順序が逆では! 岸田政権の防衛力整備

新年度予算の編成を控えて、最大の焦点である防衛力の強化と財源確保に向けた動きが、本格化してきた。岸田首相は8日、防衛予算の財源を確保するため、増税の検討に入るよう自民、公明両党に要請した。

岸田首相は、このところ防衛予算の規模や財源をめぐる指示が目立つが、防衛力整備の構想や中身の言及がほとんどみられない。

今回の防衛力整備は、戦後の安全保障政策の大転換となる。そうであれば、防衛力整備の考え方などを明確にしたうえで、予算の規模や財源の検討に入るのが基本ではないか。岸田政権の対応は、順序が逆に見える。防衛力整備の進め方や問題点を考えてみたい。

 歳出改革などと1兆円規模の増税案

まず、岸田首相の最近の対応からみておきたい。岸田首相は先月28日に鈴木財務相と浜田防衛相と会い、2027年度に防衛費と安全保障関連経費を合わせてGDPの2%に達する予算措置を講じるよう指示した。岸田首相が、防衛費の水準について言及したのは、これが初めてだった。

続いて今月5日には、来年度から向こう5年間の防衛費について、総額43兆円を確保する方向で調整を進めるよう踏み込んだ。

さらに8日の政府与党政策懇談会で、岸田首相は「防衛力を安定的に維持するためには、毎年度4兆円の追加財源が必要になる。歳出改革や税外収入などで賄うが、残り1兆円強は、国民の税制でお願いしたい」として、与党に増税を検討するよう要請した。

政府・与党は、増税の開始時期については、来年度の増税を見送り、その後、段階的に税率を引き上げ、2027年度の時点で、年間1兆円の増税をめざす方針だ。その際、個人の所得税は対象から外し、法人税を中心に検討する方針とみられる。

 岸田政権は予算先行、防衛構想提示を

このように岸田政権の方針・対応は、防衛予算の規模や財源確保を先行させているのが特徴だが、これをどのようにみたらいいのだろうか。

岸田首相は今の国会で、与野党双方から防衛力の規模や財源について幾度となく質問されたのに対し、「防衛力の内容、予算の規模、財源を一体的かつ強力に進めていく」と繰り返し、具体的な内容に踏み込むのを避けてきた。

いわゆる3点セット、三位一体で議論し決定するという考え方だが、今の首相の対応は、これまでの国会答弁から外れている。

一方、国民の側からすると、今の中期防衛力整備計画の5年間で27.5兆円の規模を、新たな計画で43兆円へ1.6倍も大幅増額し、どのような分野を強化するのか最も知りたい点だ。

ところが、こうした防衛力の中身や考え方が、首相の口からは一向に語られない。順序が逆で、国民が知りたい、肝心な点がさっぱりわからない。

防衛力整備の基本構想、内容を早急に明確にしたうえで、財源を幅広く検討、最終的な予算の内容を固めていくことが必要だ。

 財源の先送りは止め、責任ある対応を

もう1つの論点は、防衛力整備の財源をどうするかという問題がある。岸田政権の方針に対し、自民党内には、来年の統一地方選挙への影響などを考慮して、増税の議論を急ぐべきではないといった慎重論も出されている。

結論から先に言えば、防衛費を増やす場合、安易に国債・借金に頼って負担の問題を先送りするような対応は取るべきではないと考える。既に借金財政は、1400兆円を上回る。

もちろん直ちに来年から増税とはいかない場合はあると思うが、その場合でも財源については、税目を含めた増税や実施時期を法案に明記すべきだと考える。

また、今回、政府・与党は、5年後の時点で増税規模1兆円という試算を示している。これが事実だとすれば、個人的な予想に比べると負担の規模が小さい印象を受けるが、こうした試算の根拠を詳しく説明してもらいたい。

こうした背景には、コロナ禍からの経済の回復や円安などで法人税が好調で、国の税収が3年連続で過去最高水準が見込まれていること、コロナ対策の剰余金の活用などが想定されているのではないかと思われるが、見通しは正確か。

一方、防衛装備品などは、契約時から実際の納入時期の間に価格が大幅上昇したりするケースが多い。防衛装備の歳入、歳出両面での改善も含めて、国民に十分な説明を願いたい。

これから年末に向けて、国家安全保障戦略など安保関連3文書も改訂される。日本の安全保障の構想・戦略と合わせて、防衛力整備の中身の議論を深めてもらいたい。

防衛費の増額そのものについても国民の賛否が分かれるが、防衛力整備は可能な限り幅広い国民の理解と合意が重要だ。私たち国民も激しい国際情勢の変化の中で、防衛力整備をどう進めるか、政府案の決定をじっくりみていきたい。(了)

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”師走政局” 新法、防衛で攻防続く

今年も残り1か月、内閣支持率の下落が続く岸田政権は、最終盤に入った臨時国会を乗り切ることができるかどうか、ヤマ場にさしかかっている。

物価高騰対策を盛り込んだ第2次補正予算案は、ようやく今月2日に成立する運びだ。一方、旧統一教会の被害者救済法案をめぐっては、与野党が歩み寄ることができるかどうか、ギリギリの調整が続いている。

さらに最大の焦点になっているのが防衛費の問題だ。岸田首相は28日、防衛費と関連経費の合計をGDP比で2%にするための財源確保措置を決める方針を打ち上げたが、財源の扱いをめぐって自民党との意見の違いが表面化している。

”師走政局”は、救済新法をめぐる与野党の最終決着の仕方と、防衛費の政府・与党内の調整が大きな焦点になりそうだ。その結果によっては、岸田政権の求心力はさらに低下する事態も起こりうるのではないか。

 辞任ドミノ、秋葉復興相は続投か

今月10日に会期末が迫った臨時国会からみていくと、岸田政権が最優先に位置づけている総額28兆9000億円の補正予算案は、寺田前総務相の更迭の影響を受けて当初の予定より遅れ、2日の参議院本会議でようやく成立にこぎつける見通しだ。

補正予算案の審議の中で野党側は、秋葉復興相に照準を合わせて追及した。事務所家賃の不明朗な支払いをはじめ、旧統一教会との新たな関係、さらには昨年の衆院選挙で自らの秘書2人が車上運動員として報酬を受け取っていた問題などを取り上げ、集中砲火を浴びせた。

これに対し、岸田首相は「秋葉大臣は、国会でさまざまな指摘を受け、それにしっかり説明責任を果たせるよう努力している」として、野党側の更迭要求には応じない考えを示した。

