国会の会期末が17日に迫る中で、高市首相は7日夕方、日本維新の会の吉村代表と党首会談を行い、野党各党が強く反発している衆議院議員の定数削減法案について、今国会での成立を断念し、秋の臨時国会に先送りすることで一致した。
これを受けて自民党の梶山国対委員長は8日、衆院第1党の中道改革連合の重徳国対委員長と断続的に会談し、定数削減法案の先送りを伝えるとともに、衆議院予算委員会の集中審議について「与党の責任で実施する」方針を伝えた。
これに対して重徳委員長は「審議を行う環境が整った」として、皇族数の確保に向けた皇室典範改正案などの審議に応じる考えを示した。
混乱が続いてきた衆議院でも法案の審議が再開する見通しになったが、今回の定数削減法案の先送りをどのようにみたらいいのか、また最終盤の国会はどのように展開するのか探ってみたい。
政権与党に乱れ、国会運営・調整に弱点
高市首相と日本維新の会の吉村代表との党首会談は7日午後6時から、国会内で自民・維新両党の幹事長、国対委員長、参院幹部らが出席して始まったが、わずか8分で終わった。会談後、両党首とも個別にメデイアのぶら下がりに応じたが、内容の説明を避けた。それだけ追い込まれ苦渋の決断だったのだろう。
結論を先に言えば「高市政権は国会終盤に厳しい状況に追い込まれるのではないか」との見方は与野党関係者の間にかねてからあった。
というのは、終盤国会に提出される衆議院議員の定数削減と「副首都」構想、それに皇族数の確保に向けた皇室典範改正はいずれも高市政権発足時の連立政権合意に盛り込まれた内容で、与野党の意見が対立する公算が大きいからだ。
それに加えて政権与党内では、維新は自らの看板政策と位置づける議員定数削減と「副首都」の2法案を重視するのに対し、自民党は「皇室典範改正を最優先すべきだ」との空気が強く、双方に温度差、溝があるとみられていた。
さらに、高市首相は政権担当にあたって維新の支援を受けたこともあって、維新に恩恵を感じているとされる。このため、高市首相にとっては与野党対立ということだけでなく、維新グループと自民党との溝を埋めながら国会や政権を運営できるかという難問を抱えていた。
これまでの国会の動きを点検してみても、会期末まで3週間余りとなった6月26日、与党は衆議院の議院運営委員会で、野党が欠席する中で高市首相に近い山口委員長が職権で、定数削減法案と「副首都」法案の委員会付託を決定した。
続く週明けから両法案とも、関係する委員会で委員長が職権で審議入りを決定し、与党単独の審議に踏み切った。野党側はさらに強く反発したほか、与党内からも強硬路線を懸念する声が聞かれた。
こうした中で、高市首相は終盤国会最中の7月1日から3日間、インド訪問という異例の外交日程に出発し、国会を留守にした。同じ1日、衆議院の森議長は与野党7党の幹事長らと会談し「皇室典範改正法案を最優先」で成立させるよう要請した。
森氏は、議長就任前には麻生派に所属していたが、森議長の要請をきっかけに皇室典範改正に強い意欲を持つ麻生副総裁など推進派の活動が一段と勢いを増したようにみえた。
政府は今国会に64本の法案を提出しているが、成立にこぎつけていないのは衆院で皇室典範の1本、参議院では16本と多くの法案を抱えている。高市首相としても維新の意向に最大限応えたいが、このままでは政府提出法案の多くが成立できない事態に追い込まれるため、削減法案断念にカジを切ったものとみられる。
高市首相は国会対策分野の経験が乏しいこともあってか、国会対策や運営は不得手なようだ。具体的には政権与党内の情勢把握、重要法案の提出から成立までの手順・段取り、不得手な分野は信頼の置ける議員を配置するといった運営ができないと、今後の政権運営は安定しないことがはっきりしたのではないか。
国会最終盤、皇室典範改正案が焦点
混乱が続いてきた国会は参議院に続いて、衆議院でも法案の審議が再開され、全面的に正常化される見通しだ。会期末は17日で、与党は会期延長はしないとの見方が強いが、法案の扱いによっては延長もありうる。
終盤国会で最大の焦点は、皇族数の確保に向けた皇室典範の改正法案だ。衆議院の議院運営委員会は理事会で、10日に審議入りすることで与野党が合意した。
党派の中には、政府案には「立法府の総意」として検討していない内容が含まれているとして、慎重審議を求める意見も出されている。参議院で40人が所属し野党第1党の立憲民主党は8日、旧皇族の男系男子を養子に迎えられるようにする政府案に反対する方針を決めた。
一方、私たち国民も政府案を読んでみると、明治時代の皇室典範でも認めていなかった旧皇族の男系男子を養子にする制度を設けたり、養子の子どもが男子の場合、皇位継承権を認めたりする点には疑問を感じる人が多いのではないか。
また、女性皇族が皇室に残る場合、一般国民の住民基本台帳の対象になるほか、結婚する配偶者と子どもの身分は一般国民とするのは適切なのかどうか。男系・男子だでけだなく、女系・女性の天皇をどのように考えるか、掘り下げた議論が必要ではないかと考える。
憲法では「天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」(第1条)と位置づけられている。与野党で議論を深めるとともに、国民の理解と支持が得られるような制度にしてもらいたい。会期末のあわただしい時期に、数の力で決定を急ぐような対応は取るべきでないことを強調しておきたい。
また、審議が続いている法案の中には、国旗損壊罪や「副首都」構想関連法案などには国民からもさまざまな意見が出されているので、こうした法案についても慎重な審議を要望しておきたい。(了)
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