臨時国会が10月5日に召集され、当日衆参両院の本会議で高市首相が所信表明演説を行って開会する。これに対する各党の代表質問が7日から3日間の日程で行われ、与野党の論戦が本格化する。
今度の臨時国会は先の内閣改造後、初めての論戦の舞台になる。政府・与党は食料品の消費税減税の関連法案を最優先課題と位置づけ、臨時国会で早期成立を図りたい考えだ。
これに対して、野党側は「2年間限定の減税では、期待するような物価の値下げは無理だ」などとして、全ての野党が反対姿勢を示している。特に与党が過半数割れしている参議院では、法案審議は難航が予想される。
一方、経済市場は、高市政権が消費税減税の財源を確保できるのかどうか、また財政の拡張政策にも疑念を抱いている。さらに国民は、減税を歓迎する声がある一方、日本経済や社会保障政策は大丈夫なのか懸念の声も聞かれる。
秋の臨時国会はどのような展開になるのか、どのような点がポイントになるのか探ってみたい。
消費税減税、財源を明示できるか
臨時国会の会期は12月12日までの96日間で、政府・与党は消費税減税の関連法案や、イラン情勢悪化を受けて原油などの調達先を多角化するための法案など21本の提出を予定している。また、議員立法で継続審議になっている衆議院議員の定数削減法案の成立をめざしている。
このうち、最大の焦点は消費税減税の関連法案だ。食料品の消費税率を来年4月から2年間に限って8%から1%に引き下げ、1%相当分の給付を行うことで「実質ゼロ」を実現する。2029年度には新たな給付制度となる「就業者負担軽減支援金」を本格導入するというのが主な内容だ。
このうち、消費税減税と1%分(年6000億円程度)の給付には、年間5兆円程度が必要となる。この減税と給付をめぐっては多くの問題点を抱えているが、中でも財源をどのように確保するかが最大の論点になる見通しだ。
政府の税制大綱では「特例公債(赤字国債)に頼らない」としているが、具体案は示されていない。政府・与党は年末の予算編成過程で「結論」を得たいとしているが、野党側は財源の内容を明らかにするよう強く求める方針だ。
衆議院では与党が圧倒的多数を占めているため、法案審議を乗り切ることができるにしても、参議院は与党が過半数割れしているため、法案審議は難航することが必至の情勢だ。
このため、政府・与党としては財源について、どこまで具体的で説得力のある説明ができるかどうかが最大の焦点になる。
参院審議と市場・世論の反応がカギ
この財源問題については、経済市場も厳しい視線を向けている。また、市場は高市政権の「責任ある積極財政」についても財政の拡張政策ではないかとして厳しい見方をしている。
このため、政府は年内に財源の具体的な内容を示すことができるのかどうか問われる。また、高市首相肝いりの戦略分野への投資や防衛財源の確保も必要になる。仮に財政規律に不安があると見なされると円安・株安・債券安の「トリプル安」に見舞われるリスクも懸念される。
一方、国民の受け止め方はどうか。NHKの9月世論調査によると△消費減税については「賛成」が48%で、「反対」の37%を上回った。ただ、この減税がもたらす財政への影響については「懸念している」が57%に上った。△新たな給付制度は「賛成」が36%に対し、「反対」が47%で上回った。世論は減税に賛成ばかりではなく、慎重な見方や懸念を抱いている人が多いことが読み取れる。
このように食料品の消費税減税をめぐっては、特に参議院での与野党の法案審議に加えて、経済市場、それに世論の反応が影響する。こうした要素は相互に影響し合い、場合によっては連鎖反応を引き起こし、大きな動きになることもありうるので、注意してみていく必要がある。
政治とカネ、米中間選挙の影響も
衆議院議員の定数削減法案の扱いも与野党攻防の焦点になりそうだ。定数削減法案は、連立を組む日本維新の会が成立を強く求めてきたが、これまで2回の国会で先送りされてきた。
高市首相は維新の立場に理解を示しているが、自民党内には慎重論も根強くある。定数削減法案の成立を急ぐと、野党側が反発して消費減税法案の審議を遅らせることが予想され、この法案の扱いも難航する見通しだ。
また、臨時国会に先立って行われた内閣改造では、自民党の裏金問題に関連して政治資金収支報告書の不記載議員2人が初めて閣僚に起用された。簗農水相と関文科相で、両氏は党から役職停止や戒告の処分を受けていた。
日本維新の会から入閣した中司行革担当相は、2007年大阪府の枚方市長時代、清掃工場建設工事をめぐって大手ゼネコンが落札できるよう調整を図ったとして大阪地検側部に談合容疑で逮捕・起訴され、13年に最高裁で有罪判決が確定した。
野党側はこうした問題も取り上げて追及する構えで、「政治とカネの問題」も議論される見通しだ。
このほか、外交面では11月3日、アメリカの中間選挙の投開票日を迎える。現地の報道によるとトランプ政権を支える共和党は厳しい情勢が伝えられており、選挙結果によっては、世界経済に大きな影響を及ぼすことが予想される。
また、11月18日からAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が中国の深圳で開かれる。高市首相の台湾有事発言を契機に日中関係は悪化の状態が続いている。こうした外交や国際経済の問題が国会論戦に浮上する可能性もある。
このように秋の臨時国会は、消費税減税の関連法案を軸に与野党の論戦と攻防が激化する見通しだ。消費税は、歴代政権にとって鬼門だった。消費税の導入や税率の引き上げに当たって、政権が倒れたり選挙で大敗したりするケースが相次いだ。
今回、高市政権は初めて消費税率を引き下げる法案を提出するが、この国会で法案を成立させることができるのかどうか。国会での与野党の攻防だけでなく、市場や国民を納得させることができるかが、大きなカギを握っているようにみえる。(了)