岸田首相としては会期末を控えて、4人目となる閣僚の辞任は何としても避けながら、この国会を乗り切りたい考えだ。

 旧統一教会救済新法 ギリギリの攻防

臨時国会で最後に残っている案件が、旧統一教会の被害者救済の新法の扱いだ。岸田首相が途中、積極姿勢に転じたことで与野党の協議が続けられ、政府が新たな条文案を提示する段階まで進んだ。

政府・与党と野党側双方とも、この国会で新たな法案を成立させたいという方向では一致しているものの、被害者の救済に実効性があるかどうかという点で、与野党の間には、なお、意見の隔たりがある。

具体的には、野党側が、マインドコントロールによる悪質な献金を禁止する、より強い条文を求めている。これに対し、政府・与党側は、マインドコントロール状態を法律で明確に定義するのは困難だとして、対立している。

政府は、既に国会に提出している消費者契約法案改正案と新法を近く閣議決定して、10日までの会期内に成立させたい方針だ。

この新法については、自民、公明両党と国民民主党は賛成なのに対し、立憲民主党と日本維新の会は「修正が必要だ」という立場だ。

このため、与野党が法案の修正で歩み寄り、成立にこぎ着けるのか。それとも、話し合いが決裂して見送りになるのか。さらには、野党内の対応が分かれて、与党と野党の一部の合意で成立するのか見通しは立っていない。

この法案の最終的な決まり方によって、岸田首相の対応の評価や、立民と維新の野党共闘が最後まで続くのか、崩れるのか、今後の政局に大きな影響を及ぼすことになる。

 防衛費GDP2%と財源 調整は難航か

年末の政治の動きの中で最大の焦点は、防衛費とその財源をめぐる政府・与党の調整になるのでないか。

岸田首相は28日、来年度から向こう5年間の防衛費と関連経費について、GDP・国内総生産の2%に達する予算措置を講じるよう浜田防衛相と鈴木財務相に指示した。

また、岸田首相は、防衛力強化に向けて、財源を確保する措置を年内に決める考えを示し、両閣僚に対し、与党との協議に入るよう求めた。

こうした政府の動きに対し、29日開かれた自民党の安全保障関連の合同会議で「増税を念頭に置いた議論は唐突だ」「税収の上振れ分を活用すべきだ」などといった批判的な意見が相次いだ。

また、萩生田政務調査会長は30日の講演で「将来的には、税で負担して安定財源を確保した方がいいが、当面は、国債や税収の上振れ分で対応すべきだ」として、現時点で増税の議論を行うことに慎重な姿勢を示した。

このように岸田首相は、先に政府の有識者会議の提言に沿って、増税を含めた国民負担が必要だという立場を取っているのに対し、萩生田政調会長は増税慎重論を唱え、双方の立場は大きな開きがある。

自民党の閣僚経験者に聞くと「自民党内の空気は、増税などとんでもない。つなぎ国債発行論が圧倒的に多いのが現状だ。歳入、歳出両面から安定財源をどのように確保していくかの正論がどこまで通用するかわからない」と調整の難航を予想する。

これから年末に向けて、国家安全保障戦略など防衛3文書の改訂をはじめ、防衛力整備の内容、そのための財源、必要な予算の確保などの調整をわずか1か月間で仕上げなければならない。

戦後防衛政策の大転換といわれる今回の防衛力整備をやり遂げることができるかどうか、岸田首相はまもなく胸突き八丁にさしかかる。(了)

※(追記12月1日21時45分:政府は1日、旧統一教会の被害者救済に向け、悪質な寄付を禁止する新たな法案を閣議決定し、国会に提出した。政府・与党は10日までの会期内の成立をめざしている。これに対し、野党側は、まだ不十分な点があるとして、与野党の調整が続く見通しだ。)

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「辞任ドミノ」岸田政権の師走危機

岸田首相は20日、政治資金をめぐる問題が次々に明らかになった寺田総務相を更迭し、後任に松本剛明・元外相を起用する方針を決めた。

岸田政権は、山際前経済再生相、葉梨前法相に続き、わずか1か月の間に3人の閣僚が辞任に追い込まれる「辞任ドミノ」が現実になった。岸田内閣の支持率は既に33%まで下落しており(NHK11月世論調査)、岸田政権の求心力の低下は避けられない。

閣僚の相次ぐ辞任のケースとしては、竹下政権当時、3人の閣僚が1か月半余りの間に次々と辞任に追い込まれたことが思い出される。いずれもリクルート事件絡みだった。

また、第1次安倍政権では、事務所費問題などで5人の閣僚が、五月雨式に辞任や死亡の動きが続いたほか、麻生政権では、3人の閣僚が不祥事などで辞任に追い込まれた。こうしたいずれのケースとも政権はその後、短期間で幕を閉じた。

相次ぐ閣僚の辞任は、首相への信任や政権の体力を失わせることが多い。岸田政権の場合は、どうだろうか。

結論を先に言えば、懸案や重要政策の決定が年末にかけて集中する形になっており、こうした年末の対応が大きく影響するのではないか。

自民党内で”岸田降ろし”の動きが直ちに出てくる可能性は低いが、岸田政権にとっては、”師走の危機乗り切り”が今後のカギを握っているという見方をしている。以下、その理由・根拠を説明していきたい。

 臨時国会 補正予算、新法の攻防続く

まず、岸田政権の政権運営では、当面、3つの大きなハードルが待ち構えている。1つは、今の臨時国会の乗り切り。2つ目が、安全保障関係の3文書の改訂と防衛費の増額問題。それに3つ目が、新年度予算案の編成と税制改正だ。

このうち、国会からみていくと政府・与党は、21日に国会に提出した第2次補正予算案の早期成立を最優先に臨む方針だ。

これに対し、立憲民主党など野党側は、岸田首相の任命責任を質すとともに、秋葉復興相の「政治とカネ」の問題に照準を合わせて追及する構えだ。

このため、閣僚辞任は寺田氏で幕引きというわけではなく、25日から始まる予定の衆院予算委員会でも激しい攻防が続く見通しだ。補正予算案の成立は12月にずれ込む見通しだ。

もう1つの焦点が、旧統一教会の被害者救済に向けた新法の扱いだ。内閣支持率の急落を受けて、岸田首相は、新法の今の国会への提出と成立に積極的な姿勢を示している。

但し、政府・与党と野党側の間では、信者の寄付の取り扱いなど法案の中身について、かなりの開きがあり、双方が歩み寄って成立にこぎ着けられるかどうか、メドは立っていない。

このため、12月10日までとなっている国会の会期を1週間程度延長することが検討されており、ギリギリの調整が続くものとみられる。国会の最終的な決着の仕方で、岸田政権の評価や影響も違ってくる。

 防衛力整備と財源、国民的議論が必要

2つ目のハードルは、防衛力整備の問題だ。ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイルの発射などで日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。

