高市内閣 発足半年 ”経済・イラン情勢対応”がカギ

高市内閣が発足してから、今月21日で半年を迎えた。内閣発足当初は衆参両院とも与党は過半数割れしていたが、2月の衆院選挙で自民党単独で3分の2を上回る316議席を獲得して圧勝を収めた。内閣支持率も発足から半年経った今も60%台と異例の高い水準を維持している。

今の国会では、新年度予算は暫定予算を経て、短期間で成立にこぎ着けた。高市首相肝いりの「国家情報会議の設置法案」などの重要法案も審議が順調に続いている。

高市政権のこれからの政権運営はどのようになるのだろうか。ポイントは、衆院選で掲げた食料品の消費税率ゼロなどの経済政策と、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が沈静化に向かうのかどうか、先行きが読めない中での対応になる。今後の政治の展開を探ってみたい。

発足半年でも高支持率、安倍政権以来

去年10月21日に発足した高市内閣は、去年12月に補正予算を成立させたのに続いて、今月7日には新年度予算を成立させた。但し、高市首相は新年度予算案の年度内成立にこだわり、衆院では強引な審議を押し通したが、野党多数の参院では跳ね返されて年度内成立を断念し、批判をあびた。

一方、外交面では2度にわたって日米首脳会談を行い、トランプ大統領と信頼関係を強める一方、台湾有事をめぐる存立危機事態の国会答弁で、中国側の反発を招き日中関係は悪化した状態が続いている。

政権発足から半年、国民は高市政権の政権運営をどのようにみているか、NHKの4月の世論調査(10~11日実施)によると次のようになっている。

高市内閣の支持率は61%に対し、不支持率は22%だった。内閣発足時の支持率は66%で、3月に59%に下がったが、4月に再び60%台に戻した。読売新聞の調査(17~19日)では支持率は66%、朝日新聞の調査(18・19日)では支持率は64%で、いずれも高い水準を保っている。

このように内閣発足時の高い支持率を半年後も保っているのは、2012年に発足した第2次安倍内閣を除けば、それ以降で初めてのケースだ。安倍内閣の場合、発足時が64%で、半年後も62%で高い水準を維持した。

その後の歴代内閣の発足時と半年後の支持率はそれぞれ次のようなデータだ。◇菅内閣62%⇒40%、◇岸田内閣49%⇒53%、◇石破内閣44%⇒35%。

支持率が高い政権の場合、50%を割り込むのがいつになるのかを政界関係者は注目するが、安倍政権の場合は、政権発足から1年7か月後だった。

安倍、高市両政権を単純に比較できないが、高市政権の支持率が高いのは、初の女性首相という効果と期待値によるところが大きいとみられる。ただ、内閣支持率はどの政権でもいずれ下降に転じる。下降局面がいつになるのか不明だが、50%ラインを割り込むと、政治・政局が動き出す一つの目安になる。

今国会、政府提出法案の多くが成立か

さて、新年度予算が成立した後の後半国会はどのように展開するだろうか。衆議院の与野党が最も重視し、首相の出席を求めて法案の趣旨説明などを行う「重要広範議案」には、次の4つの法案が決まった。

◇政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能を強化する「国家情報会議」設置法案、◇「防災庁」の設置法案、◇市販の「OTC類似薬」で患者に追加負担を求める健康保険法改正案、◇再審制度見直しの刑事訴訟法改正案の4法案だ。

このうち再審制度見直し法案を除いて、いずれも衆院で審議が始まっており、特に高市首相が「国論を二分する政策」として重視している「国家情報会議」設置法案について、与党側は今週24日までの衆院通過をめざしている。

このほか、この国会では連立を組んでいる維新が重視している◇副首都構想法案、◇衆議院議員の定数を削減する法案、◇日本国旗の損壊罪を制定する法案の提出が予定されている。

衆院は与党が圧倒的多数の議席を確保していることから、多くの法案の審議が与党ペースで進む見通しだ。

一方、参院では野党が多数を占めていることから、与党側がどこまで丁寧に審議を働きかけ、野党の理解を得て成立にまでこぎ着けられるかが焦点になる。今国会の会期末は7月17日と時間的な余裕があるので、与野党対決法案を除いて、かなりの数の政府提出法案が成立する可能性が大きい。

夏から秋、経済・外交への対応がカギ

高市首相にとって難題は、自ら「私の悲願」と位置づける食料品の消費税率ゼロと「給付付き税額控除」の政策をどのような道筋で実現にこぎ着けられるかだ。

食料品の消費減税について、有識者と与野党で構成する「国民会議」で議論が進められている。高市首相は6月に中間報告を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案を提出し、2026年度中の実施に言及したこともある。

