菅政権 ”支持率続落の危機”

コロナ禍の東京オリンピックが8日夜、17日間の幕を閉じ、政界はお盆明けから秋の政局に向けた動きが本格的に始まる。

最大の焦点は衆院解散・総選挙がいつ、どのような形でおこなわれるかだが、ここにきて、菅内閣の支持率が急落している。報道各社の世論調査の中では、菅内閣の支持率が3割を切るところも出てきた。

また、不支持が支持を上回る”逆転状態”も4か月連続で、深刻なのは政権の浮揚材料が見当たらないことだ。

今月末には、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期限を迎える。新型コロナウイルスの新規感染者数は、全国で連日1万人を上回る状態が続いている。

感染爆発の勢いを止めることができなければ、菅政権に対する世論の風当たりは一段と激しさを増し、秋の政局にも大きな影響を及ぼすことになる。こうした菅政権の支持率続落危機の背景や政権への影響を探ってみる。

 菅内閣発足以降最低 3割の壁崩れる

さっそく、報道各社の世論調査のデータから見ていきたい。朝日新聞が7、8の両日、読売新聞とNHKがそれぞれ7日から9日の日程で実施し、その結果がまとまった。

まず、菅内閣の支持率は、朝日が支持28%-不支持53%、読売が支持35%-不支持54%、NHKが支持29%-不支持52%となっている。

各社の数値に多少の幅はあるが、支持率はいずれも去年9月以降最低の水準を更新、不支持は5割以上という点で共通している。世論の潮流がはっきりしてきた。

中でも衝撃的なのは、朝日新聞とNHKの内閣支持率が30%を下回ったことだ。NHKの世論調査では、第2次安倍政権が発足した2012年以降、最も低かったのは、安倍前首相が退陣を表明した去年8月の34%だった。

第2次安倍政権時代は、森友学園や加計学園問題をめぐって国会が紛糾した際も支持率3割を割り込むことはなく、復元力も強かった。

これに対して、菅政権ではこの3割の壁が崩れたことになる。衆院議員の任期満了が2か月後に迫り、支持率続落に歯止めがかかるのかどうか、反転攻勢の材料は見当たらない。

 政府のコロナ対応 不信感と嫌悪感

それでは、支持率急落の原因は何か。菅内閣の支持率については、これまで何度か指摘したように「新型コロナウイルスを巡る政府の対応」と連動している。

NHKの調査では「評価する」が35%に対し、「評価しない」が51%で、依然として、国民の厳しい評価は変わっていない。

これに加えて、政府の不手際が相次いだ。飲食店の種類提供を停止させるため、酒の販売事業者や金融機関へ働きかけを要請をした後、批判を浴びて撤回に追い込まれた。

自宅療養者に対する医療提供方針をめぐっても対応が混乱した。こうした混乱について、説明もきちんとなされないので、政府の対策や対応には付き合いきれないという不信感や嫌悪感が広がっていること影響しているものとみられる。

一方、政権与党内には、五輪開催による政権浮揚効果を期待する意見があったが、この点はどうか。読売の調査でみると東京五輪が開催されてよかったと「思う」が64%に対し、「思わない」は28%だった。

菅首相が掲げた「安全安心な大会」になったかについては、「思う」は38%に対し、「思わない」が55%だった。

東京五輪について、世論の多くは、コロナ禍の試練に耐えて技や能力を磨いてきた選手の躍動に共鳴し、「開催してよかった」と感じているのだと思われる。

それに引き換え、政府や自治体トップには覚悟や国民に訴える内容も持ち合わせておらず、「五輪は五輪、政治とは別の次元」と割り切っているようにみえる。

このように五輪の評価は高いが、菅内閣の支持率には結びついておらず、政権浮揚効果は全く見られないことがはっきりした。

  政党支持率 ”自民低下現象”

今回の報道各社のデータの中で、特に注目したのは読売の調査で、政党支持率と投票予定政党に変化が現れている点だ。結論を先に言えば、内閣支持率の低下が、自民党の支持率の低下という形で現れ始めたとみられる点だ。

自民党の支持率は7月の39%から36%へ低下しているほか、無党派層の投票先でも自民党17%に対し、立憲民主党は13%で4ポイント差まで詰め寄られている。無党派層は今や自民党を抜いて”第1党”で、無党派層の獲得率が選挙結果を大きく左右する。

自民党長老に聞くと「菅首相と自民党は丁寧な政権運営を心掛けないと、国民の信頼を失い、選挙で大敗する恐れがある。コロナ対策、政治とカネ、オリンピック・パラリンピック対応、総理の説明不足などで、国民との距離がどんどん広がりつつある」と選挙への深刻な影響を懸念する。

 感染抑え込み 宣言解除できるか

さて、これから政治の展開はどうなるか。東京オリンピックに続いて、今月24日からパラリンピックが予定されており、この大会をどのような形で開催するか、組織委員会や東京都、政府などの間で調整する。今のところ、オリンピックと同様、無観客で開催するとの見方が強い。

次に最も大きな問題は、今月31日に期限を迎える緊急事態宣言と、まん延防止等重点措置の扱いだ。緊急事態宣言は東京、大阪など6都府県、重点措置は13道府県にまで拡大している。

東京に今の4度目の緊急事態宣言が出された7月12日、東京の新規感染者数は502人、全国でも1504人だった。ところが、その後急増し、今月5日東京では5000人を突破、全国では7日に1万5700人を上回った。専門家は「ピークが見えない」語るとともに重症者や、入院に伴う病床のひっ迫を警戒している。

これに対し、菅首相はワクチン接種に期待をかける。但し、2回目接種の割合は10日時点で、高齢者は81%と高いが、64歳以下はわずか8%に止まる。ワクチンの供給不足で急ブレーキがかかっていたが、ようやく段階的に再開され始めた。

変異株への置き換わりが急速に進んでおり、仮に8月末に感染収束のメドがつかなければ、菅政権の対応や政治責任を問う声が強まることが予想される。8月末までに感染抑え込みができるのか、大きな節目になる。

 問題の核心 衆院選の顔と選び方

自民党の総裁選については、今月26日に総裁選の選挙管理委員会が開かれ、日程が決まる見通しだ。党の執行部や派閥の実力者は、今のところ菅首相の下で衆院選を戦い抜く考えで、衆院選や総裁選の日程を調整する方針だ。

これに対して、中堅・若手議員を中心に「菅首相で選挙に勝てるのか」との不安感が広がりつつあり、総選挙の前に自民党総裁選を行い、国民の関心を自民党に引きつけた後、衆院選に臨むべきだとの声も聞く。

また、執行部は総裁選は、無投票で菅首相を選出したいとの考えが強いが、高市早苗・元総務相が月刊誌で立候補の考えを表明した。任期満了に伴う総裁選は、議員投票とともに党員投票を行って新総裁を選出すべきだという声も若手議員の間では強い。

今後、自民党内からさまざまな動きが出てくることが予想されるが、問題の核心は、次の衆院選の顔を誰にするのか。現職の菅首相に1本化するのか、菅首相を含め候補者が立候補して決めるのか、その方法を早く決める必要がある。

執行部が強引に政治日程を決めると、党員や有権者の反発を招き、本番の衆院選でしっぺ返しを受ける。菅政権の足元が揺らぎ始めた中で、感染抑え込みはできるのか、それに与野党、世論が絡み、変動の激しい秋になりそうだ。

