安倍首相の在任期間が11月20日、戦前の桂太郎元首相を抜いて通算で、歴代最長になった。一方で、報道各社の世論調査で見ると、安倍政権の支持率は、2閣僚辞任までは影響は限定的だったが、首相主催の「桜を見る会」問題などで、内閣支持率が下落している。世論は安倍最長政権をどのよう見ているのか、報道各社の世論調査データを基に分析する。
”閣僚辞任・失言・疑惑3点セット”
9月の内閣改造で初入閣した菅原前経産相と河井前法相が相次いで辞任したのを受けて、当コラムでは、11月上旬に行われたNHK世論調査を基に政権への影響を分析した。その結論は「安倍内閣の支持率は横ばい状態で、政権への影響は限定的だと言えそうだ」と報告した。
その後、萩生田文科相の「身の丈発言」をきっかけに大学共通テストへの英語民間試験の導入が延期された問題。さらに、首相主催の「桜を見る会」問題も焦点に浮上してきた。安倍政権は、”閣僚連続辞任、失言、公私混同疑惑の3点セット”の問題”の火消しに追われる形になっている。
報道各社:世論調査データ
そこで、まず、報道各社の世論調査データから、時系列的に見てみよう。
▲11月上旬に行われたNHK世論調査(8~10日)では、安倍内閣の支持率は、
◇支持が47%、◇不支持が35%。支持率は、前回調査に比べて1%の減少。
閣僚2人の相次ぐ辞任が、安倍政権へ及ぼす影響については、「影響がある」48%、「影響がない」44%と見方が分かれた。
▲11月中旬には、読売、朝日、産経3紙が調査。(読売15~17日、朝日、産経16・17日)
安倍内閣の支持率は、◇読売は49%で、6ポイント減、◇朝日は44%で、1ポイント減、◇産経は45%で、6ポイント減。
▲11月下旬には、日経、共同通信2社が調査。(日経22~24日、共同22・23日)安倍内閣支持率は、◇日経が50%、7ポイント減、◇共同は49%、5ポイント減(小数点以下、四捨五入)となっている。
支持率下降、下落幅も大きい共通項
いずれのデータも調査を行ったメデイアや設問などが違うので、数字を詳細に比較しても意味はない。「傾向」を読み取ることの方が重要だ。
いずれの社のデータも支持率は前回調査に比べて「下降傾向」にあることが共通している。「下落幅」も多くのデータが「5ポイントから7ポイント」と大きく、「下落の有意差」が見られる点も特徴だ。
支持率下落の要因
内閣支持率下落の要因については、閣僚連続辞任、英語試験問題の影響も考えられるが、設問内容から判断すると「桜を見る会」の影響が大きい。
安倍首相のこれまでの説明について「納得できない」「信頼できない」といった首相不信が、7割近くを占めている。(朝日「納得できない」68%、日経「納得できない」69%、共同「信頼できない」69%)。
「桜を見る会」は、今国会で取り上げられ注目を集めたのが11月8日、参議院予算委員会で共産党・田村氏が追及。それ以降、15日には安倍首相が異例の記者説明を2回も行っている。20日には参議院内閣委員会で、安倍首相と夫人の招待の推薦枠が約1000人だったことが明らかにされるなど野党の追及が続いている。
安倍政権は、閣僚辞任や英語民間試験問題については短期間で結論を出したが、「桜を見る会」については事実関係などの説明が後手に回り、しかも手間取っていることも支持率下落に影響している。
”政権に陰り” 一連の不祥事
このように9月の内閣改造・自民党役員人事で新たにスタートした安倍政権は、これまでの国会とは異なり、一連の不祥事で守勢に立たされている。
また、内閣支持率が下落、世論に支持離れの傾向が見られる。
さらに、第2次政権発足当時のアベノミクスのような新たな政策を推進しようという勢いが見られず、”政権に陰り”が感じられる。
政権への影響、一時的か復元か、見極め必要
こうした一方で、政権そのものへの影響が出てくるのかどうか、見極めが必要だ。というのは、安倍政権は、これまでも内閣支持率の大幅な支持率低下で「支持・不支持の逆転」も見られたが、短期間で支持を取り戻す「強い復元力」を発揮してきたからだ。現在も、支持率は40%台半ば、あるいはそれ以上で、堅調な水準を維持している。
NHKの世論調査で見ると◇2014年秋に当時の小渕優子経産相、松島みどり法相の女性閣僚がそろって辞任した際には、支持率が8ポイント大幅下落した。◇2015年の安全保障関連法、2017年の森友学園問題、2018年の加計問題が焦点になった時は「支持と不支持の逆転状態」に3回、追い込まれた。但し、この際には、長くて3か月、2か月で元の水準を取り戻している。
今回は、支持が不支持を上回っている状態だ。今後の推移を今しばらく、見極める必要がある。
国会の攻防、長期政権の評価がカギ
安倍政権の今後の求心力、政権への影響については、焦点の「桜を見る会」を巡って、地元支援者を数多く招くなど公私混同ではないかといった様々な疑念に、どこまで説得力のある説明ができるのかどうか。
また、国民が長期政権の是非をどう考えるのか。自民党内にある安倍首相の総裁4選論を容認する方向へ動くのか。それとも、あたらしいリーダーに将来に委ねるのか、世論の評価が大きなカギを握っている。
安倍政権と世論の関係については、今後も節目節目で取り上げていきたい。