、高い支持率を背景にした高市首相の求心力がいつまで続くのか、また政権の基盤である自民・維新の連立が維持していけるかどうかが大きなカギを握っているとみている。

さらに、衆院解散・総選挙については年内説が多いが、高市首相の政権戦略からすると年内解散の確率は低いのではないか。なぜ、このような見方・読み方をしているのか、以下詳しく説明したい。

今年の政治日程”大きな選挙がない年”

最初に政治日程から確認しておくと今年の前半は、通常国会が主な舞台になる。1月23日に召集され、会期は150日間で6月21日に会期末を迎える。

その通常国会の前半は、新年度予算案の審議が中心になる。予算が成立すれば4月以降、インテリジェンス機能の司令塔となる「国家情報局」や「防災庁」の設置法案、それに連立を組む日本維新の会が重視する「衆院議員定数削減法案」や「副首都構想の法案」の扱いが焦点になる見通しだ。

外交面では、アメリカのトランプ大統領が4月に中国を訪問し、習近平主席と米中首脳会談を行う予定だ。このため、高市首相は3月にもアメリカを訪問し、トランプ大統領との日米首脳会談で対中戦略などのすり合わせを行いたい考えだ。

秋には高市首相は、自民党総裁と首相にそれぞれ選出されてから1年の節目を迎える。高市首相の総裁任期は、前任の石破首相の残り任期になるため、来年・2027年9月が任期満了、衆院議員と参院議員の半数は2028年に任期満了となる。

このように今年は”大きな選挙が予定されていない年”というのが特徴だ。もちろん高市首相が衆院解散を決断すれば、総選挙となる可能性が大きいが、高市首相は「政策が山ほど控えており、解散を考えるヒマはない」と否定している。

首相の求心力がカギ、物価・経済も影響

さて、今年の政治を読む上で、まずは「高市首相の求心力」、具体的な指標としては高市内閣の支持率の推移が大きなカギを握っている。高市内閣の12月の支持率はNHKの世論調査で64%、朝日新聞の調査で68%、読売新聞の調査で73%といずれも政権発足以降、高い水準を維持している。

野党の幹部は「支持率が50%程度にまで下がらないと攻めづらい」と語る。自民党幹部の一人も「党内には高市首相に物申したい人もいるが、今は口に出せる状況にはない」と沈黙を保っている。ただ、支持率が下落してくれば党内がざわつき、異論が広がることは否定しないというわけだ。

内閣支持率を分析すると18歳以上を含む20代から30代、40代、それに50代までは「高市内閣支持」の割合が70%台後半を占める。つまり、歴代政権と違って50代以下の若い世代の多くがまとまって支持しており、当面、大幅に支持率が下落するような事態は予想しにくい。

一方、高市内閣は発足して2か月余りが経過したばかりで、「実績」が評価されたわけではない。初の女性首相で、政治を大きく変えてくれるのではないかという「期待感」が高支持率につながっているとの見方もある。

歴代の政権は通常国会が進むにつれて、支持率が低下してくるケースが多かった。高市政権の場合、国民は物価高対策に大きな関心を寄せていることから、年が変わってようやく家計に届くようになる政府の施策が支持されるのか、逆に期待外れとして支持離れとなるか注目される。

また、国会審議の中心になる新年度予算案は、一般会計の総額が122兆円と過去最大。インフレで税収は過去最高になったにもかかわらず、新規国債の発行は増えた。金融市場は急速な円安・債券安の形で、財政規律に警鐘を鳴らしている。

予算審議では「実質賃金の目減りが続く中で、賃金の引き上げや日本経済の先行きは大丈夫なのか」などと野党側の追及が続き、内閣支持率に影響が出ることも予想される。新年度予算案が成立する見通しの4月、通常国会会期末の6月段階で、高市内閣の支持率はどのようになっているのか、2026年政局の第1のポイントになるとみている。

自・維連立は継続か、離脱の可能性は

次に通常国会は参院で与党が過半数割れしていることから、新年度予算案の修正をめぐって与野党の攻防が予想されていたが、年末の高市首相と国民民主党の玉木代表との会談で、国民民主党が要求していた「年収の壁」の178万円への引き上げを高市首相が受け入れる一方、玉木代表も新年度予算案の早期成立に協力することで合意した。

この結果、新年度予算案は自民・維新の与党に加えて、国民民主党が賛成に回る公算が大きく、与党が過半数割れの参議院でも賛成多数で可決・成立する見通しが強くなっている。