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“感染8月危機”と菅首相の政治責任

新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて、政府は2日、緊急事態宣言の対象地域に首都圏の埼玉、千葉、神奈川と大阪府を追加し、6都府県に拡大した。

また、まん延防止等重点措置が北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県に適用された。期限はいずれも8月31日までとなっている。

東京オリンピック開催中の感染急拡大で、専門家は感染者数の急増だけでなく、医療のひっ迫も懸念されるとして、「この1年半で最も厳しい状況にある」と8月感染危機に警鐘を鳴らしている。

菅首相にとっても、この感染危機を抑え込めないと秋の衆院解散・総選挙を控えて自らの力量や政治責任を問われることになる。この8月感染危機を本当に抑え込むことができるのか、何が問われているのか探ってみたい。

 緊急宣言の拡大・延長の効果は

政府が緊急事態宣言の対象地域拡大の方針を決めたのは7月30日だが、この週の初めまでは宣言拡大には慎重な姿勢だった。ところが、28日に感染者数が3000人台に跳ね上がってから、慌てて舵を切ったのが実状だ。さらに翌31日は4058人と初めて4000人も突破した。

東京に4度目の緊急事態宣言が出されたのが7月12日で、この日の感染者数は502人だった。わずか3週間余りで、感染者数が急増したことになる。

政府分科会の尾身茂会長は「現状では感染を減少させる要素がほとんどない。逆に増やす要素はたくさんある。一般市民の『コロナ慣れ』、感染力が強いデルタ株、夏休みにお盆、さらにオリンピックだ」と指摘する。

そのうえで、「最大の危機は、社会で危機感が共有されていないことだ。このままでは医療のひっ迫が深刻になる」と危機感を示すとともに、政府に強いメッセージを出すように求めていた。

これに対して、菅首相は30日夜の記者会見では「今回の宣言が最後となるような覚悟で、政府をあげて全力で対策を講じていく」と強調する一方、ワクチン接種の効果や画期的な治療薬の積極的活用に詳しく触れて楽観的とも受け取れる発言が目立った。

また、開催中の東京オリンピックとの関係についても「感染拡大の原因になっていない」と強調し、国民に向けた強いメッセージはなかった。尾身会長の危機感との違いが際立った。

 感染危機乗り切りへ何をすべきか

それでは、当面の感染危機を乗り切るためには、どんな取り組みが必要だろうか。菅政権が去年9月に発足して以降、政府のコロナ対策としては、一貫して飲食店の営業時間短縮や休業要請が中心で、酒類の提供停止に力を入れてきた。

飲食店対策も重要だが、与党関係者の間では「サラリーマンが多く活用する居酒屋などの飲食店対策は、いわば”川下の対策”。それよりテレワークをより徹底して通勤者を減らす”川上対策”を行うべきだ。企業や経営団体などにもっと強力に働きかける方が効果がある」といった提案を聞いた。

医療分野では、感染急拡大に伴い自宅で療養している人たちの対策が、再び大きな問題になっている。東京都の場合、7月1日時点ではおよそ1000人だったのが、日を追うごとに増え、8月1日には1万1000人にも達しているという。わずか1か月の間に11倍も増えたことになる。

こうした自宅療養者は無症状や軽症者が多いと言われ、保健所などの健康管理がうまくいかないと地域で感染を広げることになりかねない。ホテルなどでの宿泊療養体制の整備が必要ではないか。

政府関係者からは「新たな対策を打ち出したいが、もう打つ手がない」との声を聞くが、本当だろうか。例えば、変異ウイルスのデルタ株を追跡する検査は十分行われてきたのか。大量の抗原検査キットを配布するなどの対策を聞かされてきたが、最近まで行われていなかったと聞く。

政府や東京都の対応については、これからの実施計画などの説明は詳しいが、実施後の経過や、どのような成果があったのか、逆に問題が生じて目詰まりの段階にあるのか、結果の説明や政策評価は乏しい。

感染拡大は変異株が主要な要因との政府側の説明を聞くが、そうした点は既に明らかで、検査・追跡体制強化は十分だったのか。政府・自治体は、国民へ外出自粛などの要請を頻繁に行うが、自らの対策の点検結果や、問題点や反省点、今後の改善点などの説明は極めて弱い。

これでは、政治や行政側が国民との危機感の共有はできないし、国民の協力をえるのも難しい。

菅首相も毎日、記者団のぶら下がり取材に応じたりして、国民にメッセージを発信すべきだ。記者会見でも具体的な説明が少ないうえに、伝えたいメッセージも乏しいとなると、危機のリーダーとして通用するのだろうか。

このほか、もう1つの柱であるワクチン接種の問題がある。ワクチン接種のペースは先進国に比べて遅れているが、8月1日時点のデータで、高齢者については1回目の接種が86.2%、2回目接種は75.8%に達し評価できる。

但し、国民全体に占める接種比率は、1回目が39.6%、2回目が29.1%に止まる。ワクチンの供給不足が問題になっているほか、50代以下の若い世代への接種を早期に終えることができるかどうかという問題を抱えている。

 問われる首相の力量・政治責任

さて、東京オリンピックは、日本勢の活躍でメダルラッシュが続き、盛り上がりをみせている。但し、政権・与党幹部が「オリンピックが盛り上がれば、世の中の空気が変わり、政権の評価も高まるまずだ」と期待していたような気配は、今のところ感じられない。

国民の多くは、オリンピックはテレビ観戦を楽しむ一方、感染状況や政府の対策の実績を見極めようとしているように見える。国民にとっては、まずは政府と自治体が今の「第5波」が大きな波にならないように抑え込むことができるかどうかに最大の関心を持っている。

具体的には、オリンピックが無事、閉幕までこぎつけられるか。24日からのパラリンピックは観客の扱いを含めてどうするのか。

一方、政治の動きとしては、8月はじめに自民党総裁選の選挙管理委員会が設置された後、下旬には、選挙期日の扱いを決めることになる。

自民党内では、派閥の幹部を中心に菅首相の下で衆院解散・総選挙を戦い抜くべきだという意見が今のところ主流だ。一方で、中堅・若手議員の間では「選挙の顔」として菅首相の力量に不安を感じる声も聞かれる。

さらに報道各社の世論調査も実施される。世論は、菅政権のコロナ対策をどのように評価し、菅内閣の支持率はどうなるか。世論の風向きは、衆院選挙を控えた自民党の対応の仕方にも影響を及ぼす。

8月の感染危機はどのような形で収まるのか。菅政権の対応を世論はどう評価するのか、秋の政局の流れを大きく左右することになる。

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五輪さなかの感染危機 問われる菅政権

東京オリンピックが開幕し日本勢の躍進が続いているが、東京都内では28日、新型コロナウイルスの感染者が初めて3000人を超え、2日連続で過去最多を更新した。

また、首都圏の神奈川、埼玉、千葉3県でも過去最多となったのをはじめ、全国でも最多の9576人の感染が確認された。

こうしたオリンピックさなかの感染危機に対して、政府や東京都はどのように対応しようとしているのか、どんな取り組みが問われているのか考えてみたい。

 宣言効果みられず シナリオ崩れる

東京都に4度目の緊急事態宣言が出されたのが今月12日で、この日の新規感染者は502人だった。その後も感染拡大に歯止めがかからず、オリンピック開幕当日の23日には1359人人まで拡大した。

