石破首相続投表明と世論の風向き

参院選の大敗を受けて自民党の両院議員総会では、総裁選の前倒しを求める意見が相次ぎ、臨時の総裁選挙を行うかどうか総裁選管理委員会で検討を進めることになった。党内では総裁選の前倒しを通じて、石破首相へ退陣圧力を強めようとする動きが目立つ。

こうした中で、NHKの8月世論調査によると、石破首相が続投の意向を表明していることについて「賛成」が「反対」を上回った。また、自民支持層では「賛成」が7割近くを占めた。

このように自民党所属の国会議員と世論の評価が分かれたことに加えて、自民党の国会議員と自民支持層との間でも評価が異なるようにみえる。こうした理由、背景には何があるのか。また、石破首相の進退問題は今後、どのような展開になりそうなのか考えてみたい。

 続投賛成69%、反対23%自民支持層

さっそくNHKの8月の世論調査(8月9~11日実施、有効回答42%)からみていきたい。まず、石破内閣の支持率は38%で、7月調査より7ポイント上がった。不支持率は45%で、8ポイント下がった。

石破首相が参院選の敗北後、「政治空白をつくってはならない」として続投の意向を示していることについて、賛否を尋ねたところ「賛成」が49%で、「反対」の40%を上回った。

支持政党別にみると、自民党の支持層では「賛成」が69%に上り、「反対」の23%を大きく上回った。

野党支持層では「反対」が55%で、「賛成」の39%より多かった。無党派層では「賛成」と「反対」がどちらも43%で拮抗した。

年代別では、40代以下では「反対」が6割前後で「賛成」を上回ったが、50代では賛成47%、反対48%で拮抗。60代以上は「賛成」が5割から6割に達し、「反対」を上回った。

このように世論全体では、石破首相の続投について「賛成」が「反対」を上回った。また、自民支持層に限ってみると7割近くが「賛成」しているのは、どのような理由、背景があるのだろうか。

自民党関係者に聞いてみると「参院選の敗北については、石破首相の責任だけでなく、自民党自体に問題があると受け止めているのではないか。また、石破首相の退陣を求める議員には、裏金問題を起こした旧安倍派の議員や旧派閥の幹部が関与していることが影響しているのではないか」との見方をしている。

このほか、「日米関税交渉の仕上げ段階で、首相を交代させるのは望ましくない」との受け止め方や、「自民党内の主流と、非主流の権力抗争という冷めた見方が影響しているのではないか」といった見方も聞かれる。

一方、自民党の長老は「石破内閣の支持が上昇したといっても6月の水準に戻っただけだ。支持率より不支持率が上回る状況が改善されたわけではない。去年の衆院選に続いて、参院選でも大敗した政治責任が解消されるわけではない」との見方を示す。

臨時総裁選と首相進退、来月ヤマ場か

それでは、今後の展開はどのようになるのだろうか。自民党は参院選敗北の要因などの分析を続けており、最終報告がまとまるのは8月最終週になる見通しだ。

もう一つの臨時の総裁選を行うかどうかについては、この問題を扱う総裁選管理委員会の委員の欠員を補充する作業があるほか、総裁選の前倒しは初めてのケースで検討に時間がかかるため、結論が出るのは9月に入るのではないかとみられている。

一方、森山幹事長は参院選総括の報告書がまとまった段階で、自らの責任を明らかにするとしている。このため、参院選の総括と臨時総裁選の扱い、それに党執行部の責任問題に最終的な結論が出るのは、9月上旬になる見通しだ。

その場合、石破首相としても自らの政治責任や、党の執行部体制や運営方針を明らかにする必要があるため、9月上旬が当面のヤマ場になるのではないか。

その後の動きは、石破首相の進退と臨時の総裁選が行われるのかどうかによって変わってくる。仮に臨時の総裁選を行う場合でも、今回の世論調査では石破首相の続投に賛成する意見が多いことから、単なる首相の交代だけに終わっては新総裁が世論の支持を得るのは難しい。

したがって、参院選の総括では選挙戦術や体制だけでなく、主要政策の提起や、政権与党としての役割を果たせたのか、さらには積年の党の体質まで踏み込んだ分析とこれからの党再生の方向性を打ち出せるのかが問われるのではないか。

自民党はこの秋に結党70年を迎えるが、衆参両院で過半数を失ったのは結党以来、今回が初めだ。政権与党として党の態勢立て直しはできるのか、危機的状況を迎えているようにみえる。(了)

★追記(20日23時)自民党は19日、総裁選管理委員会を開き、臨時の総裁選挙について、その是非を判断する手続きの議論を始めた。臨時の総裁選挙の実施を求める議員には、書面で申し出てもらう方向で検討を進めることになった。選挙管理委員会は、24日の週にも会合を開き、書面を提出する方法や、提出した議員を公表するかどうかなどの具体的な検討を行う。そして、執行部が今月末をめどにまとめることにしている参院選の総括が終わり次第、手続きに入りたい考えだ。

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“石破首相続投表明と世論の風向き” への1件の返信

  1. NHKの8月世論調査の結果を受けて、今、世論の大きな関心事で
    ある石破首相の続投に関しての各方面からの支持・不支持について
    の考察が大変分かり易く論理的に解説されており納得しかりです。
    四面楚歌にある石破首相にとって、この世論調査結果は唯一支えに
    なるものの、今後の展開に見通しが立たないという点では、事態の改善にはほど遠いと言わざるを得ません!
    石破首相の続投の賛否で反対の多かった今回の調査結果で、
    まず第一に野党支持者の反対55%、第二に年代別の40台以下の6割の意味するところが何かをどう理解すればよいのかと気になり
    ました。
    次に気になる点として、総裁選を実施した場合、与党過半数割れの
    状態で首相に任命されると考えているのか、あるいは「党利・党略に優れる自民党」ゆえにすでに維新を連立に加えることを織り込ん
    でいるのかということです。
    自民党は選挙結果敗北の原因分析と責任所在を明らかにして対応策を講じることは必要であることは当然であり、裏金疑惑議員による「党内抗争」をやっているかぎり、国民はますます自民離れをするのは明らかです。
    貴殿の以下のまとめの文の通りであると強く思います。
    「参院選の総括では選挙戦術や体制だけでなく、主要政策の提起や、政権与党としての役割を果たせたのか、さらには積年の党の体質まで踏み込んだ分析とこれからの党再生の方向性を打ち出せるのかが問われるのではないか。」

    文章について
    「続投賛成69%、反対23%自民支持層」の項
     16行目
     どのようなは理由、背景があるのだろうか。
     →どのような理由、背景があるのだろうか。
      ( は 不要な文字があります)
      8月14日  妹尾 博史 

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