通常国会が23日に召集され、午後1時過ぎから開かれた衆院本会議で、額賀議長が解散詔書を読み上げ、衆議院が解散された。各党は、27日公示・2月8日投票の日程で、事実上の選挙戦に入った。
今回の総選挙はどんな特徴があるのか、どのような選挙の構図になるのか、そして何が問われる選挙になるのか、考えてみたい。
異例ずくめの解散・総選挙
さっそく、今回の総選挙の特徴からみていきたい。一言でいえば、”異例ずくめの解散・総選挙”ということになる。まず、通常国会が今の1月召集になった1992年以降、通常国会冒頭解散は初めてだ。12月以前に召集されていた時代を含めれば、66年佐藤栄作内閣以来だから、実に60年ぶりだ。
また、衆院解散から投票日までの期間は16日間しかない。これまでは岸田内閣当時の2021年の選挙が17日間で最短だったが、今回はさらに期間が短く戦後最短になる。候補者や選挙準備にあたる自治体職員もたいへんだが、国民もじっくり候補者の主張に耳を傾けたりするのは難しくなるかもしれない。
衆議院議員の在職日数も23日の解散時で454日、現行憲法下で3番目に短い。任期4年の3分の1も仕事をしていない計算になる。
さらに真冬の1月解散は、戦後では55年の鳩山一郎内閣と、90年の海部俊樹内閣の2回しかない。90年当時、私はNHKの官邸クラブ・キャップで、海部首相の欧州訪問に同行取材し、帰国後、直ぐに解散・総選挙に突入したのを思い出す。
当時、自民党は前年・89年の参院選で、消費税導入やリクルート事件などの直撃を受け大敗した。通常国会では、野党側が消費税廃止を迫ってくるのが確実だったため、衆院選に踏みきり勝利して、主導権を確保する必要性に迫られていた。
ところが、今回の高市内閣では、新年度予算案に野党の国民民主党が賛成する意向を示していたので、予算審議を止めてまで解散に踏み切るのは妥当だったのか、疑問が残る。いずれにしても、今回は異例ずくめの解散・総選挙と言って間違いない。
自民対「 中道」2大勢力軸に攻防
次に、今回の衆院選の構図に話を進めたい。前回2024年衆院選との違いの1つは政権の枠組みが自民・公明連立から、自民・維新連立政権へと変わったことだ。
2つ目は、野党第1党である立憲民主党が、連立を離脱した公明党と衆議院で新党「中道改革連合」を結成することになったことだ。新党結成に至る経緯は省略するが、高市首相が政界の予想に反して”奇襲解散”を仕掛けたのに対し、立民・公明両党が生き残りをかけて反撃に出たといったところだ。
今の勢力をみると政権与党は自民党が196人、維新が34人。これに対して、22日に開いた「中道改革連合」の結党大会には立民から144人、公明から21人、それに無所属からの参加もあり、総勢173人での発足になった。
この結果、衆院選は、自民と維新の連立与党と「中道改革連合」との戦いが軸になる。ただ、自民・維新間では本格的な選挙協力は行われないとされるので、実態は自民党と「中道改革連合」の対決が軸になる。自民党196人、「中道」173人で、双方で衆院総定数465人の8割近くを占めるからだ。
この他の各党では、国民民主党は「中道」、自民のいずれとも距離を置く独自路線をとる。保守の側には参政党や保守党、左派・リベラルなどの勢力として、共産、れいわ、社民、みらいが位置する形だ。
選挙戦はどうなるか。高市首相は、自民・維新の連立与党で過半数の確保を目標にしている。自民党の選対幹部は「自民単独過半数(233)、与党で安定多数(244)」を目標にしている。
これに対して「中道」は、自民党を過半数割れに押さえ込んで、比較第1党の座を確保し、他の野党の協力を得て政権交代をめざす方針だ。自民、「中道」のどちらが多数を獲得できるか、熾烈な攻防が続く見通しだ。
消費税減税、防衛など多くの論点
それでは今回の総選挙は、何が問われる選挙なのだろうか。世論調査を基に考えると世論の関心が高いのが、物価高対策をはじめとする経済政策だ。
物価高対策として野党各党は消費税の食料品ゼロ%へ引き下げや、消費税一律5%への引き下げ、さらには廃止などの方針をそれぞれ打ち出している。このうち「中道」は、今年秋から食料品の消費税を恒久的にゼロにするとしたうえで、財源は政府系ファンドの創設や政府の基金の活用などで確保するとの具体策を打ち出した。
これに対して、自民党は飲食料品について「2年間に限り消費税の対象にしないことについて検討を加速する」との方針を公約に盛り込んだ。消費減税のタイミングや財源については、政府が設置する「国民会議」で検討するとしている。
自民党内には消費税減税に慎重な意見があるが、高市首相が「私自身の悲願」として公約に盛り込んだ。消費減税をめぐっては、与野党の主要な論点の一つになる見通しだ。
