道路建設に関する発言などで批判が相次いだ簗農相は14日夜、首相官邸で高市首相と面会して辞表を提出した。事実上の更迭とみられる。
簗農相は衆院選挙で自身を支持しなかった首長の自治体の「道路予算を大幅にカットした」と発言し、批判が相次いだ。また、2024年と今年の衆院選挙では支持者を借り上げたバスで無料送迎した問題も明らかになった。
高市首相はこれまで簗農相を続投させる考えを示してきたが、新たにバスの無料送迎問題で公職選挙法違反の可能性も浮上したことから、続投は困難と判断し更迭に踏み切ったものとみられる。
高市政権が去年10月に発足して以降、閣僚が不祥事で辞任に追い込まれるのは初めてだ。また、先の内閣改造から1か月も立たない中での更迭となった。
簗農相の道路建設に関する発言は地域住民を事実上、恫喝する内容で国会議員として考えられない暴言だ。簗農相は問い合わせをしただけで、予算の削減は要請していないと釈明したが、その場合は虚偽の発言をしたことになる。いずれにしても農相としての適性を著しく欠く行為だ。
簗農相の辞任は自らの極めて不適切な発言が原因だが、単なる政治家個人の不祥事として片付ける問題ではない。なぜ、簗氏が農相に起用されたのか、人事のあり方や政権運営との関係などにも踏み込んで問題点を考えることが必要だ。
問われる首相の任命責任と信頼回復
今回のような閣僚の問題発言やスキャンダルなどが明らかになると歴代自民党政権はその日のうちか、数日中には閣僚を辞任させ、事態の収拾を図る事が多かった。最近では安倍政権当時、菅官房長官が水面下で”危機管理”に当たったことが知られている。
今回の高市政権の場合、簗農相の道路予算カット発言を最初に取り上げたのは先月30日、週間新潮と文春のオンラインで報道だった。ということは、農相辞任まで2週間もかかったことになる。なぜ、これほど時間がかかったのか。
この理由・背景としては、高市首相が先月17日に行った内閣改造が影響しているのではないか。高市首相は初の内閣改造を行うのにあたって、自民党の衆議院議員全員に異例の「希望役職アンケート」を行い、その提出文書を首相が独りで読み込み閣僚などの人事を決定した。
簗農相が発言を撤回して陳謝した際も、高市首相は「とにかく働いて仕事で返せと話した」と続投させる意向を明らかにした。つまり、内閣改造に対する高市首相の強い思い入れが、進退判断の遅れにつながったのではないか。
高市首相の人事の進め方について当時、自民党関係者は「閣僚や副大臣などの人事をさまざまな生の情報がないまま、”政治家の自己申告書”を基に決めてうまくいくはずがない。必ずどこかで失敗する」と懸念を示していた。
「安倍政権の時のように強力に首相を補佐する体制がないまま人事を行っているのではないか」との指摘と思われるが、そうした懸念が現実になったとも言える。
改造内閣では簗農相以外にも井関文科相は、政治資金集めのパーテイーの開催が禁止されている衆議院議員会館内で、2020年と24年にパーテイーを開いていたことが明るみになった。
日本維新の会から入閣した中司行革担当相は、2007年大阪府の枚方市長時代、談合容疑で逮捕・起訴され、その後最高裁で有罪判決が確定した。野党側は、こうした閣僚の問題も順次取り上げる方針だ。
高市首相は、こうした一連の問題も含めて政治・行政に対する国民の不信感にどのように向き合い、信頼の回復を実現するのか。また、政権の体制をどのように整えて、政策課題を実行していくのか問われている。
世論の風向き 支持率50%ラインを注視
これからの政治の動きをみておくと高市首相は、後任の農相については15日に決めたいとの考えを示した。新農相は、農林水産政策と3兆円の予算管理を担当するほか、食料品の消費税減税の実施にあたっては、小規模農家を支援する制度設計にもあたる。有能で信頼感のある新農相を選べるかどうかが試される。
衆議院に続いて、参議院の予算委員会は16日と19日に高市首相をはじめ全ての閣僚が出席して基本的質疑が予定されている。食料品の消費税減税関連法案の審議入りがいつから始まるか調整が続く。
さらに、今回の農相辞任が政権にどのような影響を及ぼすだろうか。NHKの10月世論調査(10月10日から13日実施)によると、高市内閣の支持率は9月調査から2ポイント下がって51%で、政権発足以来、最も低くなった。不支持率は1ポイント上がって32%だった。
内閣支持率が先月から2ポイント下落したと言うことは、先月の内閣改造・自民党役員人事は、支持率の面では効果はなかったということになる。これに加えて、今回の農相の辞任に追い込まれたので、政権への影響は避けられないとみた方が自然だ。一定のマイナス効果が想定される。
高市内閣は発足時の支持率は66%に上っていたが、その後は下落傾向が続いており、今月調査で51%まで下がったことになる。今後どのようになるかは、農相辞任後の態勢の立て直しと、消費税減税法案の評価が影響するものとみられる。
世論の風向きはこれからどのように変化するのか。具体的な目安としては、高市内閣の支持率が50%ラインを維持していくのか、下回るのかがポイントになり、高市政権と今後の政治を左右することになるだろう。(了)