そして、オリンピックが続いている27日の2848人に続いて、28日には3177人と初めて3000人を超えて、2日連続で過去最多を更新した。

緊急事態宣言の発出で夜間の人出は減少しているのだが、減少幅が小さいことや、感染力が強いデルタ株に急速に置き換わっていることなどが影響して、緊急事態宣言の効果がみられない。

また、政府や東京都は、緊急事態宣言の発出で感染者数を大幅に減らし、東京五輪・パラリンピックを「安全安心な大会」として開催することをめざしてきた。しかし、感染者数が減少するどころか、逆に爆発的に急増しており、感染抑制シナリオの前提が崩れた。

 感染抑え込み具体策打ち出せず

それでは、こうした感染危機拡大に政府や東京都はどのように対応しようとしているのか。

小池知事は28日、「デルタ株の影響を考えると、若者や中高年の世代にワクチンを早く行き渡らせることが重要だ」と強調するとともに「ぜひ、不要不急の外出を控えてください」といつもの呼びかけを繰り返した。

一方、菅首相は27日夕方、関係閣僚と対応策を協議した後、記者団に対して「強い危機感を持って、感染防止にあたっていく」として、国民に不要不急の外出を控えるよう呼びかけた。また、東京オリンピックについては「人の流れは減っており、心配ない」として、中止の考えはないとの認識を示した。

こうした菅首相と小池知事の発言からは、過去最多の感染者数に対する危機感が伝わってこない。また、国民が最も知りたい、”急増する感染拡大に対して何をするのか”という問いに、直接答える内容になっていない。

政府のこれまでの対策をみていると、ワクチン接種以外、ほとんどが従来からの対策の繰り返しで、手詰まり状態に陥っている。今回もワクチン接種が行き届くまでの間に、具体的にどんな対策を打ち出すのか、対策の方向性も示すことができていない。

 問われる菅政権の感染危機対応

それでは、これからどんな動きになってくるか。まず、神奈川、埼玉、千葉の3県の知事は、今の「まん延防止等重点措置」から、「緊急事態宣言」を出すよう要請する方向で調整を進めている。

政府は、要請があれば速やかに検討したいとしているので、今週中には3県に緊急事態宣言適用が決まる見通しだ。問題は宣言を出す場合、具体的で実効性のある対策を打ち出せるか、政府と自治体とが連携した体制をとることができるかどうかが問われる。

一方、東京オリンピックについては、菅首相は先に触れたように大会中止は考えていないことを明らかにした。選手や大会関係者から感染者は出ているが、クラスターはこれまでのところ発生していない。

但し、来月8日のオリンピック閉会日まで感染状況がどのようになるか。さらには、来月24日から予定されているパラリンピックを開催できるか、医療提供体制の状況と合わせて、リスクの評価が焦点になる。

一方、感染対策の切り札とされるワクチン接種については27日現在、1回目の接種を終えた人が37%、2回目接種が26%まで進んでいる。海外では接種率が1回目で40%に達すると、感染者数の減少傾向が表れるとの報告もあり、日本の場合どうなるかが注目される。

ワクチン接種については、供給不足から政府は、一定の在庫があると見なした自治体に対し、配分量を削減する方針を打ち出し、自治体側が強く反発していたが、この方針を撤回するなどの混乱も続いている。

こうした中で、今回、感染急拡大の第5波を何とか抑え込めるか。東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、ワクチン接種の進捗、さらには菅首相の政権運営や政治責任にも影響を及ぼすことになる見通しだ。

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”異例五輪開幕と第5波” 菅政権直撃  

新型コロナウイルスの感染拡大で、史上初めて大会が1年延長の末、異例の無観客で開催されることになった東京オリンピックは23日夜、開会式が行われて開幕した。

開会式をめぐっては、先に楽曲の担当者が過去のいじめ問題で辞任したのに続いて、今度は演出担当の1人が、過去にユダヤ人の大量虐殺をやゆする表現をしていたとして解任された。関係者の低い人権意識などが露呈した形で、内外から厳しい批判を浴びている。

今回の五輪開催をめぐる国民の評価・見方は、複雑だ。報道各社の世論調査をみると、開催に賛成が3割程度、反対が5割から6割程度。これに無観客開催の条件を加えて判断してもらうと、適切が4割、中止は3割程度に変わり、賛否の間で判断が揺れているように見える。

個人的には、テレビ観戦で各国選手の活躍を見たいと思うが、組織委員会や東京都、それに政府の対応をめぐっては、多くの問題を抱えていると感じる。政治取材を続けている立場から、今回の異例ずくめの大会をどのように見たらいいのか、感染急拡大の問題と合わせて、政治・行政のあり方を考えてみたい。

 五輪の意義不明 政権シナリオ誤算

まず、今回の異例の東京オリンピック・パラリンピックをどう評価するか。そのためにもこれまでの経緯を駆け足で振り返っておきたい。

招致が決まったのは、2013年9月。前年暮れに安倍前首相が政権に復帰し、長期政権の目標の1つに東京五輪・パラリンピック招致を位置付け、当時の官邸主導で誘致工作を重ね、実現にこぎつけたのが実態だ。

そして去年3月、世界的な感染拡大を受けて、大会の1年延長を決める際に安倍前首相は「完全な形での開催」を国際的に約束した。

後継の菅首相も今年1月の施政方針演説で「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と意義を強調。そのうえで「感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現する」と決意を表明した。

菅首相としては、秋の自民党総裁選で再選を果たし、次の衆院選挙を勝ち抜くためにも感染を抑え込み、大会を開催し成功させることは、政権運営に必要不可欠な条件として取り組んできた。

ところが、大会が近づいても東京の感染状況は改善せず、7月12日からは4度目の緊急事態宣言を出す事態に追い込まれた。また、観客を入れて盛り上げるはずの大会が、ほとんどの会場で観客を入れない無観客開催に決まった。

菅首相は国会答弁などで「安全安心の大会」を繰り返すだけで、「コロナ禍で五輪を開催する意義は何か」を打ち出すことができず、国民に訴えかける力強さにも欠けていた。

この点は菅首相にだけ責任があるわけではないが、五輪開催の意義については、「復興五輪」の位置づけなどを含め、多くの人が活発に意見を表明し、掘り下げた議論にできなかったことは大きな反省点だ。延期五輪が今一つ、盛り上がりに欠ける要因ではないかと考える。

一方、政治への影響はどうか。無観客の大会になったことは、菅政権にとって誤算だ。政権運営のシナリオの一部が崩れ、今後の影響は大きいとみている。

 感染拡大 第5波を抑えられるか

次に国民の多くの関心は「五輪を開催して、爆発的な感染拡大につながらないのか」という点にある。22日、東京の新規感染者数は1979人。1週間前に比べて670人も増え、2000人に迫るまで急拡大している。

東京都のモニタリング会議は21日、東京の感染状況について予測を明らかにした。それによると、この1週間の平均で新規感染者は1170人で、前の週の1.5倍となり、「今年1月の第3波を上回るペースで感染が急拡大している」と警鐘をならした。

