大型連休が終わって国会は、衆議院を通過した国家情報局設置法案の審議が8日、参議院本会議で審議が始まった。また、裁判のやり直しの制度を見直す法案の国会提出に向けて、自民党内で条文の調整が続いているほか、衆議院では防災庁設置法案など重要法案の審議も本格化する見通しだ。
後半国会ではこうした重要法案をめぐって、与野党の審議と攻防が活発になる。一方、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃のゆくえと、原油や石油関連製品の供給不足や価格高騰がどうなるのか、各国にとって最大の関心事項だ。
原油輸入の9割を中東に依存している日本にとって、イラン情勢の緊張が長期化した場合、石油関連製品の高騰が続き、企業や産業、国民生活に大きな影響が避けられない。
このためイラン情勢によって、後半国会の展開はガラリと変わり、高市政権も新たな対応を迫られる。その後半国会で高市政権は、具体的にどのような点が問われることになるのか探ってみたい。
イラン情勢、経済・暮らしに影響広がる
さっそく、イラン情勢からみていきたい。アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議は合意が近いとの見方が伝えられるが、ホルムズ海峡の開放やイランの核濃縮の扱いをめぐって双方の主張には隔たりがあり、先行きは不透明な状況が続いている。
日本政府は、備蓄原油の2回目の放出を5月1日に行ったほか、ホルムズ海峡以外からの原油調達を進めている。その結果、原油や、原油を精製してつくるナフサの供給は「年を越えて継続できる見込みとなった」と盛んにアピールしている。
こうした一方で、国内では原油やナフサの供給不安による影響がさまざまな分野で広がっている。ナフサはプラスチック製の資材や医療機器、食品の包装、ゴム製品など幅広い用途に使われているため、さまざまな業界で「物が手に入らない」との悲鳴が上がっている。
イラン情勢の悪化が長期化すれば、石油関連製品の品不足が深刻化するほか、夏から秋にかけて価格高騰の波が押し寄せ、国民生活がさらに圧迫される事態も予想される。
強い経済路線、高市首相 節約に消極的
こうしたイラン情勢の悪化に伴う石油関連製品の不安や価格高騰を受けて、与野党からは、原油価格高騰対策を盛り込んだ補正予算案を早期に編成すべきだという意見が相次いでいる。
これに対して高市首相は、原油は備蓄の放出と調達先の多角化で、原油とナフサ、石油関連製品についても「年を越えて供給を維持できる」と強調している。
補正予算案についても「今年度予算の予備費が活用できる」として、現時点では補正予算案の編成は必要な状況ではないとの考えを示している。
さらに与野党から「中東情勢の長期化に備えて、エネルギーの節約など需要抑制を呼びかけてはどうか」との提案が出されているが、高市首相は「あらゆる可能性を排除せず、臨機応変に対応していく」として、明確な態度表明を避けている。
高市首相は「強い経済」を掲げて高い支持率を維持してきたことから、景気に冷や水を浴びせかねない節約の要請は避けたいというのが本音だとみられる。
野党各党は連休明けに再び、原油高騰を受けた経済対策を盛り込んだ補正予算案編成の要求を強める構えだ。国民民主党は、中低所得者層を対象に5万円の給付や電気・ガス料金の負担軽減などを求めていく方針で、高市首相の対応が注目される。
6月に懸案集中、決断迫られる高市首相
それでは、これからの政治の動きはどのような展開になるだろうか。外交面では、今月14日から2日間の日程で、トランプ大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と米中首脳会談を行う。米中の貿易・経済関係や台湾問題、それに中東情勢についても意見が交わされる見通しで、各国の外交政策に多大な影響を及ぼす。
また、6月15日から3日間の日程でG7=主要国首脳会議がフランスで開かれる。ホルムズ海峡の航行をめぐっては、アメリカと、イギリス・フランスなどのヨーロッパ諸国がそれぞれ安全航行の枠組みづくりを進めている。米欧の間で日本はどのような役割を果たすのか高市首相の外交手腕が試される。
一方、内政では6月には、政治判断を伴う重要な懸案が相次ぐ。まず、高市首相が「悲願」と位置づける「食料品の消費税率ゼロ」について、国民会議が6月に「中間とりまとめ」を行う予定だ。国民会議では有識者や与野党から、レジの改修などの実務的な問題点が数多く指摘され、消費減税には慎重論や反対論が強まっている。
