石破首相の進退、3つのポイント

参院選挙の大敗を受けて自民党は8日、両院議員総会を開き、石破首相は「アメリカとの関税交渉は合意に達したが、実行にあたりさままざまな問題を抱えている」などとして、続投の意向を重ねて示した。

これに対し、総会では総裁選の前倒しの実施を求める意見が相次ぎ、総裁選挙管理委員会で今後の対応の検討を進めることになった。石破首相の進退問題は、今後、どのような展開をたどることになるのか、探ってみたい。

 総裁選前倒しの動きは強まるか

先月28日に開かれた両院議員懇談会は4時間半に及んだが、今回の両院議員総会はおよそ2時間で終わった。石破首相と森山幹事長の挨拶の後、総会は非公開で行われ、石破首相の下で党の結束を呼びかける意見が出された一方で、総裁選挙の前倒しの実施を求める意見が相次いだ。

そして、両院議員総会には、総裁選の前倒しを決める権限がないことから、総裁選を前倒しするかどうかの判断を総裁選挙管理委員会に一任することを決めた。

総裁選の前倒しは党則第6条に規定されている。党所属議員と都道府県連の代表各1人を合わせた総数の過半数の要求があれば、総裁選を行うと定めている。事実上の総理・総裁のリコールの規定ともいわれ、石破首相の退陣を求める意味を持っている。

このため、石破首相の進退問題は、総裁選の前倒しを求める動きが強まるかどうかが第1のポイントになる。これまで総裁選前倒しは行われたことがないため、どのような方法で、議員や都道府県連代表の意思を確認するのかなどについて、逢沢一郎総裁選管理委員長の下で検討が進められることになる。

 参院選の総括と政治責任の取り方

2つ目のポイントとしては、参院選を総括する報告書がまとまった段階で、石破首相と自民党執行部が政治責任について、どのように判断するかが焦点になる。

選挙総括の報告書がまとまるのは、8月の最終週になる見通しだ。森山幹事長は報告書をとりまとめた段階で、自らの責任を明らかにするとしていることから、幹事長を辞任するものとみられる。

その場合、石破首相は党総裁としての政治責任をどのように判断するのか問われることになる。一方、仮に石破首相は続投することになった場合も、森山氏の後任に有力な幹事長を起用できるかどうかが問題になる。

さらに9月の自民党役員人事と合わせて内閣改造を行う場合、党内の協力が得られるかどうかも大きな問題になりそうだ。

石破首相が自らの政治責任と今後の政権運営についてどのような判断をするか、8月下旬以降、石破首相の進退問題が再び大きなヤマ場を迎えることになりそうだ。

少数与党、国会・政権運営の戦略

さらに石破政権と自民党は衆参ともに与党過半数割れという厳しい状況の中で、国会や政権をどのように運営していくか政権運営の展望と戦略が問われている。これが3つ目のポイントだ。

参院選の公約などを実現するため、10月には秋の臨時国会を召集することになる。衆参両院ともに与党は過半数割れしているため、補正予算案や法案を成立させるためには野党の協力なしには1件の法案、予算案も成立しない厳しい状況にある。

自公連立を維持したうえで、野党の一部に連立への参加を求めることが考えられるが、野党各党はいずれも石破政権に距離を置いており、連立の枠組みを拡大するのは難しい情勢だ。

このため、石破政権の続投で秋の臨時国会に臨むのか、それとも石破首相の退陣、新しい総理・総裁の下で難局の乗り切りをめざすのか、自民党内の動きが活発になる見通しだ。

一方、仮に石破首相が退陣し後継の新総裁を選出しても衆参ともに与党は過半数割れしているため、新総裁が必ず首相になれるとは限らない。また、国会の運営でも主導権を確保できる保証はない

報道各社の世論調査をみると参院選の自民党大敗の原因は、石破首相個人の責任というよりも自民党に問題があると考えている人が多数を占めている。このため、自民党の政党支持率も長期低迷状態が続いている。

こうした背景には、裏金問題をはじめとする「政治とカネの問題」をいつまでも引きずる”古い政党”というイメージを持たれていることがある。また、経済政策や子育て、教育、社会保障などの面でも斬新な政策は期待できないという厳しい評価が影響している。こうした点を自民党は重く受け止める必要がある。

以上3つのポイントを見てきたが、石破首相にとっては続投の道は極めて狭く、険しいことがわかる。一方、自民党内も非主流・反主流の立場の議員が自らの復権をねらって党内抗争を仕掛けるような場面が出てくると国民から完全に見放されることになるだろう。

今年秋には結党70年を迎える自民党が石破政権が党の立て直しに向けて、どのような対応、方針で臨むのか、8月末に向けた動きをじっくり見極めたい。(了)

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“石破首相の進退、3つのポイント” への1件の返信

  1. いやはや、自民党の内部抗争(あえてこの言葉を使います)の今後
    の展開をものの見事に論理的にかつ分かり易く説明されており、こ
    の問題の本質が極めて良く理解できました。
    3つのポイント。
    第1:総裁選の前倒しを求める動きが強まるかどうか。
    第2:参院選を総括する報告書がまとまった段階での石破首相と党
       執行部の政治責任の判断
       →退任したとしても自民党役員人事や内閣改造が、党内協力
        を得て行い得るか。
    第3:少数与党、国会・政権運営の戦略
    実に分かり易いではないでしょうか。

    そもそも自民党総裁選を実施することによって、どんな展望が開かれるのか考えているのでしょうか!
    新総裁になる人物が総理大臣になるとは限らないこと、また仮に
    なったとしても少数与党で、国政を前に進める覚悟を持った人材が
    今の自民党内にいるでしょうか。
    故に今回の騒動は、内部抗争としか思えないのです。
    自民党の悪い悪い体質は、これまで犯してきたの数々の不祥事に
    対して何一つ総括を行わず、曖昧に蓋をし続けてきたその体質に
    あります!
    今回の参議院選の総括にしても7月20日の投票日から、どれだけ
    日にちが経過しているか、今頃8月末までにうんぬん‥‥。 
    真剣に考えていないことの「あかし」ではないでしょうか。
    裏金つくりをきっぱりと止めない限り、国民の支持は戻らないことがなぜ理解できないのでしょうか。
    これまでの自民党政権は、政権を握ると税金の使い放題、そして裏がねほか各種特権をほしいままにできることが利権となるそしてこの利権を手中に維持したいがゆえに政権につくこが必要であるとしか考えてないように思います。
    自民党の内紛というだけでなく、このような政情不安が続くことによって我が国の今後の政治が前に進めなくなることの不安が絶えません! 

    今回は文章について気づいた点はありません。
      8月9日  妹尾 博史      

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