そのうえで、今のペースが続いた場合、8月3日には2598人となり、「第3波をはるかに超える危機的な感染状況になる」と強い懸念を示している。

つまり、オリンピック期間中に、東京の新規感染者数は2600人まで急増し、第5波の感染再拡大のおそれがあると警告しているわけだ。

東京五輪に参加する海外からの選手や、大会関係者からも感染者が出ているが、選手はワクチン接種をしたり、PCR検査を頻繁に受けたりしているので、選手村などで大規模なクラスターが発生する可能性は大きくはないとみられる。

但し、海外からの大会関係者の行動管理はどこまで徹底できるかはわからない。また、大会開催に刺激されて、国内での会食や人出の増加などで、感染拡大へとつながる可能性は否定できない。

さらに変異型のウイルス、インド株の置き換わりで、感染が急拡大する可能性もあり、第5波を抑え込めるかどうか。また、来月8日までのオリンピックが無事、閉会できるか。さらに、24日からのパラリンピックが予定通り開会できるのか注視していく必要がある。

 危機対応、制度設計能力に問題

政権の対応については、これまで何度も指摘してきたが、司令塔機能に弱点があるのではないか。具体的には、PCR検査の拡充をはじめ、病床確保の調整、飲食店の休業・時間短縮要請と支援の基準づくりなどの具体的な取り組みが、迅速に進まなかった。

こうした点に加えて、制度設計にも問題がある。例えば、ワクチン接種について、菅首相が「希望する高齢者の接種を7月末に完了」、「1日100万回以上の接種」などの大号令を出すが、肝心のワクチン供給が不足して、新規の予約ができなくなるといった事態が起きている。

今回のオリ・パラ対応についても、延期された大会日程から逆算して、ワクチン接種の計画や日程を決めて、完了させるといった取り組みができなかった。

こうした制度設計については、安倍政権当時も大学共通テストに英語の民間試験を導入する方針が行き詰ったのをはじめ、コロナ対策で国民へ特別給付金を支給する問題、さらには今回、飲食店で酒類提供停止の要請への仕組みづくりでも混乱がみられた。

菅政権については、グランドデザイン=基本的な目標や計画を打ち出したうえで、個別対策の組み合わせや日程を明らかにしていく戦略的な取り組みに欠けるといった指摘が出されている。政府が自らの対策の点検、総括をきちんと行い、同じような過ちを繰り返さない取り組み方も必要だ。

 問われる五輪対応と感染抑え込み

東京五輪・パラリンピックが9月5日に幕を閉じれば、直ちに政治の季節に入る見通しだ。菅首相の自民党総裁としての任期が9月末に切れるほか、衆議院議員も10月21日が任期満了日で、衆議院選挙が行われる。

その際、政府・自民党内では「次の選挙の顔」を誰にするかが焦点になる。今の段階では、菅首相を先頭に選挙を戦うとの見方が各派閥の幹部の間では有力だが、党内では菅首相の選挙への手腕を不安視する声も聞かれる。

また、万一、東京オリ・パラ大会の期間中、選手や大会関係者の感染が拡大したり、あるいは、国内の感染状況が急速に悪化したりした場合、世論や自民党内から、菅政権の政治責任を厳しく問う声が出されるのは必至の情勢だ。

このため、菅政権としてはこの夏、まずは、東京五輪・パラリンピックを無事に閉幕までこぎつけられるかどうか。また、急拡大している感染に歯止めをかけるとともに、切り札のワクチン接種を再び軌道に乗せることができるかどうか、実行力と具体的な実績が問われることになる。

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菅内閣”世論の支持離れ”鮮明に

東京都に4度目の緊急事態宣言が出され、23日に開会する東京オリンピックもほとんどの会場が、観客をいれない無観客開催となることになった。

国民はこうした事態をどのように受け止めているのか。報道機関が相次いで世論調査を行い結果を報道しているが、いずれも菅内閣の支持率が発足以降、最低を記録、不支持は最多で、”世論の菅内閣支持離れ”が一段と鮮明になっている。

こうした世論の動向の分析と、これからの政治への影響を探ってみたい。

 内閣支持率最低 読売 NHK調査

読売新聞とNHKは今月9日から11日までの3日間、それぞれ世論調査を行い、その結果を報道している。

菅内閣の支持率は、◇読売調査で支持が37%、不支持が53%。◇NHK調査では支持が33%、不支持が46%となっている。

いずれの調査とも菅内閣の支持率は、去年9月の政権発足以降、最低の水準だ。一方、不支持も発足以降、最も高くなっている点で共通している。

今回の世論調査は、政府が8日に、感染再拡大が続く東京都に4度目の緊急事態宣言を出すことを決定した直後に実施された。また、東京オリンピックについては、無観客開催とする方針が決まった直後でもある。

政府のコロナ対応については、読売の調査で◇評価するが28%に対し、◇評価しないが66%。ワクチン接種をめぐる政府の対応についても◇評価するが36%に対し、◇評価しないが59%となっている。

政府のコロナ対応に対する世論の不満、批判が支持率低下の要因になっていることがわかる。(データは、読売新聞13日朝刊、NHK WEB NEWSから)

 支持離れ 女性 無党派層など深刻

それでは、菅内閣の支持離れはどんな支持層で起きているのか、NHK世論調査でみていきたい。

◆まず、菅首相を支える自民支持層について、菅内閣を支持する人の割合は61%に止まっている。菅政権が発足した去年9月は85%だったから、下落幅は大きい。

選挙に強かった安倍政権では、自民支持層の支持割合は70%台後半から80%台前半と高かった。それに比べる菅政権の基盤は極めて脆弱であることがわかる。

◆有権者の最も大きな集団である無党派層の支持はどうか。菅内閣の支持は2割を割り込み、不支持は6割近くに達している。

◆年代別では◇20代以下の若い年代だけ、支持が不支持をわずかに上回っているが、そのほかの年代はすべて不支持が、支持を上回っている。

◆男女はいずれも不支持が、支持を上回っている。男性は支持35%、不支持49%に対し、女性は支持31%、不支持43%で、特に女性の支持は少ないのが目立つ。

このように菅政権の支持構造は、選挙の行方を左右する自民支持層と無党派層、それに女性の支持離れが顕著で、菅政権にとって深刻な事態が進行中であることが読み取れる。

 失態続き 政権浮揚見通せず

次に菅政権に反転攻勢が可能かどうかを見ていきたい。結論から先に言えば、菅政権はこのところ失態続きで、政権浮揚につながるような好材料は見当たらない。

まず、政府は先に緊急事態宣言の対象地域などで、酒の販売事業者に対して、酒の提供停止に応じない飲食店との取引を行わないよう求める方針を打ち出した。

これに対して、販売事業者から「長年の取引先で、コロナ禍で苦しんでいる飲食店をさらに追いつめることはできない」と強い反発を招いた。

また、世論の側も「行政が自ら直接向き合わず、外から強い圧力をかけるような行為は絶対に許されない」といった強い批判が出され、撤回に追い込まれた。

これより先、政府は同じように金融機関にも働きかけを要請していたが、この方針も撤回した。こうした動きを経て菅首相が14日、総理官邸で陳謝した。

一方、ワクチン接種については、これまで接種の加速が続いていたが、接種希望の需要に供給が追い付かず、職域接種の新規受付を中止する事態に追い込まれた。ワクチン確保量が縮小することを明らかにしなかったことと、接種管理システムが十分機能していない不手際が背景にある。

