“食料品 消費税1%案”の見方・読み方

国会は、中東情勢への対応に備えて予備費を増額するなど総額3兆円余りの補正予算が5日、参議院本会議で自民・維新の与党と国民民主党などの賛成多数で可決・成立した。

一方、衆議院選挙で自民党が公約に掲げた食料品の消費税減税について、政府内ではレジの改修にかかる時間を短縮し、早期に実施するために消費税率をゼロではなく、「1%」として来年4月から実施する案が浮上している。

高市首相は、与野党と政府で作っている「国民会議」で議論がまとまれば、秋に想定される臨時国会に関連法案を提出する考えを表明した。この食料品の消費税率1%案は効果が期待できるのかどうか、高市政権の今後の政権運営にどのような影響を及ぼすことになるのか探ってみたい。

食料品 消費税1%・来年4月実施案

今年2月の衆議院選挙で争点の1つになった食料品の消費税減税と給付付き税額控除をめぐっては、政府と与野党で作っている「国民会議」で議論が続いている。

このうち、食料品の消費減税についてはレジの改修期間が問題になり、経済産業省が関係業界から聞き取り調査を行った。その結果、自民党の公約通り消費税率をゼロとした場合、レジの改修期間が「最大10か月から1年程度」かかる一方、1%であれば「最大5~6か月程度」と半分程度で済むことがわかった。

このため、政府内では食料品を対象にした2年限定の消費税を行う場合、税率は「1%」とし、来年4月から実施する案が有力になっている。

この問題は4日の衆院予算委員会で取り上げられ、高市首相は「国民会議で結論が出れば次の国会で、できるだけ早く法案を出したい」とのべ、秋に想定される臨時国会に関連法案を提出したいとの考えを表明した。

高市首相は具体的な税率や実施時期については「私は結論を先取りはしない」と明言を避けたが、国民会議の議論を踏まえて6月下旬に判断を示す見通しだ。

 1%案とりまとめ 野党の対応が焦点

政府内で食料品の消費税1%案が検討されていることについて、野党側は「国民会議では給付付き税額控除を中心に議論しており、消費税減税についてはほとんど議論されていない」として、政府側の対応に強く反発している。

このうち国民民主党は、賃金上昇率が物価上昇率プラス2%に安定するまで消費税を5%に減税すべきという方針で、食料品に限った消費税減税には否定的な立場をとっている。そして、住民税の控除と社会保険料の還付で手取りを増やすよう求めている。

中道改革連合は、衆院選では恒久的な食料品の消費税率ゼロを掲げたほか、立憲民主党は「原則1年間ゼロ」、公明党は「恒久的な引き下げ」を訴えた。このように中道など3党は食料品の消費減税には賛成だが、終盤国会で高市政権と対決姿勢を強めるねらいもあって、最終的な方針をまだ決めかねている。

チームみらいは野党で唯一、衆院選でも消費税減税を掲げておらず、代わって年収に応じて現金を給付する「所得連動型給付」を行うべきだと主張している。一方、日本保守党は、消費税1%を認める方針だ。

このように国民会議に参加している野党のほとんどは、消費税1%案には反対か、態度を決めていないため、国民会議の意見のとりまとめがどのような内容になるか見通しはついていない。

衆議院は与党が圧倒的多数を占めるが、参議院では与党は過半数に達していない。このため、野党から消費税1%案を許容する党が出てくるのかどうかも焦点だ。

減税と給付の制度設計・優先順位がカギ

食料品の消費税減税については具体的な制度設計に加えて、「給付付き税額控除」との関係をどうするかといった問題を抱えている。高市政権は食料品の消費税率を2年間に限ってゼロにした後、「給付付き税額控除」を本丸と位置づけて導入するのを基本方針にしている。

ただ、消費税率を今の8%からゼロ、または1%に引き下げたとしても、その効果が価格の引き下げにつながるか疑問だとする指摘がある。原材料費や運送費など他の費目の価格上昇が影響するからだ。

また、小規模の農家では、肥料や資材などの消費税額を農家が一時的に負担したり、消費税分の収入が減ったりする事態が予想されるほか、外食産業では利用者が減るのではないかと懸念されている。

さらに消費減税を2年限定で行った後、元の税率に戻せるのかという問題や、4兆円から5兆円程度は必要とされる財源をどのように確保するのかといったさまざまなな問題が残されている。

このため、「国民会議」の中からも消費税減税を取り止めて、本丸の「給付付き税額控除」ついて、低・中所得層への給付から先行させる案も出されている。

一方、自民党内では元々、社会保障の主要財源になっている消費税の税率を引き下げることに慎重な意見が根強くあるほか、幹部の中からは「さまざまな問題を抱える制度設計を誰が中心になって取りまとめるのかがはっきりしない」として政府・与党の態勢が整っていないことを不安視する声も聞かれる。

このように食料品の消費税減税や「給付付き税額控除」をめぐっては、それぞれの制度の具体的な内容をはじめ、優先順位やタイムスケジュールをどのように設定するのか詰めるべき問題は多く、紆余曲折が予想される。

世論の評価、政権の運営にも影響

それでは国民は、食料品の消費税減税などをどのようにみているだろうか。NHKの世論調査によると▲衆院選直後の2月調査では、消費税減税に「賛成」が57%、「反対」が30%、「わからない・無回答」が14%だった。

食料品の消費税減税は物価高対策として効果があると思うかとの質問には◇「ある」が47%、◇「ない」が46%と評価が分かれた。

▲3月調査で「給付付き税額控除」の導入については「賛成」が47%、「反対」が35%、「わからない・無回答」が18%だった。

▲5月調査で、消費税減税は物価高対策として効果があると思うかとの設問については「ある」が40%で、「ない」が53%だった。2月調査に比べると、消費税減税の効果については否定的な評価が増えて、肯定的な評価を上回った。

また、レジのシステム改修に1年ほどかかるとされるが、どのようにすべきか3つの選択肢から選んでももらった。◇「時間がかかっても税率ゼロを実現すべき」は18%、◇「早く減税できるなら、ゼロでなくてもよい」が48%、◇「減税する必要はない」が25%だった。

以上のデータから、国民の多くは食料品の消費税減税には賛成が多い一方で、減税の効果や税率については一つの方向に集約されるまでには至っていないようにみえる。

一方、高市首相は「食料品の消費税2年間ゼロの構想を『私自身の悲願』」と強調してきただけに減税の実施に道筋をつけ、来年春の統一地方選挙や、再来年の自民党総裁選挙の乗り切りにつなげる戦略とみられる。

高市首相はこのところ、総裁選や衆院選での自らの陣営の中傷動画問題で野党の追及を受けている。高市首相がこの問題と懸案の消費税減税に結論を出して、世論の支持を得られるのかどうか。その結果は、高市内閣の支持率や今後の政権運営にも大きな影響を及ぼすとみて注目している。(了)

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