安倍総理、本当の出番ですよ!コロナ危機

新型コロナウイルス感染の問題は、先週3月19日の専門家会議の提言を受けて、大型イベントの自粛要請は続くものの、政府が要請した一斉休校は終了、地域によって学校が再開、追加の経済対策づくりも急ピッチで進められる見通しだ。

一方、今回のコロナウイルス感染が日本社会や経済へ与えた影響は極めて大きく、安倍政権は乗り切ることができるのかどうか。ここ数か月の政権の取り組みが大きなカギを握っている。端的に言えば、”安倍総理、これからが、本当の出番ですよ!”と言えるのではないかと思う。

新たな局面を迎えつつあるコロナ危機。安倍政権の対応、どんな取り組みが必要なのか探ってみたい。

 ”感染制御のメッセージ” が必要

新型コロナウイルスの感染が中国の武漢で確認されたのが去年12月上旬、日本国内で初めて感染者が出たのが今年1月16日、中国武漢市から帰国した中国国籍の男性だった。それから2か月余り経過したが、国内での感染者は1000人を上回っている状況だ(3月22日18時半時点、1078人。クルーズ船712人除く)。

これまでの政府の対応は、指定感染症の指定・公布、クルーズ船の集団感染、専門家会議の設置時期などを見ると”後手に回っている”と言わざるを得ない。

一方、安倍総理が2月27日に突然、発表した小中高など全国一斉休校の要請は、決め方などに批判を浴びたものの、国民全体に危機感を共有するなど一定の効果はあったと言えるのではないか。

さて、問題はこれからだ。文部科学省は一斉休校措置は終了、地域によって新学期から学校再開の方針を決める見通しになっている。
また、政府は経済対策の取りまとめに向けて、さまざまな業界・団体などからのヒアリングを行っており、経済対策の中身の大胆さや、規模の大きさに関心が集まりつつある。

ところが、経済対策でいくら巨額な予算を積み上げても、感染症を押さえ込む根本対策が十分でないと、国民は安心できない。経済対策も効果を上げるのは難しいのではないか。

そこで、3月27日には新年度予算案が国会で成立する見通しで、大きな節目を迎える。つまり、経済対策をまとめる前に安倍総理は、「コロナウイルスの制御・コントロール」について、どんな見通しを持っているのか、どんな対策に重点を置いて取り組もうとしているのか、国民に明らかにしてもらいたい。

東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、日本の受け入れ体制の整備に関係してくる問題でもある。

 検査と治療体制への疑問

政府の対応策について、安倍総理をはじめ、加藤厚生労働大臣、西村経済再生担当大臣らの記者会見などを聞いて、納得のいかない疑問点が2つある。

1つは、検査体制、具体的には、新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査。日本はどうして検査件数が少ないのかという点だ。
1日に可能な検査は、2月18日には約3800件だったが、3月16日には7500件、およそ2倍に増えた。
一方、実際に行われた検査件数は、1日あたりの平均で、2月18日からの1週間で901件だったのが、3月9日からの1週間では1364件と増えている。

但し、検査が可能な件数は1か月で2倍に増えたのに、実際に行われた検査は、検査能力の2割程度に止まっている。

また、3月6日からは公的医療保険が適用されるので、検査件数は増えると強調されてきたが、公的保険が利用された件数は、全体のわずか2%に止まっている。

政策に詳しい国会議員に聞いても私と同じように、なぜ、日本では件数が増えないのか、役所の側から納得のいく説明はないと話している。

2つ目は、治療体制の拡充だ。専門家会議は、重症者を隔離して治療を行えるようにすることが重要だと指摘した上で、保健所などが対応できるように思い切った予算や人員の投入が必要だと要望している。

ところが、厚生労働省は、都道府県別の重症者の受け入れ見通しの数字は発表するが、体制は十分と言えるのか、十分な声明は聞かれない。
こうした根源部分の対策について、安倍総理などから納得のいく説明が欲しいところだ。

 政権内の対立・確執を危惧

新型コロナ感染に対する対応に関連して、危惧されているのが、政権内の対立、確執だ。

例えば、安倍首相が先に突如、要請した一斉休校。内容もさることながら、一斉休校案について、菅官房長官をはじめ、萩生田文部科学大臣、加藤厚生労働大臣ら側近と言われる閣僚も当日まで知らされていなかったことに驚かされた。

関係者によると端的に言えば、今井総理補佐官の進言を安倍総理が採用し、関係閣僚は外されていたという構図になる。背景として政権運営をめぐって、今井総理補佐官と、菅官房長官との対立、確執が影響しているとの見方がされている。第2次政権発足から8年目に入る異例の長期政権、政権内部が常に一枚岩とはいかないのはある程度、想像できる。

但し、政権発足まもなく東京オリンピック・パラリンピックの招致に成功したころを思い起こすと、大きな様変わりだ。
当時、政権関係者は「政権運営が順調なのは、安倍総理、麻生副総理、甘利大臣、菅官房長官の4人が話し合い、それを官房長官を通じて閣内に徹底してきたこと。総理と官房長官の関係がいいことが大きい。それに政務の総理秘書官・今井さんら各省秘書官グループらが支えていることだ」と話していた。長期政権で、政権中枢の人間関係も変質してきたと言えるのではないか。

しかし、今回は、国民の命と健康、暮らしに関わる問題だ。当面の危機を乗り切るメドがつくまでは、政権内の利害・打算などは横に置いて、危機管理に徹する必要がある。コロナ危機を乗り切ることができるかどうか、これから本当のヤマ場を迎える。”覆水盆に戻らず”とのことわざがある。政権中枢の一体感を取り戻すことができるのか、その点でも安倍総理の本当の力量が問われていると見ている。