そこで政治的には新年度予算案よりも、維新が「連立参加の絶対条件」と位置づけ高市政権に実現を迫ってきた議員定数削減法案や副首都構想を実現する法案が成立するかどうかの方に焦点が移ってきている。

維新は、先の臨時国会でも連立離脱をちらつかせながら、定数削減法案の提出と採決を自民党に強く働きかけてきた。このため、定数削減法案や副首都構想法案が成立にこぎ着けられない場合には、連立離脱が現実味を帯びるのではないかとの観測が出ている。

その際、維新に代わって国民民主党が連立入りするのではないかとの見方も一部で取り沙汰されている。

国民民主党の対応については、閣外協力の形で自民党に協力することはないとは言えないが、本音は”政権とつかず、離れず、果実を得る”のが基本戦略とみられる。このため、連立まで踏み込む可能性は小さいのではないかと個人的にはみている。

いずれにしても予算成立後の国会では、定数削減法案と副首都法案の扱い、それに自民・維新・国民民主の3党の関係が絡んで、高市政権の連立基盤が揺らぐ可能性がある。

加えて、その時点で高市内閣の支持率が下落している場合は、足元の自民党内から連立の枠組みや高市首相の政権運営をめぐって異論や批判が相次ぎ、政権基盤が揺らぐ可能性がある。こうした政見基盤の変動が、2026年政局の2つ目の焦点だ。

高市戦略は解散より、実績づくり優先か

新年の政治展望では衆院の解散・総選挙の見通しについて、質問を受けることが多いので、個人的な見方を説明したい。解散の時期は、時の首相が決断するので断定的なことは言えないが、情報を集め、政治情勢なども加味して確率の高いケースを予測するのが基本だ。

高市政権の場合、解散の時期として想定されるのは◇新年2026年1月の通常国会冒頭、◇予算成立後の4月以降、◇通常国会会期末の6月、◇高市政権発足から1年・秋の臨時国会、◇さらには来年・2027年秋の自民党総裁選前後、◇2028年10月の任期満了前のケースだ。

政界では高市内閣の支持率が極めて高いことから、予算成立後の今年4月以降はいつでもあり得るとの早期解散説が多く聞かれる。確かに自民党は衆参両院の選挙とも大敗を喫しているので、早期解散論が多数を占めることは理解できる。

ただ、自民党の政党支持率は低迷しており、この10年余りで最も低い水準のままだ。高市首相は年末の記者会見などで「目の前で取り組まなければならないことが山ほど控えている。解散は考えているヒマがない」と否定的な発言を繰り返している。

高市首相の任期は、前任の石破首相の残り任期である来年9月までだ。仮に衆院で勝利しても、参院は過半数に遠く及ばない。連立相手の維新が大幅に議席を失い連立解消になると、参院の運営は全く見通しがつかなくなる。

自民党長老に聞くと「マスコミは早期解散ありと盛んに流しているが、高市首相は実績をあげたうえで、信を問うというのが基本戦略だ。今年は腰をすえて政策実現に取り組み、来年以降に総裁選と衆院選を勝ち抜き、総裁任期で言えば通算5年政権を担う戦略を立てているのではないか」との見立てだ。

個人的には、この長老の見方を上回る情報はないので、来年秋頃の解散が有力とみている。但し、その場合、高市内閣の支持率はそれまで高い状態を維持できるかは不透明だ。

したがって、さらに正確さを求めると、通常国会で新年度予算案が衆院を通過する見通しの2月末頃の情勢をみたうえで、判断するのが最も適切ではある。

公明の路線選択と政界再編へ動きも

最後にもう1点、野党の連携と公明党の路線選択について触れておきたい。高市政権の発足を契機に、公明党が26年間続いた自民党との連立政権からの離脱し、政界の構図は大きく変わった。公明党が今後どのような路線を選択するのか、2026年政局の「隠れた焦点」だ。

野党第1党の立憲民主党は、公明党との連携を軸に中道勢力の結集に向けた動きを強める見通しだ。これを受けて公明党は立民との連携に踏み出すのか、それとも自民党との関係修復へ動くことはあるのか、その選択は政界に大きな影響を及ぼす。さらに国民民主党が自民党との連携へと動くのか、踏みとどまるのかも注目点だ。

高市政権と自民党は、維新との連立を維持した上で、連立の枠組みの拡大、具体的には国民民主党に対象を絞って連立参加をめざす方針だ。そのうえで、公明党との関係改修復をめざすのが基本戦略だ。

