臨時国会閉会、自民・維新連立の足並みに乱れ

高市政権が初めて臨んだ臨時国会が17日、閉会した。総額18兆3000億円の補正予算は成立した一方、自民・維新両党が提出した衆議院の議員定数削減法案は審議に入れないまま継続審議となり、来年の通常国会へ先送りになった。

定数削減法案は、維新が連立政権参加の「前提条件」と位置づけ、臨時国会での成立を強く働きかけたが、自民党側は慎重姿勢が目立ち、早くも連立の足並みに乱れが生じた。

高市政権の対応や与野党の攻防をどのようにみたらいいのか、臨時国会を点検してみたい。

 物価高対策、世論の評価がカギ

まず、高市政権が初めて手がけた総合経済対策の裏付けとなる補正予算案は16日、参議院本会議で自民・維新の与党に加えて、国民民主党と公明党も賛成して可決・成立した。

国民民主党や、連立政権から離脱して野党に回った公明党は、ガソリン税の暫定税率の廃止や一人当たり2万円の子ども手当の支給などを与党が受け入れたことから、補正予算案への賛成に回った。参院では与党が過半数を割り込んでいることから、国民民主と公明が賛成に回ったことは、高市政権にとっては成果といえる。

問題は、国民がどのような評価を示すかだ。政府の物価高対策をめぐっては国民から「家計に届くのは年明け以降で、あまりにも遅すぎる」「食料品などの相次ぐ上昇に比べて、対策の中身は軽い」などといった厳しい声が聞かれる。

高市政権は発足から2か月近くが経過したが、内閣支持率は高い水準が続いている。物価高騰が続く中で、国民が政府の物価高対策をどのように評価するかは、高市内閣が引き続き高い支持率を維持していけるかどうかのカギになる。

高市政権の積極財政を受けて、円安や債券安が進んでおり、経済界からもインフレがさらに進むのではないかと警戒する声も聞かれる。新年度予算案の編成を通じて、高市首相がどのような経済運営のかじ取りをするのか焦点になっている。

 企業献金見直し、定数削減も先送り

今度の臨時国会ではもう一つ、懸案の「政治とカネの問題」を前進させることが大きな宿題になっていた。石破前政権当時、与野党は「3月末までに結論を出す」ことを申し合わせてきたが、実現せず、先の通常国会から先送りが続いてきた。

自民党と立憲民主党の意見の対立で進展しなかったことから、国民民主党と公明党が11月19日、企業・団体献金の受け皿を都道府県単位に限定する案を提案し、立憲民主党も賛成する意向を示した。これを受けて、与野党で修正案をとりまとめる動きが始まろうとしていた。

こうした中で、自民党と日本維新の会は会期末まで2週間を切った12月5日になって、衆議院の議員定数削減法案を国会に提出し、既に与野党が提出済みの企業・団体献金や政治資金関連法案とともに同じ特別委員会で審議を行うことになった。

会期末が迫る中で、法案を審議する順番などをめぐって与野党の駆け引きが続き、企業・団体献金の見直し法案の審議は進まず、最終的に継続審議となった。

自民党は派閥の裏金問題をめぐって国民の厳しい批判を浴び、衆院選と参院選で大敗を喫した。また、高市政権の発足に当たっても「政治とカネの問題」の取り組み方が問題になり、公明党が連立政権を離脱する原因になった。

こうした経緯があるだけに今度の臨時国会で企業・団体献金をはじめとする「政治とカネの問題」に全く前進がみられなかったことは、国民の政治不信をますます強めることになりそうだ。

与野党ともに猛省を迫られると同時に、特に政権与党の自民党と維新は、国会最終盤に定数削減問題を持ち出し、企業・団献金見直し法案の審議が進まなかったことへの責任は大きいと言わざるを得ない。

自民・維新に温度差、連立足並みに乱れ

次に、自民・維新両党が提出した衆議院の議員定数削減法案について、法案の意味やねらい、それに今回は継続審議に終わったことによる連立政権への影響を考えてみたい。

まず、議員定数削減は高市政権の発足に当たって、日本維新の会が「身を切る改革」として強く主張したもので、自民・維新連立政権合意書に盛り込まれた。改革姿勢を打ち出すことで、党勢の回復をねらったものだ。

一方、定数削減法案の内容をめぐっては、野党側から厳しい批判が相次いだ。削減目標は総定数の1割とし、与野党が協議し1年以内に結論を出すとしている。そのうえで、まとまらない場合は小選挙区25、比例代表20の合わせて45議席を削減するという自動削減の規定も盛り込んでいた。

野党各党は「まとまらない場合、事前に結論が決まっているのはあまりにも乱暴で、民主主義の根本に反する」などの厳しい指摘が相次いだ。こうした点については野党だけでなく、与党の自民党内からも同じような意見が出された。

この定数削減問題は、高市総裁と維新の代表など限られたメンバーで協議して、連立合意に盛り込んだことから、自民党内ではほとんど議論されてこなかった。

維新の側からは、この国会で成立図るべきだという強い意見が出された。幹部の中からは「できなければ連立離脱もありうる」といった声や「衆院解散・総選挙も覚悟して実現をめざすべきだ」といった強硬な意見も出されたという。

このように定数削減法案をめぐっては今国会で成立を目指す維新と、慎重姿勢の自民党との間に温度差があり、特別委員会での法案の扱いについても与党側の対応には足並みの乱れがみられた。

高市総裁と吉村代表は16日に党首会談を行い、来年の通常国会で定数削減法案の実現を目指して努力していくことで一致した。しかし、「連立参加の絶対条件」としてきた維新の側には、今回の自民党の対応には強い不満と不信感が残ったとみられる。

来年春には国勢調査の速報値が出されることから、衆院議長の下に設置された協議会で、選挙制度や定数削減などについて一定の結論を出す見通しだ。その際、維新の側から再び定数削減法案が提起される可能性もあり、自民と維新の連立政権は安定した関係が続くかどうか試されることも予想される。

新年の政権運営、問われる連立の力量

臨時国会が閉会したのを受けて高市首相は17日夕方記者会見し「物価高への対応を最優先に取り組み、補正予算を成立させて国民との約束を果たすことができた」と成果を強調した。

議員定数削減法案については「たいへん残念ながら審議すらされなかった。引き続き通常国会で野党の協力を求め、成立を期したい」とのべるとともに「日本維新の会との連立合意を基礎として働いていく決意にいささかの変わりもない」とのべ、維新との連立を基軸に政権運営を進める考えを示した。

一方、台湾有事をめぐる自らの国会答弁については「日本政府の従来の立場を変えるものではない。この点をさまざまなレベルで中国及び国際社会に対して粘り強く説明していく考えだ」とのべた。

政権発足からまもなく2か月を迎える高市政権は、今月26日に新年度予算案を閣議決定した後、年明けの通常国会に臨むことになる。自民党は維新と連立を組んでも参院では過半数に達しないなど政権基盤が不安定なことから、維新との連立が機能するかどうか、連立の力量とあり方が問われることになりそうだ。(了)

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