岸田政権は、防衛力を抜本的に強化する方針を打ち出し、年末の予算編成の中で、防衛力整備の中身と予算の規模、それに財源を三位一体で決定するとしている。

これを受けて、自民・公明の両党は防衛力整備の中身の検討を進めているほか、政府の有識者会議は、防衛費の増額には安定した財源が欠かせないとして「増税を含めた国民負担が必要だ」とする報告書を、22日に岸田首相に提出する見通しだ。

問題は、与党の幹部や政府の有識者レベルでの議論は進んでいるものの、国会の与野党や国民レベルで、防衛力整備のあり方をめぐる議論が深まっていないことだ。

このため、岸田政権が焦点の「反撃能力」保有の方針を決めたり、増税を含めた国民負担の必要性などを打ち出したりした場合、国民の理解や支持を十分に得られるのかどうか、防衛関係者の中には危惧する声も聞かれる。

岸田政権は、年末に向けて国民的議論をどのように進めていくのか、国民を説得できるのか。その成否は、岸田政権の評価と支持に直ちに跳ね返ってくる。

 新年度予算と政権のビジョンは

3つ目の問題が、新年度予算編成と税制改正だ。岸田首相は就任以来、「新しい資本主義」の旗印の下で「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」の3つを重点分野としてきたが、具体的に何をやり遂げたいのか、未だによくわからない。

岸田首相は、新年度の予算編成と税制改正の決定に合わせて、どのような経済・社会をめざしているのか、政権のビジョン、最重点政策をわかりやすく打ち出す必要があるのではないか。

特に内閣支持率が続落している中では、具体的な目標を明確にし、実行力を証明しないと政権の浮揚は難しい。

今回の閣僚の辞任ドミノに対しては、野党だけでなく、与党からも「岸田首相の決断が遅く、危機感も乏しい」と厳しい批判や不満の声を聞く。但し、今のところ、”岸田降ろし”の動きはみられない。菅政権の末期と違って、次の衆院選挙まで時間があるからだろう。

しかし、岸田政権がこれまでみてきた3つハードルを乗り越えることができない場合、世論の支持率はさらに下落し、”政権のレーム・ダック化”、低迷へと変わる可能性がある。”師走の政権危機”を回避できるか、岸田首相にとって正念場が続く。(了)

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岸田内閣支持率 ”危険水域接近中”

臨時国会は間もなく終盤戦に入り、ヤマ場を迎えるが、岸田内閣の支持率が続落している。報道各社の世論調査の中には、内閣支持率が自民党の支持率を下回って”危険水域”といわれる30%に近づきつつある調査結果もみられる。

岸田首相は、東南アジアで開かれている一連の外交日程をこなしている。これに先立って、財政支出の総額で39兆円にのぼる総合経済対策をとりまとめたが、支持率回復の効果は見られない。

支持率続落の原因については、相次ぐ閣僚の辞任と岸田首相の決断の遅れを指摘する声が多いが、根本は岸田政権の中枢や自民党の体制、構造に問題があるとの指摘も聞く。年末に向けて岸田政権の運営はどうなるか、探ってみる。

自民支持層に”岸田離れ現象”も

報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率を見てみると◇読売新聞は支持率36%、不支持率50%(4~6日調査)。◇朝日新聞は支持率37%、不支持率51%(12,13日調査)。◇NHKは支持率33%、不支持率46%(11~13日調査)。

いずれの調査とも岸田内閣の支持率は、去年10月の政権発足以降、最低の水準。支持率を不支持率が上回る”逆転状態”が続いている点でも共通している。

こうした支持率下落の背景としては「死刑のはんこを押す時だけニュースになる地味な役職」などと発言した葉梨法相をめぐって、岸田首相が続投させるとしてきた方針を一転、更迭したことが影響したとみられる。

NHK世論調査では、内閣支持率と政党支持率との関係に新たな特徴が読み取れる。自民党の支持率は37.1%で、7月の参議院選挙以降ほぼ横ばいだ。

これに対し、内閣支持率は33%で、11月の調査で初めて内閣支持率が、自民党の支持率を下回った。これは自民支持層のうち、一定の割合で岸田内閣を支持しない”支持離れ現象”が起きていることを示している。

今の支持率33%は、今後4ポイント以上さらに下落すれば、政権の”危険水域”とされる30%の危険水域ラインを下回ることになる。

岸田政権は物価高騰や円安に対応するため、財政支出の総額で39兆円にのぼる総合経済対策をまとめた。この対策を「評価する」は61%で、「評価しない」の32%を上回ったが、内閣支持率の下落に歯止めをかけるほどの効果はなかったことになる。

政権中枢、自民の体制・構造問題も

それでは、なぜ、岸田政権の支持率がここまで、大幅に下落しているのか。第1に考えられるのが、山際経済再生担当相と葉梨法相の相次ぐ更迭の影響だ。

それに加えて、いずれの閣僚の更迭も、任命権者である岸田首相の判断、決断が遅すぎるという批判が野党だけでなく、与党内からも聞かれた。岸田首相の資質、能力、対応のまずさを指摘する声が相次いだ。

自民党の長老に聞いてみると「第2次安倍政権との比較で言えば、政権中枢の機能、動きに力強さが感じられない。安倍政権当時の今井秘書官、菅官房長官らに相当する存在が見当たらず、真逆の政権だ」と指摘する。

「党の方も高木国会対策委員長と茂木幹事長との連携、全体を取りまとめていく力が感じられない。連立与党の公明党との関係もしっくりいっていないのではないか」と危ぶむ。

総理官邸内の結束力と自民党の統率力、それに双方が支え合う体制に問題ありというのが長老の真意だろう。これが2つ目の問題。

さらに、安倍元首相が銃撃され亡くなって以降、”政権与党の全体を取り仕切る主柱”がなくなったような印象を受ける。それまでは、安倍元首相と岸田首相の2人が一定の距離を置きながら、存在感を発揮し合いながら全体を統率してきた。

ところが、その一方の柱である安倍元首相がなくなり、党内の様相が一変した。その安倍氏が率いてきた最大派閥は、後継の新会長も決められず迷走状態に陥っている。

このように安倍1強体制が崩れ、新たな党内秩序が再構築できず、不安定な構造に陥っているのが根本要因ではないかと思われる。

このため、岸田首相の個人的な資質、求心力の弱さという問題もあるが、根本的には、政権与党の体制と構造に大きな問題を抱えており、政権の立て直しは相当なエネルギーと時間がかかるとみている。