一昨年からの衆参両院の選挙で、参政党、れいわ、共産党、保守党、社民、チーム未来など新興勢力の政党を含めて多党化が進んだ。こうした動きがどのように整理・統合されていくのか。底流では、公明党を間に挟んで自民、立民の駆け引きが一段と強まるとみている。

そして2026年の政治は、高市政権が保守勢力を固めながら政権基盤を強化していくのか、それとも連立政権の基盤が崩れたりして政局が流動化し、政界再編への動きが出てくるのかどうか、高市首相の求心力と政権基盤の変動を注視していく必要がある。

★追記(1月6日午前11時半) 高市首相は年頭にあたって5日、記者会見し「政治の安定なくして、力強い経済政策も外交・安全保障もできない。日本維新の会との連立合意を基礎としつつ、国民民主党をはじめとする野党にも協力を呼びかけていく」との考えを示した。

また、通常国会の会期中の衆院解散・総選挙があるかとの質問に対し「国民に高市内閣の物価高対策や経済政策の効果を実感いただくことが大切だ。こうした目の前の課題に懸命に取り組んでいるところだ」とのべ、解散に直接言及することは避けた。(了)

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臨時国会閉会、自民・維新連立の足並みに乱れ

高市政権が初めて臨んだ臨時国会が17日、閉会した。総額18兆3000億円の補正予算は成立した一方、自民・維新両党が提出した衆議院の議員定数削減法案は審議に入れないまま継続審議となり、来年の通常国会へ先送りになった。

定数削減法案は、維新が連立政権参加の「前提条件」と位置づけ、臨時国会での成立を強く働きかけたが、自民党側は慎重姿勢が目立ち、早くも連立の足並みに乱れが生じた。

高市政権の対応や与野党の攻防をどのようにみたらいいのか、臨時国会を点検してみたい。

 物価高対策、世論の評価がカギ

まず、高市政権が初めて手がけた総合経済対策の裏付けとなる補正予算案は16日、参議院本会議で自民・維新の与党に加えて、国民民主党と公明党も賛成して可決・成立した。

国民民主党や、連立政権から離脱して野党に回った公明党は、ガソリン税の暫定税率の廃止や一人当たり2万円の子ども手当の支給などを与党が受け入れたことから、補正予算案への賛成に回った。参院では与党が過半数を割り込んでいることから、国民民主と公明が賛成に回ったことは、高市政権にとっては成果といえる。

問題は、国民がどのような評価を示すかだ。政府の物価高対策をめぐっては国民から「家計に届くのは年明け以降で、あまりにも遅すぎる」「食料品などの相次ぐ上昇に比べて、対策の中身は軽い」などといった厳しい声が聞かれる。

高市政権は発足から2か月近くが経過したが、内閣支持率は高い水準が続いている。物価高騰が続く中で、国民が政府の物価高対策をどのように評価するかは、高市内閣が引き続き高い支持率を維持していけるかどうかのカギになる。

高市政権の積極財政を受けて、円安や債券安が進んでおり、経済界からもインフレがさらに進むのではないかと警戒する声も聞かれる。新年度予算案の編成を通じて、高市首相がどのような経済運営のかじ取りをするのか焦点になっている。

 企業献金見直し、定数削減も先送り

今度の臨時国会ではもう一つ、懸案の「政治とカネの問題」を前進させることが大きな宿題になっていた。石破前政権当時、与野党は「3月末までに結論を出す」ことを申し合わせてきたが、実現せず、先の通常国会から先送りが続いてきた。

自民党と立憲民主党の意見の対立で進展しなかったことから、国民民主党と公明党が11月19日、企業・団体献金の受け皿を都道府県単位に限定する案を提案し、立憲民主党も賛成する意向を示した。これを受けて、与野党で修正案をとりまとめる動きが始まろうとしていた。

こうした中で、自民党と日本維新の会は会期末まで2週間を切った12月5日になって、衆議院の議員定数削減法案を国会に提出し、既に与野党が提出済みの企業・団体献金や政治資金関連法案とともに同じ特別委員会で審議を行うことになった。

会期末が迫る中で、法案を審議する順番などをめぐって与野党の駆け引きが続き、企業・団体献金の見直し法案の審議は進まず、最終的に継続審議となった。

自民党は派閥の裏金問題をめぐって国民の厳しい批判を浴び、衆院選と参院選で大敗を喫した。また、高市政権の発足に当たっても「政治とカネの問題」の取り組み方が問題になり、公明党が連立政権を離脱する原因になった。

