“出だしは好調、難題は政権の意思決定”高市政権

初の女性首相として第104代首相に選出された高市早苗首相は臨時国会で初めての所信表明演説を行ったのに続いて、来日したトランプ大統領との日米首脳会談で日米同盟強化を確認するなど順調な滑り出しをみせている。報道各社の世論調査でも内閣支持率は高く、高市政権の出だしは好調と言えそうだ。

高市首相は30日には、APEC=アジア太平洋経済協力会議が開かれる韓国を訪問して韓国や中国などと首脳外交を行う。一連の外交日程を終え、来月4日からはいよいよ臨時国会で野党側と本格的な論戦が始まる。

高市氏は自民党総裁選を勝ち抜いたものの、直後に公明党が連立政権から離脱し、新たに日本維新の会と連立を組むなど綱渡りの運営を余儀なくされてきた。政権発足からこれまでの動きを顧みて、高市新政権は安定した政権運営ができるのかどうか、政権の課題・問題点はどこにあるのか探ってみたい。

内閣支持率は好調、持続性がカギ

まず、10月21日に組閣を終えて発足した高市内閣について、国民はどのような評価をしているのか報道各社の世論調査の結果からみておきたい。

高市内閣の支持率については、読売新聞の調査(21・22日実施)では71%、共同通信の調査(21・22日実施)では64.4%、朝日新聞の調査(25・26日実施)では68%となった。いずれの調査とも石破内閣や岸田内閣を上回り、歴代内閣との比較でも朝日のデータでは3位、読売のデータで5位の高さになった。

各社の調査とも年代別では、若い層を中心に支持率が大幅に上昇している。朝日の調査によると30代で86%に達するなど50代以下で70%以上、70歳以上では54%だった。「日本で女性の首相が誕生したことは良かったと思うか」との問いには「よかった」が85%に達し、「そうは思わない」が7%だった。

新内閣発足の場合、政策実現への期待もあって支持率が上昇する”ご祝儀相場”がみられる。ただ、その水準を維持していくのはたいへんだ。歴代内閣の中には発足時がピークで、その後支持率が下がるケースは少なくない。

高市内閣の支持率はトランプ大統領との日米首脳会談前の調査で、日米首脳会談の後、あるいは国会で各党代表質問や予算委員会での論戦の後では支持率は変わってくる可能性がある。世論の風向きがどのように推移するのか、注意してみていきたい。

高市政治、安倍元首相の手法を踏襲か

次に、高市首相はどのような政治をめざして、政権運営を行っていくのだろうか。24日に高市首相が行った初めての所信表明演説の内容を基に探ってみたい。

高市首相は「この内閣が最優先で取り組むことは物価高への対応だ」としており、ガソリン税の暫定税率の廃止や電気・ガス料金の引き下げを急ぐ方針だ。そして、一連の経済対策を盛り込んだ補正予算案を国会に提出する考えだ。

また「強い経済」を掲げ、「責任ある積極財政」で政策を推進する考えを打ち出している。さらに社会保障制度のあり方を検討するため、有識者と超党派の「国民会議」を設置し、給付付き税額控除の制度設計などをめざすことにしている。

一方、保守的な政策を鮮明にしているのも特徴だ。憲法改正や安定的な皇位継承に向けて皇室典範の改正をはじめ、防衛力の抜本的な強化とそのために防衛費のGDP比率2%を2年前倒して実現すること、外国人対策として政府の司令塔機能を強化することなどを打ち出している。

このように経済重視を強調しながら、保守的な政策の推進を図ろうとしているのが高市政権の特徴だ。高市氏が政治の師と仰ぐ安倍元首相の政権運営の手法を踏襲しようとしているものとみられる。

但し、高市政権は、公明党と連立を維持し安定多数を確保していた安倍政権とは異なり、衆参両院とも与党が過半数割れしており、どこまで政策の実現が可能か不透明な情勢だ。

高市政権、難題は連立政権の意思決定

それでは高市政権の運営は順調に推移するのだろうか。高市首相は今月末に一連の外交日程を終えると、いよいよ臨時国会の対応に向き合うことになる。

今の臨時国会は高市政権の連立枠組みづくりの調整が難航したことから、24日に首相の所信表明演説を行っただけで、その後は外交日程に費やされた。各党の代表質問などは11月4日からようやく始まるという異例の日程になっている。

立憲民主党などの野党側は、各党の代表質問と衆参両院の予算委員会で、高市新政権の政治姿勢や、トランプ大統領との日米首脳会談をはじめとする外交・防衛政策、さらには内政の重要課題を取り上げてを追及する構えだ。