 旧統一教会、防衛費まで政権綱渡り

さて、岸田政権の当面の政権運営と国会・政局の先行きをどうみるか。まず、臨時国会は会期の延長が避けられない情勢だ。

政府・与党は、補正予算案の早期成立を最優先で臨む方針だが、この国会は野党ペースで進んでおり、補正予算案の成立は当初の見通しからずれ込み、12月上旬までかかる公算だ。

また、野党側は、政治とカネの問題を抱える寺田総務相に照準を絞って追及を強める方針で、与党側は3人目の閣僚の辞任、辞任ドミノを警戒している。

さらに、大きな焦点は、旧統一教会の被害者救済の新法が成立までこぎ着けられるかどうかだ。世論調査では、今国会での成立を求める意見が7割と圧倒的多数を占めており、この成否は岸田内閣の支持率にも影響を及ぼす。

さらに臨時国会が閉会した後、年末最大の焦点は、防衛力の整備と防衛予算の扱い問題だ。ウクライナ情勢や北朝鮮の相次ぐミサイル発射、中国の習近平・長期1強体制の継続などで、防衛力整備に向けた世論の理解は進んでいるようにみえる。

但し、岸田政権の防衛論議の進め方には批判も多い。有識者会議を設置して議論を委ねる一方、国会答弁では「整備の中身、予算の規模、財源は三位一体で年末の予算編成時に決定する」と繰り返すばかりで、国民的な議論を深める取り組みはほとんど見られない。

これでは、国家防衛戦略3文書の改訂や、防衛力強化に向けて国民の理解が深まらないと危惧する声は根強い。

このほか、来年はアメリカの景気後退が予想される中で、日本経済の再生や円安などの経済運営にどのような方針で臨むのか、中長期の政策も問われる。

このように岸田政権は、臨時国会での旧統一教会の被害者救済新法から、新年度の税制と予算の編成、防衛力整備などの難題を処理できるのかどうか、綱渡りのような対応を迫られることになりそうだ。

そのうえで、世論の支持に思うような回復がみられない場合、岸田首相は政権や自民党の体制を現状のままで年明けの通常国会に臨むのか、それとも体制の見直しに踏み込むのか、決断を迫られることになるのではないか。(了)

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法相更迭 ”揺らぐ岸田政権”

岸田首相は11日、「死刑のはんこを押した時だけニュースになる地味な役職」などと発言し批判を浴びた葉梨法相を事実上の更迭に踏み切った。後任には、斎藤健・元農相の起用を決めた。

岸田内閣は、先月24日に旧統一教会の問題をめぐって山際経済再生相を更迭したばかりで、わずか2週間余りで2人目の閣僚の交代に追い込まれた。

岸田首相は東南アジアで開かれる国際会議に出発するため、11日午後に出発予定だったが、出発を大幅に遅らせて12日未明に出発した。岸田政権への打撃は大きく、政権基盤は大きく揺らいでいる。今後の政権運営はどうなるだろうか。

  葉梨法相更迭 ”首相の決断遅すぎ”

まず、葉梨法相の発言をどうみるかだが、法相は死刑の執行命令を発する権限を持っているのをはじめ、国の法制度や、人権問題などを担当する国の最高責任者だ。

その責任者が、死刑を執行した時だけ注目される地味な役職などと言及するのは、余りにも軽率すぎる。

また、葉梨法相の発言は自らが所属する派閥の議員のパーティで、口が滑った発言かと思っていたが、過去に少なくとも4回以上、同じ様な発言をしていたことも明らかになった。これでは、法相としての見識、責任を問われるのはやむを得ないのではないか。

一方、任命権者である岸田首相の対応についても与野党双方から「決断が遅すぎる」と批判の声が強い。松野官房長官は、問題発言のあった翌日・10日の朝、葉梨法相を首相官邸に呼び出し、厳重注意をした。

その当日、参議院法務委員会で野党側の厳しい追及を受け、葉梨法相は発言を撤回し、陳謝したが、与野党からの批判は収まらなかった。それでも岸田首相は10日夜「説明責任を果たしてもらいたい」として続投させる判断をした。

ところが、11日の衆議院法務委員会や参議院本会議などで野党側の追及が続き、岸田首相は一転して、更迭に踏み切る判断に変わり、葉梨法相の辞表を受け取った。

岸田首相が判断を一転させたのは、当初、葉梨法相の発言の撤回と説明で乗り切れると判断していたようだが、足元の与党内からも強い反発を受け、見通しが間違ったことから、方針転換を図ったものとみられる。

岸田首相は10月下旬、旧統一教会の問題で山際経済再生相を更迭する際にも対応が後手に回ったと批判されたが、その教訓は今回も生かせなかった。

 岸田政権に打撃、求心力低下も

さて、岸田政権への影響はどうだろうか。国会の最中に総合経済対策のとりまとめに当たっていた経済再生担当相が辞任したのに続いて、旧統一教会の被害者救済の新法とりまとめにも関係する法相が辞任に追い込まれただけに、政権への打撃は大きい。

野党側は、今月下旬から始まる総額29兆円の大型補正予算案や重要法案の審議をめぐって、攻勢を強める構えだ。また、政治資金の記載漏れが問題になっている寺田総務相や秋葉復興相をターゲットに”閣僚の辞任ドミノ”に追い込むことをねらっており、これを跳ね返せるかが焦点になる。

さらに、岸田政権の支持率下落が続いているが、相次ぐ閣僚の辞任で、岸田首相の求心力が一段と低下するのではないかと懸念の声が与党からも出されている。報道各社の世論調査で、内閣支持率がどのように変化するか注目される。

それでは、岸田政権の政権運営はどのようになるだろうか。今回の問題で、岸田首相の決断力の遅さを指摘する声が多いが、問題はもっと根深いところにあるのではないかとみている。

安倍元首相が銃撃され亡くなって以降、首相官邸と自民党との連携不足が目立つ。臨時国会の会期幅の決定が遅れたり、予算委員会の日程が決まらずに審議が空転するなど異例の事態が相次いでいる。

最近では、山際経済再生相が辞任した直後に、自民党のコロナ対策本部長に就任する人事が行われ、国民への配慮に欠けると反発を招いた。

自民党の長老は「今の岸田政権は、首相官邸内では総理、官房長官、副長官の縦の結合力が弱い。一方、自民党は幹事長、国対委員長、政調会長、それに公明党との足並みがバラバラで統率がとれていない。政権の土台から立て直さないと、岸田政権が求心力を取り戻すのは難しいだろう」と指摘する。

岸田首相は、12日からカンボジア、インドネシア、タイの各国を歴訪し、G20サミットなどの国際会議に出席し、首脳外交を展開する。帰国後の21日からは、補正予算案の審議が始まる見通しで、臨時国会を乗り切ることができるかどうか、正念場を迎える。(了)

