”巨額予算の是非”年明け通常国会で論戦へ

2025年の政治は、激動の1年だった。夏の参院選で与党が大敗し、衆参両院で与党が過半数割れした。石破首相が退陣に追い込まれ、高市早苗首相が憲政史上初の女性首相に就任する一方、26年間続いた自公連立から公明党が離脱し、高市首相は日本維新の会と新たな連立政権をスタートさせた。

その高市政権が初めて編成した来年度予算案が26日に閣議決定された。一般会計の総額は122兆3092億円で、過去最大を更新した。一方、国債の償還や利払いに充てる国債費も31兆円と過去最大に膨らみ、新たな国債を30兆円近く発行するなど厳しい財政状況が続く。

政権発足から2か月が経過した高市内閣は高い支持率を維持しているが、年明けの通常国会で野党側は「高市政権の財政拡大路線に対する市場の懸念が広がっている」として、来年度予算案の規模や内容を厳しく質していく方針だ。

年末に成立した今年度の補正予算もコロナ後の補正予算としては最大の規模だった。来年度予算案と合わせて”2つの巨額予算”をどのようにみたらいいのか、どこが主な論点になるのか点検してみたい。

歳出122兆円過去最大、国債も大量発行

政府が26日に閣議決定した来年度予算案の一般会計の総額は122兆3092億円となった。今年度の当初予算の115兆1900億円を7兆円以上も上回り、過去最大を更新した。

歳出では社会保障費が、高齢化が進むことや診療報酬がプラス改定になったことから39兆円余りに膨らんだ。国から地方に配分する地方交付税が20兆円余り、国債の償還や利払いに充てる国債費が金利の上昇などを背景に31兆円と過去最大となった。

防衛費は、防衛力の抜本的な強化に伴い3153億円増えて、8兆9842億円。文教・科学振興費は、高校授業料無償化や給食費の負担軽減などのため3846億円増えて6兆406億円。防衛費が文教費を大幅に上回る傾向が続いている。

歳入面では、税収は企業業績が堅調で、賃上げによって所得も伸びるとして今年度より6兆円近く増えて、過去最大の83兆7350億円と見込んでいる。

ただ、それでも財源が不足するため、新たな国債を29兆5840億円発行する。今年度当初予算と比べると9369億円増えるが、歳入全体に占める国債の割合「公債依存度」は今年度当初の24.9%から、24.2%に下がる。税収の伸びが大きいためだが、歳入の4分の1を借金に頼る構造だ。

高市首相は記者団に「新規国債の発行額は2年連続で30兆円を下回り、公債依存度も低下した。財政規律にも配慮し、強い経済の実現と財政の持続可能性を両立させる予算案ができた」とのべ、年明けの通常国会で早期の成立をめざす考えを表明した。

一方、総額18兆円余りに上る今年度の補正予算は、先の臨時国会で成立した。物価高対策に8兆9000億円、危機管理・成長投資に6兆4000億円、防衛力強化などに1兆6000億円が盛り込まれており、物価高対策などは年明け以降、実施される運びになっている。

野党、財政拡張路線を追及の構え

こうした高市政権の巨額の予算案について、野党第1党の立憲民主党などは「高市政権の財政拡大路線に対して、金融市場では警戒感が広がっている。円安が進んでいるほか、国債の利回りが2%台まで上昇している」として、新年度予算案の規模や内容について、通常国会で厳しく追及する方針だ。

また、野党側は「高市政権の物価高対策は、家計への支援が年内に届かないなど余りにも遅すぎる」と批判するとともに「所得の低い層だけでなく、中間層への支援も不十分だ」として、対案をとりまとめて論戦を挑む構えだ。

さらに、来年度予算案の内容をめぐっては、大企業への投資拡大や防衛費の大幅な増額に比べて、教育や科学技術、社会保障への予算配分が少なすぎるとして、政府の姿勢を追及することにしている。

一方、野党の中でも国民民主党は、要求していたガソリン税の暫定税率の廃止や来年度の税制改正で「年収の壁」を178万円まで引き上げることなどが盛り込まれたことから、来年度予算案の早期成立に協力する方針だ。このため、与党との対峙路線を取る立憲民主党など他の野党との足並みがそろわないことも予想される。

物価高対策・日本経済かじ取りが焦点

長丁場となる通常国会は新年の1月23日に召集され、前半は来年度予算案の審議が中心になる。与党は、衆議院では無所属議員の自民会派入りで辛うじて過半数に達したものの、参議院では過半数割れの不安定な状態が続く。

予算審議では、物価高対策が焦点になるものとみられ、高市首相は「物価高対策を最優先で取り組んでおり、高校教育の無償化や『年収の壁』の引き上げも実現させる」として、野党側に協力を求めていく方針だ。

これに対して、野党側は「物価の上昇に賃上げが追いついておらず、給付付き税額控除などの実施に踏み出すべきだ」として、政府に対応を求めていく構えだ。

また、高市政権は「強い経済と責任ある積極財政」を掲げて、戦略的な投資の拡大をめざしているのに対し、野党側は「高市政権の下では財政の悪化が懸念され、円安とインフレが加速する」として、政府の経済政策を追及する方針だ。

このため、予算審議では、日本経済をどのような方法で成長軌道に乗せていくのか、財政規律を保つための歯止め措置など経済・財政運営のかじ取りをめぐり、活発な議論が交わされるものとみられる。

このほか、高市首相の台湾有事をめぐる国会答弁で悪化している日中関係をはじめ、日本の防衛力整備と防衛財源の確保、それに安全保障関連三文書の改定問題の取り組み方をめぐっても激しい議論が行われる見通しだ。

こうした議論を経て、来年度予算案は原案通り可決・成立することになるのか、それとも今年度のように野党側の要求を受け入れ修正されて成立することになるのか、高市政権の安定度と新年の政治のゆくえを占ううえでも大きなポイントになる。(了)

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“”巨額予算の是非”年明け通常国会で論戦へ” への1件の返信

  1. 閣議決定された来年度予算案について、主要項目ごとに増額幅も詳
    しく記載して、高市政権が意図している経済政策がどのようなもの
    かについて詳しく具体的に説明されており、問題点の核心が明確に
    されていて大変良く理解できました。
    高市首相が掲げる「強い経済と責任ある積極財政」を実現するとし
    た予算案は、各指標に目をくばり、極めて計算つくされてつくられ
    ていると思います。
    その最たるものが、国債の発行額と歳入に占める割合です。
    巨額に膨れ上がった予算総額の故に当然に下がって見える国債依存
    率の比率、税収増を功名に盛り込んでの国債新規発行額を30兆円
    未満に抑えたことが、いかにも計算されたうえでのものと言えま
    す。
    この巨額予算が成立したとして、国民を苦しめている物価高の対策
    になるのかどうか極めて疑問が残ります。
    経済の循環を良くして経済成長を目指すというのが、高市政権の主眼となっているように感じますが、もうそのような経済政策は期待
    できない仕組みに代わっているように思えてなりません。
    企業の経済マインドをどのように変えて、内部留保で積み上げている財源を投資や賃上げに回せるようにするかということが必要ですが、その方向に経済政策を行っているようには感じられません。
    通常国会での与野党の活発な論戦を期待したいところですが、国民
    民主が、来年度予算案が閣議決定される前から予算案に賛成すると
    明言しており、よほど立憲民主を軸に野党側が核心を突いた議論を行わないかぎり、中身のある論戦は期待できないのではないでしょうか。
    維新との連立の政権運営の「行方」も大いに気になるところです。

    今回も文章について気づいた点はありませんでした。

     12月27日  妹尾 博史

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