”総括も道筋もなき”コロナ対策 菅政権

新型コロナウイルスの感染再拡大に伴って、東京、京都、沖縄の3都府県に12日から「まん延防止等重点措置」が適用される。大阪など既に適用されている地域と合わせると6都府県に拡大した。

注目のワクチン接種も先行している医療従事者に続いて、12日からは高齢者を対象にした優先接種が始まる。

感染再拡大とワクチン接種の同時進行という新たなフェーズに入ったが、菅政権の対応をみると、対策の総括がなされないので、効果はあまり期待できない。

また、コロナ感染危機脱出への道筋も示されていないという問題を抱えたままだ。第4波が現実味を帯びてきた中で、何が問われているのか探ってみた。

「まん延防止」で抑え込めるか?

菅政権が新たに採用したのが、コロナ対策の特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」だ。緊急事態宣言が各都道府県内全体を対象にするのに対して、「まん延防止」は、知事が地域を決めて飲食店の営業時間短縮などを要請できる。

機動的に対処できるが、感染力が強い変異ウイルスが拡大している局面で、効果が期待できるのかどうか、自民党の厚生労働経験者に聞いてみた。

「一定の効果はあると思うが、はっきり言って限界もある。政府の今の対策は、”川下”での対策だ。サラリーマンなどが勤務を終えて一杯やる居酒屋での感染拡大を防ぐ。しかし、感染の急拡大を抑え込むには、人の移動を減少させる”川上”対策、蛇口を閉める対策まで踏み込むことが必要だ」と指摘する。

具体的には、去年春の感染拡大期にとられた「テレワークの徹底」。首相をはじめ、西村経済再生相、田村厚労相などが必死で企業、経済団体などを回り、出勤者の7割、8割削減を要請することだ。中小企業については支援策も用意して、協力を要請すべきだ。

そして「2週間程度、短期集中型で感染を極めて低レベルに抑え込んだうえで、新たな対策を実行しないとリバウンドの防止は無理だろう」と指摘する。

 ”総括も道筋もなき”コロナ対策

次に、菅政権のこれまでのコロナ対策はどこに問題があるか。端的に言えば、”総括も道筋もない対策”といえるのではないか。

例えば、先に東京など3都府県に「まん延防止等重点措置」の適用を決めたが、その2週間余り前には緊急事態宣言解除に合わせて「5つの柱からなる総合対策」を打ち出した。変異ウイルス対策の強化やPCR検査の拡充、医療提供体制の強化などで、ようやく政府の対策に盛り込まれた。

ところが、今回、新たな「まん延防止措置」を打ち出すのにあたって、総合対策はどこまで進み、新たな措置とどのように関連づけて実行していくのかといった総括や説明はまったくない。その時々の対応、”対症療法”の繰り返しに終始している。

菅政権のコロナ対策は、年明けの緊急事態宣言以降、飲食店の時間短縮中心の”1本足打法”で一貫している。第1波、第2波の総括も先送りにしたままなので、いったん打ち出した対策以外は、新たな対策はなかなか採用されない。

また、決め手と位置付けるワクチン接種をどのように進めていくのか、供給量や接種スケジュールもはっきりしない。さらに、感染抑止とワクチン接種を組み合わせた実施計画や、経済・社会活動の本格化につなげる出口への道筋も未だに示されていない。

最初の緊急事態宣言発出から既に1年、菅政権発足から半年余りが経った。菅政権は暮らしと経済活動を軌道に乗せていく道筋を早急に示す時期に来ている。

  ワクチン接種と政権の実行力

感染抑制と経済活動再開への切り札になるのがワクチン接種だが、日本は先進国の中で後れをとっている。2月17日から医療従事者の先行接種始まったが、4月9日までのデータで159万回に止まる。

4月12日からは、いよいよ高齢者の優先接種が始まる。但し、ワクチン確保量が極めて少ないため、本格的な接種は5月以降になる見通しだ。

河野ワクチン担当相は、6月末までに高齢者3600万人が2回接種を受けられるワクチンは確保できると強調する。これに対して、接種主体の自治体担当者からは「いつ、どれくらいのワクチンが届くのか具体的な情報がない」と不満は強い。

ワクチン接種の道のりは長い。高齢者の優先接種が終わった後、基礎疾患ある人・約820万人、次は高齢者施設の従事者・約200万人、さらに60歳から64歳までの高齢者・750万人と続く。その後、ようやく一般の人たちとなる。かなりの時間がかる。

それまでの間、第4波を防ぎながら、ワクチン接種を順調に進めることができるか。やるべき対策は、これまでの経験からはっきりしている。PCR検査の拡充をはじめ、変異株を把握する検査強化、病床の確保と転院調整など医療提供体制の整備だ。

菅政権の対策は飲食店の時間短縮が中心だが、これからは多様な対策を組み合わせて、感染抑制の効果を上げられるか実行力が厳しく問われる。

大阪をはじめとする関西圏では、このところ新規感染者数が過去最多となっているほか、重症病床もひっ迫している。東京も先月22日に緊急事態宣言が解除された後、感染拡大傾向が続いている。

当面、まん延防止措置の効果が現れるのか、それとも3度目の緊急事態宣言に追い込まれるのか、この2週間の感染状況をしっかり見ていく必要がある。

 

 

 

 

 

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