こうした経緯があるだけに今度の臨時国会で企業・団体献金をはじめとする「政治とカネの問題」に全く前進がみられなかったことは、国民の政治不信をますます強めることになりそうだ。

与野党ともに猛省を迫られると同時に、特に政権与党の自民党と維新は、国会最終盤に定数削減問題を持ち出し、企業・団献金見直し法案の審議が進まなかったことへの責任は大きいと言わざるを得ない。

自民・維新に温度差、連立足並みに乱れ

次に、自民・維新両党が提出した衆議院の議員定数削減法案について、法案の意味やねらい、それに今回は継続審議に終わったことによる連立政権への影響を考えてみたい。

まず、議員定数削減は高市政権の発足に当たって、日本維新の会が「身を切る改革」として強く主張したもので、自民・維新連立政権合意書に盛り込まれた。改革姿勢を打ち出すことで、党勢の回復をねらったものだ。

一方、定数削減法案の内容をめぐっては、野党側から厳しい批判が相次いだ。削減目標は総定数の1割とし、与野党が協議し1年以内に結論を出すとしている。そのうえで、まとまらない場合は小選挙区25、比例代表20の合わせて45議席を削減するという自動削減の規定も盛り込んでいた。

野党各党は「まとまらない場合、事前に結論が決まっているのはあまりにも乱暴で、民主主義の根本に反する」などの厳しい指摘が相次いだ。こうした点については野党だけでなく、与党の自民党内からも同じような意見が出された。

この定数削減問題は、高市総裁と維新の代表など限られたメンバーで協議して、連立合意に盛り込んだことから、自民党内ではほとんど議論されてこなかった。

維新の側からは、この国会で成立図るべきだという強い意見が出された。幹部の中からは「できなければ連立離脱もありうる」といった声や「衆院解散・総選挙も覚悟して実現をめざすべきだ」といった強硬な意見も出されたという。

このように定数削減法案をめぐっては今国会で成立を目指す維新と、慎重姿勢の自民党との間に温度差があり、特別委員会での法案の扱いについても与党側の対応には足並みの乱れがみられた。

高市総裁と吉村代表は16日に党首会談を行い、来年の通常国会で定数削減法案の実現を目指して努力していくことで一致した。しかし、「連立参加の絶対条件」としてきた維新の側には、今回の自民党の対応には強い不満と不信感が残ったとみられる。

来年春には国勢調査の速報値が出されることから、衆院議長の下に設置された協議会で、選挙制度や定数削減などについて一定の結論を出す見通しだ。その際、維新の側から再び定数削減法案が提起される可能性もあり、自民と維新の連立政権は安定した関係が続くかどうか試されることも予想される。

新年の政権運営、問われる連立の力量

臨時国会が閉会したのを受けて高市首相は17日夕方記者会見し「物価高への対応を最優先に取り組み、補正予算を成立させて国民との約束を果たすことができた」と成果を強調した。

議員定数削減法案については「たいへん残念ながら審議すらされなかった。引き続き通常国会で野党の協力を求め、成立を期したい」とのべるとともに「日本維新の会との連立合意を基礎として働いていく決意にいささかの変わりもない」とのべ、維新との連立を基軸に政権運営を進める考えを示した。

一方、台湾有事をめぐる自らの国会答弁については「日本政府の従来の立場を変えるものではない。この点をさまざまなレベルで中国及び国際社会に対して粘り強く説明していく考えだ」とのべた。

政権発足からまもなく2か月を迎える高市政権は、今月26日に新年度予算案を閣議決定した後、年明けの通常国会に臨むことになる。自民党は維新と連立を組んでも参院では過半数に達しないなど政権基盤が不安定なことから、維新との連立が機能するかどうか、連立の力量とあり方が問われることになりそうだ。(了)

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衆院定数削減法案のゆくえ、首相判断がカギ

衆議院の議員定数削減をめぐって自民党と日本維新の会は5日、1割を目標に議員定数を削減する法案を国会に提出した。この法案の施行後、1年以内に結論を出せない場合、自動的に小選挙区で25、比例代表で20の合わせて45の議員定数を削減するという異例の規定を盛り込んでいる。

