風向き変わるか安倍政権、閣僚辞任ダメージ

閣僚の相次ぐ辞任などで見送られてきた国会審議は、連休明けの5日から再開されるが、これまでになく政府与党側が守勢に立たされている。臨時国会も折り返し点を迎え、会期末まで1か月余りとなっている。

一方、安倍首相の通算在職日数は、11月20日に戦前戦後を通じて最長を記録する。安倍政権はこれまで堅調な内閣支持率を維持してきたが、安倍政権に対する風向きが変わるのかどうか、何がポイントになるのか探って見たい。


  閣僚連続辞任 ”やばい人事”が現実に 

安倍政権が思わぬ守勢に立たされているのは、相次ぐ閣僚の辞任が要因だ。いずれも週刊文春の報道がきっかけになっている。菅原前経済産業相は公設秘書が選挙区内の後援者に香典を手渡した疑い。河井前法相は参院選に立候補し当選した妻の選挙違反疑惑の責任をとったものだ。

先の内閣改造では初入閣が13人という大規模な人事になったが、自民党の関係者の間では「最大のサプライズは、側近の多数重用。やばい人事。大臣として持つかどうか」と漏らしていた。危うい人事の対象に菅原、河井両氏も含まれ、当初からの懸念が現実になったと言える。

 「身の丈発言」で英語民間試験延期

 大学入学共通テストに導入される英語の民間試験をめぐり、萩生田文科相の「身の丈に合わせて、頑張って頂ければ」という発言も強い批判を浴び、試験の申請が始まる直前に、延期されることになった。              

民間試験の導入については、そもそも大学の試験を民間事業に任せていいのかという制度設計のあり方が問題になりながら、文部科学省の対応が後手に回ったという指摘が出されている。

  安倍政権 国会運営でダメージ

こうした相次ぐ閣僚の辞任や失言で、国会は予定していた審議ができず、連休明け5日から再開される。5日は衆議院文部科学委員会で、英語の民間試験延期などをめぐり参考人を呼んで質疑が行われる。また、安倍首相も出席して予算委員会の集中審議が、6日に衆議院、8日に参議院で行われる。

野党側は、萩生田文科相の辞任を求めるほか、相次ぐ閣僚の辞任も併せて安倍首相の任命責任を追及する方針だ。

これに対し、政府・与党側は、試験の実施延期に理解を求め、事態の沈静化を急ぐ方針だ。そして最大の焦点である新しい日米貿易協定の承認案の審議を進める方針だが、会期末まで1か月余りとなる中で、審議日程は一段と窮屈になる見通しだ。 このように国会運面営を中心に安倍政権へのダメージは大きい。

  安倍政権の復元力は?

安倍政権はこれまでも閣僚の辞任や政権運営をめぐって厳しい批判を浴びながらも、内閣支持率の下落を短期間で食い止め、復元力の強さを示してきた。   

例えば、2014年秋の内閣改造で初入閣した当時の小渕優子経産相や、松島みどり法相の同時辞任に追い込まれた時。あるいは、2018年の通常国会で、森友問題、加計問題で内閣支持率が急落したが、数か月で歯止めをかけ、復元力の強さを示した。果たして、今回はどうなるか。

  今後の展開のカギは?

内閣支持率にどの程度の影響がでるかがポイントになる。これまでのところ、報道各社の世論調査結果はまだ出ていないが、政界関係者を取材すると、1つは、閣僚の新たな辞任などに追い込まれるかどうかがカギになるとの見方が多い。 このため、野党側は、「身の丈発言」の萩生田文科相、あるいは答弁などが不安視される別の新閣僚の資質なども質していくものと見られる。

こうした閣僚の進退や重要法案の国会での扱いが当面の焦点になるが、内閣支持率など政権運営に影響を及ぼす要因としては、景気の状況や社会保障政策などの問題が注目される。

特に10月から消費増税に踏み切った後だけに、今月14日に公表される7月から9月のGDP速報値がどうなるか。消費増税の実施前のデータだが、米中貿易摩擦などの影響がどうなっていくか、経済の舵取りだけでなく、政治面への影響も出てくる見通しだ。国会、経済、政権運営がどうなっていくか、政治の動きを中心に今後、随時取り上げていきたい。                 

                                (了)

 

 

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