高市首相は衆院選で公約した政策であることから、当初の方針通り消費税率ゼロの方針を取りまとめ、秋の臨時国会に関連法案の提出をめざす考えとみられる。こうした高市首相の方針と国民会議の議論にはズレが目立っており、調整力が問われる。
また、国民会議との関係では中低所得者層の負担軽減を図る「給付付き税額控除」の扱いも問題で、食料品の消費税率ゼロ政策と合わせてどのようなタイムスケジュールで実施していくかも焦点だ。
さらに、6月は高市内閣にとって初めての中長期の経済・財政の方針となる「骨太方針」を決定する予定だ。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は、給付付き税額控除や防衛力の抜本強化を実現するための財源を含めて、説得力のある将来像を提示できるかが問われる。
こうした懸案に加えて、イラン情勢の緊迫化に伴う補正予算案を編成するか否かの問題を抱えている。今の国会の会期末は7月中旬であり、これから6月にかけて判断をせまられる。このように6月には、数多くの重要な政治課題が押し寄せる見通しだ。
その際、物価高騰対策の補正予算に踏み切る場合、与党内からは「食料品の消費減税は取り止めて、給付付き税額控除先行に切り替えるべきだ」といった意見も出されている。
これに対して、自民党の閣僚経験者は「高市首相は、選挙公約を取り下げるような選択はしないのではないか」との見方をしており、主要政策の調整が問題になる見通しだ。
高市政権は政権発足から半年が経過しても高い支持率を維持しているが、外交面では、日本経済にとって死活的に重要な「ホルムズ海峡の安全航行」をどのように実現していくのか、高市政権の外交力が厳しく問われることになる。
また、内政面では、イラン情勢に伴う石油関連製品の価格高騰対策など当面の対応策と、中長期の主要政策についても優先順位をつけながら決定できるのかどうか、高市政権は正念場を迎えている。(了)
★追記(5月11日21時)高市首相は11日の参院決算委員会で「日本全体として、原油も石油関連製品も必要な量は確保できている」として、現時点で国民に対し踏み込んだ節約を呼びかける段階ではないという考えを示した。また、現時点では補正予算案の編成は必要ではないという認識を示した。
★追記(5月18日21時)中東情勢を受けて、高市首相は18日に開かれた政府与党連絡会議で、今年度の補正予算案の編成を含め、検討を行うよう片山財務相に指示したことを明らかにした。また、与党に対し、今年7月から9月までの電気・ガス料金の支援策をまとめるよう要請した。
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大型連休が終り国会で後半の議論が始まったことを受け、国内外の
各重要案件に対して、現高市政権がどのように考え、どのように対
処しようとしているのかについて、大変分かり易く説明されてお
り、大変良く理解できました。
イスラエルとアメリカによるイラン攻撃によって、全世界に石油の
供給・調達にとんでもない大きな影響を及ぼしており、燃料として
の石油のみならず、石油を原料とするナフサの供給不安により、産
業界にあらゆる関連原料が入手困難の事態が具体化しているにもか
かわらず、高市政権は自らの政策に固執するあまり、この問題が
関連産業を直撃し生産が追い付かず、国民生活に多大な影響が出て
いることを認めようとしていません!
また、国民生活を圧迫し続けている物価高騰の経済対策についても
改善のための具体策が実現できていません。
さらには軍事力増強や少子化対策等等の財源確保についても、具体
的な対策は未定のままです。
高市首相のこれまでの取り組みをまとめると、
「私は強い信念をもって強い日本をつくり、その結果、国民はその
恩恵を受けることになる」とアメリカのトランプなりの思いあがっ
た考え方しか感じられません。
弱小野党集団に追いやられた野党も成す術がないのではないでしょうか?
今後の行く末が心配されます。
文章について
①「イラン情勢、経済・暮らしに影響が広がる」の項
9~10行目
影響がさまざま分野で広がっている。
→影響がさまざまな分野で広がっている。
( な が脱字 )
②「強い経済路線、高市首相 節約に消極的」の項
最後から4行目
野党各党は連休明けとともに再び、原油高騰を
→野党各党は連休明けに再び、原油高騰を
( ともに が必要ですか )
③「6月に懸案集中、決断迫られる高市首相」の項
7行目
ホルムズ海峡の海峡の航行をめぐっては、
→石油調達に大影響を及ぼしているホルムズ海峡の航行を
めぐっては、
( ホルムズ海峡の 海峡の航行 海峡が重複 )
5月13日 妹尾 博史