これに対し、「国民会議」の関係者や野党側から「消費税減税は、どこまで食料品の値下がりにつながるかわからない」「外食産業や農業などへの影響や問題点が多すぎる」など慎重論や反対論も相次いでいる。

自民党の幹部の一人は「高市首相は衆院選の公約として掲げたこともあり、規定方針通り突き進む可能性の方が大きいのではないか」との見方を示している。

一方、イラン情勢の悪化に伴う原油の確保について、政府は「ホルムズ海峡を通らない代替ルートで原油の調達が進み、年明けまで必要な量を確保できるメドがついた」と強調しているほか、流通の目詰まりへの対策も強化していると説明している。

問題は、石油関連製品などの価格高騰への対応だ。自民党内からは「原油の量は確保できても、原油価格の高騰や石油関連製品の値上げは確実で、中小企業や農林水産業など幅広い分野に影響が出ることが予想される」として、補正予算の編成を急ぐべきだとの意見が広がり始めた。

このようにこの夏から秋にかけては、国会終盤での重要法案をめぐる与野党の攻防と、高市首相肝いりの食料品の消費減税などの重要政策の制度設計、それにイラン情勢の影響が長期化した場合の対応が重なる事態が予想される。

その際、高市首相は内政と外交全般にわたって、どこまで指導力を発揮することができるのか。また、首相官邸と自民党との意見調整と連携がうまく機能するのかが焦点になる。その結果によっては、国民の高市政権に対する評価に変化が予想され、この二つの焦点が政治のゆくえを読むうえで大きなポイントになるとの見方をしている。(了)

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後半国会 ”高市カラー法案”続々、足元に不安も

国会は新年度予算が成立して後半戦に入り、”高市カラー”の政策の第一弾として、インテリジェンス機能の強化につながる国家情報会議設置法案や、連立を組む日本維新の会が重視する「OTC類似薬」に追加負担を求める健康保険法改正案などの重要法案が続々と審議入りしている。

一方、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は11日から仲介国・パキスタンで行われたが、合意に至らなかった。トランプ大統領はイランに圧力をかけるため、ホルムズ海峡を逆封鎖することを始めたのに対し、イランが強く反発するなど先行きが見通せない状況が続いている。

イラン情勢をめぐって高市政権は、備蓄原油の放出や原油の輸入先の多角化などの対応に追われている。後半国会はこれからどのような展開になるのか、高市政権はどのような対応を迫られることになるのか、探ってみたい。

重要法案審議入り、野党の協力がカギ

後半に入った国会は、高市首相が重視している法案が相次いで審議入りしている。10日には、政府のインテリジェンス(情報収集・分析)などの司令塔機能を強化する国家情報会議設置法案が衆院内閣委員会で実質審議入りした。

また、市販薬と成分や効果が似ている「OTC類似薬」について、患者の追加負担を求める健康保険法改正案も衆院で審議入りしたほか、新たに「防災庁」を設置する法案の審議も始まった。

さらに、安定的な皇位継承をめぐる問題も課題になっており、15日に与野党の代表で構成される全体会議が開かれる。与野党の幅広い合意が得られ、皇室典範の改正につながるかが焦点だ。

日本の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の創設が自民党内で検討が進んでおり、今国会に提出される見通しだ。防衛力の抜本強化を図るため、防衛3文書の改訂に向けた政府の有識者会合も4月下旬には始まる見通しだ。

このほか、連立を組む日本維新の会が重視している「副首都構想」の法案や衆議院の議員定数を削減する法案も提出される見通しだ。

こうした一連の重要法案について、高市首相は先の衆院選挙で歴史的な圧勝を収めたことから、その勢いに乗って今国会での成立を推し進めたい考えだ。

衆院では、自民・維新の与党が圧倒的多数を占めていることから審議は与党ペースで進む見通しだが、参院では与党が過半数割れしているため、新年度予算と同じように参院での審議は難航することが予想される。

このため、”高市カラー法案”がどの程度成立するかは、参院で野党側の協力を得ることができるかどうかが、カギを握る形になっている。

高市首相と自民に溝、相互不信の芽も

高市首相にとって後半国会でもう一つ課題になっているのが、足元の与党・自民党との関係だ。高市首相は衆院選で自民党を大勝に導いたことから党内では強い指導力を発揮しているが、新年度予算の審議の進め方をめぐって自民党との間で溝ができつつあるようにみえる。