これに対し、野党側は「与党だけで期限を決め、数も決めて、ダメだったら自動削減というのは極めて乱暴。民主主義を否定するやり方だ」として強く反発しており、会期末まで2週間を切る中で、法案が成立するかどうか不透明な情勢だ。

議員定数の削減は、民主主義の根本に関わる問題だけに、今回の法案をどのようにみたらいいのか、今の臨時国会で法案の成否はどのようになるのか探ってみたい。

 自動削減を盛り込んだ異例の法案

最初に、自民党と日本維新の会が5日に提出した法案について、おさらいをしておきたい。維新の吉村代表が高市政権と連立を組むのに当たって「絶対条件」として挙げたのが「衆議院議員定数の削減」で、連立政権樹立の合意書に「臨時国会に法案を提出し、成立を目指す」ことが盛り込まれた。

この連立合意を受けて法案が提出されたもので、法案では「衆議院議員の定数(465)の1割削減を目標に与野党で協議し、法制上の措置を1年以内に講じること」としている。そして結論が出なかった場合、小選挙区で25、比例代表で20の合わせて45の定数を削減することが自動的に決まることしている。

このようにこの法案は、与野党の意見がまとまらなかった場合でも、自動的に定数の削減と数値が決められているという極めて異例な内容になっている。

野党側は猛反発しており、「あまりにも乱暴で、民主主義の手続きを否定するやり方だ」「法案には、選挙制度改革をどうするかといった中身が何もない」などと厳しく批判している。

 小選挙区の削減対象、20都道府県も

自民・維新の議員定数削減に伴って、削減対象となる都道府県などをまとめた自民党の試算も明らかになった。

小選挙区で削減になるのは、東京都が3減になるのをはじめ、大阪府、千葉県、神奈川県がそれぞれ2減。北海道、秋田、群馬、岐阜、香川、福岡、沖縄などの県がそれぞれ1減になるなど合わせて20都道府県が対象になっている。

この試算は、2020年の国勢調査の結果を踏まえ、人口の変動を選挙区の定数に反映しやすい「アダムズ方式」に基づいて算出されている。削減案は、来年に結果が出る2025年の国勢調査を基に行うことから、試算と実際の削減対象が異なる可能性がある。

今回の削減案では、東京や大阪など大都市で定数が削減されているが、秋田、富山、香川の各県では小選挙区が2つまで減る。最多の東京都(現行30、削減後は27)と比べると、現行は定数3なので10倍、削減後は13.5倍に格差が拡大する。

つまり、有権者にとって1票の格差は広がらないものの、地域に配分される議員・選挙区の地域間格差は拡大する。地方の声は、国政に届きにくくなるのというのは事実だ。重く受け止める必要がある。

過去30年の比較でも大規模な削減案

衆議院の定数削減は、これまで何度も議論が続いてきたテーマだ。細川連立政権当時の1994年の政治改革で、中選挙区から小選挙区比例代表並立制に移行した時に定数が、512から500に12削減された。

その後、自自公連立の小渕政権当時の2000年に比例代表が20削減されて480になった。2013年には「0増5減」で小選挙区が5減、2017年には小選挙区6減・比例4減で、今の465に至っている。

このようにざっと30年かけて47議席を漸進的に削減してきた。小渕政権当時、自民・自由連立時に比例を50削減で合意したこともあったが、実現したのは自自公連立時で、20議席にまで規模が縮小した。それだけ定数削減は難題であることがわかる。

今回の案は1年で一気に45もの削減だから大幅で大胆、急進的な削減案とも言える。歴史を振り返ると、果たして実現できるのか疑問というのが率直な印象だ。

維新の案は当初、比例だけで45削減と伝えられてきたが、最終的に比例と小選挙区の組み合わせになった。削減方法が変わった理由や、検討してきた選挙制度などについても詳しく説明してもらいたい。

一方、自民党も党内論議がほとんどなされないまま、高市総裁と維新幹部のトップダウンで決まった印象を受ける。党内合意は最後まで大丈夫なのか、こちらも疑問と言わざるを得ない。

 定数削減法案の成立は?難題が続々

それでは今の臨時国会で、定数削減法案は成立するのだろうか。冒頭に触れたように野党側が強く反発しており、今後の審議日程ははっきりしない。成立への道筋は不透明だ。

野党側が反発しているのは、特に中小政党や新興政党にとって定数削減は党の存亡に直結する重大事だからだ。中小政党は比例代表で議席を得るところが大きいので、定数削減を受け入れるのは難しい。