自民党の閣僚経験者に臨時国会の見通しを聞くと「先の参院選挙以降、3か月余りも政治空白が続いたのは自民党の混乱によるもので、高市政権もどこまで準備態勢ができているのか、わからない」と不安をのぞかせる。

臨時国会は、物価高対策が最大の課題だが、それ以外でも焦点の政治とカネの問題では、旧派閥の裏金問題での不記載議員を官房副長官や副大臣・政務官に起用したことや、企業・団体献金の受け手を規制する案の扱いが再び問題になる。

また、高市政権と連立を組んだ維新は「連立参加の絶対条件」として「衆院議員の定数1割削減」と、必要な法案を今の臨時国会に提出することで自民党と合意した。この合意事項が実現されない場合、連立離脱もありうると強い姿勢を示している。

これに対し、他の各党は議員定数は民主主義の基本ルールで、一部の政党だけで定数削減を決めるのは認められないとして強く反発している。自民党内からも慎重な対応を求める声が出ており、この扱いは難航が予想される。

こうした難題を抱えているため、この臨時国会がどのような展開になるかは、冒頭の各党代表質問や予算委員会の審議をみてみないと見通せないのが実状だ。

さらに高市政権は衆参両院ともに少数与党という厳しい状況に加えて、連立を組んだ維新との間で、主要な政策をめぐる意見の調整や決定を行う仕組み作りもできていない。

このため、防衛力の抜本的強化など難題を数多く抱えている中で、政権与党全体をとりまとめていく態勢が整っていないのではないかと危惧する声が自民党内からも聞かれる。

具体的には自民党内の意見集約をはじめ、首相官邸と自民党との調整、維新との意見の調整や決定などについて、政府・与党全体に目配りをしつつ政権を運営していく役割を誰が果たすのか、はっきりしていないというわけだ。

今後の政治の行方を占う臨時国会

臨時国会の会期末は12月17日だが、自民党長老に今後の見通しを聞くと「臨時国会の会期は限られており、来年度予算案の編成も控えているので、与野党の本格的な攻防は年明けの通常国会になるだろう。年内は様子見、瀬踏みの段階ではないか」と語る。

臨時国会の注目点としては、論戦などを通じて高市政権の政権運営能力はどの程度なのか。また自民と維新の連立政権の安定度はどうか、さらに当面の物価高対策に区切りがついた後、高市政権は何を連立政権の重要テーマとして設定をするのかが焦点になる。

これに対して野党側は、公明党が26年ぶりに連立から外れて野党に転じたことから、野党間の連携・結集に向けて新たな動きが出てくるのかどうか。また世論の風向きに変化は出てくるのかといった点も含めて、この臨時国会は注目点が多い。(了)

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““出だしは好調、難題は政権の意思決定”高市政権” への1件の返信

  1. 政権発足後に組閣された政権人事、所信表明演説、そして一連の外交政務を受けて、各メデイアの内閣支持率を参考に高市政権が世間
    にどのように受けとめられているかについて理路整然と説明されて
    おり、大変良く理解できました。
    また、突然の公明党の連立離脱、そして急遽「つくりあげた」維新
    との連立で衆参両院とも少数与党にあって、しかも維新との連立運
    営を誰がどのようにまとめていけるか見通しが立たないなか、高市
    政権がかかえている課題が極めて困難であることを指摘されており
    全く同感に感じます。
    個人的には、高市氏が総裁に選出されたこと、そして首相に選出されたこと、政権発足後の国民の支持率の高さ等すべてを意外に感じ
    ています。
    国民は「保守的思考」が好みであることそして若い世代の支持率の
    高さも信じられない気持ちでいます。
    高市政権が「安部元首相の過去の実績」に依拠している姿勢に、「狡さ」と「危うさ」を感じるのは自分だけでしょうか?
    最後に各メデイアも3か月以上政治空白を作った自民党を強く非難
    すべきではないでしょうか。

    文章について
    ①最初の項
     最後から3行目
     政権発足からこれまでの動きをせき止めて
     →政権発足からこれまでの動きを顧みて
      ( せき止めて の意味するところが理解できません )
    ②「内閣の支持率は好調、持続性がカギ」の項
     最後から2行目
     論戦の後では支持率は変わる。
     →論戦の後では支持率は変わってくると予想している。
     ( 原文では文章に違和感を感じます )
    ③最後のまとめの12行の文章については、最後の小見出しのまま
     で、終わるのは不自然に感じます。
     「臨時国会の主眼」のような小見出しを追加されたらどうでしょ
      う。

     10月31日  妹尾 博史

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