具体的には新年度予算の扱いをめぐって、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、衆議院では予算委員長が職権に基づく日程の決定を連発し衆院を通過させた。だが、与党が過半数割れしている参議院では、予想された通り審議は難航し結局、年度内成立を断念して暫定予算の編成に追い込まれた。

こうしたこともあって、自民党内からは「首相官邸と衆院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間で意思疎通や連携が十分とれていなかったのではないか」、「高市首相自身、もっと自らの考え方を党側に率直に伝え、説明する対応が必要ではないか」といった意見も聞かれた。

また、高市首相をめぐっては「官邸の執務室に引きこもり、政権スタッフとの間でも意思疎通がなされていないのではないか」「イラン情勢の悪化が続く中で、官邸の対応は大丈夫か」といった懸念の声が聞かれるようになっている。

こうした首相官邸と自民党との関係が取りざたされる背景としては、衆院解散・総選挙をめぐって高市首相が自民党執行部に知らせずに解散を断行したことや、選挙後に高市首相主導で行った人事をめぐって、双方にしこりや不信感が残っているためではないかといった見方もある。

高市内閣支持率は高い水準が続いており、自民党内も表立って首相を批判する意見は出ていない。ただ、与党幹部の一人は「内閣支持率が今後、下落してくると党内から不信や不満が表面化してくることも予想される」と語る。

後半国会では、高市首相が足元の状況を把握し、自民党や与党の結束を固めて重要法案の審議に臨むことができるかどうかも問われることになりそうだ。

イラン情勢・原油高騰対策が急浮上も

ここまで重要法案の扱いを中心に見てきたが、後半国会ではイラン情勢と、原油や石油関連製品の価格高騰対策が大きな焦点として急浮上することも予想される。

アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議がどのような形で収まるか、今の段階では先行きは見通せない。戦闘が泥沼化したり、仮に収束しても戦闘の被害を受けた湾岸諸国の原油生産の修復が手間取ったりした場合、世界経済に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

高市首相は13日の自民党大会で憲法改正をめぐり「発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と踏み込んだ発言をした。国民からするとイラン情勢の緊迫化が続く中で、日本のエネルギーの確保や安全保障をどのように構築していくのか、そのうえで憲法問題を語ってほしかったが、エネルギーや安全保障政策について言及することはなかった。

一方、原油価格の高騰などが続いた場合、今年の中小企業の賃金引上げにブレーキがかかり、日本経済にも深刻な影響が懸念される。また、高市首相が意欲を示す食料品の消費税率ゼロなどの政策を進めていけるのか、経済政策全般を見直す事態も予想される。

さらに、高市政権はガソリン代に補助金を出して価格抑制を図っているが、原油の供給不足が懸念される中で、節約を呼び掛けるなどの方針転換も急ぐべきだという意見が自民党や野党から出されている。

このほか、物価高騰対策に本格的に取り組むため、補正予算案の編成を検討すべきだという意見が野党から出されるようになっている。高市政権としても、石油関連製品など供給不足や価格高騰による産業への影響や対応策の検討が求められることになりそうだ。

13日にまとまったNHK世論調査では、高市内閣の支持率は先月より2ポイント上がって61%、引き続き高い水準を維持している。一方、イラン情勢に伴う「原油価格の高騰や石油製品の供給不足が、生活に与える影響に不安を感じているか」を聞いたところ、「感じている」が78%に上っている。

イラン情勢の悪化と原油価格高騰対策などについて、高市政権はどこまで的確に対応できるかどうかが当面、最大のポインになっており、息の抜けない情勢が続く見通しだ。(了)

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予算の年度内成立 断念 “高市首相に参院の壁”

新年度予算案をめぐり政府・与党は、高市首相が強い意欲を示してきた予算案の年度内成立を断念した。これに伴い予算成立までのつなぎとなる「暫定予算」が30日成立した。衆議院では自民・維新の与党と中道、国民民主、参政の各党が賛成、参議院では立民、公明両党も賛成した。

続く31日には、4月から実施予定の高校授業料無償化や税制改正関連法案などについても与野党の賛成多数で可決・成立した。「暫定予算」を組むのは2015年以来、11年ぶりだ。こうした措置よって新年度予算案は成立していないものの、国民生活に直接支障が出るような事態は避けられている。

一方、この国会では衆院選挙で圧勝した高市政権がどのような政権運営を行うのかも焦点の1つだった。最初のテーマになった新年度予算案をめぐって高市首相は「数の力」を背景に予算案の年度内の成立を押し通そうとしたが、最終的には野党が多数を占める「参議院の壁」に押し返された。