さらに14日には、東京の新規感染者数が1149人と急拡大した。1100人を超えるのは、第4波のピークだった5月8日以来、2か月ぶりだ。専門家が7月中旬には、東京の新規感染者数は1000人を上回る可能性があるとの予測が現実になった。

このように感染再拡大と失態続きで、政権浮揚につながる好材料が見当たらない。菅内閣の支持率は、”瞬間風速的”にはさらに低下している可能性が大きく、当面、大きな改善は見通せない。

 政局緊迫オリパラ後か ”選挙の顔”

それでは、菅政権や政局のゆくえはどうなるか。支持率は急落しているが、いわゆる”菅降ろし”、菅首相の交代を求める動きは、当面、表面化しないとみる。

というのは、今の自民党は安倍長期政権を経て、非主流の派閥集団がなく、総理・総裁や執行部の権限が一段と強くなったこと。安倍前首相や麻生副総理、二階幹事長らの実力者も「次の衆院選は菅首相で戦う考え」を表明していることから、首相交代を求める動きが出てくる公算は小さいからだ。

一方、菅首相の政権運営については、描いていたシナリオが大きく狂い始めたとみる。菅首相はワクチン接種を加速し、東京五輪・パラリンピックを成功させ、その盛り上がりを受けて衆院解散・総選挙に打って出て勝利するのが基本戦略だ。

ところが、感染の収束どころか緊急事態宣言を発出し、五輪も無観客となり、お祭りムードは吹き飛んでしまった。それどころか、五輪開催が感染拡大の引き金になりかねないと危惧されている。

唯一、政権が大きな期待を寄せているのがワクチン接種の加速だが、先にみたように安定的に進むかどうかはっきりしない。

このようにコロナ対応をめぐって不確定要素は多いが、秋の政局は主流派がめざしているのが、菅首相の下で衆院解散・総選挙へと突入するケース。

もう1つは、今後、菅首相は「選挙の顔」として通用するかどうかを問う動きが出てくるとの見方もある。特に中堅・若手議員は、自らの当落を左右するからだ。その場合、世論の厳しい声に押される形で、菅首相の政治責任と交代を求める動きが土壇場の段階で出てくる可能性があるとみられている。

先の都議選では、自民党は第1党に復帰したものの、2番目に少ない33議席にとどまった。投票率は過去2番目に低く、低投票率では選挙に強いはずが、伸び悩んだ。都議選は、その後の国政選挙を先取りする先行指標となることが多く、党内では、次の衆院選挙に危機感が強まっている。

菅内閣の支持率が好転しない場合でも、菅首相の方針通り衆院解散・総選挙を先に行うのか。それとも自民党総裁選を実施して党の存在感をアピールしたうえで、総選挙に臨む方針に転換するのか、政局が一気に緊迫してくることが予想される。

ワクチン接種の加速などで、コロナ感染を抑え込めるのか。菅政権に対する世論の風向きに変化があるのかどうか、この2つの変動要素が、秋の政局のカギを握っている。

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”コロナ失政”東京に4度目緊急宣言

政府は、新型コロナウイルスの感染再拡大が続く東京都に、4度目の緊急事態宣言を出すことを決めた。沖縄県の緊急事態宣言も延長し、期限はいずれも8月22日まで。まん延防止等重点措置については、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県を対象に同じく22日まで延長することになった。

この決定を受けて、東京オリンピックは、東京など1都3県のすべての会場で観客を入れずに開催されることになった。こうした決定をどうみたらいいのか、考えてみたい。

 コロナ対策の失敗、”失政”

今回緊急事態宣言をどうみるか、結論を先にいえば、菅政権のコロナ対策が行き詰まり、宣言発出に追い込まれたとみている。

まず、3度目の緊急事態宣言は2回にわたって延長され、6月21日に宣言を解除したばかりだったが、1か月も経たないうちに4度目の宣言に追い込まれたことになる。解除に当たっては専門家から慎重論が出されたが、政権側が押し切った。

また、今年1月18日に召集された通常国会の施政方針演説で、菅首相は「新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させる」と強調するとともに「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と表明していた。

さらに、昨年3月に大会延期を提案した際、当時の安倍首相は「完全な形」での開催を表明していた。後継の菅首相は、大会開催から逆算して、ワクチン接種などの対策を徹底し、感染抑え込みを実現する責任を負ってきた。結果は、感染が拡大し、無観客開催に追い込まれたので、コロナ対策は失敗、失政と言わざるを得ない。

 五輪「無観客」は世論配慮か

次に東京五輪が「無観客」開催になったことについてだが、菅政権は最終段階まで、制限付きながらも観客を入れての開催を模索していたとみられる。

最終的に「無観客」を決断したのは、世論の側が感染拡大を心配して、開催に慎重・反対論が根強く、こうした点を配慮したためではないか。先の東京都知事選で、自民党は過去2番目に少ない議席に終わり、五輪の中止や延期を主張した野党が議席を伸ばしたことも影響したものとみられる。

さらに、秋には衆議院議員の任期が満了、衆議院選挙が控えており、五輪をきっかけに感染急拡大といったリスクは避けたいという判断も働いたのではないかと、個人的にみている。

 五輪、感染抑制の総合対策が必要

東京五輪は「無観客」での開催が決まったが、問題の核心部分、つまり、「感染の再拡大で緊急事態宣言が出される中で、オリンピックを開催して大丈夫か」という問題は残されたままだ。

菅首相は8日夜の記者会見でもワクチン接種が決め手だとして、最優先で取り組む考えを強調した。ワクチン接種は重要だが、それだけで感染を抑え込めるわけではない。人流の抑制など根本的な問題を含めて、対策を練り直す必要がある。

また、繰り返される緊急事態宣言やまん延防止等重点措置と、政府・自治体の無策ぶりに国民は、うんざりしている。また、営業時間の短縮や酒類の提供停止が長期化する飲食店業界は、危機的な経営状態に追い込まれている。

コロナ対策は未知の分野で、対応が極めて難しいことは理解できる。失敗があることもやむを得ない。だからこそ、対策の点検、検証、総括が必要だが、菅政権にはそうした対応がなく、対策の見直しが進まないのが大きな問題点だ。

今、菅政権に必要なことは、東京都などの地方自治体と連携を強め、感染対策や医療体制の整備、決め手のワクチン接種をより促進させる必要がある。

また、国民生活の支援や、深刻な影響を受けている飲食店などに対する事業支援など総合的な対策を早急にまとめ、実行に移すことが問われている。

最後に、菅政権の今後の政権運営について触れておきたい。菅政権の政権運営の基本は、感染拡大を抑え込んだうえで、東京五輪・パラリンピックを成功させ、秋の衆議院解散・総選挙の勝利につなげることにあった。

ところが、今回、緊急事態宣言の発出、五輪は無観客開催に追い込まれた。政権運営の土台部分が崩れ始めた意味を持っており、菅政権は東京五輪・パラリンピック閉会後は、一段と厳しい状況に立たされる可能性が大きいとみている。

 

 

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自民”敗北”の原因は?東京都議選

東京都議会議員選挙は4日、投開票が行われ、自民党は第1党の座を獲得したが、議席を大幅に伸ばすことはできなかった。全員当選を果たした公明党と合わせても過半数に達しなかった。

