”政府の説明・具体論が必須”消費減税法案審議入り

今の臨時国会の最大の焦点になっている食料品の消費税減税関連法案は20日の衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われたのに続いて、21日からは衆議院財務金融委員会に舞台を移して実質審議に入った。

高市首相はこの法案を政権の最優先課題と位置づけ、早期の成立を訴えている。だが、先の衆院本会議での高市首相の説明を聞いて納得した国民はどれくらいいただろうか。

高市首相の説明は一般論が多く、しかも数字に基づく具体的な説明がほとんどなかった。国民としてはこの法案をどのように評価したいいのか、その判断材料がないと感じた国民が多かったのではないか。

社会保障の財源となる消費税が導入されて37年になるが、政府が消費税率を引き下げる法案を提出するのは今回が初めてだ。法案審議にあたってはどんな議論が必要なのか、法案をめぐる与野党の攻防はどのような展開をたどりそうなのか探ってみたい。

”無い無い尽くし”の消費減税法案

まず、政府の説明をみておくと高市首相は20日の衆院本会議で、食料品の消費税減税関連法案について「食料品を中心とする近年の物価上昇は、低所得世帯に大きな負担となっている。生活必需品に対する支援が重要だ」とのべるなど食料品の消費税減税の意義を繰り返し強調した。

これに対して野党各党は◇消費税率引き下げには時間がかかるうえ、商品価格も期待したほどの引き下げ効果があるか疑問だ。◇消費減税で影響を受ける小規模農家や外食産業への支援はどのように行うのか。◇減税実施に必要な財源はどのように確保し、市場の信認を得られるのかといった点を中心に政府の方針を質した。

また、2029年度から「働く中低所得者へ所得に応じて給付金を支給する新たな支援金制度」について◇年収いくらの人が対象になり、支給額はいくらになるのか。◇対象から外れた低収入や、中所得層以上への対応はどうなるのか。◇税率を元に戻した場合、実質増税になる人が多数に上るのではないかなどと質した。

これに対し高市首相は、減税の財源については「予算編成改革という枠組みの中で税収動向を見極めつつ、歳出・歳入両面の見直しを進める」などと答弁し、年末の予算編成過程で明らかにしたいとの考えを示した。

新たな支援金制度についても「国会での審議も踏まえつつ検討する」とのべるなど従来の答弁を繰り返し、具体的な説明を避けた。

高市首相が具体的な数字を挙げたのは、支援金制度の年収の上限と下限についてで、「粗く申し上げれば、年収100万円から350万円の収入層の方が2千万人程度となる」とのべた程度だ。

そして、こうした年収は海外の類似制度を基にした「参考値」で、今後国会での審議も踏まえて詳細を検討すると説明した。2千万人といえば、就業者全体のおよそ3割になる。逆に言えば、残り7割は制度の対象外で、影響は極めて大きい。

政府の法案自体も「支援金の対象となる所得の水準や支給金額などは政令で定める」としており、制度設計の詳細は法案成立後に決めることにしている。別の表現をすれば、法案の中身は”無い無い尽くし”の状態で、法案の全体像はさっぱりわからないのが実態だ。

こうした白紙委任のような方法は止めた方がよい。政府は、新たな支援金制度の具体的な内容や財源の内訳などは早急に明らかにすべきだ。詳細な数字は難しいというのであれば、目安を示して議論の材料を提出すべきだ。

野党議員も「政府のこうした対応では、審議のしようがない」と批判しているが、野党がどこまで具体的な説明を引き出せるのかはっきりしない。以前の野党であれば審議拒否などをちらつかせたりして迫っただろうが、残念ながら最近の野党にはそこまでの迫力が感じられないのである。

参院の攻防が焦点、波乱含みの展開も

それでは、消費税減税関連法案の審議はどのように展開するのだろうか。まず、野党側の対応だが、国民民主党は住民税の減税と給付を組み合わせ、就業者1人あたり年間5万円程度の負担軽減を求める対案を法案としてまとめ、国会に提出した。

公明党は、物価高対策として給付を急ぐべきだとして、2年間で国民1人あたり8万円の給付を提案している。支援金制度は低所得者も対象になるよう年収の下限を53万円にすることを求めている。

立憲民主党は、住民税非課税世帯への給付を今年度中に開始し、2029年度に「給付付き税額控除」を導入するよう求めている。民主改革の会は、国民1人あたり4万円の給付を求める対案をまとめた。

このように野党各党は、給付や減税を内容とする方針を打ち出しているが、共同で対案をまとめられるかどうかはっきりしない。先の衆院選挙で大敗した野党各党は自らの陣営の立て直しに追われ、野党間で連携や共闘を進めようという機運が乏しいのが現状だ。

一方、与党は衆院では圧倒的多数の議席を確保していることから、衆院での法案審議は与党ペースで進む見通しだ。但し、参議院では与党が過半数割れしているため、法案成立のめどは立っていない。

与党は参議院では過半数に4議席足りず、2議席を持つ日本保守党が減税法案に賛成する意向を示したものの、法案を安定して可決できるまでには至っていない。

このため、与党は法案の成立に向けて、野党の意見も聴きながら協力を求めていく方針だ。衆院段階でも法案の修正協議の動きが出てくるかどうかが当面のポイントになるほか、ヤマ場は法案が参議院に送られた後の与野党の攻防だ。

参議院では野党第1党の立憲民主党が主導する形で、野党の体制を整えるものとみられる。簗前農相の問題をめぐって参議院では野党がまとまって問責決議案を検討する動きを見せたことが、農相の辞任へ圧力になった。今回、消費減税をめぐって野党の足並みがそろうかどうかが大きなポイントになる。

政府・与党は、国民民主党や公明党などをターゲットに野党陣営の切り崩しを図るものとみられる。いずれにしても参議院での与野党の協議と駆け引きが激化する見通しだ。

こうした与野党の攻防とは別に、消費税減税をめぐっては、市場がどのような反応を示すのかも重要な点だ。市場は高市政権の財政拡張政策に警戒感が強く、円相場や債券市場などで大きな変動が起きたりすれば、直ちに国会の与野党協議に影響する。

こうした市場の反応は仮に法案が成立したとしても、来年4月の消費減税の実施時点やそれ以降の節目で、市場の変動リスクが顕在化すれば減税政策に影響を及ぼすのでやっかいだ。

政府・与党は、11月上旬には消費減税関連法案の衆院通過をめざし、11月中の参議院での可決・成立をめざすものとみられる。参議院の野党幹部は「この国会は、どこが決定的な局面になるのか、今のところ読めない」との見方をしている。

一方、年末の予算編成に向けて安全保障関係の三文書の改定と防衛予算の検討が本格化する。防衛予算の拡大と高市首相肝いりの戦略的投資の拡充、ここでも財源確保が大きな問題になる。

ここまでみてきたように消費減税関連法案がどのような形で決着がつくかは、見通せない。ただ、不確定要素が多いだけに与野党協議は難航し、波乱含みで展開する公算が大きいとの見方をしている。(了)

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