歴史的な冷戦終結から30年余り、私たちはテレビの映像などを通じて、世界の大きな出来事を目の当たりにしてきた。ベルリンの壁がハンマーで打ち壊された光景をはじめ、湾岸戦争、アメリカの同時多発テロ、イラク戦争などを鮮明に思い出す。
2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国連安全保障理事会の常任理事国の行為であり、にわかに信じられない事態だと世界に大きな衝撃を与えた。そして、いまも非人道的な攻撃が続いている。
一方、今回の侵攻をめぐって、”スマホで視る戦争”ともいわれる。こうした今回のウクライナ侵略を日本国民はどのように受け止めているのか、個人的にずっと気になっていた。
14日にNHKの世論調査の結果が報道されたので、そのデータを基に個人的な分析、読み方を取り上げたい。(NHK世論調査、3月11日から14日まで実施)
ロシア経済制裁、妥当・強化は8割
▲この調査では、まず、日本政府がロシアに対して、プーチン大統領ら政府関係者や、半導体の輸出禁止などの制裁措置を決めたことについて、どう思うかを聞いている。
回答は、◇「妥当だ」42%、◇「さらに強化すべきだ」40%、◇「強すぎる措置だ」7%となっている。
「強すぎる措置だ」と反発する受け止め方は少なく、「妥当」、あるいは「さらに強化すべきだ」として支持する意見が合わせて8割に達している。
▲次に、ウクライナから避難した人の日本への受け入れを進めるとした政府の方針をどの程度、評価するか。
◇「大いに評価する」42%、◇「ある程度評価する」40%。これに対し、◇「あまり評価しない」8%、◇「まったく評価しない」2%となっている。
これを整理すると「評価しない」は10%、「評価する」が82%と圧倒的多数だ。人道的な立場からの受け入れであり、納得する方は多いだろう。
▲ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する日本政府のこれまでの対応を、どの程度評価するかについてはどうか。
◇「大いに評価する」6%、◇「ある程度評価する」52%、◇「あまり評価しない」27%、◇「まったく評価しない」8%。
これをどう読むか。まず、全体としては「評価する」が合わせて58%、およそ6割と多い。これに対して「評価しない」は35%、およそ3割に止まる。
次に、「大いに評価する」は6%、逆に「まったく評価しない」が8%ということは、両極端の評価は合わせても15%と極めて少ないのが特徴だ。
「ある程度評価する」が過半数で最も多く、次に続くのが「あまり評価しない」で2割後半だ。つまり、ロシアに対しては厳しい制裁を求めているものの、感情的にならずに「平静に推移を見極めようとする姿勢」が読み取れる。
日本経済への影響8割が懸念
▲さらに、ロシアのウクライナ軍事侵攻が、日本の経済にもたらす影響をどの程度懸念しているかについても聞いている。
答えは、◇「非常に懸念している」が42%で最も多く、◇「ある程度懸念している」が40%、◇「あまり懸念していない」9%、◇「まったく懸念していない」が2%と続いている。
このように「懸念している」が8割に達している。原油の急騰をはじめ、小麦など穀物価格の上昇、さらにはロシア産の希少金属などの供給減などの影響を懸念していることがうかがえる。
岸田内閣の支持率は横ばい
岸田内閣の支持率については、◇「支持する」が1ポイント下がって53%だったのに対し、◇「支持しない」は2ポイント下がって、25%だった。ほぼ横ばいだ。
もう1つの焦点になっている「政府のコロナ対応の評価」については、◇「評価する」57%、「評価しない」36%で、こちらも横ばいで大きな変化はみられなかった。
そうすると、ロシア軍事侵攻に対する政府対応の評価についても、岸田内閣の支持率には直接、大きな影響を及ぼしていないとみることができる。
但し、ロシア軍のウクライナへの侵攻が、今後、軍事的にどのような形で決着がつくのか。G7や国際社会がさらに経済制裁を強めていくのか。その結果、国際経済や日本経済などに打撃や影響が、跳ね返ってくるかが焦点になる。
政界の反応としては、安倍政権時代、2014年のロシアのクリミア併合の時に比べて、今回の岸田政権の対応は、米欧との経済制裁の足並みがそろっていると評価する声が多い。
一方で、今回は、米欧の方針の後追いが目立つと批判する意見や、核共有や防衛力整備のあり方について、主体的な判断が乏しいと批判する声も聞く。
こうした政治の側の動きとともに、今後、国民世論に変化があるのかどうか、さらには、ウクライナ問題への対応が、夏の参院選挙の大きな争点として浮かび上がってくるのかどうか、注意深く見守っていきたい。(了)