自民党が獲得した33議席は過去2番目に少ない議席数で、”伸び悩み”という評価もあるが、事実上の”敗北”と言える。選挙前の大幅議席増の期待感は吹き飛び、自民党内では、秋までに行われる次の衆院選挙は厳しい結果になりかねないと懸念する声も聞かれる。

一方、投票率は42.93%で、5割を割り込んだ。前回・4年前の選挙より、およそ9ポイント低く、過去2番目に低い投票率になった。

自民党は、これまで低い投票率でも厚い保守地盤を活かして強みを発揮してきた。今回はなぜ、大幅議席増につながらなかったのか。今度の選挙結果の核心であり、次の選挙にも大きく影響するので、自民敗北の理由・背景を分析してみたい。

 自民第1党議席回復もワースト2

最初に選挙結果を手短におさらいしておく。選挙前は45議席で第1党だった都民ファーストの会(以下、都民ファ)は、14議席減らして31議席に踏み止まった。選挙前25議席だった自民党は、33議席しか獲得できなかった。公明党は、23人の候補者全員が当選、1993年以降8回連続の全員当選となった。

共産党は選挙前の18議席から1つ増やして19議席。選挙前8議席だった立憲民主党は15議席に伸ばした。日本維新の会と、東京・生活者ネットワークはいずれも選挙前と同じ1議席を獲得した。

自民党の獲得議席については、自民党関係者の間でも「8議席増やしたので、敗北ではない」との声も聞くが、前回4年前の選挙は歴史的惨敗といわれた議席数で、これを基準に党勢を評価するのはどうか。

今回は過去2番目に少ない議席数で、公明党を合わせた与党過半数の低いハードルも超えられなかったので、事実上の”敗北”とみるのが適切だと考える。

 ”自民支持層の支持離れ”

それでは、自民党は、なぜ、過去2番目に少ない議席数に陥ったのか。自民党長老に聞くと「政府のコロナ対応に対する不満と批判を浴びる形になった。特に選挙直前、ワクチン接種予約に供給が追い付かず、接種予約の停止に追い込まれたことが響いた。先月下旬、選挙の流れがガラリと変わった」と振り返る。

具体的にどういうことか。有権者の投票行動はどうだったのか、メディアの出口調査で分析する。

読売新聞の出口調査では、投票した人にふだんの支持政党を聞くと最多は自民党の33%。立民11%、共産8%、都民ファ6%、公明5%、無党派層28%となっている。NHK、朝日、共同の出口調査も数値は異なるが、似た傾向を示している。

自民党の政党支持率は、前回選挙と比べても大きな変動はない。ということは、自民党の支持層の中で、これまでとは異なる投票行動の質的な変化があったと考えられる。

◆自民支持層のうち、自民候補者に投票した人は57%と少ない。都民ファに投票した人が19%、2割近くに達した。◆朝日と共同のデータでも自民候補者に投票した割合は、どちらも70%と低い水準だ。都民ファには、それぞれ12%程度流れている。

一方、◆無党派層の投票先としては、各社の調査とも都民ファに28%から25%程度と最も多く投票している。自民は10%台前半で、4年前とほぼ同じ割合だ。

以上のことから、自民敗北の要因は「自民支持層の支持離れ」が起きて、投票数が減少したことが考えられる。

自民幹部にこの見方をぶつけてみると「確かに当初、自民党に追い風も感じられ、40台半ばは獲得できるとみていた。ところが、選挙戦に入る直前の6月下旬、急ブレーキがかかったような印象を受けた。ちょうどワクチン職域接種の予約中止が決まった時期で、このことが支持離れにつながったのではないか。自民支持層の一部に意識変化を起こさせた」との見方を示す。

私も選挙取材を40年余り続けているが、自民党が選挙に負ける場合は、自民支持層が政権に不信感を抱き、支持離れを起こしていることが多い。

今の菅政権については、緊急事態宣言延長の繰り返しをはじめ、ワクチン接種計画の見通しの悪さ、さらには、中々、決まらない東京オリパラ開催問題などに対する支持者の嫌気、不満や批判が支持離れをもたらしたのではないかと同じ見方をしている。今後は、支持者への説明、説得ができるかどうかが、カギになる。

 都民、共産、立民各党の課題

一方、都民ファーストの会が今回、踏み止まったのはなぜか。既にみてきたように無党派層の支持を得たことが大きい。もちろん、誕生した4年前の選挙の時に比べると、その支持は半減状態だが、各党と比べると支持の比率は最も多い。無党派層からは、改革勢力のイメージを持たれている。

また、小池知事の都民の支持率は6割程度と高く、こうした支持層の支持を都民ファは受けている。さらに、小池知事の緊急入院と投票日前日の候補者支援のパフォーマンス効果もあったかもしれない。

小池知事は、開票翌日の5日、自民党本部に二階幹事長を訪ね会談した。政界では、小池知事は次の衆院選で国政に復帰するのではないかとの見方がくすぶる。五輪閉会後、東京都のトップが任期満了、最後まで仕事をやり遂げるのか有権者としても注視していく必要がある。

一方、共産党と立憲民主党は、1人区と2人区を中心に候補者調整を行った。両党とも議席増につながり、一定の効果は出ている。今後は、次の衆議院選挙に向けて、野党第1党が中心になって政権構想づくりや、小選挙区の候補者調整をどこまで進められるのかどうかが、ポイントになる。

菅首相「選挙の顔」と政治責任

最後に今回の都議選の結果を受けて、政権与党の動きはどうなるか。菅政権発足以降、自民党は4月に行われた衆参3つの選挙で、不戦敗を含めて全敗したのに続いて、千葉県、静岡県の知事選挙で推薦候補の敗北が続いている。

加えて、今回の都議選で大幅な議席回復ができなかったことで、今後、自民党内から、菅首相は「選挙の顔」として通用するのかという声が出てくることが予想される。

自民党長老は「自民党員や世論は、菅首相の二正面作戦が本当に効果をあげるのか、五輪は無事開催できるのか、見極めようとしている。また、特にワクチン接種の計画と見通しなどを的確に説明し、軌道に乗せないと強い反発を招き、自民党内からも菅首相は政治責任を問われる局面が出てくるのではないか」と指摘する。

東京五輪・パラリンピックが無事開催にこぎつけられるのかどうか。感染の抑え込みとワクチン接種は順調に進むのかどうか。秋に向けて、こうした問題は政治に直ちに跳ね返り、政局は一気に緊迫する状況が続くことになりそうだ。

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“選ぶ側”から見た東京都議選の注目点

東京都議会議員選挙が25日告示され、7月4日の投票日に向けて9日間の選挙戦に入った。選挙権がない方も多いと思うが、この選挙は、コロナ禍、東京五輪・パラリンピック開会を控えた中で、東京の有権者がどのような判断を示すか、注目点の多い選挙になりそうだ。

そこで、候補者や政党など選ばれる側ではなく、有権者”選ぶ側”の立場から、この選挙をどうみるか、どんな対応が賢明な選択になるか、探ってみたい。

何を重視するか?少ない候補者情報

都議会議員選挙と言われても、私たち選ぶ側が困るのは、立候補者はどんな人でどのような考え方を持っているのか、候補者の情報が極めて少ないことだ。最も身近な市区町村の議員選挙や、国政レベルの選挙に比べて、この中間に位置する都道府県議会議員選挙は候補者情報が少なく、誰に投票するか困ることが多い。