加えて、自民・維新も含めた各党は、衆院議長の下に設けられた協議会で、選挙制度を含めた政治改革のあり方を検討している最中で、来年春頃には具体的な結論を出せるよう協議を続けている。

その矢先に特定の政党、しかも政権与党が独自案を掲げ、年内に成立させるというのだから、野党が猛反発するのもわかる気がする。

さらに国会運営面では、懸案の政治資金問題である企業・団体献金の受け皿を限定する法案を、国民民主党と公明党が共同で提出し、既に特別委員会で審議が始まっている段階だ。

与党の定数削減法案も同じ特別委員会で審議するため、法案審議の順番が問題になる。しかも今の国会の会期末は17日で、残り2週間を切った。8日からは補正予算案の審議が始まり、成立は会期末ギリギリになる見通しだ。

国民としては、物価高対策などを盛り込んだ補正予算案の成立が最優先で、その次に優先するとすれば、政治とカネの不祥事が相次ぐので、政治資金の法案を急ぐべきだと考える人が多いのではないか。

高市首相は「そんなことより定数削減をやりましょうよ」と先の党首討論で呼びかけたが、法案の優先順位をのべたものではないと釈明した。会期を延長して両方の法案の成立をめざすのか、新年度予算編成とも重なるので会期延長なし・継続審議とするのか、判断を迫られる。

さらに定数削減問題は、維新が連立参加の「絶対条件」と位置づけている問題だけに高市首相としては、連立維持の観点からの判断も必要だろう。

高市首相は補正予算案、定数削減法案、企業・団体献金受け皿限定法案の扱いと会期延長問題について、最終的にどのように決断するのだろうか。今後の政権運営にも影響を及ぼすので、高市首相の判断を注視していきたい。(了)

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“自公連立崩壊”の見方・読み方

自公連立政権から公明党が離脱し、26年に及ぶ両党の協力関係が崩れた。公明党の斉藤代表は10日、自民党の高市総裁と会談し「公明党が最も重視している政治とカネの問題をめぐる自民党の対応が不十分だ」として、連立政権を離脱する方針を伝えた。

公明党は、石破首相の後継を選ぶ首相指名選挙では高市氏には投票しない考えで、選挙協力も白紙に戻す方針だ。

これに対し、自民党は14日に両院議員総会を開き、高市総裁らが経緯を説明し、今後の対応についても意見を交わすことにしている。高市総裁ら党執行部は、首相指名選挙などで維新や国民民主党の協力を求めるものとみられる。

一方、立憲民主党は「首相指名選挙で野党側がまとまれば、政権交代の可能性も出てくる」として、維新や国民民主党に候補者の一本化に向けて党首会談を呼びかけている。14日には3党の幹事長会談が行われる見通しだ。

このように首相選びをめぐって与野党の駆け引きが活発になっているが、その前に今回の自公連立崩壊の意味や、今後の政権のあり方などを掘り下げて議論し、確認していく必要があるのではないか。そうした基本姿勢がないと政治の混迷から脱却できないのではないかと危惧している。

首相選び比較第1党か、野党連携か

まず、当面の焦点である石破首相の後継を選ぶ臨時国会の召集と首相指名選挙からみておきたい。10月4日に高市氏が自民党の新総裁に選出されたが、首相指名選挙を行う臨時国会の召集日程は未だに決まっていない。

外交日程は、26日からASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議や、27日にはトランプ米大統領の訪日が予定されている。政府・自民党は、20日の週の早い時期に臨時国会を召集したいとして調整を続けている。

ところが、公明党の連立離脱で、首相選びの情勢が見通せない状況になっている。自公連立政権では衆参両院とも自公で過半数を割り込んでいるものの、衆議院では220人を上回る勢力を維持していた。

ところが、公明党の離脱で衆議院では、自民党の勢力は196(衆院議長除く)まで縮小した。これに対し、立憲民主党は147、日本維新の会は35、国民民主党は27の勢力だ。野党3党がまとまれば209で、上位2人による決選投票に持ち込まれた場合、自民党を上回ることもあり得ることになる。

立憲民主党は「政権交代のチャンスだ」として、野党候補を1本化するよう働きかけている。そして野党統一候補として、国民民主党の玉木代表を推すこともありうるとして攻勢を強める構えだ。

