高市政権”国会対応 機能不全” 特別国会閉会

国会は「副首都」構想関連法案をめぐり与野党の対立と混乱が続いた末、24日夜に採決が行われ、同法案が自民・維新両党とみらいの賛成多数で可決・成立した。これによって衆院選の自民圧勝を受けて2月に召集された特別国会は、25日に閉会した。

この国会は、異例ずくめの国会だった。衆院解散・総選挙で新年度予算の審議入りが遅れたが、高市首相が年度内成立にこだわり、審議日程が大幅に圧縮された。憲法と同列の重い位置づけの皇室典範の改正は、衆参合わせてわずか6時間余りの短い審議で、可決・成立した。

一方、終盤国会は自民・維新の連立合意関連の法案をめぐって与野党が対立し、国会審議が空転・迷走した。そして報道各社の世論調査によると、これまで高い水準を維持してきた高市内閣の支持率が急落している。

この国会をどのようにみたらいいのか。また、高市政権の国会・政権運営をどのように評価すべきか、国会閉会のタイミングで点検・分析してみたい。

首相肝入り法案成立、自民圧勝が影響

まず、国会や政権の評価に当たっては、提出法案がどの程度成立したかが判断のベースになる。首相が出席して審議をする「重要広範議案」には、国家情報会議設置法案や防災庁設置法案など4本が指定されたが、いずれも成立した。

また、新年度予算と補正予算のほか、政府が提出した改正皇室典範など64の法案は全て成立した。成立率が100%となるのは、臨時国会以外では2022年の通常国会以来だ。高市政権は法案処理の面では成果を上げたとみることができる。

一方、国会後半では自民・維新の連立政権合意に盛り込まれた衆議院議員の定数削減法案など議員立法の扱いが大きな焦点になった。このうち、定数削減法案はこの国会での審議を断念、秋の臨時国会に先送りになった。

定数削減法案以外の国旗損壊処罰法や「副首都」関連法は成立にこぎ着けた。皇室典範の改正や国家情報会議設置法などと合わせて、高市首相の肝入りで保守色の濃い法案が相次いで成立したのが大きな特徴だ。

こうした背景には、衆院選で自民党が単独で3分の2以上の議席を獲得し、与野党の勢力図を大きく塗り替えたことが挙げられる。また、高市1強体制が影響している。

一方、国民生活に直結する物価高対策は真正面から取り上げられることはなく、与野党が選挙で公約した給付付き税額控除の導入などの取り組みも後退した。

国会審議は形骸化、首相出席も大幅減

この国会では、予算案や法案の審議時間が大幅に減少し、国会審議の形骸化が目立ったのが特徴だ。

衆院解散・総選挙のため、新年度予算の審議入りは例年に比べ1か月も遅れて始まったが、高市首相が年度内成立を強く主張した結果、衆院での審議時間は大幅に圧縮された。

終盤国会の焦点になった皇室典範の改正は、衆参両院の正副議長の取りまとめの作業があったとはいえ、法案の審議が衆院で3時間、参院で3時間15分という極めて短い時間で成立した。

また、高市首相は衆参両院の集中審議に出席することが少なく、27日に閉会中審査となる集中審議を含めても36時間半で、歴代首相と比べて半分以下に落ち込んだ。

国会の役割の一つは、首相と与野党議員の間で緊張感のある議論を行うことによって、国民に政治課題の現状や今後の対応策などを理解してもらうことにある。

ところが、この国会で高市首相は、国民が強い関心を持っている物価高対策や経済のかじ取り、イラン情勢など外交方針、安定した皇位継承のあり方などについて、自らの考えを積極的に説明する場面はみられなかった。国会や国民に対する説明責任を十分果たしたとはいい難く、極めて大きな問題だ。

国会運営に難点、政権与党の機能不全

国会のあり方をめぐっては首相との関係、高市政権の国会運営の実態についても点検しておく必要がある。

政権の対応が問われたのは、6月下旬から7月上旬にかけて国会終盤だった。皇室典範の改正と、自民・維新連立政権合意に盛り込まれた衆院議員の定数削減法案と「副首都」構想関連法案の合わせて3つの法案の審議入りをめぐって、与野党の意見が対立し、国会が1週間余り空転した。

この時は、高市首相の公設秘書が中傷動画の投稿に関与した疑いがあるとして、野党側が首相出席の集中審議と党首討論を要求した問題の扱いとも重なった。そして首相側は、集中審議への出席に消極姿勢を示し、野党が強く反発していた。

この場面では与野党の対立もあったが、それよりも政権与党内に意見の違いがあり、この調整が進まなかったことが根本の問題だった。端的に言えば、維新と高市首相は、3法案の中で連立合意関連の2法案を重視していたのに対し、自民党側は皇室典範の改正を最優先に位置づけていた。

詳細な経緯は省略するが、政権与党内では、法案の優先順位について政権与党内の調整が進んでいなかった。連立関連2法案の審議入りを強行したが、野党側が強く反発し、審議中断に追い込まれた。首相官邸と自民党執行部、参院自民党、それに衆院議長らの対応がバラバラで、対応が混乱した。

自民党の歴代政権は、国会運営は幹事長の下で”国対委員長”が取り仕切り、官邸や参議院自民党、さらに霞ヶ関とも連携を取りながら、法案の提出から野党との交渉、成立までを一元的に管理・運営してきた。

