先の参議院選挙を受けて召集された臨時国会最終日の5日夕方、「岸田首相が内閣改造・自民党役員人事を10日にも実施する」との情報が駆け回り、与野党双方を驚かせた。永田町では、人事はお盆明けの8月下旬から9月前半説が強かったからだ。
今回の人事前倒しの事情・背景は何か。安倍元首相なき政局で、岸田首相の求心力は高まるのか、内閣改造・自民党役員人事で問われる点を探ってみたい。
人事前倒しの事情・背景は何か
岸田首相は6日、広島の平和記念式典に出席したあと記者会見し「新型コロナ、物価高への対応、ウクライナや台湾情勢、防衛力整備などさまざまな課題を考えると、新しい体制を早くスタートさせたいと常々思っていた」とのべ、内閣改造・自民党役員人事に踏み切る考えを正式に表明した。
岸田首相は早期の内閣改造を考えていたことを強調したが、それならば、7月25日に参議院議員の任期が切れ、引退するため議員資格を失う金子農水相と二之湯国家公安委員長の後任と併せて、内閣改造を行うのが普通ではなかったか。
そのタイミングを見送り、8月下旬以降と見られていた内閣改造・自民党役員人事を前倒しすることに踏み切ったのは、別の事情・背景があったのではないか。
1つは、安倍元首相が銃撃され、亡くなった事件に関連して、容疑者が恨みを抱いていたとされる「世界平和統一家庭連合」旧統一教会と、現職閣僚や自民党議員との関係が次々に明るみになり、世論の批判が一段と強まってきた。
また、岸田首相が事件から日を置かずに決断した安倍元首相の国葬については、政府の説明が不足しているとの指摘が多く、報道機関の調査では国葬の評価は「賛成」よりも「反対」が上回るようになった。
さらに、岸田内閣の支持率が7月下旬に行われた共同通信で12ポイントも減少し、内閣発足以来最低の水準に急落した。日経新聞の調査でも2番目に低い水準まで落ち込んだ。
岸田政権は、こうした旧統一教会問題を沈静化させるとともに、内閣支持率急落の事態を転換するために人事の前倒しを決断したのではないかとみている。
難題解決への布陣、政権の求心力は
さて、その人事は、注目点が多い。まず、安倍元首相が亡くなったあと、97人が所属する最大派閥の安倍派からの起用はどうなるのか。旧統一教会の問題は安倍派の議員に集中しているが、その影響はどうか。
また、岸田首相と距離を置いてきた二階元幹事長や、菅元首相ら非主流派の扱いも焦点になる。菅元首相の入閣はあるのかどうか、安倍元首相なき後の党内力学がどのように変化するのかも注目点だ。
国民の側からみると一番の関心事項は「難題」に取り組む布陣はどうなるかという点だろう。政府のコロナ感染対応は相変わらず、後手が目立つが、感染危機乗り切りを誰に託すのか。
防衛力整備をはじめ、経済の立て直し、この冬の電力不足やエネルギー対策などのポストに誰が就任するのか。
岸田首相は麻生副総裁らと人事の詰めの作業を進めているが、麻生副総裁、茂木幹事長、松野官房長官ら政権の骨格は維持されるとの見方が有力だ。林外相、鈴木財務相らも続投とみられる。
主要閣僚・党の中枢もこれまで通りとなると、今度は何のための人事なのかという疑問がわく。冒頭に触れたような旧統一教会の問題や内閣支持率急落をかわす小手先の対応かということになりかねない。
そうすると、今回の人事のねらいと「難題」解決に向けた首相自身の構想を併せて、打ち出して国民に説明する必要がある。
一方、岸田首相が率いる派閥は第4勢力で、内閣の要の官房長官と、党の要の幹事長も他の派閥から起用している。政権の意思決定はこれまで通りで問題はないのかという指摘もある。岸田首相を軸にした政権の体制づくりも焦点だ。
お盆前の10日に内閣改造・自民党役員人事が行われ、新たな顔ぶれが決まる見通しだ。この人事で、岸田首相の求心力は高まるのかどうか、政権の浮揚効果が現れるのかどうかも焦点になる。
旧統一教会の問題について、岸田首相は内閣の人事に当たって、点検するよう指示したことを明らかにした。一方、党の方は調査を行うのかどうかはっきりしていないが、党としてもけじめをつける必要がある。
さらに、安倍元首相の銃撃事件については、警察当局の警護の落ち度が指摘されている。警察を所管する国家公安委員長の責任問題は、内閣改造で交代する前に必要な措置をとる必要があるのではないか。
岸田首相は、コロナ感染拡大にウクライナ危機など戦後最大級の政局と位置づけている。そうであれば、人事の最終的な決定とともに難題解決に向けた自らの考え方を明確に打ち出し、国民に説明してもらいたい。(了)
★追記(8月8日21時)NHK世論調査によると◆岸田内閣の支持率は46%で、前回調査より13ポイント下がった。支持率46%は、去年10月の岸田内閣発足後、最も低い。不支持は28%で、7ポイント上がった。◆政府が安倍元首相の「国葬」を行うことについて、「評価する」が36%だったのに対し、「評価しない」は50%だった。◆旧統一協会と政治の関係について、政党や国会議員が十分説明しているかどうかを尋ねたところ、「十分説明している」が4%、「説明が足りない」が82%だった。この調査は、8月5日から7日まで行われた。前回調査は、3週間前の7月15日から18日まで実施。
メッセージが送信されました