ここまでの高市首相の政権運営をどのようにみるか。後半国会ではどのような対応が問われることになるのか、国会や政権の運営のあり方などについて点検しておきたい。

 ”国会運営に疎い首相”との見方も

今回、新年度予算案をめぐって与野党が対立した理由・論点は極めてわかりやすい。野党側は1月に衆院選挙が行われたことから、年度内の成立は日程的に困難だとして、早い段階から政府・与党側に暫定予算案を編成するよう求めてきた。

自民党内も当初、予算案の成立は4月末の大型連休前を想定する見方が多かった。ところが、高市首相が年度内成立に強いこだわりをみせたことから、自民党は急遽、年度内成立へとカジを切った。

衆議院で予算案の実質審議入りしたのが2月27日で、例年より1か月遅れだった。予算審議をめぐっては坂本予算委員長が職権で日程を次々に決定した。例年70時間から80時間かけて審議してきたが、今年は59時間と2000年以降最短に圧縮して予算案は衆院を通過した。

政府・与党は参議院でも年度内成立をめざしたが、参議院は野党が多数を占めており、参院自民党も強行路線をとらなかったことから、予算案の年度内成立は見送りとなり、暫定予算を編成することになった。

こうした政府・与党の対応について、野党側は「予算案の年度内成立が無理なことは、通常国会の冒頭解散になった時から明らかだった。選挙に圧勝したことで高市首相は自信過剰となり、国会の見通しにも甘さが出たのではないか」と厳しい評価をしている。

自民党執行部からは衆院選を圧勝に導いた高市首相を直接、批判するような意見は出ていないが、党内には参院の情勢を判断できず最後まで年度内成立にこだわり続けた高石首相に冷ややかな見方もある。

また、「首相官邸と、衆議院議員を中心とする自民党執行部、それに参議院自民党との間の意思疎通並びに連携がとれていないのが一番の問題」といった意見も聞かれる。

さらに別の自民党関係者は「高市首相は政策には精通しているが、国会の運営や党内調整、参議院自民党の立ち位置などの基本認識に疎いところがある。党執行部も首相と率直に話ができる関係にならないと安定した党運営は難しいのではないか」と指摘する。

予算成立後も試される首相の力量

それでは4月以降の国会の動きはどうなるだろうか。参院予算委員会で審議が続いている新年度予算案は、4月1日と2日に分野別に各委員会で審議する委嘱審査が行われることが決まっている。

自民党は一日でも早く予算案を成立させる必要があるとして、4月3日までに成立させるよう求めているが、野党側は高市首相の出席を求めて集中審議を行うことを主張している。このため、4月第1週の採決は難しく、第2週にずれ込むのではないかとの見方が出ている。

新年度予算案は既に衆議院で可決されていることから、憲法の規定で参議院で採決が行われなくても11日には自然成立する。このため、参議院の与野党とも11日の前までには採決を行うものとみられる。

4月以降の後半国会で政府・与党は、インテリジェンス(情報収集・分析)政策の司令塔となる「国家情報会議」設置法案を推進することにしているほか、連立を組む維新が強く求めている副首都法案や、衆議院議員の定数削減法案など与野党の対決色が強い法案の扱いが焦点になる見通しだ。

その際、高市首相は予算審議の教訓を踏まえて、野党側の協力を得るためにどのような姿勢で臨むのか、また自民党執行部との関係を強化できるかが問われることになりそうだ。

報道各社の世論調査によると高市内閣の支持率は低下している調査結果はあるものの、全体として高い水準を維持している。ただ、イラン情勢の悪化が長期化するとエネルギー価格の高騰と供給量の確保、物価高や企業支援などの難題が政権を直撃することも予想される。

その結果、高市政権がめざしている食料品の消費税率ゼロや、危機管理投資、防衛力の抜本強化といった高市カラーの政策に影響が出ることも予想される。

自民党の長老に高市政権について聞くと「内閣支持率は高いが、実績の評価というよりも期待値だろう。高市首相は首相官邸に閉じこもることが多いと聞くが、イラン中東の危機に的確に対応できるか、重要法案を着実に成立にこぎ着けられるか、本当の力量が試されるのはこれからだ」との見方を示す。

ここまでみてきたように高市首相は衆院選の圧勝で自民党内の基盤を強化した一方で、与党の過半数割れが続く参議院では依然として不安定な状況に立たされていることが浮き彫りになった。後半国会では衆参ねじれの状況を克服できるのかどうか、高市首相の力量が試される。(了)

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