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”政権浮揚も 険しい道” 大型経済対策

11月に入り、臨時国会は会期末まで残り1か月余りとなった。これまでの国会は、野党側が旧統一教会問題を中心に岸田政権を攻め立て、主導権を発揮する場面が目立った。

これに対し、政府・与党側は、先月末に決定した物価高騰対策を柱とする総合経済対策を受けて、裏付けとなる補正予算案を提出、会期内に成立させて、岸田政権の浮揚につなぎたい考えだ。

このため、後半国会では旧統一教会の問題とともに、新たに政府の大型経済対策も焦点になるが、世論の視線は厳しく、政権の浮揚につながるかどうか。岸田首相にとっては、険しい道が続くことになりそうだ。

 電気・ガス料金の負担軽減に6兆円

まず、政府が28日に閣議決定した総合経済対策の中身をみておきたい。財政支出の総額は39兆円に上り、対策の柱としては、家庭の電気やガス料金などの負担軽減策を盛り込んだのが一番の特徴だ。

今回の軽減策で標準的な世帯では、来年前半で4万5000円の支援になると試算されている。この総合経済対策を実施するため、政府は一般会計の総額で29兆1000億円の第2次補正予算案を編成、国会に提出する方針だ。

岸田首相は記者会見で「来年1月からの電気代の負担軽減策や、ガソリン価格の抑制策を来年以降も続けることなどに6兆円を充てる」と説明した。

そのうえで「今回の対策は『物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策』だ。国民の暮らし、雇用、事業を守るとともに、来年に向けて経済を強くしていく」と強調した。

野党 ”対策が遅く、生活支援が弱い”

これに対して、野党側は「政府の経済対策は遅すぎる」と批判するとともに「政府案では、ガス料金の負担軽減を挙げながら、全国で利用の半分を占めるLPガスが対象になっていない」と指摘する。

また、「政府案では6兆円もの巨額な予算を計上しているが、電気、ガス、ガソリンの支援額は、1世帯当たり月額5000円程度にすぎない。企業を通しての支援の仕方にも問題がある」として、5万円の現金給付や消費税率の引き下げなどに対策を切り替えるべきだと主張する。

さらに、野党側は「政府の対策は、物価高騰対策を強調しながら、中身は、公共事業や、予備費の大幅上積みなどあれもこれも詰め込み、肝心の家庭や中小企業への支援が弱い」と今後、政府の姿勢を追及する構えだ。

 世論 ”政府の対策に厳しい評価”

こうした中で、共同通信が10月29、30両日、全国緊急世論調査を実施した。それによると政府の総合経済対策について「期待できる」が27%に対し、「期待できない」が71%に上った。

一方、岸田内閣の支持率は37.6%、前回8、9日両日の調査に比べて、2.6ポイント増えた。不支持率は3.5ポイント減の44.8%だった。支持率は微増に止まり、支持を不支持が上回る逆転状態が続いている。

政府・与党は、総合経済対策に7割の人が「期待できない」という厳しい評価をしていることを重く受け止める必要がある。

こうした理由・背景に何があるのか。1つは、電気、ガス料金の軽減対策は、必要だと一定の評価をしながらも、食料品などの値上げが続いており、政府の物価対策としては不十分と受け止めているのではないか。

また、政府・与党で対策を決める際、財務省の当初案は25兆円規模だったのが、自民党側の要求で一夜で4兆円も積み増しされた。「経済対策の中身より、規模ありき」の姿勢に対する批判もうかがえる。

一方、財政への影響はどうか。補正予算案の規模といえば、数兆円が相場だったが、コロナ対策を機に跳ね上がり、今回も29兆円にも上る。この財源の大半は、赤字国債、借金だ。国の借金は1255兆円、借金財政がいつでも続くはずがない。

さらに、問題の核心は、岸田政権の経済・財政運営にある。つまり、急激な円安に対して、黒田日銀総裁は、金融の大幅緩和策を継続する方針を表明した。

一方、岸田首相は、物価高騰の抑制に全力を挙げる構えで、双方の対策が逆方向に見える。岸田首相は、今後のかじ取りをどのように進めるのか、経済・財政運営の方針をはっきり打ち出してもらいたい。

また、この国会では、旧統一教会の問題、年末に控えている安全保障の3文書の改訂と防衛費の扱いについても、国民の疑問・関心に応えられるようしっかり議論を行うよう強く注文しておきたい。(了)

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”幕引き遠い辞任劇”岸田政権

旧統一教会との関係が相次いで明らかになっていた山際経済再生担当相が24日夜、辞任した。岸田首相は後任に後藤茂之・前厚労相を起用する方針を決め、25日夜、認証式を経て正式に就任した。

岸田政権が去年10月に発足して以降、閣僚が不祥事で辞任するのは今回が初めてだ。しかも、総合経済対策の取りまとめやコロナ対策、政権の看板政策である「新しい資本主義」を担当する重要閣僚が辞任するのも初めてで、岸田政権への打撃は大きい。

岸田首相は今月中に総合経済対策をとりまとめ、政権の立て直しを図りたい考えだが、事態収束へのメドは立っていない。岸田政権や政治の対応のあり方を考えてみたい。

 閣僚の更迭、判断遅く、ねらいも不明

まず、今回の辞任劇をどうみるか。山際担当相と旧統一教会との問題は、8月の内閣改造の時から、繰り返し記者会見や国会で取り上げられてきた。これまで2か月半、曖昧な釈明が延々と続いた末の辞任で、遅きに失した辞任と言われてもやむを得ないだろう。

また、任命権者である岸田首相の判断や決断も遅すぎた。内閣改造時の続投の判断が正しかったのか、その後、新たな事実が明るみになったことを考えると、秋の臨時国会前に決断すべきだったのではないかと考える。

さらに、閣僚更迭のカードを切る場合は、事態を鎮静化させたり、区切りをつけるためのシナリオや戦略を描いたうえで決断することが多い。

ところが、今回は、政権内でそうした調整や、野党側との折衝などの動きもみられなかった。戦略的なねらいがはっきりしないまま、切羽詰まった対応で、岸田政権の運営は不安定化しているようにみえる。

 野党 首相の責任追及、辞任ドミノも

これに対して、野党の対応はどうか。25日の衆議院本会議で、岸田首相は辞任の経緯を報告し、「国会開会中に大臣が辞任する事態になり、深くおわびを申し上げる」と陳謝した。