経済政策をめぐって高市首相は「責任ある積極財政」と「危機管理投資で強い経済」を訴える方針だ。一方で、円安や長期金利の上昇が進んでおり、与野党の間で、日本経済の運営や財政規律、経済成長に向けた具体策をめぐって活発な議論が交わされることになりそうだ。
また、超少子・高齢化が進む中で、子育て政策や、若い世代の社会保険料の負担軽減、高齢者の社会保障のあり方のほか、外国人政策も論点になる見通しだ。
さらに、高市政権は安全保障関連三文書の改定と防衛力の抜本強化を打ち出していることから、外交・防衛政策のあり方も争点になる。野党側は、防衛力強化のための財源どのように確保するのか追及する方針だ。。
このほか、「政治とカネ」の問題をめぐっては、自民党派閥の裏金事件に関与した不記載議員の公認問題や、企業・団体献金の扱いについても結論の先送りが続いていることから、今後の取り組み方が問われることになる。
一方、自民党は、衆議院議員の定数削減や憲法改正、旧姓の通称使用法制化など”高市カラー”の政策も打ち出しており、野党側との間で激しい議論が交わされそうだ。
このように今回の総選挙では、多くの論点を抱えており、超短期の選挙戦の中で国民が納得のいく、かみ合った議論ができるかも問われることになる。
激変期、政治のあり方を含め論戦を
国際社会に目を転じると、ロシアによるウクライナ侵攻は来月で5年目に入るほか、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の専横的な言動が国際社会に大きな混乱をもたらしている。
特にトランプ大統領の言動は、民主主義国でも選挙でリーダーを選びを間違えると内外情勢が一変してしまう恐ろしさと、選挙がいかに重い意味を持っているかを痛感させられる。
世界も、アジアも、日本も激変期を迎えている。高市首相は衆院解散を表明した記者会見で「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか国民に決めてもらう」と訴えたが、総選挙を首相選びのように位置づけるのは、議院内閣制の下では適切ではないと考える。こうした点も選挙戦で各党間で議論を深めてもらいたい。
また、これに関連して「強いリーダーと圧倒的多数の与党が統率していく政治」がいいのか、それとも「多党制の中で、1つの党、または複数の党が連立を組んで与野党が競い合う政治」がいいのか、政治のあり方も選挙の論点にしてもらいたい。
こうした激変期の中で行われる今回の総選挙は、ここまでみてきたように数多くの論点を抱えている。選挙期間は短いが、各党がこうした論点を冷静に掘り下げて議論し、国民に判断材料を提供していくことを強く注文しておきたい。
★追記(1月23日13時半:◆ブログの冒頭部分は、衆議院が解散されましたので、過去形にするなど一部表現を手直ししました。◆衆議院の各党勢力は解散時で次の通りです。◇自民党196、◇中道改革連合173、◇日本維新の会34、◇国民民主党26、◇共産党8、◇れいわ新選組8、◇参政党3、◇日本保守党1、◇無所属16)/(了)###

本日1月23日に開催される通常国会の冒頭で、衆院の解散・総選
挙が実施が表明されているのを受けて、どういったことが論点にな
るのか、また戦いの構図はどういったものになるのかについて、極
めて分かり易く説明がされており、我々国民がどのような視点で、
この選挙に臨めば良いのか的確な道筋が示されていると思います。
長年政治記者として、政治の第一線に係わってきた筆者からみて、
「異例づくめ」の今回の衆院解散・総選挙であることが強調されて
います。
これはひとえに高市首相個人の権力の横暴であり、自らの権力の座
の延命を画策した措置にほかならず、このために国民がどれほど迷
惑を被っているかを認識すべきと強く思います。
なにが、「国民のために働いて……」かと「反吐」が出そうです。とはいえ、国民が行えることのできるの唯一の選挙権の行使である
わけですから、ここは我が国の政治をどの方向に進めるべきか投票
に当たっては、熟慮に熟慮を重ねる必要があります。
今回の短い選挙期間の中で、どれだけ中身のある説得力のある政策
論議がなされるかはなはだ疑問ではありますが、投票判断を間違え
ると予期せぬとんでもないことになりそうな懸念があります。
逆に金権政治から脱却するチャンスでもあります。
自民党の「汚い金つくり」に「ノー」を突き付けるのは「今」です。
今後、選挙情勢のマスコミ報道が繰り広げられることと思いますが
風潮に流されない貴殿の視点での解説を可能な限り多くお願いした
いです。
今回は文章について気づいた点はありませんでした。
1月23日 妹尾 博史