国会は補正予算が成立、いよいよ新年度予算案の審議が2月3日から始まる。安倍首相と各党の議員が1問1答形式で質疑を行い、国会前半の山場の審議が続くことになる。
先の補正予算の審議では、安倍首相出席の委員会審議が去年の11月8日以来ということもあって、政治とカネなど疑惑・不祥事の問題に集中したが、安倍首相と野党側の主張は平行線をたどった。
新年度予算案の審議では、予算案の中身の審議に加えて、中国・武漢から各国へ感染が拡大している新型肺炎の問題をはじめ、国民生活に直結する消費増税後の日本経済、社会保障制度、さらには外交・安全保障など多くの重要課題について徹底した論戦を繰り広げてもらいたい。
どこが論戦のポイントになるのか、どんな取り組みが必要なのか見ていきたい。
「桜」疑惑 平行線、逃げの姿勢
まず、先の補正予算の審議では、一連の不祥事の中で、首相主催の「桜を見る会」疑惑に質問が集中した。野党側は「首相の地元支持者を多数招くなど公私混同、政府行事の私物化で、公選法の疑いがある」などと追及した。
これに対して、安倍首相は「歴代内閣とも招待基準が曖昧で、招待者数や予算が増えたことは反省する」としながらも、公選法などの法令違反はないと反論、従来の答弁を繰り返した。
「桜を見る会」をめぐる安倍首相の説明については、報道各社の世論調査でも「首相の説明は納得できない」との評価が7割以上を占めている。こうした国民の側の政権不信を払拭するような答弁は見られなかった。招待者名簿の再調査などにも消極的で、”後ろ向きの姿勢”が目立った。
新型肺炎、政府対応の評価は
さて、新年度予算案の審議では、疑惑・不祥事問題だけでなく、国民の暮らしに関わる、日本経済や社会保障など主要な政治課題についても、真正面から掘り下げた議論を徹底して行ってもらいたい。
当面、国民の最大の関心事は、中国の湖北省・武漢を中心に拡大が続いている新型のコロナウイルスによる感染への対応だ。武漢などに在住していた日本人をチャーター機で帰国させる取り組みが続いている。
政府は、水際対策の実効性を高めるため、入国申請前の14日以内に中国・湖北省に滞在歴がある外国人などの入国を拒否する異例の措置に踏み切った。
また、今回の感染症を「指定感染症」とする政令の施行を、当初の予定から2月1日に前倒しして、強制的に入院させる措置などがとれるようにした。
これに対して、野党側は、「政府の対応は後手に回っている」などと批判しており、今後の対策の進め方などを巡って議論が戦わされる見通しだ。
国民巻き込んだ議論・対応策を
今回は、新たなウイルス感染が、中国から世界へ拡大するという未知の問題だ。人から人への感染がどの程度拡大し続けるのかどうかなどわからない点も多い。また、感染防止へのさまざまな取り組みを進めるためには、国民の理解と協力が不可欠で、国民を巻き込んだ議論と対応策づくりが重要だ。
このため、当面の緊急対策が一段落ついた後、国会では、この問題にテーマを絞っての議論、あるいは集中審議などを検討してはどうかと考える。水際対策の有効性をはじめ、ウイルスの感染力や変異の可能性、国内の医療体制などの整備の進め方、さらには、観光や経済への影響など幅広い問題が出てくる見通しだ。
国会の関係する委員会が合同で、各界の専門家や関係者を参考人として招いて意見を聞く。その上で、政府の対応策の報告を求め、各党の提案などを含めて議論し、国民に向けて発信する新たな取り組みを行ってはどうか。国民の命と暮らしに関わる問題なので、与野党の党派を超えた取り組みを求めておきたい。
今年夏に半世紀ぶりに再び開催される東京オリンピック・パラリンピックも視野に入れた対応が必要だと思う。
消費増税後の日本経済は?
次に論戦で聞きたいのは、去年10月の「消費増税後の日本経済」をどう見るかだ。安倍首相は施政方針演説で「日本経済は、この7年間で13%成長し、新年度の税収は過去最高になった」とアベノミクスの成果を強調した。
これに対して、野党側は、この7年間の実質成長率は、OECD加盟国の平均が2%に対し、安倍政権下では1.2%、先進国の中で低い水準に止まっていると批判している。
2月17日には、消費増税を実施した去年10月から12月のGDP速報値も公表される予定だ。経済の現状をどのように認識し、具体的に、どんな政策を打ち出すべきなのか議論を注目して見ていきたい。
社会保障の制度設計は?
さらに論戦では、最大の懸案「人口急減社会への対応策」も待ったなしだ。
政府は、この国会に中小企業で働くパート労働者に厚生年金への加入を義務づける年金改革法案を提出する。
また、企業に70歳まで就業機会を確保するよう努力義務を課す「70歳定年法」も提出する予定だ。
こうした法案はいずれも大きな意味のある法案だが、政府の対応策は、果たして、急速に進む人口急減社会を乗り切るために十分なのかどうか。
75歳以上の後期高齢者の医療費の負担をどこまで求めるか。あるいは、今後、急増する1人暮らしのお年寄りのうち、低所得層の最低生活をどのように支えていくのか。
一方で、幼児教育の無償化などが始まったが、子育て世代に対する支援策の充実など大きな課題を抱えている。
次の衆院選の判断材料に
このほか、外交面では、中東への自衛隊の派遣問題をはじめ、アメリカのトランプ政権が要求を強めている、在日米軍の駐留経費の日本側負担の問題、さらには、北朝鮮の非核化と日本の安全保障体制のあり方なども大きな課題だ。
このように内外に数多くの難問を抱えており、与野党とも難問から逃げずに真正面から議論してもらいたい。
私たち国民の側も”政治離れ、選挙離れ”をどのように克服するのか問われている。与野党の主張、論戦に耳を傾け、どの党の主張・提案が妥当なのか、判断していただきたい。そして来年10月までに確実に行われる次の衆院選に向けて、今から判断材料集めをしていただきたいと考える。