これに対し、立憲民主党など野党側は、岸田首相の任命責任を追及するとともに、旧統一教会と自民党との関係を明らかにするよう迫った。

具体的には、旧統一教会の友好団体が国政選挙で、自民党の国会議員に「推薦確認書」に署名を求めていたとして、党として調査を行うよう求めていく方針だ。

また、細田衆議院議長が旧統一教会側と接点がありながら、説明用の短い文書を出すだけで記者会見などを行わない問題や、「政治とカネ」の問題で寺田総務相や秋葉復興相の責任を追及する構えだ。

この国会は野党側の攻勢が目立ち、与党側には今後”閣僚の辞任ドミノ”につながるのではないかと懸念する声も聞かれる。

このように今回の山際担当相の辞任で、旧統一教会の問題が幕引きとなる状況にはなく、国会後半も引き続き、この問題が焦点の1つになる見通しだ。

 岸田首相 厳しい評価に対応できるか

それでは、岸田首相や与党側はどんな対応が求められているのか。まず、旧統一教会の問題について、国民世論の多くが、岸田首相や自民党の説明は不十分だという受け止め方をしている。

岸田首相らは、国会議員個人が点検し、説明すると繰り返すが、報道各社の世論調査では、岸田首相の対応を「評価しない」という受け止め方が7割以上に達している点を重く受け止める必要がある。

岸田首相や自民党執行部は、第2次補正予算案の提出は11月下旬になる見通しなので、それまでの間は、可能な限り国会での論戦に応じて、旧統一教会問題への対応方針や取り組みを説明し、国民の不信感を取り除く必要があるのではないか。

そうした取り組みを重ねたうえで、物価高騰対策や総合経済対策の説明をしなければ、国民の理解と支持は広がらない。急落している岸田内閣の支持率にも歯止めがかからない事態も予想される。

この臨時国会には、国民の投票権に関係する「10増10減の区割り法案」や感染症法の改正案などの重要法案が提出されており、国民の側としては、議論を尽くして成立させてもらいたい。

一方、政府は年末に、外交安全保障の3文書の改訂や防衛費を増やす問題にも結論を出す。その前に、国会でも与野党が十分に議論を交わしてもらいたい。

このように多くの課題・難題を抱えているだけに、旧統一教会と政治の関係については、早期にメドをつけたうえで、重要な政治課題の議論に入ってもらいたい。

隣国の中国では、習近平国家主席を中心とする長期1強体制が発足するなど国際情勢は大きく変わりつつある。内外情勢の激しい動きに対応していくためにも、与野党が真正面から議論する態勢を早く整えてもらいたい。(了)

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“攻守逆転” 与野党の国会攻防

臨時国会は、前半戦の山場となる予算委員会の基本的質疑が、岸田首相とすべての閣僚が出席して、17日から20日まで4日連続で衆参両院で行われた。

焦点の旧統一教会問題をめぐっては、野党側の攻勢が目立ち、岸田首相は答弁内容を一晩で修正に追い込まれるなど守りの場面が目立った。

旧統一教会をめぐる論点や与野党の構図がわかりにくいといった声も聞くので、岸田政権の対応や思惑などを含めて、臨時国会の攻防の背景を探ってみたい。

 首相答弁異例の修正、与野党協議会も

この臨時国会は、異例の出来事や対応が相次ぎ、驚くことが多い。まず、衆議院予算委員会初日の17日、岸田首相は冒頭、旧統一教会問題について、宗教法人法に基づく「質問権」を行使し、調査を実施するよう永岡文科相に指示したことを明らかにした。

質問権の行使は初めてのケースになり、政権内でも「信教の自由」の関係で慎重論が強かったが、岸田首相は野党の機先を制する形で、新たな動きをみせた。内閣支持率の下落が続く中で、首相の指導力をアピールする狙いがあったものとみられる。

続く18日、岸田首相は旧統一教会の被害者救済に向けて、消費者契約法の改正案などを今の国会に提出できるよう準備を進めると踏み込んだ。

一方、野党側から、宗教法人に対する解散命令の要件を緩めるよう強く迫られたが、この点は、従来の方針を譲らなかった。

ところが、翌19日午前の委員会冒頭で、岸田首相は、宗教法人に対する解散命令を請求する要件について「民法の不法行為も入りうる」との考えを打ち出した。

前日は「民法の不法行為は、要件には含まれない」と譲らなかったが、一晩で一転、従来の答弁を修正した。これには、野党の質問者も「解釈を良い方向に変えるのはいいことだが、朝令暮改にもほどがある」と唖然としていた。

この問題に詳しい専門家は「従来の政府の見解は、要件を狭く解釈しすぎていたので、これを修正することはありうる。但し、政府の対応ぶりは前夜、関係省庁の担当者や首相側近が集まって決定するなど場当たり過ぎではないか」と指摘する。

一方、旧統一教会の被害者を救済するため、自民党、立憲民主党、日本維新の会は19日、公明党も含めた4党で、与野党協議会を設置することで合意した。

被害者救済の法整備は、野党第1党の立憲民主党と第2党の維新が連携して水面下で、自民党に働きかけてきた。こうした野党共闘が、実質的に国会運営をリードし、久しぶりに一定の成果を生み出す形になった。

第2次安倍政権以降、国会運営面で自民党が圧倒的な強みを発揮し続けてきたが、この国会では攻守ところを変えて、野党が攻勢に転じているのが大きな特徴だ。

 乏しい即応力、政権与党の機能低下も

それでは、こうした与野党の攻守逆転は、なぜ起きたのか。1つは、岸田内閣の支持率が急落し、政権発足以来最低の水準にまで落ち込んでいることがある。

岸田首相としては、旧統一教会問題で野党側の追及に対して、後ろ向きの姿勢を示すと、さらに世論の支持離れに拍車がかかる恐れがあり、局面打開のために従来の方針を転換した事情がある。

自民党の長老に聞くと「岸田政権の問題は、対応が遅すぎることと、即応力が乏しい点ではないか」と指摘する。コロナ感染第7波が急拡大した際にもメッセージが出されない。旧統一教会の実態調査、物価高騰対策の打ち出しの遅さなどを挙げる。

さらに、この国会では、山場の予算委員会の設定自体が大幅に遅れた。岸田首相の所信表明演説と各党代表質問が終われば、通常は直ちに予算委員会が始まる。

ところが、国会は1週間以上、異例の”開店休業状態”が続いた。鈴木財務相の国際会議出席の日程が自民党側と共有できていなかったためだ。

こうした問題の背景には、首相官邸と自民党幹事長室、それに国会対策の政府・与党の連携が十分できていないことが浮き彫りになったと言える。

さらには、自民党の石井・参議院議運委員長らが17日夜、岸田首相との会食の後、記者団に対し「衆議院予算委員会が午後5時1分に終わるなど野党側に緊張感がない。それで『瀬戸際大臣』の首を取れるのか」などと発言したことが明らかになり、野党理事が予算委員会の席で抗議する一幕もあった。

