予算の年度内成立 断念 “高市首相に参院の壁”

新年度予算案をめぐり政府・与党は、高市首相が強い意欲を示してきた予算案の年度内成立を断念した。これに伴い予算成立までのつなぎとなる「暫定予算」が30日成立した。衆議院では自民・維新の与党と中道、国民民主、参政の各党が賛成、参議院では立民、公明両党も賛成した。

続く31日には、4月から実施予定の高校授業料無償化や税制改正関連法案などについても与野党の賛成多数で可決・成立した。「暫定予算」を組むのは2015年以来、11年ぶりだ。こうした措置よって新年度予算案は成立していないものの、国民生活に直接支障が出るような事態は避けられている。

一方、この国会では衆院選挙で圧勝した高市政権がどのような政権運営を行うのかも焦点の1つだった。最初のテーマになった新年度予算案をめぐって高市首相は「数の力」を背景に予算案の年度内の成立を押し通そうとしたが、最終的には野党が多数を占める「参議院の壁」に押し返された。

ここまでの高市首相の政権運営をどのようにみるか。後半国会ではどのような対応が問われることになるのか、国会や政権の運営のあり方などについて点検しておきたい。

 ”国会運営に疎い首相”との見方も

今回、新年度予算案をめぐって与野党が対立した理由・論点は極めてわかりやすい。野党側は1月に衆院選挙が行われたことから、年度内の成立は日程的に困難だとして、早い段階から政府・与党側に暫定予算案を編成するよう求めてきた。

自民党内も当初、予算案の成立は4月末の大型連休前を想定する見方が多かった。ところが、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、自民党は急遽、年度内成立へとカジを切った。

衆議院で予算案の実質審議入りしたのが2月27日で、例年より1か月遅れだった。予算審議をめぐっては坂本予算委員長が職権で日程を次々に決定した。例年70時間から80時間かけて審議してきたが、今年は59時間と2000年以降最短に圧縮して予算案は衆院を通過した。

政府・与党は参議院でも年度内成立をめざしたが、参議院は野党が多数を占めており、参院自民党も強行路線をとらなかったことから、予算案の年度内成立は見送りとなり、暫定予算を編成することになった。

こうした政府・与党の対応について、野党側は「予算案の年度内成立が無理なことは、通常国会の冒頭解散になった時から明らかだった。選挙に圧勝したことで高市首相は自信過剰となり、国会の見通しにも甘さが出たのではないか」と厳しい評価をしている。

自民党執行部からは衆院選を圧勝に導いた高市首相を直接、批判するような意見は出ていないが、党内には参院の情勢を判断できず最後まで年度内成立にこだわり続けた高石首相に冷ややかな見方もある。

また、「首相官邸と、衆議院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間の意思疎通と連携がとれていないのが一番の問題」といった意見も聞かれる。

さらに別の自民党関係者は「高市首相は政策には精通しているが、国会の運営や党内調整、参議院自民党の立ち位置などの基本認識に疎いところがある。党執行部も首相と率直に話ができる関係にならないと安定した党運営は難しいのではないか」と指摘する。

予算成立後も試される首相の力量

それでは4月以降の国会の動きはどうなるだろうか。参院予算委員会で審議が続いている新年度予算案は、4月1日と2日に分野別に各委員会で審議する委嘱審査が行われることが決まっている。

自民党は一日でも早く予算案を成立させる必要があるとして、4月3日までに成立させるよう求めているが、野党側は高市首相の出席を求めて集中審議を行う主張している。このため、4月第1週の採決は難しく、第2週にずれ込むのではないかとの見方が出ている。

新年度予算案は既に衆議院で可決されていることから、憲法の規定で参議院で採決が行われなくても11日には自然成立する。このため、参議院の与野党とも11日の前までには採決を行うものとみられる。

4月以降の後半国会で政府・与党は、インテリジェンス(情報収集・分析)政策の司令塔となる「国家情報会議」設置法案を推進することにしているほか、連立を組む維新が強く求めている副首都法案や、衆議院議員の定数削減法案など与野党の対決色が強い法案の扱いが焦点になる見通しだ。

その際、高市首相は予算審議の教訓を踏まえて、野党側の協力を得るためにどのような姿勢で臨むのか、また自民党執行部との関係を強化できるかが問われることになりそうだ。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は低下している調査結果はあるものの、全体として高い水準を維持している。ただ、イラン情勢の悪化が長期化するとエネルギー価格の高騰と供給量の確保、物価高や企業支援などの難題が政権を直撃することも予想される。

その結果、高市政権がめざしている食料品の消費税率ゼロや、危機管理投資、防衛力の抜本強化といった高市カラーの政策に影響が出ることも予想される。

自民党の長老に高市政権について聞くと「内閣支持率は高いが、実績の評価というよりも期待値だろう。高市首相は首相官邸に閉じこもることが多いと聞くが、イラン中東の危機に的確に対応できるか、重要法案を着実に成立にこぎ着けられるか、本当の力量が試されるのはこれからだ」との見方を示す。

ここまでみてきたように高市首相は衆院選の圧勝で自民党内の基盤を強化した一方で、与党の過半数割れが続く参議院では依然として不安定な状況に立たされていることが浮き彫りになった。後半国会では衆参ねじれの状況を克服できるのかどうか、高市首相の力量が試される。(了)

戻る

メッセージが送信されました

警告
警告
警告
警告

警告。