公明党との連立政権になってからは「二幹・二国」(自民と公明の幹事長と国対委員長で構成)と呼ばれる幹部会合を週1回定期的に開き、濃密な人間関係を築くとともに組織的な国会運営を積み重ねた。

こうした歴代政権と比べると高市政権の体制づくりと対応は見劣りする。高市政権の難点は国会運営にあり、政権与党内では関係部署の連携・調整ができておらず、機能不全状態にあったと言っても言い過ぎではない。

政権与党、特に最大与党の自民党は、議院内閣制で首相を支える立場にあるが、首相の独善先行などがあれば、物申す姿勢が不可欠だ。今の高市政権では、選挙に大勝したことが影響して首相が圧倒的に強い立場にあり、党内は上意下達、党の幹部も首相の顔色を伺うばかりとも聞く。

自由・闊達な党風こそ、自民党の良さで、首相と党の関係も再考してはどうか。難題の定数是正法案は秋の臨時国会に先送りされたが、今のような政権運営が続けば同じことの繰り返しとなり、政権運営は不安定化するのではないだろうか。

支持率急落、世論の風向き変化の兆し

報道各社の7月の世論調査で、高市内閣の支持率が急落している。◇時事通信の調査(10日から13日実施)で49.0%、5.3ポイントの下落、◇毎日新聞の調査(18・19日実施)は10ポイント減の41%、不支持率44%が支持を上回り逆転した。◇朝日新聞は(18・19日実施)7ポイント減の53%、政権発足以来、最低を更新した。

各社の調査結果には幅はあるが、世論調査は傾向を読み取ることが重要だ。各社のデータは下落傾向にあり、いずれも大幅に下落している点でも共通している。

急落の原因は、調査時期からすると皇室典範の改正問題が影響していることが考えられる。一方、国民の関心が高い物価高対策に、高市政権が対応できていないことが響いているとの見方も聞く。

いずれにしても高市政権に対する世論の風向きに変化が現れているのは事実だ。高市首相は8月上旬までには、食料品の消費減税に踏み切るのかどうか決断するとみられており、その判断が政権のゆくえを大きく左右する見通しだ。

最後に野党の対応についても触れておきたい。野党各党は小党分立の状態が続いており、国会で政権をチェックする役割が果たせていない。緊張感のある国会を実現するためにも野党側は連携・協力関係を強め、政権と対峙できるような体制作りを進めてもらいたい。

私たち国民も国会のあり方についてどのような姿が望ましいのか、与野党双方の動きをみながら、考えていく必要がある。(了)

★追記(27日22時)国会閉会を受けて高市首相は午後6時から記者会見し、食料品の消費減税について「国民会議」の取りまとめを受けて速やかに法案を提出する考えを示した。◆内閣支持率が下落していることについては「一喜一憂しない」とのべたほか、特別国会について「反省すべきことはない」とのべた。◆今後の政権運営については「何かを成し遂げようとすれば抵抗もあるだろうが、公約実現への思いは決して揺らぐことはない」と強調した。

← 戻る

ご回答をありがとうございました。 ✨

“高市政権”国会対応 機能不全” 特別国会閉会” への1件の返信

  1. 国会閉会のタイミングにあたり、今回の臨時国会での対応を中心に
    ふりかえり、高市政権の国会・政権運営をどのように評価すべきか
    について詳しく説明がされており、大変良く理解できました。
    ひとことで言うならば、衆議院選で圧倒的多数を得たことにあぐら
    をかいたうえ、政権・与党内の意思疎通をも無視し、自己の保守思
    想に基づいてひとりよがりに「猪突猛進」したということでしょう
    か。
    政権発足時、心ある国民が懸念したことがまさに具現されたと言え
    ます!
    国民がどこまでも続く物価高に苦しんでいる状況には、遅々として
    対策が講じられなく、経済を強くして景気を好循環させることが
    ゆくゆくは国民の生活を豊かにするとの強い思い込みに捕らわれて
    いると言わざるを得ません!
    今現在の苦境をどうするのかという視点が感じられません。
    急遽組んだ維新との連立も、維新側の一方的な政策を「丸のみ」し
    たことがいま「破綻」をきたしているとも言えます。
    維新の政策は、どだい国民全体の希求するものとはかけ離れていま
    す。
    国民の支持率が目に見えて下降し始めた高市政権の今後の行く末が
    心配でもあり、政権運営が正常化に向かう兆しとなるのではという
    期待でもあります。

    文章について
    ①「国会審議は形骸化、首相出席も大幅減」の項
     7行目
     まとめの作業があったとはいえ、法案の審議は衆院で3時間
     →まとめの作業があったとはいえ、法案の審議が衆院で3時間
     ( は→が 「改正は成立した」の骨子が「法案の審議は
       成立した」とも誤解を招くのでは )
    ②小見出し
     国会運営に弱点、政権与党の機能不全
     →国会運営に難点、政権与党の機能不全
      ( はっきり難点と言い切ったらどうでしょう )
    ③同じ項
     7行目
     公設秘書が中衝動画の投稿
     →公設秘書が中傷動画の投稿
    ④同じ項
     最後から14~13行目
     濃密の人間関係を築くとともに
     →濃密な人間関係を築くとともに
     (  の → な  )
    ⑤同じ項
     最後から11行目
     高市政権の弱点のは国会運営にあり
     →高市政権の難点は国会運営にあり
      (  のは→ は 弱点→難点  )

      7月27日  妹尾 博史

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です