これに対し、維新と国民民主党は、憲法や原発・エネルギーなどの基本政策が一致していないとして、今のところ慎重な姿勢を崩していない。

首相指名選挙では与野党のさまざまな組み合わせが想定され、誰が選出されるのかはっきりしない。今の時点で与野党の対応を基に判断すると、衆参ともに勢力が最も多い比較第1党は自民党なので、高市総裁が選出される可能性が高いとみられる。

但し、野党が結束すれば自民党を上回るので、野党候補が首相に選出されることもありうる。93年に8党派による細川連立政権が誕生したように、野党各党が歩み寄ることがあるのかどうか、みていく必要がある。

 連立崩壊で単独政権、極めて異例

それでは、これからの政治はどのように展開するだろうか。首相指名選挙の行方は先ほどみたように流動的だが、比較第1党の会派から選出される確率は高いので、高市総裁が選出された場合を想定して考えてみたい。

高市総裁の場合には、女性で初めての首相就任になるので、国民からの期待や支持がかなり高まることが予想される。但し、首相の評価は、実績や政権の安定、国民の信頼が得られるかどうかがカギを握る。

高市氏自身の評価はこれからであり、今の時点では過去の連立政権をめぐる動きが判断材料として参考になる。仮に高市氏が首相指名を受けた場合、国民民主や維新が直ちに政権に参加する確率は低いとみられ、自民党の単独政権としてスタートする公算が大きい。

自民単独政権の先例はどうだっただろうか。直ぐに頭に浮かぶのは93年に政治改革をめぐって自民党が分裂し、衆院選を経て宮沢政権が退陣、非自民・非共産の8党派からなる細川連立政権の誕生だ。この時まで自民1党優位体制が続き、自民党の単独政権が長期にわたって続いた。

この細川政権以降、日本政治は「連立の時代」に入り、自民党は社会党やさきがけと連立を組むことで政権を奪還し、その後も連立相手を変えながら政権を維持してきた歴史がある。

こうした中で、自民党が単独政権となったのは橋本龍太郎政権の時だ。当初、自社さ3党連立政権の枠組みでスタートしたが、96年の衆院選挙後、社民党とさきがけが閣外協力に転じ、自民単独政権に変わった。当時、自民党は最大野党の新進党に勝利したものの、過半数を割り込み少数単独政権としての再出発だった。

その後、自民党は新進党からの離党者を”一本釣り”して復党させ、衆院の過半数を回復した。この復帰組の中に今の石破首相、高市総裁も含まれていた。社民、さきがけの閣外協力は96年6月に解消されたので、橋本政権ではそれ以降、98年の退陣までの1年2か月、自民単独政権が続いたことになる。

その橋本首相は98年7月の参院選で大敗して退陣し、小渕恵三首相が後継首相を務めた。衆院は過半数を確保していたが、参議院は過半数割れし、衆参ねじれ国会に苦しんだ。

当時は金融危機が続いており、日本長期信用銀行も破綻に追い込まれた。金融再生関連法案を早期に成立させる必要があり、野党案を丸飲みして、成立にこぎ着けた。

また当時、防衛庁の背任事件をめぐり、参院で額賀防衛庁長官(今の衆院議長)に対する問責決議案が野党側から提出されて可決され、額賀長官が辞任に追い込まれた。問責決議案で閣僚が辞任に追い込まれた最初のケースだった。

こうした政権の不安定さから脱却するために小渕首相は、当時の自由党の小沢代表と会談し、連立政権を発足させることで合意した。その影の立役者が野中官房長官で、安定政権のためには「ひれ伏してでも連立をお願いする」ととして小沢氏の連立参加を取りつけたのは有名だ。

この自自連立を契機に自自公連立、自由党が外れて自公連立へとつながった。つまり、自民単独政権は橋本政権後半の1年2か月と、小渕政権発足から自自連立まで5か月の合わせて1年7か月に過ぎない。細川連立政権以降30年のうち、自民単独政権は極めて限られたケースであることがわかる。

ここまで長々と説明したのは、連立政権の背景には先人達の心血を注ぐような努力の積み重ねがあることを知ってもらうためだ。

逆に言えば、今回自公連立が崩壊に追い込まれた背景には、自民党の対応にさまざまな問題があったのではないか。端的に言えば、連立に必要な「信頼感」を持続させていくことができなかったと言えるだろう。

具体的には、公明党は衆院選、都議選、参院選と連敗を喫し、最も強く求めたのが「政治とカネの問題」だったが、自民党からは踏み込んだ対応ができなかった。余りにも鈍感すぎる対応とみることもできる。