さて、どうするか。私事になるが、選挙期間中に各候補者の陣営から、自宅に配られるビラを集めておくと意外に役立つ。ビラを比較すると、各候補の経歴なども含めてどんな人物か、輪郭がわかる。加えて、配布される選挙公報には、候補者の公約、政策などが記載されているので、候補者情報をかなり集めることができる。

そのうえで、何を重視して選ぶか。今回の選挙について、すぐに頭に浮かぶのは、やはり新型コロナ対策だ。感染抑止対策として何をするのか、病床など医療提供体制の整備や、ワクチン接種などではどんな取り組みを考えているのかがわかる。

また、東京オリンピック・パラリンピックの開催の是非も、判断材料になる。予定通りの開催か、中止か。あるいは開催する場合でも無観客にするのか、制限付きで観客を入れるのかどうか、候補者の違いがわかるはずだ。

さらに、向こう4年間の東京都政のかじ取り役を選ぶので、中長期の課題・政策で判断したいと考える人も多いと思われる。首都直下型大地震に備えての防災対策、少子高齢化時代の社会保障の姿、子育て・教育・格差是正の取り組みなども問われることになる。

以上のような内容から、何を重視して選ぶのか。ここをはっきりさせれば、どの候補者を選択するか、対象者が絞られてくるのではないか。

 東京都政、どの政党・勢力を選ぶか

巨大都市、東京の街づくりや都民の暮らしを安定させていくためには、知事と議会が車の両輪として、それぞれの役割を果たしていくことが必須の条件だ。そのためには有能な議員を選ぶとともに、どの政党・政治勢力に中心的な役割を委ねるかがカギを握る。

今回の都議選は、小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が第1党の座を維持できるか。それとも自民党が公明党との選挙協力を復活させており、公明党と合わせて過半数の議席を獲得したうえで、第1党へ返り咲くかどうかが焦点だ。

一方、共産党と立憲民主党は候補者を競合させないため、一部の選挙区で候補者のすみわけを行っており、議席の積み上げができるかどうかも注目される。

このほか、小池知事が過度の疲労による静養のため入院しており、今後、いつ公務に復帰し、選挙にどのようにかかわるのかにも関心が集まっている。

 コロナ禍 有権者の選択政党は?

今回の都議選は、緊急事態宣言は解除されたものの、コロナ感染が高止まりから、再び拡大の兆候が表れ始めた中での選挙になっている。”3蜜”を避けるため、各陣営の選挙運動も大規模な集会や街頭演説などの自粛が予想される。有権者の選挙への関心、投票率はどうなるか。

前回4年前は、小池知事が都民ファーストの会を立ち上げて”小池旋風”を巻き起こし、投票率は51%台まで上がった。その前の2013年選挙は、43%台まで落ち込んだ。今回、有権者の投票意欲は前回水準から強まるのか、あるいは下回るのかも注目点の1つだ。

また、東京都議選の結果は、次の国選選挙の先行指標になる。2009年の都議選では、当時の民主党が大勝して都議会第1党に躍進、夏の衆議院選挙で過去最多の議席を獲得して政権交代を実現した。

2013年の都議選で、自民党は候補者全員が当選して都議会第1党に返り咲き、続く参議院選挙でも過去最多の議席を獲得して圧勝した。都議選の結果は、全国の都市部の有権者の先行指標になるケースが多かった。

7月4日投開票となる東京都議選の結果は、菅政権の政権運営に大きな影響を及ぼすだけでなく、秋の衆院選挙のゆくえを占う判断材料になる。コロナ激変時代、有権者は何を重視し、どの政党・政治勢力を選択するのか目が離せない。

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総選挙は秋の公算 ”コロナ波乱政局”の始まり

通常国会は、野党4党が提出した菅内閣に対する不信任決議案が、与党などの反対多数で否決され、16日に閉会した。

焦点の衆議院解散・総選挙について、菅首相は夏の東京オリンピック・パラリンピック閉会後に断行する方針を固めており、総選挙は秋に行われる公算が大きくなっている。

与野党双方とも国会閉会後、直ちに衆院選に向けた体制づくりを加速させているが、これからの政治はどんな展開になるのか。

コロナ感染を抑え込めるかどうかということだけでなく、衆院選挙の結果がどうなるかまでを展望すると”波乱要因の多い政局”になる可能性が大きい。

9月5日のパラリンピック閉会後、菅首相が早期に解散に踏み切るケースをはじめ、ワクチン効果をねらった任期満了選挙、さらには菅首相退陣のケースなども予想される。”コロナ波乱政局”のゆくえを探ってみる。

 オリパラ後の総選挙へまい進 菅首相

次の衆議院解散・総選挙はいつになるか。解散権を握る菅首相の考えがベースになる。菅首相はコロナ対策を優先し、早期の解散には慎重な姿勢を示してきた。

菅首相の考えは、ワクチン接種を加速させて感染拡大を抑え込むとともに、東京五輪・パラリンピックを成功させた後、秋に衆院を解散・総選挙を断行して勝利し、再選を果たすのが基本的な戦略だ。

このため、通常国会閉会後は、20日に期限を迎える東京などの緊急事態宣言を解除し、まん延防止等重点措置に切り替える方針だ。同時にワクチン接種をさらに加速させるとともに東京五輪・パラリンピックについては、感染対策を徹底して予定通り、開催する方針だ。

衆院解散・総選挙については、9月5日にパラリンピックが閉幕した後、臨時国会を召集して衆院解散に踏み切り、10月に総選挙を断行する方向で調整が進められている。投票日としては、10月3日、10日、17日を軸に検討している。これが、第1のケースだ。

自民党長老に聞くと「9月解散・10月総選挙の可能性が最も高い。今の自民党には、菅首相や二階幹事長らに対抗して、政局を変えることができる実力者はいない。これからの政局は自民党内より、コロナ感染の状況や世論の動向がカギを握っている。例えば、五輪開催後に感染爆発が起きたら、自民党は選挙でぼろ負けするだろう。油断できない」と語る。

 ワクチン効果期待 選挙後ろ倒しも

菅首相がめざす9月解散・10月総選挙は、感染が収束に向かい、ワクチン接種も順調に進み、五輪・パラリンピックも開催され盛り上がった場合が前提だ。

政府・自民党内には、こうした考え方とは別にワクチン接種効果を重視して、衆院解散を急がず、任期満了などによる選挙の後ろ倒しを選択した方がいいという考え方もある。

ワクチン接種は高齢者接種が本格化するとともに、一部の地域では一般国民の接種が始まった地域もある。10月から11月ころまでに、国民の半数以上に2回接種が完了すれば、感染の減少効果が期待できる。このため、選挙を遅らせれば、与党にとって有利に働くとの思惑がある。

具体的には、今の衆議院議員の任期は10月21日までだが、臨時国会の会期を任期満了ギリギリまで引き延ばして、大型補正予算案を成立させた後、国会を閉会すると11月14日投票が可能になる。

