安倍首相の連続在職期間が8月24日で2799日を迎え、佐藤栄作元首相を抜いて、歴代最長を記録した。
同じ24日、安倍首相は17日に続いて、都内の慶応大学病院を訪れ、追加の健康検診を受けた。政界では、持病が悪化しているのではないかとの健康不安説が一気に広がり、一部には退陣説も取り沙汰される状況だ。
7年8か月に及ぶ長期政権と首相の健康不安説、それに難問のコロナ感染拡大という危機を抱えて、これからの政権・政治はどう動くのか。どこがポイントになるのか探ってみたい。
“早期の劇的政変なし”の公算
安倍首相は24日午前、慶応大学病院を訪れた後、総理大臣官邸に入る前、記者団のぶら下がり取材に応じた。「きょうは先週の検査結果を詳しく伺い、追加的な検査を行った。健康管理に万全を期して、これから仕事を頑張りたい」。
検査結果の詳細は明らかにしなかったが、これによって、一部で取り沙汰されていたような早期の辞職・退陣などは全く考えていないことを表明。このため、早期の劇的な政変の可能性は低いとみられる。
今後の政局展開、3つのケース
それでは、安倍政権のゆくえ、どんな展開になるのか。3つのケースを頭に入れておくとわかりやすい。
◆1つは、先に触れた「早期退陣」のケース。但し、この可能性は低いとみる。
◆2つ目は、「来年9月の自民党総裁任期満了まで」のケース。安倍首相はこれまで総裁任期一杯、全力投球する考えを強調してきた。
◆3つ目が、この中間で「今年秋以降、来年前半頃までの退陣」。健康問題の他、内外の政治課題の対応によっては、政権が行き詰まり途中退陣もありうる。
具体的には、◇健康問題で気力・体力が持つかどうか。あるいは◇東京五輪・パラリンピックの来年開催ができないような場合は、その政治責任を取る形で退陣もありうるとの見方も出ている。
支持率低下 後継選び”カオス状態”
今の安倍政権を見ていると歴代最長政権だが、コロナ感染拡大の直撃を受けて、内閣支持率は34%と第2次政権発足以来、最低水準まで下落。不支持は47%で、不支持が支持を上回る「逆転状態」が4か月連続と危機的な状況に陥っている。(データはNHK世論調査)
自民党の閣僚経験者に聞くと懸念しているのは、安倍首相の自民党総裁任期と、衆議院議員の任期満了が1年余りに迫っているのに、根本問題である「ポスト安倍の後継総裁選び」や「衆院解散・総選挙の時期」が固まらないことだという。
そのポスト安倍の後継選びについては、自民党内では有力候補として、石破元幹事長、岸田政調会長に加えて、菅官房長官の名前も急浮上。さらに安倍首相の出身派閥やその他の派閥からも意欲的な候補者が取り沙汰され、カオス・混沌状態になっている。
これに加えて「安倍首相の健康問題」が重なる。以前は、政権が危機的な場合、派閥の領袖や党役員の実力者が水面下で、事態打開に動いて収拾を図る局面が見られた。今の安倍政権ではそのような調整役は見当たらないのが、逆に大きな問題点だと指摘する声も聞かれる。
安倍首相 国民に所信表明を
さて、私たち国民はどう考えるか。国民の多くは、政権・政治に期待する最大の問題は、コロナウイルス感染拡大に歯止めをかけるとともに、年末に向けて雇用や事業倒産などへの備えを急いでもらいたいということではないか。また、アメリカ大統領選挙や米中対立の激化など外交面の課題も待ったなしだ。
そうした点を考えると、まずは、政権を担当している安倍首相が当面の諸問題について、早急に所信を表明してはどうか。国民も心配をしている健康問題をはじめ、コロナ対策、今後の政権運営などについての考えを明らかにするところから始めてもらいたいと考える。