また、自民党内には「公明党は、連立からは外れない」との思い込みが常態化していたと感じる。さらに、高市氏が新総裁に選出された直後に国民民主党の玉木代表と極秘会談を行ったとの情報が流れ、公明党側の不信をさらに強めることになった。

連立崩壊、中心軸なき混迷政局続くか

最後に自公連立崩壊後の政治はどう動くのだろうか。まず首相指名選挙では、与野党の誰が指名されることになるのか混沌とした状態が続いている。

ただ、四半世紀続いてきた自公連立政権が崩壊したことで「政治の中心軸がなくなった状態」と言っていいのではないか。衆院(総定数465)で考えてみるとこれまでは自公で220人、過半数を下回るものの、一定の規模・中心軸があった。

ところが、公明党が外れ、今や自民党の勢力は196人にまで縮小した。主導権を発揮できる集団がなくなり、政治の混迷は避けられない情勢だ。

当面は、衆参ともに比較第1党の自民党がどのように対応するかがカギを握る。仮に高市総裁が首相に選ばれた場合、高市氏自身が大局的な立場で、安定した政権運営を行えるかどうか。そのためには、内閣の要である官房長官にかつてのような実力と経験を持った人材を起用できるかどうかが大きなポイントになる。

一方、野党側も野党第1党の立憲民主党が150人近い議員を有しており、どこまで他の野党を説得できるかが問われる。維新、国民民主も野党の立場で政権交代をめざすのか、それとも自民党との連携し政策実現の道を歩むのか態度を明確にすることが迫られるだろう。

こうした自民、野党、そして公明党の各党の動きが続く中で、政権をめざす政党や議員の離合集散、政界の再編成が始まることになるのではないか。これから新たな政治の動きがいつ、どのような形で起きるのかが焦点になる。

▲追記(14日22時)◆政府は臨時国会を21日に召集する方針を固め、15日に衆参両院の議院運営委員会で与野党に伝える。召集日に首相指名選挙が行われる見通し。◆自民党両院議員懇談会が14日開かれ、高市総裁は公明党の連立離脱の経緯を説明し「私の責任であり、おわびしたい」と陳謝した。そのうえで、「首相指名のギリギリまで努力していく」と表明した。◆立憲民主党と日本維新の会、それに国民民主党の3党は15日に党首会談を開き、首相指名選挙をめぐり意見を交わすことになった。14日に開いた3党の幹事長会談で決まった。

▲追記(15日23時)◆自民党の高市総裁は15日、日本維新の会の吉村代表と会談した。高市総裁は、首相指名選挙と連立政権入りを含めて協力を要請し、両党は16日から政策協議を始めることで一致した。会談後、吉村代表は政策協議がまとまれば、首相指名選挙で高市氏に投票する考えを明らかにした。◆首相指名選挙をめぐり立憲民主党、日本維新の会、国民民主党3党の党首会談が15日に行われた。安全保障政策などについて、さらに議論が必要だとして、幹事長レベルなどで協議を続けることになった。20日に再度、党首会談を開く。

▲追記(16日21時30分)◆自民党と日本維新の会は16日、連立政権発足も視野に入れた政策協議の初会合を開いた。維新が提示した12項目の政策要求について協議した。17日も協議を続ける。維新の藤田共同代表は、16日の協議で高市氏から「閣僚も入る連立入りをお願いする」と要請があったことを明らかにした。

▲追記(17日23時)◆自民党と日本維新の会の2回目の政策協議が17日に行われ、21日の臨時国会召集までの合意をめざして協議を続けることになった。両党は「協議は大きく前進した」としており、維新は首相指名選挙で高市氏に投票、選出される公算が大きくなった。連立の枠組みは、まだ定まっていない。

▲追記(19日21時)◆日本維新の会は19日、大阪市の党本部で常任役員会を開き、自民党との連立政権に向けた政策協議をめぐる対応について、吉村代表と藤田共同代表に一任することを決めた。維新は20日に役員会と両院議員総会を開き、最終的な方針を決定する。協議がまとまれば、吉村代表が自民党の高市総裁と会談し、合意文書に署名する見通し。

▲追記(20日20時)◆自民党の高市総裁と日本維新の会の吉村代表は20日午後6時過ぎから国会内で党首会談を行い、連立政権を樹立することで正式に合意し、両党首が文書に署名した。維新は21日の首相指名選挙で、高市氏に投票することから、高市氏の首相就任が確実になった。(了)

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