政権の命運にも影響する予算委員会の初日の夜、首相と与党幹部が食事をともにしながら懇談すること自体、ありえないことで、一昔前なら”切腹モノ”だ。政権中枢と与党に危機感が乏しく、統治機能の低下が進行しているのではないか。

 国会後半 経済対策と旧統一教会問題

最後に国会後半はどう展開するだろうか。岸田首相は、物価高騰対策などを盛り込んだ総合経済対策を月内にとりまとめ、11月に補正予算案を提出、政権運営の主導権を取り戻す方針とみられる。

問題は、大幅な値上がりが続いている電気料金やガス料金の価格引き下げ幅と仕組みがどうなるのか、対策の中身で評価が大きく分かれる。

もう1つは、この国会の焦点である旧統一教会問題にケジメをつけられるかどうかだ。

この点に関連して、旧統一教会の関連団体が、国政選挙の際に自民党の国会議員と、憲法改正や家庭教育支援法の制定に取り組むよう記した「推薦確認書」を取り交わしていたことが明らかになった。朝日新聞のスクープだ。

この確認書の問題は、自民党が先に所属国会議員に対して行った点検調査には、含まれていなかったとされる。世論の信頼を回復するためには、事実関係の実態調査が引き続き求められることになるのではないか。

また、被害者救済の法案がこの国会で成立するかどうか。政府は、消費者契約法の改正案の提出を検討しているほか、自民、立民、維新の3党は今国会で必要な法案の成立をめざすとしている。

政府・与党と野党側が、法案の扱いで最終的に合意できるのか、まだはっきりしない。岸田首相がこうした一連の問題で、リーダーシップを発揮できるかどうか。

野党側も、立民と維新の足並みが最後までそろうのか。政権与党、野党がともにどのように対応するのか、会期末まで目が離せない状態が続くことになる。(了)

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袋小路の岸田政権 出口はあるか?

岸田政権は10月4日に発足から1年を迎えたが、報道各社の世論調査によると支持率が続落、いずれの調査でも支持と不支持が逆転している。

国会運営でも政府・自民党の連携不足から不手際が目立ち、政権運営は”袋小路”に迷い込んでいるようにみえる。

17日からは衆議院予算委員会に舞台を移し、一問一答方式の本格的な質疑が始まる見通しだ。与党関係者からは「旧統一教会問題で、野党の攻勢に防戦一方になるのではないか」と懸念の声も聞かれる。果たして、出口を見いだせるのか探ってみる。

 旧統一教会問題、実行力に厳しい目

まず、11日に報道されたNHK世論調査の結果が、今の岸田政権を取り巻く状況を的確に表していると思うので、そのデータから見ておきたい(NHK世論調査10月8~10日実施)。

◆岸田内閣の支持率は38%で、3か月連続で下落が続いており、4割を割り込んで政権発足以来、最も低くなった。不支持率は43%で、支持と不支持が初めて逆転した。

◆9月27日に実施された安倍元首相の国葬について、政府が実施したことを「評価する」は33%に止まり、「評価しない」が54%で上回った。国葬が終わったあとも評価は上がらなかった。

◆旧統一教会問題の岸田首相の対応については、「評価する」が18%に対し、「評価しない」が73%に達した。山際経済再生相の説明には「納得していない」が77%と圧倒的多数を占めた。

◆政府の物価高騰対策については、「評価する」が45%、「評価しない」が47%で、評価が分かれた。

◆発足から1年がたった岸田内閣の実績については、「評価する」が38%に対し、「評価しない」が56%で上回った。

岸田内閣は発足以来、高い支持率を維持してきたが、7月の支持率59%をピークに急落した。その主な要因は、岸田首相が決断した安倍元首相の国葬と、旧統一教会問題への対応にあることが、先のデータからも読み取れる。

また、岸田内閣を支持しない理由をみてみると、これまで「政策に期待が持てないから」が3割台でトップだったが、10月からは「実行力がないから」が39%に達し最多になった。9月に比べて、10ポイントも増えた。

7月は20%、1年前は12%だったので、「岸田首相の実行力」に疑問や不満を抱いている人たちが急増していることも読み取ることができる。

 与党の国会運営、目立つ混乱と防戦

次に国会運営面で、政府と自民党との連携が不足し、信じられないような不手際が相次いでいるのも最近の特徴だ。

臨時国会は3日に召集され、岸田首相の所信表明演説と、これに対する各党の代表質問が3日間行われた。

続いて、衆参の予算委員会に舞台を移して、一問一答方式の本格的な論戦が始まるところだが、鈴木財務相の国際会議出席が政府・自民党間で共有されていなかったため、予算委員会の日程が設定できなくなった。

衆議院の予算委員会は17日からになる見通しで、この間は一部の委員会を除いて、国会は”開店休業状態”が続く異例の事態になっている。

国会日程を巡っては、これより先、野党側に召集日を伝達した際にも、会期幅が決まっておらず、野党側の反発を受けて、あわてて政府・与党の幹部が協議して決定するといった事態も起きた。政権与党の統率力に疑問符がつく事態だ。

 旧統一教会、政権与党の体制もカギ

さて、これからの注目点だが、まずは、17日から始まる予定の予算委員会の質疑のゆくえだ。

野党側は、旧統一教会の問題を巡って、新たな事実が次々に明らかになっている山際経済再生担当相と、説明文書を出すだけで記者会見などに応じない細田衆議院議長について、岸田首相の対応や政治姿勢を厳しく追及する構えだ。

これに対して、岸田首相は、旧統一教会の問題は、政治家個人が自ら点検、説明することが基本だとかわす一方、物価高騰対策が当面の最重要課題だとして、電気料金の抑制に巨額な支援金を出すなど大型の経済対策を打ち出して、反転攻勢をめざすものとみられる。

こうした与野党の論戦と政府の経済対策を、世論がどのように評価するか、国会後半の展開にも影響する。

もう一つは、岸田首相の政権運営だ。夏の参院選挙に大勝したあと、いち早く自ら決断した安倍元首相の国葬方針が、世論の批判を浴びた。また、時期を早めた内閣改造も新たに任命した閣僚などに旧統一教会との接点が明らかになるといった誤算が続いている。

政界の関係者の間では、岸田政権の中枢に問題があるのではないかといった見方や、官邸と自民党幹事長室、国会対策委員長との連携不足や足並みの乱れを正す必要があるとの指摘も聞く。