あるいは、任期満了ギリギリで解散すれば、11月28日投票も可能になる。任期満了に伴う選挙を後ろ倒しする案も取りざたされている。これが第2のケースだ。

 波乱要因 五輪開催と感染急拡大

以上は、いずれも感染抑制や、ワクチン接種が順調に運むことが前提だ。逆に波乱要因として、変異株の広がりなどで感染拡大が抑え込めない事態もありうる。

例えば、7月23日の五輪開会式までに感染を抑え込めないような場合。あるいは、大会期間中、さらには9月5日のパラリンピックが閉会式後に感染爆発が起きた場合どうなるか、危惧する与党関係者は少なくない。

こうした場合、菅首相の政治責任を問う声は、自民党内からも高まるだろう。衆院選挙を控え、自らの当落に直結するからだ。菅首相の退陣・総裁選立候補辞退もありうるとの見方もある。その場合、後継の新しい総裁を選んだあと、衆院解散・総選挙というケースも想定される。これが、第3のケースだ。

 衆院選の獲得議席幅 政局を左右

ここまでみてきた3つのケースは、いずれも衆院選挙にこぎつけるまでの道筋の予測だ。最大の難関は、衆院選の政治決戦で、菅政権は勝てるかどうかだ。

選挙の専門家に聞くと、国政選挙で連勝を続けた安倍政権に比べると、菅政権は議席を減らすのは避けられないとの見方が強い。一けた台の減少で済むのか、50議席程度の大幅減もあるのか、減少幅がどの程度になるかが一番のポイントだ。

減少幅によっては、菅首相の政治責任が問われ、政局のゆくえを左右することもありうる。来年夏には、参議院選挙も行われる。衆院選挙後は、コロナ激変時代の政治のリーダーのあり方なども改めて問われることになりそうだ。

以上みてきたように、コロナ禍の政治は、不確定要素が多い。変異株の広がりなど感染状況がどうなるのか、ワクチン接種の進展で感染抑え込みの効果が出てくるのか。そうした動きによって、3つの政局のどのケースに収れんしていくのか注視していく必要がある。

同時に、私たち国民の側は、これまでの政権の実績評価や、これからの社会や暮らしのあり方をどのように考えていくのか。そして、どんな政治家や、政党に政権をゆだねていくのか答えを出す時期が近づいている。

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”議論なし開催突入の愚”東京五輪

新型コロナウイルスの感染流行が続く中で、東京オリンピック・パラリンピックを開催して大丈夫か。国民の多くが考え、判断に迷っているのではないか。本来は、政治、具体的には国民の代表で構成される国会で、政府が対応策を示し議論する大きなテーマのはずだ。

ところが、菅政権で初めて行われた9日の党首討論では、こうした国民の関心に応える議論にはならなかった。このままでは国会は16日に閉会、20日には緊急事態宣言を解除、そのまま議論が深まらないまま五輪開催へと突入する公算が大きい。

これでは、国会は熟議の場どころか浅慮、議論なしの”愚の骨頂”と言わざるをえない。東京五輪・パラリンピックの開催問題を政治の側から、考えてみたい。

 党首討論 知りたい点に答えず

9日に国会で行われた党首討論は2年ぶりの開催。菅政権になって初めてで、菅首相と野党党首が突っ込んだ議論を交わすのではないかと期待した国民も多かったのではないか。

ところが、結果は、残念ながら期待外れに終わったというのが正直な印象だ。立憲民主党の枝野代表らは「3月の緊急事態宣言の解除が早すぎたのではないか。同じ間違いを繰り返さないために厳しい基準を明確にすべきだ」などと追及した。

これに対して、菅首相は論点をそらしつつ、ワクチン接種について「希望する人すべてが、10月から11月にかけて終えられるよう取り組む考え」を表明した。

また、共産党の志位委員長が、政府分科会の尾身会長の指摘を引用しながら「感染リスクが高くなる中で、なぜ開催するのか」と質したのに対し、菅首相は「国民の命と安全を守るのは私の責務だ」と答え、議論が深まらなかった。

 問題の核心 開催の条件と意義

国民が知りたいのは、世界でコロナパンデミックが続いている中で、東京五輪・パラリンピックを開いて本当に大丈夫なのか。開催する場合、日本の感染状況はどこまで収まっているのか、医療的提供体制はどこまで余裕があるのか、具体的なデータを示しながら説明をして欲しいという点だ。

また、感染危機の中で、国民の多くは大会を開く意義は何か、世界に向けて語る必要があると考えているのではないか。

こうした点について、菅首相の発言は真正面から答える内容には遠かった。前回の東京五輪の思い出を長々、話をするのではなく、日本国民や世界の人たちにどんな大会にしたいかを、自らの言葉で語りかける必要があったのではないか。

このように、今回の党首討論では、問題の核心である東京五輪・パラリンピックの開催意義や、開催のための条件をどう設定するか、依然として大きな宿題として残されたままだ。

 専門家の意見をどう扱うのか

東京五輪・パラリンピックについては、国内の観客を入れるのかどうか。また、メディアを含めた大会関係者の行動管理などの細部も不明な点が多い。

こうした中で、政府分科会の尾身会長は、開催に慎重な考えを示しているほか、開催する場合は規模を最小限にすることなどを求めている。

一方、9日に開かれた厚生労働省の専門家会合で、京都大学の西浦教授は独自に行ったシミュレーションで、7月末までに高齢者へのワクチン接種が完了したとしても、接種が進んでいない50代以下の年代を中心に感染が大きく広がり、8月中に再び重症者病床が不足するような流行になると警告している。

政府は、こうした専門家の意見をどのような形で、方針決定に反映させるかも問われる。緊急事態宣言の判断では専門家に意見を求め、五輪対策では意見を求めないといったご都合主義は止めた方がいい。五輪の開催問題も「科学」で判断すること、具体的なデータに基づいて公正に判断する姿勢で対応してもらいたい。

 政治の劣化 責任の明確化必要

それでは、今後の動きはどうなるか。菅首相は11日から13日までイギリスで開かれるG7の対面式の首脳会議に出席するが、この中で東京五輪・パラリンピック開催支持を取り付けたい考えだ。

16日は国会の会期末だが、政府・与党は会期を延長しない方針だ。これに対して、野党側は内閣不信任決議案を提出、与党側が否決して、国会は去年に続いて早々と”店じまい”となる見通しだ。20日には、東京都などに出されている緊急事態宣言が期限を迎え、この頃、組織委員会がオリ・パラの観客の扱いなどの判断を示す見通しだ。

このようにみてくると、今後、国会で五輪開催の是非などを論じる機会は極めて少ない。これでは、熟議の国会どころか浅慮、国会の議論が乏しい状態が常態化しており、政治の劣化と指摘されても反論は難しいのではないか。

仮に五輪を開催した場合、選手とは別に、通訳、警備、ボランティアなどを含めると要員は30万人規模になるといわれる。このほか、観客の扱いはまだ決まっていないが、現在のイベント規制の基準で計算すると観客数は300万人規模に達するとの見方もある。

こう見てくると仮に開催して感染拡大が起きた場合、その責任は誰が負うのか。曖昧なままにせずに、はっきりさせておく必要がある。

コロナ感染対策とオリンピック開催問題は、7月の東京都議選、10月までに行われる見通しの次の衆院選でも争点の1つになる見通しだ。選挙で判断・審判を下すことになるが、その前に国会の場で議論をしっかり行うことが、最低限必要だと考える。

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