さらには、安倍1強体制が崩れ、今の政権与党にはそれに代わる新たな柱・体制が整っていない点に問題の核心があるといった意見も聞かれる。

このようにみてくると、まずは、世論が大きな関心を寄せ、政権の基本姿勢にかかわる旧統一教会問題について、岸田政権がけじめをつけることができるかどうか。その上で、政策課題、難題の解決に向けた具体策と道筋を打ち出すことがカギを握っているのではないか。

また、政権運営をめぐる問題は、政権与党内の権力構造に関わる根の深い問題なので、岸田政権が、袋小路から脱出する出口を見いだすのは容易ではないのではないかとの見方をしている。臨時国会は、前半の山場を迎える。(了)

★追記(15日14時45分)国会日程については、岸田首相と全ての閣僚が出席する予算委員会が、衆議院で17日と18日、参議院で19日と20日にそれぞれ開かれることが14日までに決まった。

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“三権の長”の説明責任、旧統一教会問題

旧統一教会との関係をめぐり、細田衆議院議長は再調査の結果、新たに4つの会合に出席し、挨拶していたことを明らかにした。

細田議長と旧統一教会との関係をめぐっては、事実関係の問題とは別に、議長が自ら記者会見や国会での説明に応じていないことが問題になっている。

衆議院議長は、参議院議長などとともに”三権の長”に位置づけられているが、どのような対応が求められているのか、考えてみたい。

 説明は文書配布、記者会見はなし

これまでの経緯を手短に整理しておくと、かねてから旧統一教会との関係が指摘されてきた細田衆議院議長は9月29日に、ようやく「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との接点を認めるコメントを発表した。

内容は、2018年と19年の関連団体の会合に4回出席したことを認めたもので、A4版の文書1枚が配布されただけだった。野党側は、内容が具体性を欠いており、不十分と強く反発したため、議院運営委員会の山口委員長が、さらに詳しい説明を行うよう要請していた。

これを受けて、細田議長は7日、衆議院議長公邸で山口委員長と自民、立憲民主両党の筆頭理事2人と10分程度面会し、過去10年間さかのぼって調査した結果をまとめたA4版2枚の文書を示し、説明したという。

それによると前回調査の4回とは別に、新たに4つの会合に出席し、挨拶していたことがわかったとしている。また、教会側の関連する会合に祝電を送っていたケースが3件あったことが、新たに判明したとしている。

このほか、教会側に選挙支援を依頼したり、組織的な動員を受けたりしたことはないことなどを記している。

旧統一教会との関係については、後ほど触れるとして、異様に感じられるのが細田議長の対応だ。

最初の説明は、文書の配布だけだ。2回目は、山口議院運営委員長ら3人に文書を示して説明し、その結果を山口委員長が記者団に説明するという回りくどい方法をとっている。

昭和を通り越して、明治時代を連想させるような方法だが、なぜ、こうした方法になるのだろうか。また、こうした対応をどう評価したらいいのだろうか。

 議長の権限は絶大、説明責任も重い

議長の仕事といえば、国会の本会議が開かれた際、中央の議長席で議事運営を指揮することが多い。このほか、天皇陛下がご臨席になる開会式への出席や、さまざまな公式行事に参加することも多い。

国会での議長の職務権限については、国会法19条で「各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する」と規定されている。

これを整理すると議長の権限は、①秩序維持権、②議事整理権、③事務監督権、④代表権ということになり、幅広く絶大といえる。

例えば、国会で与野党が激突した場合、国会職員の衛視だけでなく、警察官の派遣を要請して院内秩序を維持したこともあった。

本会議中の規律保持も議長が行うので、議員が議場の秩序を乱したり、議院の品位を汚す行為をしたりした場合は、制止や発言取りができる。議長の許可がなければ、議員は演壇に登ってはならないという衆議院規則もある。

話がわき道にそれるが、先に立憲民主党の泉代表が本会議で、細田議長に向かって発言した行為をめぐって、自民党は礼を失するとして抗議した。

泉代表の行為はパフォーマンスに見えたが、細田議長も無礼千万と発言を制止したり、降壇を命じることもできたはずだが、躊躇せざるを得ない心理状況にあったのかもしれない。

話を元に戻すと、衆院議長はこのように絶大な権限を持っている。このことは、逆に個人的な問題などが起きた場合は、国権の最高機関の長として、説明責任を果たす重い責務を負っている。

このようにみてくると細田議長としては、記者会見を行うこと。あるいは、議院運営委員会に出席して自ら説明し、与野党の質疑に応じることも考えられる。議長の発言には制約があるとの説も聞くが、国会法20条には「議長は、委員会に出席し発言できる」と規定されている。

一昔前の話になるが、自民党には「政界の三賢人」と呼ばれた人たちがいた。椎名悦三郎、前尾繁三郎、灘尾弘吉の各氏で、前尾、灘尾の両氏は衆院議長を務めた。公正、公平、清廉潔白などの評価が伝えられている。

細田議長もこうした先人たちにならって、国会の権威や信頼感を維持していくためにも具体的な行動を取ってはどうか。

 事実の解明、議長・国会の重い責任

最後に細田議長の文書を読んでもわからないことが幾つもある。まず、2019年名古屋市で開かれた関連団体の大規模イベントに出席して挨拶し「今日の会の内容を安倍総理にさっそく報告したい」などとのべていたとされる。当時、細田氏や安倍首相は教会側とどのような関係にあったのか。

また、細田氏は、2014年から21年まで自民党最大派閥の会長を務めていたが、この派閥は、旧統一教会とのつながりが深く、参議院比例代表選挙で支援を受けていたとの証言もある。実態はどうだったのか、明らかにするよう求める意見は多い。

安倍元首相の銃撃事件は、戦後初めて首相経験者が殺害された大きな事件だ。捜査当局が容疑者の刑事責任を問うこととは別に、政府や国会もそれぞれの立場から事件の真相や背景を徹底して究明するのは当然のことと思われる。

ところが、日本の政治は国葬の決定は早いが、真相究明への動きは極めて鈍い。欧米では、司法の捜査とは別に、政府の調査委員会を設置したりするのとは大きな違いがある。

細田議長は、自らの問題の説明責任を果たす必要がある。加えて、国会としても事実関係や背景を粘り強く調べていく取り組みはできないものか。

岸田首相も、旧統一教会との関係が次々に明らかになっている山際経済再生担当相の扱いを含め、国民の政治不信にどう応えるかが問われている。

臨時国会は、17日から衆参両院の予算委員会に舞台を移して、一問一答方式の詰めた質疑が始まる。旧統一教会の問題をどのような形で決着をつけるのか、細田衆院議長と山際担当相の問題が焦点になりそうだ。(了)

 

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